ちょっと古い話だが、去年の4〜6月期アニメ「覆面系ノイズ」および福山リョウコの原作コミックの感想。
まず、なんでこのアニメを見たかというと。
主人公ニノ(有栖川仁乃)役が早見沙織。よく「透明感」と評される彼女の声だが、僕に言わせれば更に上の「清涼感」だ。気持ちが荒れているときに聴くと落ち着く。
要するに、好きな声優なのである。
さらに、音楽がNARASAKI。僕は彼の特撮(筋肉少女帯を抜けた大槻ケンヂが作ったバンド)でのギターが好きなのだ。分かりやすくてカッコいいフレーズを精密に演奏する人だと思う。
「覆面系ノイズ」はロックバンドの話である。早見沙織がボーカルでNARASAKIがギター。なんという俺得な組み合わせ。
というわけで、少女漫画が原作の、いかにも少女漫画的なアニメだけど、ハマってみたのだ。
さらにその僕のブームに長女を巻き込み、原作を全巻揃えた。とりあえず一度通読した。
実写映画のほうは、DVDになったら借りる。
ストーリーをざっくり紹介すると…
ニノの幼馴染で初恋の人、モモが突然姿を消す。傷心のニノを救ったのは、砂浜に楽譜を書く少年ユズ。だが、ユズも消える。以来、ニノは由比ヶ浜で毎朝歌う。
数年後、高校生になったニノはユズと再会。ユズは眼帯とマスクで顔を隠した覆面バンド「in NO hurry to shout; (イノハリ)」のギタリストだった。いろいろあってニノはイノハリに加入。ボーカルの「アリス」となる。
一方モモは音楽プロデューサーになっていて、ニノをオーディションで落とす。さらに、バンドを組んでイノハリとライバル関係になる。
というような話である。
俯瞰して見ると、自分に自信のない女の子を、何故か複数のイケメンが取り合うという少女マンガの典型的な構造になっている。男子たちの武器が演奏&作曲の能力というのが特殊だが。
だが、覆面系ノイズが凡百の少女マンガとは一味違うのは、得体の知れないホラー性だ。ホラーって言うとちょっと違う気もするが、うまい表現を思いつかない。
ニノは基本的にモモを振り向かせるために歌っているのだが、モモへの思いが拗れると「暴走」し、さらに限界を突破すると歌唱中に不気味な笑みを浮かべる。その状態はモモに「化物」と呼ばれていて、そのシーンだけは少女マンガ的ではない。大げさに言えば、芸術というものの本質的な部分の一つ、のように思える。
演奏でも作曲でも、小説執筆でも絵画でも、創作活動には稀に「自分でもどうやったか説明できない素晴らしい表現」や、「アイディアが天から降ってきた」という事がある。ニノがトランス状態になっているシーンは、そういう瞬間を捉えているような気がするのだ。
ニノの化物化からは、源氏物語の六条御息所の幽体離脱的なものも感じる(だからホラー)。届くはずのない場所にいるモモがニノの歌声に動揺するシーンなんて、恋しさ余って恨みが募り、生霊となって飛んでいく六条御息所そのまんまである。
幼馴染みが両方とも高校生なのにプロの音楽家だったり、同じ高校に通ってたり、同じクラスで席も隣とか、少女マンガでしかあり得ない設定山盛りなのに、この得体の知れないナニカが、普通の少女マンガにはないある種の奥深さに繋がっているのだと思う。
モモもユズも作曲家としてのコンディションが恋愛感情に左右されすぎなところは非現実的だが(一応DTMやってる僕に言わせれば作曲は半分パズルなので、計算してやる部分も多い)、一からオリジナルの作品をクリエイトする苦しさみたいなものは描かれている。作者もそうやって産みの苦しみを味わっているのかもしれない。
原作は当然音が出ない。ライブシーンでは、様々なキャラの思いや客の反応とかで歌と演奏の状態を表現している。歌詞的なものも、ほとんどない。アニメと比べると、そこがやはりもどかしい。
原作の熱烈なファンからは、ニノの声がイメージと合わないという意見が多少ある。僕もニノとしては上品すぎるかもと思わなくもないが、早見沙織は原作者が面接?して最終的に起用を決定している。歌のレコーディングにもアフレコにも原作者が立ち会ったらしい。視聴者それぞれにニノの声のイメージがあるのは当然だが、早見沙織は原作者公認のニノ役ではある。
ライブシーンの歌はCDのを流すのではなく、各シーンに合わせて録り直したらしい。演奏もだ。後日CDもレビューする予定だが、劇中で使われた数の倍以上の楽曲が用意されている。紙媒体では分からなかったイノハリの音楽を本気で再現しようとしたのだろう。
アニメは前半の山場、ロックホライズン(夏フェス)出演と後日談までだが、原作はさらに一年くらい先まで進んでいる。そこがまあ、オリジナルのメリットかな。
アニメではユズのモノローグが多いのだが、原作ではモモのも多いし、途中からはクロ(イノハリのドラム)がメインの回も増える。クロのエピソードはアニメでは拾えてないし、イノハリ結成秘話も省略されているので、より深く設定を知るなら原作は必読だろう。
原作の方が恋愛要素強めで、アニメは少しバンド寄りなので、アニメ第二期希望。とりあえず全国ツアーまでかな。
