温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

巣郷温泉 でめ金食堂 2019年秋再訪

2020年04月19日 | 岩手県

日本全国にいらっしゃるアブラ臭温泉マニアの皆さん、お元気でしょうか。日本にはアブラの臭いを発する温泉が各地に点在していますが、なかでも秋田との県境付近にある岩手県の巣郷温泉は、アブラ臭が強い温泉として皆様のような変態マニアの間では夙に有名であり、とりわけ「でめ金食堂」のお風呂はお湯の匂いの強さや独特の佇まいがマニアたちの間で評判です。全国からやってきたマニアたちはこのお風呂から発せられるアブラ臭を嗅ぎ、その刺激的な「芳香」に狂喜乱舞し、満足して帰っていくのですが、かくいう私もそんな変態野郎の一人。拙ブログでも2010年に一度記事にしていますが(当時の記事はこちら)、それ以来何度か利用しており、2019年秋にも訪れましたので、今回はその時のことをレポートしてまいります。


施設名からわかるように、こちらはあくまで食堂に過ぎず、入浴施設でも宿泊営業を行っているわけでもないのですが、食事をして自分から申し出れば、食堂の奥にあるお風呂で温泉に入ることができます。国道の路傍に建つ店名を記した看板には温泉マークが付けられており、わかる人にはわかる感じでアピールしているんですね。


さて私が訪ねたのは秋の連休のお昼時。観光シーズンですから格好の稼ぎ時なのかと思いきや、意外にもお客さんは私だけ。昼なのに薄暗く店内にはテレビの音声が響き、奥の座敷ではおばあちゃんがぼんやりとテレビを眺めていました。テレビが見やすい席についた私が注文したのは焼肉丼(710円)。いかにも東北らしい濃いめの味付けで、お漬物を除けば野菜類は無く、管理栄養士の方から叱られちゃいそうな中身ですが、お腹が空いていたのであっという間に平らげてしまいました。
いや、空腹だったからというより、その先の目的に早く到達したかったのかもしれません。あらかじめ注文の際、食後にお風呂へ入りたい旨を伝えておいたので、食べ終えてお金を支払った後、お店のおばちゃんはスムーズにお風呂を案内してくれました。


お風呂は厨房の右脇から狭く雑然としている勝手口のような所を抜けた先にあります。いままで何人の温泉マニアがこの通路を行き来したことでしょう。奥には浴室らしきドアが2つ並んでいて、片方には「入浴中」の札がさげられていますが、他方にはありません。とはいえ後者のドアの先は物置になっているので、ここで迷うことはないでしょう。
ドアを開けて物置っぽい空間を通過し、タイル貼りの狭いお部屋に入ります。草臥れたソファーが置かれたこの部屋は脱衣室として使われていますが、タイル張りであるところから推測するに、かつては浴室だったのではないでしょうか。つまり、かつて浴室は2室あったのでしょうけど、ひとつを潰して今の脱衣室にし、2つ浴室を仕切っていた壁に扉を設け、脱衣室に変更した旧浴室から隣の浴室へ移れるようにしたのかと思われます。この脱衣室の時点で既にアブラ臭が香っており、お湯を見る以前の段階から既に興奮状態に突入してしまいました。


脱衣室から浴室のドアを開けた瞬間、巣郷温泉らしい濃厚且つ刺激的なアブラ臭に全身が包まれました。まさに恍惚のひと時。脳天からクラクラきちゃいます。堪りません。
でもしばらく来ない間にこのお風呂も相当お疲れが進んでしまったようです。たとえば窓枠。歪んで斜めになっているため、窓を閉めても完全に閉まりません。この日の外気温は7℃で虫は皆無でしたが、夏になれば虫が相当入り込んでくるのではないかと心配になります。そもそも窓枠どころか浴室全体が傾いでいるような気もします。果たしてこのお風呂はいつまで使えるのかしら…。そんな不安を抱きながら、一つしかないシャワーからお湯を出したら、あまりに熱いボイラーの沸かし湯が出てきてビックリ。浴室の心配などしている場合じゃなかったのでした。


壁には色褪せた出目金の絵。この絵は前回の拙ブログの記事でも紹介しましたね。こちらもすっかり色が薄くなってしまった…と申しあげようとしたのですが、10年前の画像と比較したら、今も以前もちっとも変っていませんでした。


浴槽も以前と全く変わっていません。カラフルなタイルで描いた勾玉を向い合せたようなユニークな意匠をしており、1~2人サイズの小さいもの。源泉から引かれてきたお湯は、黒く変色した蛇口からパイプを通って、特徴的な浴槽の中で投入されています。そのお湯は全く加水されておらず、100%純粋な温泉だけ。当然循環なども行われていない完全かけながしの湯使いです。見た目はほぼ無色透明ですが、若干白く靄がかかっているような微濁を呈しており、白い湯の花のようなものがちょっとだけ浮遊していました(もしかしたら異物かも)。私の訪問時は投入量を絞っていたためか、若干ぬるめの湯加減でしたが、おかげでじっくり長湯でき、思う存分アブラ臭を嗅ぎまくってしまいました。お湯からはうす塩味と苦味、そして灯油を思わせる強いアブラ臭が感じられます。とても強い匂いであるため、あたかも温かい鉱油の中に入っているような感覚になるのですが、長湯しているうちに匂いに慣れてしまい、入った瞬間に得られた刺激が徐々に減ってしまったのも事実。もっとも、この匂いを嗅ぎ続けたとしても、何らかの中毒にかかるわけではないので、問題ないのですけどね。湯中では比較的ツルツルする滑らかな浴感が得られ、同時に少々の引っかかりも感じられました。食塩泉であると同時に、硫酸塩が含まれていることが、このような複雑な浴感をもたらす要因でしょう。

巣郷温泉では循環や加水などを行っている施設が多いので、こちらのように手が加えられていない状態のお湯に入れるお風呂は大変貴重です。でも食堂がいつまで営業を続けてくれるか、お風呂をいつまで利用できるか、今回の訪問で少々不安を覚えてしまったのですが、私の杞憂を吹き飛ばしてくれるよう、これからも頑張って営業を続けていただきたいものです。

分析表の掲示なし (おそらくナトリウム-塩化物・硫酸塩泉)

岩手県和賀郡西和賀町巣郷159-14
0197-82-2830

食事をすれば無料
石鹸あり(その他は無し)

私の好み:★★★
コメント (5)
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