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森羅万象 ~ 歩く印象派

放射能と暮らす(6)簡易測定器 誤差に注意

2012年01月12日 21時45分36秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

読売新聞(放射能と暮らす(6)簡易測定器 誤差に注意 )

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市民自らが放射線測定器を購入し、身の回りの放射線量を測る動きが広がっている。放射線量が高い場所を知ることは、無用な被曝
ひ ば くを避けるのに役立つが、簡易型の測定器は誤差も大きいので注意
が必要だ。
 千葉県柏市に住む本紙記者(43)も、市内の放射線量が首都圏では高めと聞き、インターネットで中国製という簡易型の測定器を約6万円で購入。子ど
もを連れて散歩する川沿いの遊歩道などを測ってみた。
 川の土手で自分で測った数値は、毎時0・1マイクロ・シーベルト程度と表示された。そこで今度は、同僚記者が持っていた別の機種を借り、同時に
測ってみた。すると同じように測ったのに、同僚の機械が示す値は同0・3マイクロ・シーベルト以上と、約3倍開きがあった。
 測定器によって、どうして、こんな差が生じるのだろうか。
 高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)教授の野尻美保子さんによると、業務用の測定器は出荷前に1台ずつ正しい値を示す機械と同時に測り、値の調整をしている。これを「校正」と呼んでいるが、簡易型の測定器は校正をしていないものが多いという。
 「特に毎時0・2マイクロ・シーベルト以下の低い線量を測る時は、機械の内部から出るノイズ(雑音)を拾ったり、自然界にある微量の放射線を実際より高く測ったりするので、値が高めに表示されやすい」と野尻さんは指摘する。
 今年6月、野尻さんたち同研究機構の研究者は、東京・秋葉原で、市民が購入した簡易型の測定器の精度を測る会にアドバイザーとして参加。実験用のセシウム密封線源を中央に置き、一斉に測定を開始した。
 集まったのは、日本製のほか、米、独、仏、中国、ロシア、ウクライナ製などの簡易型測定器約40台。毎時0・60、0・20、0・10マイクロ・シーベルトの放射線を測ったが、すべて正確に表示したのは1台もなかった。
 毎時0・10マイクロ・シーベルトを0・09~0・23、同0・20マイクロ・シーベルトを0・15~0・44と表示し、最大で2倍以上の差があった。多くの機械が実際より高めに表示する傾向がみられた。
 首都大学東京教授、福士政広さんは「簡易型の測定器は、30%くらいの誤差はあるので、自分で測った値は目安として考えてほしい」と話す。
 ただ、機械の誤差は減らせなくても、測り方に気をつけることで、測定時の誤差を減らすことはできるという。次回は、簡易型の測定器を使った測り方のコツを紹介しよう。
(2011年8月16日 読売新聞)

放射能と暮らす(5)母親「自分で確かめる」

2012年01月12日 21時44分55秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

読売新聞(放射能と暮らす(5)母親「自分で確かめる」 )

