ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

俺はまだ本気を出してないだけ 青野春秋

2009-08-19 07:20:00 | 
タイトルだけで腹立たしい。

本屋の棚でみかけた、このタイトルを見ただけで嫌悪感に襲われた。表紙画もそのタイトルに相応しいデザインだ。小太りの中年男性が、生気の乏しい目つきで、なで肩で呆然と佇む姿は、それだけで哀れみを禁じえない。中味を読む前に、反感に囚われたため、なかなか読む気になれなかったが、ようやく漫画喫茶で手にすることができた次第


中間管理職の立場を放り出して、自宅に引きこもる中年男性。朝っぱらからTVゲームをして老年の父親に叱られる。漫画家を目指すと粋がるも、いざ机の前に座っても描きたいことがなにもない。次第に焦りを感じつつも、公園で無駄な時間を過ごす。

なんだか読めば読むほどに腹がたつ漫画である。つくづく、このタイトルに感心させられる。この短い一文だけで苛立たしいのに、読めばなお更腹が立つ。これだけ読者を反応させるのだから、ある意味企画勝ちでもある。読んでしまった私が負けたみたいで、ちょっと悔しい。

まだ本気を出してないなんて科白は、ほとんどの場合怠けている自分を誤魔化す科白であり、甘えを正当化したいだけのわがままに過ぎない。ありもしない実力があるはずだと悲しい見栄をはっているだけだ。

別に仕事に限らず、家事でも育児でもそうだが、常にやる気満々で出来るわけがない。やりたくない時だってあるし、逃げ出した時だってある。それでも、やらねばならぬ。そして多くの人たちは、ままならぬ現実にため息つきながらも、自分なりの矜持をたもって、やるべき事をこなしている。

いちいち、本気を出すとか、出さないなんて言い訳しない。手持ちのカードでベストを尽くす。ただ、それだけだ。

なんか、ここ数年情けない人間を主人公に仕立てた作品が増えている気がします。長引く不況の影響なのかもしれませんが、このような漫画を読んで「自分のほうが、まだマシだ」なんて自己憐憫の情に浸っている人が多いのでしょうかね。それはそれで、侘しく寂しい話です。
コメント (6)
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