温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

トカラ列島 小宝島 湯泊温泉

2012年08月12日 | 鹿児島県
今回から連続して、日本屈指の秘境、鹿児島県トカラ列島に関して、2012年7月下旬に島めぐりをして訪れた温泉の数々や島の様子をレポートしてまいります。第一回目は小宝島の湯泊温泉です。


↑トカラ列島・小宝島の位置はここ


 
鹿児島港からトカラ列島唯一の交通機関である村営フェリー「としま」に乗船して、約12時間半の長い航海の末、ようやくたどり着いた小宝島。甲板の上から島影を発見したときには、あまりに小さい島だったのでてっきり無人島なのかと勘違いしていたのですが、船はそんな小さな島へと近づいてゆき、外洋に桟橋をちょこんと突き出す港へ着岸しました。


 
歩いてもわずか30分で一周できてしまうほど小さな島。面積はたったの1平方キロしかありません。この島の様子はまた後日レポート致します。
島唯一の集落から歩いて目的地である湯泊温泉へと向かいます。道の両側ではアダンが茂っており、パイナップルに似た実をつけていました。


 
集落からわずか数分で温泉の入口に到着。辺りには硫黄の匂いが漂っています。道標に従い、海岸へと降りてゆく小路へ。


 
温泉入口の左側の藪中にはこんなボッケがあります。塩湯地獄と称するんだそうでして、濃い鼠色に濁ったドロが別府の坊主地獄のようにプクプクと音を立てながら、熱湯を煮え滾らせていました。


 
ボッケがあることからもわかるように、辺り一帯は地熱地帯になっており、付近の岩や舗装路面に触れるとかなり熱くてビックリしました。またコンクリ舗装の坂道の下からは、ポコポコとお湯が湧く(沸く)音が聞こえ、道路にはガス抜きの穴が穿たれていました。



路地の路傍にはこのような小さな枡があり、高温の蒸気が立ち上っていました。木の蓋が用意されているので、おそらくここでは地獄蒸しのような調理ができるのかもしれませんね。


 

路地はそのまま人工の入り江へと落ちてゆきます。かつてこの入り江は港だったんだそうですが、台風の度に浸食されてボロボロになり、すっかり使い物にならなくなってしまいました。この港跡の入り江の海中でも温泉が湧いているそうです。



道が海へと落ちる寸前の右側には分厚いコンクリの槽が据え付けられており、中には白濁したお湯が溜まっていましたが、嵩が浅い上に激熱だったので、こちらへ入浴することはできませんでした。日のよっては入浴できることもあるそうなので、今回はちょっと残念…。



その向かいにある、岩を削ってつくられた階段をあがってゆくと…



東シナ海を臨むサンゴの岩礁の上に造られた、コンクリの質素な露天風呂が目に入ってきました。亜熱帯らしい紺碧の夏空、真っ青な大海原、そして白濁した露天の温泉・・・このシチュエーションだけでもワクワクしませんか。この光景を見た時には、歓喜のあまり思わず絶叫しちゃいましたよ。


 
浴槽は3つに分かれています。海側2つはコンクリ槽で、同じようなお湯が張られています。一方、ややオーバーハングしている岩の下にある一番奥(崖側)の槽では泡を上げながら源泉が底から湧出していました。本当ならばこの足元湧出を楽しむべくこの一番奥の槽に入りたかったのですが、かなり温度が熱かったため入浴を断念。


 
一方、海側の2つのコンクリ浴槽の温度は45℃以下でしたので、やや熱めではありますが問題なく入浴できました。コンクリの低い擁壁にはこの温泉をイメージしたと思われる壁絵が描かれています。



もし湯船が熱い場合は、このバルブを開いて海水を注いで薄めることになります。水資源に乏しいこの島でお風呂を薄めるためにわざわざ真水を注ぐのは非常にもったいない話であり、この温泉の成分は海水と似たようなものなので、海水で薄めちゃうほうが合理的なわけです。なおバルブを開けると結構な勢いで海水が出てきますので、あまり薄めすぎないように注意し、使用後はきっちりバルブを閉めましょう(さもないと湯船が海水だけになっちゃいます)。



この露天で秀逸なのが、真水が出てくるシャワー(オート水栓)がふたつも設置されている点です。島が小さく、高い山もなく、しかも隆起サンゴ礁という地質的な問題もあり、この島では昔から真水の確保に苦労していたのですが、20年ほど前に海水を淡水化する施設が完成し、この淡水化プラントから送られてくる真水がシャワーから出てくるのです。この温泉は海水に硫黄を混ぜたようなお湯ですので、湯上りには非常にベタつくため、真水のシャワーの存在はとってもありがたいです。
画像にちょこんと写っていますが、シャワーの下にはフロートブイを半分に切って桶代わりにしたものが置かれていました。海岸へ漂着するブイなんて処分に困っちゃうほどあるんでしょうけど、これを半分に切って桶として活用するとは驚きました。島の人ならではの知恵ですね。



うぅ、気持ち良い…。最高です。
お湯は灰白色に強く濁っており、湯面からは硫黄臭が漂い、口に含んでみると海水のように非常に塩辛く、更には苦みやゆで卵の卵黄の味が混ざって舌にはっきりと残ります。上述のように湯上りはベトベトしますが、濃い塩分のためか入浴中はチクチクとした刺激すらも感じられ、日焼けしている方や傷口がある方でしたら沁みて相当痛いかもしれません。

撮影していませんが、日没後もこのお風呂へ入りに行ったんです(街灯は無いので、懐中電灯が必要)。コンクリ擁壁に視界が遮られるので、湯船に浸かると海を眺めることはできませんが、サンゴの岩礁に打ち寄せる波の音をBGMにしながら、真っ暗な露天風呂に浸かって空を見上げると、視界いっぱいに満天の星空が広がっていました。天の川はもちろんのこと、流れ星もたくさん見つけられました。さらには上空を一粒の明るい物体が猛スピードで走り抜けていきましたが、あれはきっとISS(国際宇宙ステーション)に違いありません。
山の露天風呂の星空も綺麗ですが、こちらは水平線まで視界を遮るものがないため、空の低い位置でも数多の星が輝いているのです。日本で最も星をたくさん観測できる露天風呂と称してもいいかもしれません。
こんなに野趣溢れ、しかもロマンティックな露天風呂って、他にあるでしょうか!


泉質不明(少なくとも含食塩-硫黄泉であることには違いありません)

鹿児島県鹿児島郡十島村大字小宝島  地図

24時間入浴可能
無料
備品類なし

私の好み:★★★

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