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千葉県柏市に住む主婦C子さん(35)は福島第一原発の事故後、通信販売で購入した携帯型の放射線測定器で、周囲の放射線量をこまめに調べている。
 8歳から1歳まで4人の子どもを育てる。国の調査で、千葉市の母親の母乳から放射性ヨウ素が検出されたのを知り、放射線の影響を身近に意識するようになった。野菜や牛乳などは九州地方から取り寄せ、調理用や飲み水は全て市販のミネラルウオー
ターを使う。
 効果の程度はわからないが、「がんの危険性など、将来子どもが直面する問題は誰にも分からない。自分のできる限りのことはやりたい」との思いからだ。
 同 市など千葉県北西部、茨城県取手市、栃木県北部の那須塩原市など、原発から離れた関東地方の一部地域で放射線量が周囲よりも高い「ホットスポット」が見つ かっている。原発の水素爆発が起きた後の風向きや降雨、地形などの影響で、放射性物質がまとまって降り注いだとみられる。
 文部科 学省や自治体などの測定によると、同じ関東地方でも、さいたま市や宇都宮市、千葉県市原市などは、毎時0・05マイクロ・シーベルト前後。これに対し、 ホットスポットがある地域は、7月25日~28日測定分で、柏市で最も高かった地点で0・38マイクロ・シーベルト、松戸市0・42マイクロ・シーベル ト、鎌ヶ谷市0・32マイクロ・シーベルトだった。
 ちなみに福島県内では、福島市や郡山市で1マイクロ・シーベルト前後、南相馬市が0・4マイクロ・シーベルトほどの値だ。
 C子さんが放射線量の測定を始めたのは、インターネットなどで、「柏市の放射線量が、他の地域より桁違いに高い」などの情報をよく目にするようになったためだ。「最初は信じられませんでした。
周囲に騒ぎすぎと思われるのも嫌で、自分でしっかり確かめる必要があると思いました」と話す。
 5 月下旬、C子さんは購入した放射線測定器を使い、自宅近くや子どもの通う幼稚園周辺などで放射線量の計測を始めた。自宅マンション1階は0・12~0・ 23マイクロ・シーベルト。幼稚園の運動会が行われる公園では、地表から高さ5センチの位置で0・67マイクロ・シーベルトの地点もあった。
 市は7月下旬から、幼稚園や学校の教職員が放射線量を測定し、線量が高い地点の土砂の除去などを行うホットスポット対策にようやく取り組み始めた。
 C子さんは、「放射線量が高いままでは、子どもを外で思い切り遊ばせることもできない。徹底した放射線量の測定と除染で、納得いくような安全の証明をしてほしい」と訴える。
(2011年8月12日 読売新聞)

放射能と暮らす(4)食物からの内部被曝も

2012年01月12日 21時44分27秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

読売新聞(放射能と暮らす(4)食物からの内部被曝も )

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 川崎市の主婦B子さん(37)は、福島第一原発の事故以来、小学3年生を頭に3人の子どもの食事に苦心してきた。
野菜と飲料水、牛乳は、西日本から月1回、宅配便で取り寄せる。野菜はよく洗い、生では食べさせない。
 肉は塩と酢を入れた水に数時間漬けてから調理する。チェルノブイリ後の実験で放射性物質を除去できるとのデータを見つけたためで、「どの程度効果があるかはわからな
いが、塩味がつくし、油が水に溶けてフライパンが汚れないこともあり、続けている」と話す。
 放射能の体への影響は、外から浴びる外部被曝ひ ば  くのほかに、食物や呼吸で体に取り込んだ放射性物質による内部被曝がある。国は、飲料水、肉・野菜・卵などについて放射性ヨウ素と放射性セシウムそれぞれの、暫定規制値を定めている。
 放射性ヨウ素は半減期(放射線が半分になる時間)が8日間と短いため、現在主に問題になるのは放射性セシウムだ。
 放 射性セシウムの規制値(1キロあたり500ベクレル)の値の牛肉200グラムを食べた場合、体内に取り込まれる量は100ベクレル。すべて放射性セシウム 137と仮定した場合、国際放射線防護委員会の示す計算式で被曝量に換算すると大人で1・3マイクロ・シーベルトになる。セシウム137の半減期は30年 で、尿などから徐々に排出されることも含めて、50年間での被曝量を計算したものだ。子どもは、大人より被曝量は増える。
 国際放射線防護委員会の計算式は内部被曝の影響を軽視している、との批判もあり、より厳しい計算式を示すグループもある。
 体 内の放射性物質を効率的に排出できる食材はあるのか。岐阜環境医学研究所所長の松井英介さんによると、科学的に確かな効果が確認された排出法はない。松井 さんは、「まずは、なるべく取り込まないこと。バランス良い食事や睡眠、運動を心がけて、健康で抵抗力のある体を作ることが大切。そのうえで、ほかの放射 性物質も含めたきめ細かな検査や基準の見直しを国に求めたい」と話す。
 B子さんは、今は、こう思い始めている。
 「どれだけ汚染されているかわからない以上、同じものばかり食べるのではなく、様々な産地の食材を使うことが危険を減らすことにつながるのではないか」。足りない食材をスーパーで買う際は、なるべく産地が偏らないようにしている。 
(2011年8月11日 読売新聞)



