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民主、シマウマ政党から脱却を 政務三役のミッション注入重要

2012年10月30日 05時22分50秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

Kyodo Weekly 2012年9月24日

 前総務相の片山善博慶応大教授は13日、共同通信社の東京きさらぎ会で講演し、民主党政権のこれまで3年間について、「国民の評価は非常に低い」 と指摘した。政治主導のために着手しておくべきだったこととして、政府内に入る政治家の人数や政治家同士の政策調整の仕組みなどを挙げ、多くの点で「準備 が著しく欠けていた」と強調した。

民主党政権のこれまで3年間について、「国民の評価は非常に低い」と述べる前総務相の片山善博慶応大教授

  講演「政権交代を果たして~民主党政権の3年を顧みる」の要旨は次の通り。

▽期待感3年で低評価へ

  民主党政権に対する国民の評価は非常に低い。3年前の熱狂や、政権交代に対する国民の期待を演出した民主党がどうしてこうなったのか。民主党の軌跡を振り返ることは日本の政治にとって教訓となることが多い。

  民主党は長年、政権交代を目指していたが、実現の具体的なスケジュールが見えた段階で、準備を着実にやっておくべきだった。しかし、民主党はその準備が著しく欠けていた。

  その一つが政治主導についてだ。政権交代を果たして政治主導でこの国の政治の在り方を変えると強調していた。それならば、政治主導を可能にするための基盤づくりをしておかなければならなかった。

  自民党政権当時、私は自治省の官僚で、その後、鳥取県で知事を8年間務めたが、官僚時代と知事として当時の政権を見た経験から、やはりこれは政治主導というより官僚主導だった。

  象徴的なのが予算編成プロセスだ。概算要求から政府原案まで基本的には役人が調整している。政府原案が出て、担当大臣が大蔵大臣や財務大臣と一 対一で話をして決めるという政治主導の局面はあるが、ほとんど形骸化していた。実は大臣折衝のときのせりふまで決まっていて、大臣は原稿を読み上げるだけ でよかった。段取りは全て役人が決めていた。

  予算は政治そのものであり、政治家が決めないといけない。税と予算は国民のために必要な施策、政治家が一番力を入れないといけないところだが、民主党政権の今もそうなっていない。

▽政策調整機能せず

  政府内に入る政治家の人数も増やさないといけなかった。政府内に送り込まれているのは、(多くても)大臣と副大臣2人、政務官3人。官僚集団の 中にこの人数で入って政治主導を実践するのは難しい。しかし、国家行政組織法と国会法で、人数を制限していたり、国会議員が政府の中に入って仕事ができる 範囲が限定されたりしている。

  だったら関連する法律を改正しておけばよかった。民主党はこの点に気付いていたのに取り組まなかった。特に政権交代した直後は参院も多数を占めていたのだから一気呵成(かせい)に進めればよかった。これが実現できていたら、もっといろいろなことができたはずだ。

  事務次官会議を廃止し、役人任せだったのを政治家が調整する形にした。しかし、例えば原発再稼働は一つの省の考え方だけで進めていいものではな く、エネルギー政策の観点や安全面のチェックも必要だろう。そうした議論を収斂させて調整する作業が必要だ。金曜日に官邸の前にあれだけの人が集まるのは 政治の失敗だ。政府内での政策調整がうまくいってなかった一つの結果だろう。

  民主党は政権交代したときに政務三役主導で各省を運営すると方針を立てた。副大臣などに就く人は、何を役所にミッションとして注入するのかをき ちんと腹積もりしておかないといけない。組閣の時、大臣や副大臣、政務官を任命するときにはそういうミッションを携えた人を任命しないといけない。そう いった点もできていなかった。

▽大きな課題を議論せよ

  政権を取ったときに政府をどうするのかという考え方の統一もできていなかった。例えば、公共事業などを自分たちの政治力を増すために利用することについて。陳情を受けて補助金を付け、その代わり次の選挙や政治資金などでお世話になる関係をどうするかということだ。

  一つの考え方は、公共事業は透明化して利権の構造はやめましょうというものだ。客観的にスマートに必要なところに予算を付けるやり方になる。もう一つは、今度は自分たちも同じことをしようという考え方だ。残念ながら、民主党の中にはこういう人もいた。

  私はこれを“シマウマ政党”だと表現した。利権構造を一掃しようという人とそのまま残して引き継ごうという人。いわば白と黒が同居している状態で、しかもそれは混ざり合わない。こういう点も政権交代前に党内で統一しておかなければいけなかった。

  民主党で一番気になるのは、大きな政治課題についてきちっと議論しないことだ。消費税、環太平洋連携協定(TPP)、エネルギー問題。こういう 問題は国民にとって非常に重要で、政権与党がどういう態度を取るのか、どういう政策を取るのかによって国民へ大きな影響を与えることがある。

  特に大きな問題は日ごろから議論して、少なくとも意見を一致させる努力をしなくてはいけない。

  土壇場になったり期限が決まったりしてようやく態度を決める様子を「8月31日症候群」だと言ったことがある。夏休みが終わる日、宿題ができて ないと大騒ぎする。難しい宿題は早めにやっておかなければいけない。数日で自由研究なんかできない。これと同じことを消費税でやったしTPPはいまだに宿 題を出していない状態だ。   

  政治主導で課題を前進させた分野もある。国庫補助金の大改革で、政府が都道府県など出す補助金を、その目的にしか使えなかった縦割りから、全部 一括化して「何に使うかは自由に決めてください」という形にした。自由度が高まったから補助金を受ける方は喜んでいる。これは画期的なことだ。ただ、自治 体にしか関係ないことで、一般国民にはあまり関係ないことなので、報道などで大きく取り上げられていない。

▽片山

  善博氏(かたやま・よしひろ) 東大卒。旧自治省府県税課長などを経て1999年に鳥取県知事に就任、2期務めた後、2007年から慶大大学院教授。菅内閣で総務相。主な著書に「日本を診る」など。61歳、岡山県出身

 



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