前回紹介した「大師湯」から上がった後に、温泉街の小規模旅館へお邪魔してお風呂をハシゴするつもりでいたのですが、訪う先で次々に玉砕してしまったので願い叶わず(つまり日帰り入浴を断られてしまった)、でもどうしても当地でもう一っ風呂浴びたかったので、縋る気持ちで別所温泉の共同浴場を代表する「大湯」へ向かいました。個人的な話ですがこちらには3度目の再訪問です。
三層屋根で唐破風の重厚且つ威風堂々とした佇まいは、下手な旅館や神社仏閣よりはるかに見るものを圧倒します。玄関の前にある券売機で料金を支払い、中の番台のおばちゃんに券を手渡します。
正面の飲泉所には「木曾義仲ゆかりの葵の湯」と彫られた碑が立っており、ネット上で「大湯」を取り上げている方は皆さんこの碑を写しているので、私も追従して載せてみました。葵とは木曾義仲のお妾さんである葵御前のことで、別所温泉観光協会の説明によれば「木曽義仲がはるか上洛の機をうかがっていた頃、愛妾葵の御前としばしば入浴していた」ために「大湯」には「葵の湯」という別称があるんだそうです。
真実のほどは定かではありませんが、言い伝えられているところによれば、木曾義仲の正室は藤原伊子、よく知られている巴御前は2号さん、そして本当に存在していたか疑わしい葵御前は3号さんという立場でありますが、いつも義仲にべったりだった巴御前をよそに3号さんとイチャイチャしていたのがこのお風呂だなんて、東海テレビの昼ドラやロマンポルノも顔負けの愛憎や嫉妬、そして背徳感に満ち溢れた怪しいエロさがプンプン漂ってくるではありませんか。歴史の濡れ場、信州の大エロ温泉物語、ここにあり。そんな卑猥な想像をしているのはオイラだけか…。
館内は典型的な銭湯スタイルで、室内の左右に棚が並んでいる脱衣室は浴室とガラスサッシで仕切られています。下足場には貴重品ロッカーがあるので旅行者の方はこれを使いましょう。
浴室はタイル張りのごくごく一般的なレイアウトで、洗い場にはお湯と水の古典的な押しバネ式カランが計6組設けられており、お湯の水栓からは温泉が出てきます。
四角い浴槽は6~7人サイズで、壁の湯口からお湯が落とされている他、槽内からの供給もあり、底ではしっかりと吸引も行われています。オーバーフローも見られますので、新しい源泉を投入しつつ循環も併用しているのでしょうね。館内表示によれば北向観音の駐車場に泉源がある4号源泉(50.9℃)をメインにして、湯温調整のため大湯源泉(38.9℃)を混ぜており、その混合比率は4号:大湯=45:40とのこと。加温は行われておらず、消毒に関しても月2回の清掃時に薬剤が用いられているのみのようです。お湯の見た目は無色透明。硫黄感がはっきりしている4号と大湯源泉を混合しているはずなのに、循環の影響なのか、表の飲泉所(4号単独使用)や後述の上がり湯(大湯単独使用)に較べて硫黄感がパワーダウンしているようであり、その知覚そのものもタマゴというより砂消しゴム系に変質しているようでした。
内湯・露天を含めた全浴槽で最もお湯が素晴らしいのはこの上がり湯。「大湯」に来てこの上がり湯を浴びないのは野暮です。だって「大湯」オリジナルの大湯源泉が100%そのまんまの状態でこの槽に注がれているんですから。上述のように38℃台のぬるいお湯で、タマゴの匂いと味がとても明瞭、体に掛けるとサラスベの心地良い肌触りに思わずウットリしてしまいました。
共同浴場なのに露天風呂が設けられているのが「大湯」の凄いところ。津々浦々に数多の温泉浴場があるものの、150円で内湯も露天も両方利用できるお風呂は滅多にお目にかかれないのではないでしょうか。尤も周囲は旅館の建物が櫛比しているため景色なんて全く楽しめず、裏手に無理やり造ったような感じは否めませんが、裸のままで内湯に篭った湯気からエスケープできるだけでもうれしいじゃありませんか。
お風呂は岩風呂で3~4人サイズで、外気の影響なのか内湯よりはちょっとぬるめの湯加減。
浴槽奥の岩に湯口があると思いきや、お湯はその岩の下方の浴槽底から供給されていました。また岩とは反対側(露天の入口傍)の底からも熱めのお湯が出ており、これによって槽内の温度のバランスをとっていました。こちらも内湯と同様に循環を併用しながら新しい源泉も常時投入しているようで、露天入口傍の浴槽切り欠けから絶え間なく排湯されていました。
湯上りにベンダーマシンで売っていた八ヶ岳高原牛乳を一気飲み。やっぱり風呂あがりの牛乳はビンに限りますね。
この大湯は週末などかなり混雑し、お湯は鈍ってしまうことがしばしばですから、タイミングを見計らって上手に利用したいですね。
大湯
単純硫黄温泉 38.9℃ pH8.7 90L/min(自然湧出) 溶存物質334.1mg/kg 成分総計334.4mg/kg
Na+:86.5mg(88.47mval%),
Cl-:50.8mg(31.78mval%), HS-:11.7mg(7.78mval%), SO4--:67.4mg(31.11mval%), HCO3-:39.3mg(14.22mval%), CO3--:18.0mg(13.33mval%),
H2SiO3:45.6mg, H2S:0.3mg,
4号源泉
単純硫黄温泉 50.9℃ pH8.8 922L/min(揚湯量) 溶存物質328.8mg/kg 成分総計329.0mg/kg
Na+:79.6mg(84.80mval%),
Cl-:40.2mg(26.53mval%), HS-:12.4mg(8.92mval%), SO4--:90.8mg(44.37mval%), HCO3-:33.1mg(12.68mval%), CO3--:8.1mg(6.34mval%),
H2SiO3:48.9mg, H2S:0.2mg,
大湯源泉を混入して温度調整(投入量85L/min=4号45L+大湯40L)
衛生管理のため浴槽内のみ循環ろ過装置を利用
加温なし
上田電鉄・別所温泉駅より徒歩7分(約500m)
長野県上田市別所温泉215-1 地図
別所温泉観光協会ホームページ
6:00~22:00 第1・3木曜定休
150円
貴重品用ロッカー(50円有料)あり、他備品類なし
私の好み:★★
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