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「落選」都政、一転難局に 巨額招致費・用地処理…

2009年10月04日 04時32分38秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
朝日COM 2009年10月4日0時47分

 東京が16年夏季五輪の招致レースに「落選」し、石原慎太郎知事の求心力が低下している。招致活動だけで100億円もの税金を投入。五輪会場予定地の新たな使い道も見通せない。スポーツ界は20年五輪招致に期待するが、知事は2年後の知事選に立候補しない意向で、行く末は不透明だ。

 日本時間の3日未明、国際オリンピック委員会(IOC)総会後の記者会見で、石原知事は招致失敗の引責辞任について「絶対ない」と強調した。

 だが、五輪招致は知事の3期目の選挙公約。都庁内には「今後は何を目的にするのか。知事の存在感はさらに低下する」との声が多い。

 3年間の招致活動に投入した税金100億円の使途も問われる。招致機運を盛り上げる費用として都内全62区市町村に年1千万円を上限に分配してきたが、世論支持率は候補4都市で最低だった。五輪開催に向けて積み立ててきた4千億円の使途も決まっていない。7月の都議選で第1党になった民主党の幹部は「招致費用はどれだけ効果があったのか疑問だ。無駄遣いかどうかを追及する」と話す。

 五輪用地の処理が宙に浮く恐れもある。臨海副都心にある選手村予定地(江東区)は31ヘクタール。750億円をかけて05年に造成した都有地だ。「早く売ってしまいたいが、不況で買い手がつくかどうか」。都幹部は心配する。

 石原知事は20年以降の五輪招致に再挑戦する可能性に含みを残したが、課題は多い。

 不況で都税収は落ち込み、新たに巨額の招致費を支出するのは簡単ではない。新銀行東京の経営悪化や、築地市場の移転予定地で有害物質が検出された問題もあり、石原知事の支持率は一時ほど高くはない。五輪再挑戦に世論の支持を得られるかは不透明だ。
そもそも、石原知事は任期満了する11年春で引退する意向だ。20年五輪の招致活動が本格化するのは石原知事の引退後。次の知事が引き継ぐかどうかは見えない。

 「五輪招致の看板をいきなりは降ろせないのだろう。しかし、再挑戦するにしてもしないにしても、知事の厳しい状況は変わらない」。都幹部は話す。

     ◇

 国内のスポーツ界は20年招致を東京に期待する。IOC総会で敗れた直後の会場で、日本オリンピック委員会(JOC)の福田富昭副会長は「20年も東京に立候補してほしい」と言った。

 JOCは「言質」を取っているとの思いがある。3年前の夏、東京と福岡市が国内候補都市を争った場で、16年に失敗した場合の再挑戦について聞かれた石原知事は、「もちろん、やりますよ」と明言したからだ。

 世界を見渡すとローマ市長が20年への立候補を表明。12年五輪の招致でロンドンに敗れたパリ、モスクワなども再挑戦する可能性が高い。JOCの竹田恒和会長は「(今回の招致レースで得た)財産、ノウハウをそのまま使える。勝つための方程式を考えなきゃいけないが、同じことをするだけで次は勝つかもしれない」と話す。(コペンハーゲン=平井隆介)