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温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

伊豆山温泉 偕楽園

2011年11月29日 | 静岡県
 
伊豆山温泉観光協会のホームページによると、当地の旅館のうち単純な(食事などを要しない)日帰り入浴を受け付けているのは「偕楽園」「中田屋」「ラビスタ熱海」「ハートピア熱海」の4軒です(2011年秋現在)。この中で今回は、伊豆山温泉のシンボル「走り湯」の真上、かつ前回紹介した「浜浴場」の真下に位置する「偕楽園」を、日帰り入浴で利用したときの様子を書いてみます。


 
外観は地味で特に目を惹くような特徴もないので、てっきりごく普通の旅館なのかと思いきや、玄関に入ってみたら本格的な和風旅館ならではの風格のある重厚な趣きに圧倒されそうになりました。箱根や伊豆界隈において、この手の旅館で日帰り入浴を申し出ると、大抵の場合は邪険に扱われてしまいますが、こちらは良い意味で予想を裏切ってくれまして、女将をはじめ、フロントの職員さんなど、皆さん実に丁寧に愛想よく接客してくださいました。料金を支払ってタオルを受け取り、貴重品を帳場に預けて、いざお風呂へ。


 
こちらのお風呂は(1)展望大浴場(内湯)と、(2)小内湯&露天風呂の2つに分かれており、午後8時を境にして男女入れ替え制になっています。浴室入口は3つに分岐しており、右が(2)の小内湯&露天、階段を下りてゆく真ん中が(1)の展望内湯、左が休憩スペースです。
訪問時、男湯の暖簾は(1)の内湯展望大浴場の方に掛かっていたので、そちらを利用しました。露天に入れないのはちょっと残念ですが、後述するように、実は源泉にこだわる温泉ファンとしてはこの内湯展望大浴場の方が面白いのであります。従って私個人としては願ったり叶ったりでした。


 
旅館のお風呂の割に脱衣室はこじんまりしており、造りも古さが隠せませんが、さすがに手入れが行き届いておりとても綺麗です。
窓の外には相模湾が一望。当然ですが初島もはっきり見えますね。脱衣室はあくまでお風呂への中継地点であるという副次的役割と、外からの視線を遮断するという実用的な目的のため、窓が小さくて外が見えないところが殆どですが、これだけ見晴らしの良い脱衣室は珍しいのでは。


 
浴室も海に向かって全面ガラス張りの爽快な造りです。一部のジャロジーを除いてガラスが嵌め殺しなので、海風に当たりながら湯あみできないのが残念ですが、この浴室は断崖の上に位置していますから、安全上致し方ありません。浴槽は2つあり、手前側が「走り湯」、奥が「逢初の湯」と称されており、それぞれ泉質が全く異なる別源泉が用いられています。1回で2度おいしいのがこの展望大浴場の魅力でして、上述でこのお風呂が面白いと申し上げたのはこの点であります。
浴室に入って浴槽廻りをパっと見ただけでも、「走り湯」のお湯が触れる手前側の浴槽や洗い場は全体的に黒ずんでおり、一方「逢初の湯」側は全体的に赤茶色に染まっているのがわかります。これだけでも双方の源泉が全然別質であることが明白です。


 
洗い場のカランは8基あり、いずれもシャワー付き混合栓。カランの並びの一番奥には打たせ湯と思しき設備がありますが、現在では使用されていないようです。



まずは手前の「走り湯」から。前回取り上げた「浜浴場」は走り湯神社から50mほど離れた第2走り湯源泉を引いていましたが、こちらは正真正銘の「走り湯」源泉を使用。第二走り湯のような薄い黄色は見られず無色透明ながら、完全に澄んではおらず、微かにボヤボヤと黒く霞んでいるように見えます。また走り湯ならではの強烈なニガリ味と強い鹹味が感じられます。
館内表示によれば加水循環しているそうですが、お湯の質感からは手が加えられているような気配があまり感じられず、浴槽隅から少量ずつオーバーフローしているものの、浴槽内で吸引が作動している様子も見当たらないので、いずれも軽程度に抑えられているのではないかと思います。なにしろ濃いお湯ですから長湯できず、無理してじっくり浸かってしまうと、朦朧としてしまうこと必至でしょう。


 
その隣りが先述のように走り湯と全く異なる泉質の「逢初の湯」で、この源泉は旅館より1km程山を登った般若院の傍にあり、1962(昭和37)年に掘削されたんだそうです。
ごく薄く橙色を帯びた透明で、明瞭な芒硝味に弱い苦み、そして金気っぽい味を有しており、更には樹脂のような表現するのに難しい複雑な匂いと味も感じられました。お湯そのものはトロトロしており、硫酸塩泉的なキシキシ浴感もはっきり体感できました。
こちらも加水・循環が行われているようですが、訪問時は湯口からの投入量が少なく、若干鈍り気味でした。この湯使いに関しては、時間や利用状況によって調整されているのかと思われます。


相模湾を一望できるお風呂は、たとえ内湯とはいえ気持ち良いものですね。加水循環されているとのことですが、実際にはあまりそれを感じさせないお湯でした。しかも2つの全然違う源泉が同時に入浴できるのですから、景色とお湯の両面で楽しめる一挙両得のお風呂と言えそうです。スタッフの方の接客にも温かいものを感じました。ちなみに今回利用できなかった小内湯や露天風呂では第二走り湯源泉を引湯しているんだそうです。



内湯展望風呂「走り湯」:伊豆山1号泉(走り湯)
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 68.8℃ pH7.6 成分総計12.31g/kg
Na:1389.0mg, Ca:2946.0mg, Cl:6869mg, SO4:865.4mg,
加水・循環あり、加温・消毒なし

内湯展望風呂「逢初の湯」:伊豆山63号泉
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 70.3℃ pH8.3 成分総計1.726g/kg
Na:237.5mg, Ca:242.6mg, Cl:238.5mg, SO4:820.2mg,
加水・循環あり、加温・消毒なし


熱海駅より東海バスの伊豆山(or湯河原)行で逢初橋下車、徒歩3分。あるいは熱海駅から徒歩15~20分(約1.5km)
静岡県熱海市伊豆山583
0557-80-2111
ホームページ

13:00~20:00
800円(タオル付)
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★

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