放射能と暮らす(3)除染の実験結果を公表

2012年01月12日 21時43分39秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

読売新聞(放射能と暮らす(3)除染の実験結果を公表)

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「家庭用浄水器で放射性物質を除去できるか」「野菜は洗うと良いか」――。
 日 本放射線安全管理学会の「放射性ヨウ素・セシウム安全対策アドホック委員会」は、日常生活の疑問に答えようと、実験結果を公表している。委員長の名古屋大 名誉教授、西沢邦秀さんによると、今回放射能汚染された実物を可能な限り入手し、実験を行っている。それによると――。
〈1〉浄水器は有効か?
 雨水や地下水に、市販のポット型浄水器(濾過ろ か材は活性炭やイオン交換樹脂など)5種類を試したところ、放射性ヨウ素は70~98%、放射性セシウムは78~93%除去でき
た。
 ただし、浄水場の段階でも活性炭などを使い放射性物質の除去を行っており、家庭の蛇口から出る水道水に対し、さらに除去する効果があるかは不明という。
〈2〉野菜は洗うと良い?
 ホウレンソウを、水に10分間浸した後、流水で葉を広げて指でこすりながら5分間洗浄するなどした。放射性ヨウ素は12~50%、放射性セシウムは32~70%除去できた。ゆでる、酢や食用洗剤、アルコールなどによる洗浄も行ったが、水で洗ったのと差はなかった。
 放射性物質は、葉の表面の傷や枯れた部分に多く付着していた。
〈3〉服の汚染は洗濯すると落ちる?
 福 島第一原発周辺で働く作業員の服を入手し、家庭用洗濯機で市販の洗剤を使い通常モードで洗濯した。1回の洗濯で、厚手の靴下は放射性セシウムを70%、薄 手の靴下は78%、ズボンは、特に汚染がひどかった裾部分が86%除去できた。一緒に洗濯したほかの衣服や洗濯槽から放射性セシウムは検出されなかった。
〈4〉土は表面を入れ替えると良い?
 福島県内で採取した土の上に、砂と石を混ぜて重みをつけた土をかぶせた。地表から1センチの大気中の放射線量は、土を2センチの厚さかけたところ68%減った。厚さが10センチだと93%、20センチだと97%減少した。かぶせる土が重いほど放射線を遮る効果がある。
 土を掘り起こすと放射性物質が拡散するので、汚染された土は、土のう用の袋などに詰めて処理するのが望ましい。
 詳しい結果は、ホームページ(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jrsm/)で公表。住宅の除染マニュアルも掲載している。茶葉から放射性物質がどれだけ溶けだすかなどの実験についても、随時追加する予定だ。
(2011年8月10日 読売新聞)

放射能と暮らす(2)洗濯のり使い自宅除染

2012年01月12日 21時42分09秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

読売新聞(放射能と暮らす(2)洗濯のり使い自宅除染 )

