宮崎駿の「君たちはどう生きるか」を見たので感想。
ネタパレするので注意してください。
すごく見たかったわけでなかった。見たいアニメ映画なら「響け!ユーフォニアム」の新作のほうだった。ユーフォは娘たちが両方受験生で我慢してるのに、親父が行くわけにはいかん。じゃあ、宮崎駿のあれ行くかと。
なんの情報も持たずにジブリ映画を見に行くなんて貴重な体験と、誰かが書いていたが、僕自身の経験で言えば、「ハウルの動く城」は無情報だった。行く気なかったのに、友だちに誘われて急遽行ったため、全く内容を知らずに見た。情報がないことの効果は何もなかった。
だが、今回はレベルが違う。あの鳥の絵とタイトル、菅田将暉やキムタクが声で米津が歌という以外、全く情報がない。「ハウルの動く城」は無情報とは言っても予告編とかは目に入ってたので、そういう時代感と世界設定の話ね、くらいは把握していた。それすら今回は一切ない。
今度こそ宮崎駿の最終作品になる可能性が高い。これ書くと歳がばれるが、こちとら「未来少年コナン」の本放送で宮崎アニメの洗礼を受けた人間だ。今どきの若い連中とは年期が違う。最後がどんな作品なのか気になるじゃないか。その最後のやつが、袋とじになっている。それは開けなければ。
動機が長くなった。感想に移る。
僕の結論は、これは宮崎駿が少年時代にこんな夢を見たな、というのを今の年齢で再現したもの、である。夢と言っても寝ながら見るやつ。なので、支離滅裂である。
過去の作品で似てるのは、千と千尋かな。ハウルもちょっとあり。普通の少年がヘンテコ夢世界に転移して訳わからん大冒険して現実に帰ってくる話だ。
集大成っていう評を見るけど、そうかなあ? エンタメの集大成はラピュタで、啓蒙のはもののけ姫だと思うぞ。力の入り具合、作品の重さからいって。今回は変化球な感じがする。最後かもしれないのに変化球。
カリ城で飛んで渡るローマの池の石や、豚でジーナが待ってる東屋そっくりなのが出てきて、今までに使ったものがちょいちょい出てくるってのはあったけど。
ヒメが「ここでは私の力は制限される」っていうところで、ここでピンチを作るためにそういう設定を今差し込んだ感がして、巨匠にしては今どきの量産異世界ものみたいな雑さだなと思った。せめて伏線張ろうや。
産屋の前で倒れて、大おじのところに行ったと思ったら鎖で繋がれてたとこ。いくら夢でも繋がりおかしいぞ、と思ったのだが、意識失ってるときに見た映像なのかね。次のシーンでヒメも捕まってたし。っていうように、夢の中っぽさを言い訳にして繋がりが分かりにくいとこ、いくつかあるよ。
新海誠もそうだし、細田守もそうだし、村上春樹も最近はそうだし、そうでなければならない必然性が薄い異世界を作って、他人にはよくわからんものを表現しようとする作品、最近多くないすか。そしてそれを、真剣に読み解こうとする人達がいて。椅子のキャラは◯◯の暗喩なんだ、とか、オオカミ男はあれを象徴している、とか、包丁持ったインコはあれを意味してる、とか、作者はいちいち設定してんのかね。作者としてはこうだけど、違うふうに解釈してもいいよ、いろいろ考えられるようにしておいたよ、って作ってるのかね。作者以外には理解しがたい暗喩らしきものたちを。
「君たちはどう生きるか」は、そういった仕掛けられたのか自然に出てきたのか分からん奇想天外な設定が、ジブリ史上最も全面に出された作品だ。つながりの悪さや、父の再婚相手が母の妹という関係含めて、これから検証されていくんでしょう。
ただ、僕はこの作品結構好きである。疎開先の屋敷で何もかも分からん環境に置かれる気分がリアルに感じるし(流石)、下の世界の景観もいくつか気に入ったところがある。ヒメの家の窓から幻影?の船がたくさん見えるとことか、最後の王様インコに尾行される長い回廊(高級リゾートホテルみたい)とか。好きなところを切り取って鑑賞したい作品だな。