温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯坪温泉 ひまつぶしの湯

2014年10月07日 | 大分県
 
前回に引き続き湯坪温泉を取り上げます。前回記事で訪れたのは「ふだんぎの湯」でしたが、今回は「ひまつぶしの湯」です。当地には肩肘張らない感覚のネーミングを好む気風でもあるのでしょうか。事前にネットで大まかな位置は調べておいたのですが、実際にその場所へ行っても、あるのはごく普通の民家だけ。調べ方がまずかったのかと戸惑いつつ、付近に車を止めて徒歩で周辺を探してみたところ、メインストリートの路肩のミラーに小さな看板がかかっているのを発見。その反対側にも庭木に隠れるようにして、施設名を記した看板が掲示されていたのでした。私はこの2つの看板に気づかず、車で何度も目の前を通りすぎていたのですが、こうして迷いながら探すことも、「ひまつぶし」の一貫だったりして。


 
敷地内に入ってオーナー宅と思しき住居を右に見ながら、民家の庭先をお邪魔する感じで、瓦屋根の湯屋の方へと歩いていきます。九州には無人の温泉施設が多いのですが、ご多分に漏れずこちらもそのスタイルであり、待機しているスタッフはいらっしゃらず、受付のようなものもありません。古民家調の湯屋には入口が2つあり、手前側はに「室内」、奥には「露天」と案内されています。訪問時は両方開いていましたので、まずは手前の「室内」(内湯)から見て行きましょう。


●室内(内湯)
 
戸口のそばに括り付けられた棚には、小さな飾りがたくさん並べられており、その下には白いポストが置かれていました。言わずもがな料金箱なのですが、そこにはテプラで「子供は日本の宝 無料です」と書かれています。また「入浴中」の札が用意されているように、こちらのお風呂は貸切で利用します。子供は無料、しかも貸切なんですから、お子さん連れのご家族に実にありがたい施設なのです。かく言う私は一人なんですけどね。


 
戸口の向こう側は、脱衣スペースと入浴スペースが一体化された浴室となっていました。木材の壁とガラス窓で囲われたこの内湯は岩風呂で、窓の向こうには長閑な田園風景が広がっています。シャワーが無い代わりに水道の蛇口が設けられており、またシャンプーも備え付けられています。



浴槽は2~3人サイズで、お父さん・お母さん・そしてお子さん一人が入ればちょうどピッタリフィットしそうな大きさです。お湯は窓側から突き出ている筧より注がれており、縁から溢れ出ていました。お客さんがいなくても常時投入されています。
上述のように2つあるお風呂は両方とも空いていたのですが、なお今回この「室内」は見学のみにとどめ、続いてお邪魔した「露天」で湯浴みさせていただくことにしました。


●露天
 
今回実際に入浴したのは「露天」の方です。「室内」同様、こちらも戸口を入ると脱衣スペースを挟んだ向こうに浴槽が据えられているのですが、こちらは脱衣スペースと入浴スペースとの間にパーテーションが立っており、空間的に両者が区分されていました。個人的な感覚なのですが、例え貸切とはいえ、脱衣スペースには目隠し的なものがあった方が安心します。


 
貸切風呂ですが脱衣室には籠が6つほど用意されており、荷物が多い方でも大丈夫。もちろん料金箱も置かれていますので、きちんと湯銭を納めさせていただきました。


 
日本庭園のような趣きの露天風呂は「室内」と同じく岩風呂なのですが、丸に近い形をしており、容量は一回り小さく、2人でいっぱいな感じです。こちらもシャワーは無くて水道蛇口のみ。蛇口の前にはシャンプー類が備え付けられています。


 
塩ビの配管からトポトポと落とされているお湯は非常に熱く、とてもじゃありませんが手で直に触ることはできません。それゆえ、お湯の投入と同時に加水も行われており、これによって湯船は丁度良い湯加減となっていました。なおお湯は浴槽の外へ溢れ出ることなく、底から立ち上がっているオーバーフロー管から排湯されており、放流式の湯使いが実践されています。

お湯の見た目はほぼ無色透明ですが、僅かに緑色を帯びているようであり、且つボンヤリ白く靄がかかっているようにも見えます。こちらに引湯されているのは湯坪引湯組合という源泉のお湯でして、掲示されている平成9年の分析表によれば、溶存物質0.088g/kg(成分総計0.099g/kg)という数値が表示されており、0.1g/kgを下回るこのお湯は私が入ってきた温泉の中でも屈指の薄さなのですが、前回取り上げた「ふだんぎの湯」で掲示されていた同源泉の平成21年分析データによれば、溶存物質0.138g/kgとのことですから、現在は0.1g/kgを上回っているようです。それにしても薄いことには変わらず、湯口にて軟式テニスボール的なイオウ感が得られましたが、湯船ではほぼ無味無臭であり、癖の無いアッサリとした優しい浴感が肌に伝わりました。温泉は得てして濃いお湯に関心や評価が偏りがちですが、このように薄くてアッサリしたお湯は体に優しく飽きが来ないので、湯あたりしやすい方や、お子さん・お年寄りにも向いているのではないかと思われますし、個性的な温泉を湯巡りしている時にひと呼吸置きたい場合にも重宝します。


 
露天風呂は小高い丘の上に設けられており、山間の麗しい田園風景と、その向こうに聳える涌蓋山の山稜を一望することができました。こんな素敵なロケーションの露天風呂をわずか300円で貸切利用で使えるのですから、嬉しいじゃありませんか。こんな素敵なお風呂があちこちにあるから、九州での湯巡りはやめられません。


湯坪引湯組合(九重町大字湯坪字横尾411)
単純温泉 72.3℃ pH6.6 湧出量測定せず(噴気吹き込み・掘削500m) 溶存物質0.088g/kg 成分総計0.099g/kg
Na+:6.7mg(32.58mval%), Mg++:1.9mg(17.98mval%), Ca++:6.2mg(34.83mval%),
Cl-:3.0mg(9.88mval%), SO4--:13.3mg(34.57mval%), HCO3-:26.5mg(53.09mval%),
H2SiO3:24.4mg, CO2:11.0mg,
(平成9年5月15日)

大分県玖珠郡九重町大字湯坪85-1  地図
0973-79-2820

9:00~20:00
300円
シャンプー類あり

私の好み:★★+0.5

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