第5話は「ショーウィンドウを砕く」 読んだような気もするが、例によってまったく覚えていない。
犯人は芸能事務所の経営者夕狩(宅麻伸)。珍しく倒叙ものだが、時間軸に沿って犯行が描かれたり、犯人の脳内のイメージが映ったり、やれなかった犯行が映ったりして変則的。刑事コロンボの「もうひとつの鍵」で、理想的犯行の妄想と現実のミスが多い犯行を続けて映した奴と似てるかも。
犯人は、被害者の財布から札を抜き取った(物取りの犯行に見せかけるため?)が、全部パリパリの新札で、しかもかなり大量だったのが気になった。
あとで高級アクセサリー店は新札でお釣りを渡すという話が出てきたが、お釣りは千円札一枚だけじゃん。他の数十枚の札は何だったのか。潰れかけた事務所所属で、オーディションに落ちたばかりのモデル/女優が、どうしてあんなに金を持っていたのか。結局説明はなかった。
被害者の財布から取った札とヒムアリのくしゃくしゃの札を交換し、指紋で御用というのがメインの仕掛けなんだろうけど、それも刑事コロンボでやってる。「死者の身代金」だ。被害者が誘拐されたように見せかけて殺し、身代金も取られたように見せかけて自分で回収。コロンボは犯人が大金を使うように仕向ける。犯人は急いでいたので回収した身代金から金を出してしまう。身代金用の金は警察がナンバーを控えていることに気付いた犯人は降参…というやつ。
有栖川有栖ともあろう人が「死者の身代金」を知らないわけがない。ちょっと捻って短編にしようと気軽に書いたら、コロンボで類似のがあることを知らない脚本家が使ってしまった、というところだろうか。
完全オリジナルのトリックなんて、なかなか思いつくものじゃないから、似てしまうのは仕方ない。しかし、似てるならオリジナルにはない工夫や画期的な追加要素がないと。
何か想像を絶する、でも合理的な動機があるのかと思いきや、犯人自身がよく分かっていない、と。そういう殺人もあるということか。フィクションだからたまにはそういうのもいいけど、現実だったらたまったもんじゃないな。
貴島朱美が自分のトラウマと過去を火村に語った。今まで無理矢理山本美月のシーンを挿入して引っ張ってきたのが、ついに意味のあるものに。来週は長編「朱色の研究」だ。