曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

西尾維新「結物語」の感想など

2017-01-21 23:57:18 | 
西尾維新の物語シリーズ最新刊「結物語」を読んだ。買ったのは発売日の翌日、1月12日だった。そんなに急いで買ったのは村上春樹の「色彩を持たない~」以来である。

物語シリーズは、友達のいない男子高校生・阿良々木暦(あららぎこよみ)が様々な怪異的事件に巻き込まれる話である。現在、全体の8割くらいがアニメ化され、そちらも大ヒットしている。

僕もアニメから入ったクチで、アニメは今やっている映画以外全部見たが、原作は「化物語」の上下巻と、アニメ版の時系列的に一番後ろ(厳密には違うが)の「暦物語」で阿良々木君が死んでしまったので、その後どうなったかを知るために「終物語」の下巻を買って読んだだけ。あと、キスショットが吸血鬼になった理由を知るために、図書館で「業物語」の前半だけ読んだ。

というアニメ派で且つニワカの僕がこの「結物語」を急いで買ったのは、やはりアニメ版の補完である。「結物語」は、阿良々木君が高校を卒業してから5年後の話なのだ。

アニメ版は、基本的に阿良々木君が高校3年生だった1年間の話である。20巻以上も出ている既刊のエピソードのほとんどが1年間に詰め込まれている。いろいろバリエーション豊富なエピソードばかりなので退屈はしないが、高校三年の世界からほとんど出ないので、視聴者としても閉塞感はあった。それでなくても世界の広がりを感じない(主要キャラ以外の人間が登場しない。誰も街を歩いてないなど)世界設定なので。

なので、あの連中が23歳になったら一体どうなってるんだ、どんな世界なんだという興味が一つ。さらに、表紙が阿良々木君の彼女、戦場ヶ原ひたぎの白無垢姿という衝撃。やはり結婚するのか、だから「結」物語なのか。この手の作品としては異例にアニメ化率が高いシリーズだが、「結物語」がアニメ化されるのは3年以上先になるだろう。それまで情報をシャットアウトして生きるのは辛すぎる。だから急いで買った。

だが、この文章は盛大にネタバレする予定なので、未読の方はここで撤退していただきたい。






感想。まず、薄い。この薄さで1200円は高い。初回入荷限定?の「北白蛇神社しおりおみくじ」と、クリアファイルを貰ったから、まあ許すけど。これ、初回特典がない二刷以降だったらちょっと点数低いかも。なので、読みたい人はすぐ買ったほうがいいですよ。

僕は「オフシーズン」をちゃんと読んでいないので、阿良々木君の大学生活はよく知らないのだが、彼は公務員総合職(昔は国家Ⅰ種と言ってたような気がするが、今は違う?)の試験に合格し、キャリアとして警察庁に入庁している。キャリアなので、いきなり警部補である。キャリアなのですぐ署長になると思われる。県警本部長とかも割りと射程距離だと思う。あの落ちこぼれが、とんでもないエリートになっている。どうやって勉強したのだろうか。

直江津書に新設された風説課には、怪異に関連したメンバーが所属していて、阿良々木君もそこで研修を受ける。この世界では怪異はそんなに珍しいものではない設定だが、それにしても人魚とゴーレムに変化する女性というのは若干無理がある。というか、アニメで見てみないと、どんなのか想像できない。文章ではどちらもかなりグロテスクである。

羽川翼が「和製ジャンヌ・ダルク」と呼ばれるほどの国際的重要人物になっている。地雷撤去とかの話は前から出ていたが、現在は世界中の紛争を調停し、世界中で平和条約締結の仲裁をしまくっているらしい。すでに16本の国境線を消したとか。まあ非現実的というか突き抜けた設定だが、西尾維新ならこういうのもアリなのだろう。僕は西尾維新の他の作品は、テレビで見てた「掟上今日子」しか知らない。

羽川は平和活動としてそういうことをやっているわけだが、国と国が合併したりするのはそこの国民全てにとっての平和ではないわけで、彼女の行為は世界征服とも同義、という話は素直に上手だなと思った。西尾維新は物事、言葉を表から裏からスラスラと解釈するのが本当に上手い。

阿良々木君のでっかいほうの妹、火憐の身長が180センチに到達している。非現実的ではないが、デカすぎだろう。阿良々木君は小柄のままらしい。ちなみに火憐も直江津署の生活課に所属する警察官である。阿良々木家は両親も警察官なので、本当に警察一家である。「結物語」には、「こんなことしていたら通報されるかもと思ったが、僕が警察だった」といったフレーズが何度か出てきて笑った。

神原駿河は意外なことに医者を目指していた。医者といってもスポーツ医療のほうらしいが、それでも医師免許は必要なわけで。副音声では「私はあまり勉強が好きではないのだ」とか言ってたような気がするが・・・。彼女ももう大人なので、エロ奴隷とかそういったことは言わなくなった。変なたとえだが、ぶっ飛んでいた篠原ともえが大人になって素敵なレディになっていたときと似たものを感じた。

老倉育が直江津の役場にいる。いつもの調子で阿良々木君に「お互い三十路過ぎても独身だったら絞め殺し合おう」と言う。多数のシリーズを同時進行させながら、キャラクターの性格をきちんと書き分けられるのは凄い。何年ぶりに老倉を書いたかは知らないが、ちゃんと老倉になっている。

北白蛇神社に行っても八九寺は出てこなかった。阿良々木君が成長して迷いがなくなったから見えなかったのか。単にまたどこかに遊びに行っているのか。その辺の説明はあいまいにしてあったが、八九寺はもちろん、斧乃木ちゃんも出てこないので、5年経ってある程度過去とは切れているというか、キャラクター全体の年齢を上げて物語の雰囲気を大人っぽくしようとしているように思える。

忍は健在だが出番はそんなに多くない。多くはないが、阿良々木君は忍とペアであることが風説課で評価されており、会話や阿良々木君の心の中の独り言には頻繁に出てくる。

で、問題の戦場ヶ原ひたぎだが。外資系の金融関係に勤めているらしい。海外勤務なので、国家公務員の阿良々木君の将来とは相容れない。そのせいで3度目の別離ということになりかけるのだが、阿良々木君が海外研修、ガハラさんが日本支部勤務という「どういう賢者の贈り物(O・ヘンリー)だよ」な展開で計画がすれ違ってしまう。このすれ違いを解決しないままに仲直りして話が終わる。北白蛇神社で結婚式を挙げると阿良々木君は決意するが、それが実現する雰囲気はとりあえずない。じゃあ表紙は何なんだ。

まあ、途中の齟齬はさらっとした説明で流すのが上手い作者なので、次回作ではすでに結婚式を済ませ、どっちかが計画を引っ込めて仲良く喧嘩しながら新婚生活を送っているような気がするけど。



おまけの北白蛇神社のしおりおみくじ。口調が八九寺である。きちんと嚙んでいる。「大好」以外のもあるのかどうか気になるところ。



おまけのガハラさんクリアファイル。たぶんこっちは裏。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« iPhone 5sでHipstamatic 〜Bo... | トップ | 刑事コロンボ「5時30分の目撃... »