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9歳、1歳の2人の子どもを持つ福島市の主婦A子さん(36)は、自宅や周辺の放射性物質を取り除く「除染」に取り組んでいる。
 放射線に不安を抱く親が立ち上げた「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の会合に参加し、京都精華大教授(環境学)の山田国広さんらが作った「放射能除染・回復プロジェクト」の活動を知った。
 5月中旬、自宅の中や庭の放射線量を山田さんらに調べてもらった。雨水が流れ込む雨どいの下は毎時60マイクロ・シーベルトあった。国が定めた校庭の活動基準(毎時3・8マイクロ・シーベルト)より、はるかに高い。
 雨どいの下の土からは避難区域に匹敵する高い濃度の放射性物質が検出された。
 「子どもたちの健康への影響が心配」と翌月、山田さんの指導で、雨どいの下など放射線量の高かった場所の除染を行った。
 ホー スで水を勢いよく当てて洗い流す高圧洗浄は、効果に限度があるうえ、洗い流した水が別の場所に流れる問題がある。そこで山田さんが除染に使うのは、 PVA(ポリビニルアルコール)の成分表示のある洗濯のりや、でんぷんのりだ。液体や粉タイプがあり、100円ショップやホームセンターで入手できる。
 住宅の壁など表面が固い場所は、はけで塗り、土壌には液体をひしゃくでまく。園芸用シートやガーゼのふきんをかぶせて数時間おき、壁の表面にできた膜をはぎとり、固まった土を取り除く。砂利を敷くと、さらに放射線を遮る効果がある。
 A子さん宅の雨どいの下の放射線量は、この作業の結果、毎時1マイクロ・シーベルト以下に減った。
 その後も休日を利用して、夫(39)や母(56)が30坪ほどの庭の芝生をはがしたり、砂利を敷いたりと少しずつ除染を進めている。
 取り除いた土や芝生の処分先が決まっていない問題もある。「最終的には東京電力や国が引き取るべきだ」と思っているが、現在は麻袋に入れ、庭に穴を掘って埋める。もう50袋になった。
 家の壁や屋根も除染したいが、足場を組むだけで20万円かかる。「土やほこりによる被曝
ひ ば  くも心配。国が責任をもってやってほしい」と憤る。
 山田さんは「市民自らが身の回りのどこに放射線量が高い場所があるかを知り、除染を行うことは、放射能から身を守るために重要」と話す。「放射能除染マニュアル」を作成し、ホームページで公開している。
(2011年8月9日 読売新聞)

事放射能と暮らす(1)子どもの被曝 不安募る

2012年01月12日 21時40分31秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

読売新聞記(事放射能と暮らす(1)子どもの被曝 不安募る )

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放射能と暮らす(1)子どもの被曝 不安募る 
 「親としてきちんと子どもを守っていると、自信を持って言えない今の状況は良くないと思う」
 福島市の主婦横山忍さん(38)は、4人の子どもへの放射線の影響を心配する日々が続いている。東京電力福島第一原発の事故の後、夫を残し愛知県の親戚宅に一時避難したが、「やはり家族一緒に暮らしたい」と4月半ば、福島に戻った。
 長男(11)、次男(10)、長女(6)が通う小学校は、国が定めた基準(大気中の放射線量が毎時3・8マイクロ・シーベルト以上)に該当したため、屋外活動が制限され、休み時間は室内で過ごした。
 その後、校庭の表土を入れ替える「除染」で放射線量は下がり、保護者が許可すれば外で遊べるようになったものの、子どもと話し合い、外遊びはしていない。学校以外の場所の除染は進んでいないからだ。
 7 月初め、保護者有志で3日間かけて通学路の100か所以上の放射線量を計測した。草むら(地上1センチで毎時7・2マイクロ・シーベルト)、側溝(同5・ 2マイクロ・シーベルト)、マンホールの上(同6・2マイクロ・シーベルト)など、放射性物質がたまりやすい場所は軒並み高く、100マイクロ・シーベル トを超える場所もあった。
 ある日、長男と次男が友達の家に行く途中、側溝にゲームソフトを落とし、のぞき込んで手を伸ばす姿にヒ ヤヒヤした。「放射線量の高い場所には近づかないよう言い聞かせても、子どもはどんな行動をとるかわからない。とても外で遊ばせられません」放課後はサッ カークラブで活動していた2人も、自宅でテレビゲームなどをして過ごす。
 食事にも気をつけている。西日本の野菜を取り寄せ、給食は産地表示がなかったので、お弁当を持たせた。
 国 が定めた3・8マイクロ・シーベルトの基準は、国際放射線防護委員会の考えに基づき、子どもの受ける被曝ひ ば くを年間20ミリ・シーベルトに抑えるよう計算されている。だが基準は甘すぎるとの声もあり、健康影響の程度は不明だ。除染対策も進まない。福島市など放 射線量が高い地域で子どもを育てる親の悩みは深刻だ。
 横山さんは今月2日から3泊4日、次女(1)を含め4人の子どもを連れ、山梨県に保養に行った。
食材を選ぶ苦労もなく、思い切り外遊びもできた。
 「家も建てたばかりで、迷いはある」が、子どものことを考えると、そうも言っていられない。自治体の住宅補助制度を使って“疎開”できないか、真剣に考えている。
(2011年8月8日 読売新聞)