まず、なんでこのアニメを見たかというと。
主人公ニノ(有栖川仁乃)役が早見沙織。よく「透明感」と評される彼女の声だが、僕に言わせれば更に上の「清涼感」だ。気持ちが荒れているときに聴くと落ち着く。
要するに、好きな声優なのである。
さらに、音楽がNARASAKI。僕は彼の特撮(筋肉少女帯を抜けた大槻ケンヂが作ったバンド)でのギターが好きなのだ。分かりやすくてカッコいいフレーズを精密に演奏する人だと思う。
「覆面系ノイズ」はロックバンドの話である。早見沙織がボーカルでNARASAKIがギター。なんという俺得な組み合わせ。
というわけで、少女漫画が原作の、いかにも少女漫画的なアニメだけど、ハマってみたのだ。
さらにその僕のブームに長女を巻き込み、原作を全巻揃えた。とりあえず一度通読した。
実写映画のほうは、DVDになったら借りる。
ストーリーをざっくり紹介すると…
ニノの幼馴染で初恋の人、モモが突然姿を消す。傷心のニノを救ったのは、砂浜に楽譜を書く少年ユズ。だが、ユズも消える。以来、ニノは由比ヶ浜で毎朝歌う。
数年後、高校生になったニノはユズと再会。ユズは眼帯とマスクで顔を隠した覆面バンド「in NO hurry to shout; (イノハリ)」のギタリストだった。いろいろあってニノはイノハリに加入。ボーカルの「アリス」となる。
一方モモは音楽プロデューサーになっていて、ニノをオーディションで落とす。さらに、バンドを組んでイノハリとライバル関係になる。
というような話である。
俯瞰して見ると、自分に自信のない女の子を、何故か複数のイケメンが取り合うという少女マンガの典型的な構造になっている。男子たちの武器が演奏&作曲の能力というのが特殊だが。
だが、覆面系ノイズが凡百の少女マンガとは一味違うのは、得体の知れないホラー性だ。ホラーって言うとちょっと違う気もするが、うまい表現を思いつかない。
ニノは基本的にモモを振り向かせるために歌っているのだが、モモへの思いが拗れると「暴走」し、さらに限界を突破すると歌唱中に不気味な笑みを浮かべる。その状態はモモに「化物」と呼ばれていて、そのシーンだけは少女マンガ的ではない。大げさに言えば、芸術というものの本質的な部分の一つ、のように思える。
演奏でも作曲でも、小説執筆でも絵画でも、創作活動には稀に「自分でもどうやったか説明できない素晴らしい表現」や、「アイディアが天から降ってきた」という事がある。ニノがトランス状態になっているシーンは、そういう瞬間を捉えているような気がするのだ。
ニノの化物化からは、源氏物語の六条御息所の幽体離脱的なものも感じる(だからホラー)。届くはずのない場所にいるモモがニノの歌声に動揺するシーンなんて、恋しさ余って恨みが募り、生霊となって飛んでいく六条御息所そのまんまである。
幼馴染みが両方とも高校生なのにプロの音楽家だったり、同じ高校に通ってたり、同じクラスで席も隣とか、少女マンガでしかあり得ない設定山盛りなのに、この得体の知れないナニカが、普通の少女マンガにはないある種の奥深さに繋がっているのだと思う。
モモもユズも作曲家としてのコンディションが恋愛感情に左右されすぎなところは非現実的だが(一応DTMやってる僕に言わせれば作曲は半分パズルなので、計算してやる部分も多い)、一からオリジナルの作品をクリエイトする苦しさみたいなものは描かれている。作者もそうやって産みの苦しみを味わっているのかもしれない。
原作は当然音が出ない。ライブシーンでは、様々なキャラの思いや客の反応とかで歌と演奏の状態を表現している。歌詞的なものも、ほとんどない。アニメと比べると、そこがやはりもどかしい。
原作の熱烈なファンからは、ニノの声がイメージと合わないという意見が多少ある。僕もニノとしては上品すぎるかもと思わなくもないが、早見沙織は原作者が面接?して最終的に起用を決定している。歌のレコーディングにもアフレコにも原作者が立ち会ったらしい。視聴者それぞれにニノの声のイメージがあるのは当然だが、早見沙織は原作者公認のニノ役ではある。
ライブシーンの歌はCDのを流すのではなく、各シーンに合わせて録り直したらしい。演奏もだ。後日CDもレビューする予定だが、劇中で使われた数の倍以上の楽曲が用意されている。紙媒体では分からなかったイノハリの音楽を本気で再現しようとしたのだろう。
アニメは前半の山場、ロックホライズン(夏フェス)出演と後日談までだが、原作はさらに一年くらい先まで進んでいる。そこがまあ、オリジナルのメリットかな。
アニメではユズのモノローグが多いのだが、原作ではモモのも多いし、途中からはクロ(イノハリのドラム)がメインの回も増える。クロのエピソードはアニメでは拾えてないし、イノハリ結成秘話も省略されているので、より深く設定を知るなら原作は必読だろう。
原作の方が恋愛要素強めで、アニメは少しバンド寄りなので、アニメ第二期希望。とりあえず全国ツアーまでかな。