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砂川事件「一審は誤り」 最高裁長官 米に破棄示唆

2013年01月18日 05時52分35秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

東京新聞2013年1月18日 朝刊

 米軍の旧立川基地拡張計画をめぐる「砂川事件」で、米軍駐留を違憲とした一九五九年の東京地裁判決(伊達判決)を破棄した最高裁の田中耕太郎長官 が、十五人の裁判官による非公開の評議内容を当時のマッカーサー駐日米大使に示唆していたことが米公文書で分かった。これを裏付けるため、砂川事件の元被 告三人を含む七人が三十日、最高裁に行政文書の開示を求める。

 文書は、ジャーナリストの末浪靖司さん(73)が二〇一一年九月、米公文書館で発見し、元被告や支援者でつくる「伊達判決を生かす会」に提供。会の事務局が翻訳した。

 文書は田中長官が裁判長を務めた大法廷で審理中の五九年十一月五日付で、マッカーサー大使が米国務長官に宛てた公電。田中長官との非公式会談で、 田中長官が「(東京地裁の)伊達裁判長が憲法上の争点に判断を下したのは全くの誤りだったと述べた」「来年の初めまでには判決を出せるようにしたいと語っ た」などと記されている。

 さらに、田中長官が「十五人の裁判官からなる法廷にとって最も重要な問題は、この事件に取り組む際の共通の土俵を作ることだと見ていた」「裁判官 の幾人かは手続き上の観点、他の裁判官たちは法律上の観点、また他の裁判官たちは憲法上の観点から問題を考えていると示唆した」「下級審判決は覆されるだ ろうと思っている印象を受けた」と報告している。

 また、最高裁が同年十二月十六日に一審判決を破棄した翌十七日、マ大使が米国務長官に宛てた公電には「全員一致の最高裁判決が出たことは、田中裁判長の手腕と政治力に負うところがすこぶる大きい」などと記されていた。

 元被告の一人で、伊達判決を生かす会の共同代表土屋源太郎さん(78)=静岡市葵区=は「憲法の番人である長官が、当事者である米側に審理中の裁 判内容を漏らしていた。この事実を多くの人に知ってもらいたい」と開示請求の必要を主張。末浪さんも「最高裁判決の翌月、日本は日米安保条約改定に調印し ている。政府だけでなく、最高裁が密談して決断を下したのは、法制上も問題だ」と指摘している。

<砂川事件と伊達判決> 1957年7月8日、東京都砂川町(現立川市)の米軍立川基地拡張のための測量に反対するデモ隊の一部が基地に立ち入り、 7人が刑事特別法違反罪で起訴された。東京地裁の伊達秋雄裁判長は59年3月30日、「米軍の駐留は戦力の保持に当たり、憲法9条に違反する」と全員に無 罪を言い渡した(伊達判決)。検察側は高裁を経ずに最高裁の判断を求める「跳躍上告」をした。最高裁は同年12月16日、「安保条約は高度の政治性を有 し、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の対象外」と一審判決を破棄。63年の差し戻し審で全員の有罪が確定した。