ヌマンタの書斎

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本当はヤバイ!韓国経済 三橋貴明

2009-08-27 12:29:00 | 
数字というものは、時として残酷だと思う。

これまで数百件の決算書を作成してきた。決算書の作成は、会計基準というルールに基づいて行われる。原則的には、誰が作っても同じ結果が出るように作られている。

実際には解釈の余地もあるし、多少の思惑は加味される。しかし、完全なる架空の決算は不可能だ。一期だけなら架空の決算書も作れるが、連続しての決算書を読み解けば、疑わしき数字が必ず浮かび上がる。

経営者の永年の夢も、人生を賭けた熱き情熱も、会計基準の下では冷徹に数値化されてしまう。そして、市場はこの数字にこそ企業の実態が表わされると考えて、論理的に判断を下す。

企業と同じく、国家も数値化されて評価することができる。日本人が過度に好むGNPとか、国際収支や外貨準備高といった専門用語で表現されるため、大学で経済学を学んでおかないと、いささか理解が難しい。

ちなみに私の大学時代の経済学の成績は「可」である。最低限の出席で、単位を落とさなければ善しが私のモットーだったので、当然というか必然の結果でもある。当時はまったく悔いることはなかた。

やがて社会に出てみると、思いのほか経済学の知識がないと分らない情報が巷に溢れている現実に気がつく。が、用語の理解すら怪しい身では、ほとんど理解できずに読み流すことが多い。

表題の本は、中小企業診断士でもある著者が、経済学の知識を活用して韓国経済の実態を暴きだす。下手な経済学のテキストよりも分りやすく書いてあるので、国際経済に関連する特殊用語がよく分らない人にも理解しやすいと思います。

実際、経済学に弱い私なんぞ、読んでいてけっこう赤面したぐらい。ほんと、お恥ずかしい限り。でも、私と同じぐらいに誤解、誤読している人もきっと沢山いると思うぞ。

それはさておき、この本に書かれていることは私にもある程度実感できる。近年、日本のサービス業、とりわけ飲食店や風俗店に若い韓国人が増えていると実感していた。なかにはかなり優秀な人材に思える人もいて、訊いてみたら韓国の大学出身。日本でならば名門エリートであるはずなのに、なぜに日本の風俗店に?

本人が語るところによると(かなり綺麗な日本語でした)韓国ではコネがないと就職できないので、夢のために日本に来て稼いでいますとのこと。恥じる風もなく、堂々と話してくれたことが強く印象に残っています。その後のことは知りませんが、彼のように韓国に見切りをつけて出国した若者はかなりの人数にのぼるらしい。北朝鮮を脱出した脱北者なら知っていたが、彼のような若者は脱南者というらしい。

表題の本では、それらを経済学により統計化された数値で解説してあり、私としても大いに実感できたものでした。気になったのは、自国の教育環境に絶望した母子(小学校低学年)が海外留学に出て、それを韓国に残った父親が仕送りして支えていること。そして成長した子供は韓国に戻ることに積極的でなく、現地に留まる傾向が強いことでした。

日本の日教組も真っ青なぐらいの平等教育。その実態は一番出来の悪い子供に合わせる悪平等。教える中味は、北朝鮮の独裁政権に擦り寄った教育だというから驚きだ。これじゃあ逃げ出したくもなる。

フィリピンやインドネシアなどでは、親が単身働きに海外に出て、母国に仕送りして家族を支える。しかし、韓国では逆に親が単身残って海外留学の母子に仕送りをする。

この現象が統計数値から読み取れてしまうのだから、けっして小規模なものではないことが分る。大丈夫か、この国は?

ところで著者はやっぱり日本人。当然に日本の実情にもひとくさり。正しく経済情報が読まれているのか、マスコミは正しく理解して報道しているのかと苦言を述べる。

たしかに他国の惨状にニヤつくよりも、自国の惨状にこそ関心を持つべきだな。なかなかに、耳に痛い諫言でしたね。
コメント (11)
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