前回記事の「富戸温泉」から北上して、東伊豆の中心都市である伊東へとやってまいりました。温泉巡りを趣味にするようになってからも、それ以前の温泉に無頓着だった頃も、首都圏で生活する私にとって伊東という街は馴染深く、わが人生でこの駅舎を訪れた回数は数えきれないほどです。さてこの駅から東海バスに乗って、伊東の市街地を進んでゆきます。
市街地の中にある「竹町」というバス停で降り、数分歩くと、今回の目的地である「ホテル緑風園」に辿り着きました。駅からも歩いて行けますが、この日はあまり天気が良くなかったため、路線バスでアクセスしたのでした。
エントランスの前には小さな足湯が備え付けられており、誰でも無料で利用できるようです。
外観は旅館と言うより築年数の古いマンションみたいですが、エントランスの周りはモダン和風に改修されており、現代的なニーズに応えようとするお宿の努力が垣間見えます。
玄関の内部には日帰り入浴客専用の靴箱と並んで券売機が設置されています。入浴利用の場合はここで支払ってスリッパに履き替え、券を奥のフロントに差し出します。なお入浴料金は伊東市民と市民以外では料金が異なり、市民は半額(500円)で利用することができるため、後述するお風呂では地元の方が多くみられました。和風にリニューアルされた通路を横目に館内を進みます。
浴室へ向かう途中には休憩室があったり、湯上がりに飲むための冷水が用意されていたりと、サービス面が充実しています外外観や内装だけでなく、細かな配慮もぬかりがありません。
館内には男湯である「頼朝の湯」と女湯の「八重姫の湯」そして貸切露天風呂があるのですが、今回は男湯「頼朝の湯」だけの利用です。ここまでの館内は頑張って現代風に改修されていましたが、脱衣室に入ると一気に昭和へタイムスリップしたような雰囲気に様変わりし、天井の低い空間に古びた設備類が並ぶ室内からは、鄙びた風情たっぷりの湯治宿に近い趣きすら感じられます。
天井が低い内湯の造りも建物の古さを物語っているのですが、面積自体はそこそこの広さがあり、大きな湯船は窓に面しているので、天井の低さを補って余りある明るさとゆとりを実感できました。また床や浴槽などにはご当地名産の伊豆青石がふんだんに採用されているため、見た目のみならず感触も上品です。
内湯の壁に沿って混合水栓が計10基並んで取り付けられており、うちシャワー付きは6基です。カランから出てくるお湯はおそらく源泉のお湯です。浴槽の大きさは失念してしまいましたが、結構な容量を擁しています。そして、壁に沿って積み上げられた岩の上から温泉が落とされ、ステップのある湯尻よりオーバーフローしていました。なお岩の湯口の他、浴槽内中央部の底からもお湯が供給されており、複数個所からお湯を注ぐことによって湯加減の均衡を図っているものと思われます。湯使いに関しては不明ですが、私の眼には供給量と排出量がほぼ同じであるように見えたので、掛け流しかそれに近い方法が採用されているものと推測されます。
内湯のドアを開けて、お宿ご自慢の露天風呂へ。鬱蒼と茂る木立の中に大きな露天風呂がお湯を湛えており、とても市街地の中とは思えないほど静かな環境です。露天の湯船自体も30人近くは同時に入れそうなキャパを有する岩風呂で、浴槽内には石板が張られています。
軒下には笠が備え付けられていました。雨天時にはこれを被って湯浴みするわけですね。露天エリアは全体が日本庭園風の設えになっており、奥の方でどっしり構える岩の築山では小さな滝が飛沫を轟かせていましたが、おそらくこの滝はあくまで庭としての演出であり、温泉とは無関係のようでした。
その滝の近くに湯口があり、小さいながらもゴツゴツとした岩から無色透明のお湯が流れ出ているほか、手前側の浴槽内でもお湯が供給されており、複数から供給することによって湯加減のバランスをとっているようでした。しかしながら、供給量に比べてオーバーフロー量が少なく、またお湯からは消毒臭のようなものが感じられたので、もしかしたら放流式との併用で循環消毒も行われているのかもしれません(誤っていたがごめんなさい)。
お湯は混合泉が引かれており、無色透明でほぼ無味無臭。サラサラとした軽やかで柔らかいお湯です。特に内湯でその浴感がしっかりと肌に伝わってきます。上述のように露天風呂のお湯は放流式なのか疑問符が付いてしまうのですが、内湯ではそのような点が無く、お湯の柔らかさがストレートに感じられるため、地元の常連さんは露天に入らず内湯ばかりを好んで入っているようでした。なお分析書によれば、混合泉を分配する機械室内における湯温は40.6℃と表記されていますが、各浴槽ではそれ以上の適温が維持されていましたから、内湯・露天ともに加温されているのではないかと推測されます。
伊東市民なら500円で広い露天風呂に入れるため、昼間から地元の人で賑わっていたのですが、それだけでなく、廉価で宿泊することができるために、比較的早い時間帯から浴衣を纏った宿泊客も次々にお風呂へと集ってきていました。いろいろなお客さんを惹きつける、利用価値の高いお風呂でした。
混合泉
アルカリ性単純温泉 40.6℃ pH8.7 溶存物質0.449g/kg 成分総計0.449g/kg
Na+:93.4mg(69.17mval%), Ca++:31.3mg(26.58mval%),
Cl-:68.5mg(32.88mval%), SO4--:158.6mg(56.22mval%), HCO3-:35.2mg(9.88mval%), CO3--:1.7mg,
H2SiO3:51.6mg,
(平成20年3月18日)
JR伊東線および伊豆急行線・伊東駅より徒歩15分(1.2km)、もしくは東海バスの「竹町」バス停より徒歩1~2分
静岡県伊東市音無町3-1 地図
0557-37-1885
ホームページ
日帰り入浴13:30~22:00
伊東市外1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★