ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

動物のお医者さん 佐々木倫子

2009-08-25 14:41:00 | 
世の中、どうしようもなく理不尽なことがある。

あれは小学2年の頃だと思う。学校から帰宅すると、家に保健所の人がきていた。我が家の愛犬ルルに予防接種でもしにきたのかと思ったが、どうも様子が変だ。

母に呼ばれて居間に行くと、保健所の獣医だと名乗る大人が私にむかって、なにやら小難しい顔つきで説明をはじめた。

ルルが雑種犬であることは知っていた。柴犬とポインターという西洋大型犬の雑種だと聞いていた。そのせいで、最近急激に大きく育っていた。

その獣医の人の言うことには、ルルはこの先もっと大きくなって、女子供には扱いかねる犬に育つとのことだった。そうなると人も犬も不幸なことになるので、この犬は誰か大人の男性のいる家庭に譲ったほうが良いとのことだった。

私はあまりの衝撃で、しばらく硬直していたと思う。それから黙って庭へ出て、ルルに抱きついたまま小一時間泣いていた。日頃はじっとしているのが苦手なルルが、このときに限ってじっと私の抱きつくままに大人しくしていたことだけは、今も忘れずにいる。

その後ルルは、斜め向かいの大工さんの家にもらわれていった。今にして思うと、父との離別を覚悟していた母の思惑が強く働いたのだと思う。その後、父母の離婚が決まり、私たち母子は祖父母の家に引っ越すこととなり、ルルとは会えなくなった。

もし、父と母の離別がなければルルは家にいたはずだと思うし、子供の私にだって扱えたはずだ。あれは方便に過ぎず、母と獣医との意図が働いた結果だと推測している。そのせいか、どうも獣医には、いささかの隔意が拭いきれない。

表題の漫画は、日本全国にシベリアン・ハスキーを知らしめ、ハスキー犬ブームを引き起こした。寒い国の犬を、蒸し暑い日本に連れてくるなんて、なんともヒドイ漫画だとも思ったが、漫画自体には罪はない。

実際、子犬のハスキーときたら、おっそろしく可愛らしい。ムクムク、コロコロと愛らしく、愚直な性格が可愛らしさに拍車をかける。おかげで沢山のシベリアン・ハスキーが日本の暑い夏に喘ぐこととなった。まったくもって理不尽な話である。

なぜか獣医である主人公ハムテルの恋愛話が一切出てこない不思議な少女漫画だったが、そのせいで少女漫画から離れていた私にも読みやすかった。

犬は健気な動物だと思う。犬の幸せは、その犬を飼う人間次第だ。あの黒いつぶらな瞳で飼い主を信頼してやまない。だからこそ、人間は犬を幸せに飼える環境を作らねばならない。それが出来ないのなら、犬を飼う資格はないと私は思う。

私は今でもルルを手放したことを悔いている。次に犬を飼うとしたら、必ず最後まで面唐ンるつもりだ。
コメント (2)
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