温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

十和田観光電鉄に乗り納め(2012年2月)

2012年04月08日 | 青森県
今年(2012年)3月末を以て廃止された十和田観光電鉄(十鉄)に、廃止の約一か月前に当たる2月某日、当地での温泉巡りのついでに乗り納めてきました。

 
凍てつく厳冬の十和田市駅。ローカル私鉄に似つかわしくないショッピングセンターと一体化した近代的な駅ビルが印象。ダイエーに似たマークの「とうてつストア」の大きな看板が目立つものの、ストアそのものは数年前に閉店済。
駅周辺にはパチンコ屋が目立つ。地方はどこへいっても、昼間っから軽自動車で乗り付けてパチンコで一日を潰す人が多いが、青森県に限って言えば、地元テレビ局のCMは日本原燃・消費者金融・某宗教団体・そしてパチンコ屋によって占められており、青森県を愛する者の一人としてはこの現状を憂えずにはいられない。


 
テナントがほとんど抜けてしまった館内。4月中旬には閉鎖されてしまうらしい。
1階はバスターミナルやタクシー乗り場として機能しているが、タクシーは十鉄グループの「とうてつ交通」以外は乗り入れできない排他的な構造。


 
1階で見つけた親会社「国際興業」のグループ会社一覧、そして人種特定の難しい和洋折衷的なファミリーの古いイラスト。「暮らし一新!快適ショッピング」と書いてあるが、もうここではほとんど買い物できない。
企業名一覧に関しては、秋北バスや岩手県交通など東北のバス会社の他に、山梨交通など東北以外の会社の名前も。


 
1階にはスタンドそば屋があり、鉄ちゃんの間では密かな人気を呼んでいたという。この時はちょうどお昼だったため、爺さん婆さんが次々に集まり、熱いそばをすすっていた。



私も腹が減ったのでかき揚げとタマゴが載っかった「スペシャルそば」とハーフカレーのセットを注文。
炭水化物のコンボという食事をすべて胃袋に収め、デブ街道まっしぐら。



電車乗り場は2階なので、階段で2階へ上がる。電車のりばを示すサインは台湾の電気機関車(↓これ)みたい。
  


 
改札前の待合スペースと出札窓口。白基調ながら全体的に薄暗く、画像を見ただけでは流行ってない総合病院の待合室と勘違いしたくなる雰囲気。列車ごとに改札を行うのだが、出発直前だというのにコンコースには人影があまり見られない。



窓口で記念に硬券入場券を購入してみた。地紋は無く、外の雪のような真っ白な券面。日付はダッチングではなくスタンプ。



改札から道路を跨いでホームへと客を導く通路。しっかりとした造りで綺麗に使われており、廃駅にするのはもったいない。


 
階段を下りると東急のお下がりの電車が待っていた。1面1線のホーム。


 
電車を正面から撮影。そして三沢方を眺める。


 
緩く右カーブを描きながら途切れる線路。その先には旧十和田市駅や車庫があった敷地が広がっており、現在はホーマック・ハードオフ・ケーズデンキなど、大規模店舗に生まれ変わっている。



十和田市駅ホームの駅名標。


 
電車に掲げられたサボ、そして社章。東急時代は「急行」や「日比谷線直通」の札が掛かっていたっけ。電化61周年でこの路線は過去帳入りとなるのか…。


 
東急時代のままの車内。そして、ドア欄間の路線図。


 
つり革の広告は東急百貨店とBUNKAMURAのまま。同じ青森県内の弘南鉄道など、東急のお古の7000系を走らせて私鉄に共通して見られる光景。


 
ワンマン運転で、かつ十和田市と三沢以外は無人駅という路線ゆえ、車内の料金箱は営業運転に欠かせない存在。目蒲・池上線時代にVVVFへ改造されてから十鉄に譲渡されたこの車両は、ローカル私鉄に似つかわしくないワンハンドルマスコン。


 
ちょっとした目的があって、工業高校前駅で下車。



三沢へ向かう電車を後ろから見送る。


 
単線の質素な駅。線路に並行して、三本木原の開拓になくてはならなかった稲生川用水が流れる。



意外と本数はあるのね。


 
工業高校前で降りた理由は開業して間もない「一本木沢温泉」を訪れるためだったのだが、残念ながらこの日は臨時休業。スケート場みたいにカッチカチに凍った道を20分かけて歩いてきたというのに、日ごろの行いが悪いから神様は私に意地悪したに違いない。落胆しながら来た道を戻って駅へ。



工業高校前から再び三沢行に乗車。


 
歩き疲れか、あるいは前夜に乗った夜行列車で熟睡できなかったからか、車内ではぐっすり寝てしまい、気づけば三沢に到着していた。廃線を惜しんで車窓を目に焼き付けるようなことはできなかった…。



斜陽感たっぷりの三沢駅出札窓口。蛍光灯より朝日より、夕焼けの赤い光が良く似合う。



三沢でも硬券入場券を買ってみた。券の特徴は十和田市と同じ。日付スタンプがちょっと大きめ。


 
列車出発時間間際に改札するため、それまで改札前は扉が閉められる。改札には途中の無人駅から乗車してきた客のために料金器が置いてあるのが興味深い。


 
東北の駅の待合室にはストーブが欠かせない。こちらの駅にもスタンドそば屋さんがあって、鉄ちゃんにはかなり有名な存在らしい。私は十和田市駅で食べたばかりなので、ここでの食事はパス。



十鉄三沢駅の駅舎。

青森県には数えきれないほど何度も足繁く通っている私も、その目的地が津軽地方だったために、十鉄の利用はこの時が初めてでした。そんな人間ですから、今回の廃止にあたっての乗り納めで「惜別」だとか「残念」だとか、そうした感情にひたることができませんし、そんなことを言えた義理でもありません。これをふまえつつ申し上げますと、経営難に瀕して鉄道会社側が沿線市町村に資金援助を要請した時、市町村側はけんもほろろに断ったそうですが、人口の減少、新幹線開通やそれに伴うバス路線の発足による人の流れの変化、乗客の少なさ、行政サイドの財政難など、地域を取り巻く事情を考えたら、そのような判断は自然な流れなのでしょうね。そもそも地方における鉄道は、国鉄と線路がつながって貨物輸送が実現できることに存在意義があったのであり、貨物輸送が廃止され、その上旅客の輸送人員も減ってしまっては、わざわざ高コストである鉄道を維持する必要性が失われてしまうわけで、むしろフレキシブルに動けるバスに転換しちゃった方がはるかに合理的。定時性や渋滞などの問題もあるんでしょうが、深刻な赤字体質の鉄道に税金を注ぎこむよりは、バスに転換してから細かな問題を解決しちゃった方が、貴重な血税を無駄にせずに済みます。

十鉄の親会社である国際興業のボスにしてロッキード事件における「記憶にございません」発言でもお馴染みの故小佐野賢治は甲州出身ですが、戦前の甲州って若尾逸平・根津嘉一郎・早川徳次・雨宮敬次郎、そして小林一三などなど、錚々たる面々を輩出しているとんでもない土地なんですよね。「甲州商人の通った跡はペンペン草も生えない」というが、果たして十鉄廃止後の沿線に新たな魅力ある草花は生えてくれるのでしょうか。



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