OBERON 日記

1999年1月25日。パソコン通信から始まった公開日記。
できれば、死ぬまで続けたい・・・(爆)。

心の奥の闇

2014-01-25 09:45:59 | Weblog
藍那のこと・・・
彼女は確かに被害者だし・・・
残された家族であるわたしたちも、被害者といって差支えないと思う。

と言うことは、加害者がいるということになる。
わたしたちに害を加えた者・・・という立場の者がいることになる。

人は、わたしたちがその人を恨んで当然と思うかもしれない。
もしかしたら、恨んで憎むべきだと・・・そう思うかもしれない。

けれど、わたしは・・・その人を憎みも恨みもしていない。
たぶん、夫も、そうなのだと思う。
裕太は「お母さんみたいに心配する気にはならないけど、憎いとも思わない」と言っていた。

そう・・・わたしは、むしろ、その人を心配している。

彼は、わたしたちの前で、一度も涙を見せたことがない。
その後も、年に二回は会いに来てくれるが、いつも明るく元気に笑っている。

周りの人たちに聞くと・・・彼は、とても責任感が強い青年だとのことだ・・・
藍那のことに、責任を感じていないはずがない・・・。
彼は・・・彼の心は・・・いつか壊れてしまうのではないかと・・・それが怖い。

もちろん、彼に過失がなかったわけではない。
そういう意味では、彼に罪がないわけではない。
けれど、彼の犯した罪に比べて、彼が負っている罰は、あまりにも大きすぎるのではないかと思う。
二十歳そこそこの青年が負うには、重すぎる罰だと思う。

彼が一生涯背負うであろう苦しみは
もしかしたら、わたしたちのそれよりも、もっともっと深く重いものではないかとさえ思う。

と、今まで書き綴ったことは、すべてわたしの本心だ。
少しも無理していないし、頑張っていないし、ほんとうに心からそう思っている。

けれど・・・

先日、五味康祐という作家の短編を読んだ。
それで、彼がどういう人なのかと、ネットで検索した。

すると、彼は、四十歳の時に交通事故を起こし、
60歳の女性とその女性の孫である6歳の少年を死なせてしまったことがあると知った。

そして、その裁判の時
志賀直哉や川端康成、小林秀雄、井伏鱒二、井上靖、三島由紀夫、柴田錬三郎など
そうそうたる文壇の面々が連署で執行猶予を乞う上申書を裁判所に提出
そのおかげなのかどうか、彼は禁固1年6月、執行猶予5年の判決だったと・・・。

・・・わたしは、この麗しい作家同士の友情に、どうしようもない不快感をもってしまった。

五味康祐という人は、とても人柄の良いひとだったのかもしれない
作家としても、同業者から尊敬される人だったのかもしれない
彼と親しい人たちは、なんとか彼の力になってあげたいと思ったのかもしれない。
とても麗しい話だ・・・

けれど、連署した作家たちは、亡くなった方たちや遺族に対し
何か手当をされた後に、そうした行動をされたのだろうか・・・
きっと、そうではないだろうと、わたしは勝手に思った・・・そして、たまらなく不快になった。
なんという無神経さだろうか、なんという想像力の欠如だろう・・・と、勝手に思った。
誤解だったら勘弁していただきたいが、そう思ってしまった。

そう思った後に、ふと我に返った。

わたしは、加害者になってしまった青年に対して、ほんとうに蟠りがないのだろうか。
もしそうなら、五味さんの友人の作家さんたちの行動に、これほど過敏に反応しないのではないか・・・。

そう思ってから、もう一度、彼の顔、姿を思い浮かべる・・・
やっぱり、恨みも憎しみも感じない・・・それは、本当なのだ・・・ほんとうに本当なのだ・・・

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