曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

「鬼滅の刃」の感想

2020-12-31 09:58:33 | 
※ネタバレしているので原作未読の方はご注意ください。

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「鬼滅の刃」は、テレビアニメ版をほぼリアルタイムで全話見ていた。話題になっているから見てみただけで、まさかここまでの大ヒットになるとは思っていなかった。映画「無限列車編」は見てないが、先日次女から借りて原作の7~23巻を読み、ストーリーは把握した。

■本質はギャグ

元々深夜アニメなくらいで、万人に受ける作品ではないはずなのにこの記録的ヒット。特に小学校低学年以下の子供たちは何が面白いんだろうと思っていた。原作を読むまでは。

アニメはそうでもないのだが、原作はとにかくギャグシーンが多い。糞真面目な炭治郎の天然ボケに、禰豆子のこと以外では比較的常識人な善逸の呟きが突っ込み、周りの空気から自由な伊之助が絡むという図式を中心に、会話はほとんどがギャグ混じりで描かれる。御館様などの例外を除いて、ほとんどのキャラがそれぞれ心の中で毒づくのだが、それがいちいちクスっとなる。

後述するが、バトルシーンがそれほど面白くないので、小さい子供たちは、そういったギャグを面白がっているとしか思えないし、僕もこの作品の最大の魅力はギャグだと思っている。

■絵は下手

表紙やカラー扉タイトル画以外は、ちょっとこれで金取るのかと言いたいレベルで絵が下手。特に人物を小さく描くのが苦手なようで、遠景のシーンやコマが小さいときは、キャラの見分けがつかない。

肝心のバトルシーンも、キャラの動きがよくわからない絵柄というか、動きを理解するためによく見ようという気にならない絵柄。アニメ化されてようやく見れるようになる絵というか。まあアニメでも北斎のデフォルメみたいな波が出てきて首が飛ぶみたいな表現なので、本当の動きは作者の頭の中にしかないような気がする。

というわけで、僕はアニメも原作もバトルシーンは結果が分かればいいや、と思って流していた。この作品はバトルが面白いわけではない。

■無限城からが本番

ストーリー的には、ざっくりいうと修行編、転戦編、無限城編の3つに分けられる。16巻から終わりまでが無限城編で、なんとこの間の時間的経過は一晩である。大ボス無惨を倒すための一夜の話で、全23巻のうち8巻を占めているのだ。

敵の鬼も複数登場し、対無惨戦の前に各柱や善逸、伊之助、カナヲらと対決する。それらの戦いで各キャラの過去話などが明かされるのだが、この戦いの後はないわけで、それぞれが最初にして最後のキャラ紹介的な纏めになってしまっている。

よく「魅力的なキャラクターが云々」と評されているが、そのキャラクターたちはこの最終決戦、一夜の活躍が全てみたいな読後の印象になっているので、いや一回きりだし、とか、この決戦で貢献できなかった煉獄や宇髄は所詮脇役、とか思ってしまう。もっと連戦編を厚くして脇役同士の戦いも入れるべきだったのでは。下弦の大半を説明だけで殺してしまったのは構成上のミスだろう。

■そんなに優しくない

炭治郎はたしかに優しい。が、無惨を筆頭に、対決に際して特に同情される事がなかった敵も多い。というか、泣ける過去設定がない鬼も多数いる。映画に出たはずの魘夢もそうだし、玉壺、半天狗、鳴女にもない。映画の段階では猗窩座にもない。世間やマスコミは、テレビアニメの響凱や累のイメージで泣けると評しているように思える。全体的には炭治郎にもクズ呼ばわりされるような鬼のほうが多い。

■兄弟の確執

作者の人生に何かあったのか、と勘繰りたくなるほど極端な兄弟の確執が語られる。無一郎と兄、上弦の壱と弟、不死川兄弟は、殺し合うほど相手に嫉妬したり憎んだりしている。炭治郎と妹弟、胡蝶姉妹、産屋敷の子供たち以外の兄弟姉妹は全て憎しみあっていると言ってもいいくらいだ。血縁ではないが善逸と兄弟子も殺し合ったし、大半の殺し合いの原因が兄弟間の確執という物語だった。

■テーマは「継承」か?

先代や親、先輩から何かを受け継ぐ話も執拗に出てくる。少年漫画にしてはガンガン主要人物が死ぬので、俺が死んだらあとは任せた的な展開が多いせいもあるが、始まりの呼吸の縁壱以外の人物は全員誰かから技なり思想なりを受け継いでいる。最後に炭治郎が無惨の後継者になりかけるのも、現代の子孫たちが登場するのも、継承がテーマなんだろうなカッコよく解釈すると、といった感じだ。耀哉のいうように、想いは受け継がれて永遠となるのだろう。

■今後の予想?

映画の大ヒットは、空気が一気に拡散するSNS時代の賜物という気がする。次の吉原編はうまく短縮すれば映画にできそうだが、善逸・伊之助が登場しない刀鍛冶の里編は子供たちに受けなさそう。泣ける話もないし。無限城に偏った構成なのに、そこに辿り着くまでブームが続いているかどうか疑問だ。別のアニメが覇権を奪っていそうだ。

そうなる前に、テレビアニメでいいから、アニオリエピソードでいいから話を膨らませて、スターウォーズみたいに繋いでおくべきだろう。ゴールデンでは規制でぬるい描写になりそうだから、また深夜枠で。



ギャグシーンの手抜き絵、小さい絵は本当に汚い。

 

悲鳴嶼が捕まる原因となった少年は善逸の兄弟子だった。こういう重要な設定を本編に入れられないのは技術的に問題があると思う。




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