曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」第1回~第43回の感想

2021-02-03 12:54:00 | 大河ドラマ

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」を第1回から毎週見ている。全部見てからまとめの感想を書こうと思っていたのだが、最終回を見た後だと感想がガラッと変わりそうな予感がするので、とりあえず第43回終了後の感想を書いておく。



主人公は明智光秀である。彼が謀反を起こし、本能寺で主君・織田信長を討つことは、誰でも知っている。その後、秀吉に負けて死ぬことも大体の人は知っている。

その明智光秀を主役にしている以上、ドラマは本能寺の変という日本史上最大の事件に向かって、カウントダウン的に進んでいく。僕はのどかな美濃編の段階から、十兵衛(光秀)は何故信長を裏切ったのか、裏切ることになるのか、このドラマではどの説を採るのか、または新説なのか、と思いながら見てきた。

その謎の答えが、次の日曜日に分かる。分かってしまうと、また感想が変わりそうな気がするので、現時点、最終回直前の感想も書いておいたほうがいいなと思って、今書いている。

■極力省かれた合戦シーン

ここまで、合戦シーンがほとんどなかった。あっても各合戦につき1~2シーンで、出てくる人数も少ない。市川海老蔵のナレーションと図で済ませることが多かった。なので、ドラマ全体が、自然に人間関係を中心とした会話劇ふうになっていった。これはこれで悪くないし、その人間ドラマもよくできていたが、信長の覇業や十兵衛の戦での活躍に実体が伴っていないというか、そういう設定のキャラクターというだけ、みたいな軽さは否めない。

だが、「真田丸」の合戦シーンがショボかったので、これでいいような気もする。密を避けるご時世でもあるし、大勢のエキストラを雇って茨城あたりの原っぱでわーわーやるのもなんだかなあと思う。映画並みの予算があれば別だが。

■猛烈に遅いペース

桶狭間の合戦が第21回。全44回のうち、20回が桶狭間までの話。桶狭間の前と後では時代が違うというか、桶狭間後から本格的な戦国時代だと僕は思っているので(昔「信長の野望」をやりまくっていたせい)、このドラマは、なかなか戦国時代が始まらなくてじれったかった。

◾️曖昧な時期を曖昧に理解

明智光秀は前半生がよく分かっていない。美濃を出た後は越前にいたらしい。その後室町幕府の関係者になり、幕府と信長の仲介役になり、なんとなく信長の家臣になった。という曖昧な時期が曖昧に描かれて、なるほど曖昧だと納得した。

十兵衛は信長の家臣になるのを一度断り、幕府に留まった。その後、正式に織田家に所属したというシーンはなかったと思う。でも、いつのまにか信長の重臣のような行動を取り始めていて、いつのまにか信長のことを「上様」と呼んでいた。その流れが自然で、まさに「何となく織田家臣になっていた」という感じだった。

■光秀視点の戦国時代

当たり前だが、物語は十兵衛の視点で進んだ。美しい従姉妹が信長の嫁になり、農民出身の粗野な男は会うたびに出世し、将軍は2代にわたって自分を高く評価してくれた。関白や天皇まで自分と親しくしてくれる。それは従来の信長・秀吉中心の史観=世間一般の史観では、ほとんど見られなかった景色で、新鮮な感覚を覚えた。なるほど、明智光秀の視点では時代はこう見えていたのか、なるほどこれは裏切るわ、と。

ただそれはあくまで十兵衛視点、光秀のフィルターを通してみる世界なので、やっぱり信長は「褒められたいだけなのじゃ」などと甘えたところのない天才かもしれないし、秀吉も従来のイメージ通りの気さくで人懐っこい男なのかもしれない。そもそも明智光秀があんなに好青年→イケおじかどうかもわからない。その辺は、これが真実というわけではない、あくまで明智光秀が主役の話ということを忘れないほうがいい、と思った。

■最終回が楽しみ

本能寺の変の原因については、普通に光秀の恨み説、幕府、神社仏閣に容赦しない信長を排除説から、秀吉黒幕説、光秀生存説など、無数の説がある。

十兵衛については今のところ、無理に一言でいえば信長への不信感かなあ。比叡山焼き討ちで生じた不信感が、義昭追放、正親町天皇に対する態度等を経て、43回の膳間違えキックで完全にスイッチが入った。巧妙な脚本で自然に信長を討ちたい気分に持っていってるので、おおなるほどと思うが、本能寺の変の原因としてはオーソドックスなものだ。

それよりも、前述のとおりペースが遅かったので、やっと変の直前までたどり着いて、残り1回しかないという状態。最終回は15分拡大らしいが、どこまでやれるのか。ちょっと前までは、時間がないので「敵は本能寺にあり!」の後、夜空に麒麟が現れて消える、みたいな抽象的な表現でぼやかして、あとの顛末はナレーションで済ませるしかないと思っていた。

しかしここへきて濱田岳が黒田官兵衛役で出るというニュースを見た。今までいなかった官兵衛が出るということは、「ご運が開けましたな」はあるのだろう。ということは中国大返しはあって、山崎の戦いまでやるのかもしれない。山崎の戦いは十兵衛の主人公補正が効かない惨敗だ。一瞬いい感じになった筒井順慶、なかよしの細川藤孝も味方してくれない。ここまでの主人公イメージの流れに反するエンドを、どのようにプラスにもっていくのか。麒麟は来なかったという事実を知っている我々現代人を、このドラマはどのように納得させてくれるのか。最終回が楽しみでならない。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする