映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!

2013-02-13 | ドキュメンタリー
やっと横浜の映画館で公開になったので、雪の予報にひるむことなく行ってきました。
時折みぞれにはなりましたが、雪にならず。ただ寒かった~。

スクリーンの中では、プロダンサーを目指して辛く苦しい練習に励む子供たちの
熱い戦いが繰り広げられ、圧倒されました。


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     フ ァ ー ス ト ・ ポ ジ シ ョ ン
                       夢に向かって踊れ!

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 < ストーリー >
毎年ニューヨークで開催される世界最大のバレエコンクール、ユース・アメリカ・グランプリ。
名門バレエスクールの奨学金やバレエ団の入門を目指し、9歳から19歳の若者たち5000人が
世界中から応募する登竜門。
最終選考に残った6人の子供たちを追うドキュメンタリーです。
・アラン(11歳) イタリア在住 父は米軍軍医で片道2時間かけレッスンに通う。
・ミコ(12歳) 母は日本人。IT企業の経営者の父は彼女のレッスンのため会社を移転。
        バレエに打ち込むため学校へは行かず自宅学習。
・ジュールズ(10歳) ミコの弟。姉と共にレッスンに通うが、コンクール後バレエを止める。
・ジョアン(16歳) コロンビア出身。バレエの為に家族と離れアメリカに住む。
・ミケーラ (14歳) シエラレオネ出身。内戦で孤児となり4歳の時アメリカ人夫婦の養女になった。
・レベッカ(17歳) メリーランド在住の高校生。遊びで始めたバレエだがプロを目指している。
・ガヤ(11歳) イスラエル在住。アランに触発され練習に励む。
        
            


バレエで思い出すのは2000年の英国映画「リトル・ダンサー」。
14歳のジェイミー・ベルがエネルギッシュに踊る姿と家族愛のストーリーに感動しましたが、
「男ならボクシングを。バレエなんて女がするもんだ」と父親から強制され、
友人からも揶揄されるシーンがありました。
ドキュメンタリーの本作でも「学校ではからかわれるからバレエをやっていることは言わない」という
少年の発言から、世間一般の認識としてやはり華麗な衣装のバレエは女性的というイメージがあるって
ことですね。

最近ロシアのボリショイバレエ団で起きた芸術監督硫酸襲撃事件。
まるで少女漫画で読んだ筋書きそのもので、やっぱりバレエ界って恐ろしいわぁ~なんて
これまた刷り込まれたバレエのイメージに基づく反応ですね。
本作はそんなドロドロ話は全くなく、少年・少女たちがプロを目指して真摯に稽古の励む姿を
追っています。

バレエの華麗で華やかな舞台からは想像もつかない過酷なレッスン。
子供らしい遊びとは無縁のバレエ漬けの生活。
練習時間を増やすため学校にも行かず自宅学習をしている子もいます。
好きじゃないとできないなぁ。

10歳やそこらで将来の目標をこれほど明確に決め、一直線に突き進めるって…、
只々凄いなぁ~という思いと、何がそうさせるのかなぁ?という純粋な疑問。
自分の才能に早くに気付き、その才能を伸ばせる環境にあるということは非常に幸せなことですが。

家族や先生の期待を背負い、緊張の中舞台で踊るプレッシャー。
怪我をしても痛みに耐えながら年に1度の数分の舞台に全てを賭ける。
見ているこちらまでピリピリした空気が伝わってきました。

親のスタンスが洋の東西で違うんだなぁということもうかがえました。
西洋の母たちも、夜なべで衣装作りに励んだり、レッスンの送り迎えなど、バレエ中心の生活に変わりは
無いのですが、バレエそのものについてはコーチに一任し見守っているという印象をうけました。
一方、ミコとジュールズのお母さんは日本人。
一番ステージママ色が強く、コーチからも口を出すなとたしなめられるほど。
姉のミコは自らの意志でバレエの道を進んでいるけれど、弟のジュールズは姉に付いてやってみたら
結構できるので通っているという感じで、バレエ以外のことにも興味津々。
コーチも彼の子供らしい姿を認め、そんな姿を楽しんでいる感じ。
彼がバレエを止めると言った時のお母さんの狼狽えぶりと、立ち直りの速さと方向転換には
驚きました。やはり教育熱心なアジアの母は「タイガーママ」ですねぇ。
そんな母のプレッシャーに動じることなく笑っているジュールズはなかなかの大物です。

本作に登場する子供たちは、みな才能にあふれ、バレエが好きな子供たち。
放っておいても上手くなりたいと自ら厳しいレッスンを求める子供たちです。
「才能+好きであること」その上にたゆまぬ努力。
それでもユース・アメリカ・グランプリで受賞することは難しい。世界の層の厚さを感じました。

そんな中、昨年ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝したのは神奈川県の高校生、菅井円加さん
最近は各国から集まるコンクールで多くの日本人が決勝に残り入賞を果たしているそうで、
今年も石川県の男子高校生山本雅也さんが3位入賞です
スゴイね~!

厳しい練習とプレッシャーはバレエに限らず、
スポーツや音楽に勉学、何かを身に付ける過程には欠かせないもの。
性格も才能も、環境も個性も、一人一人違う子供たちの能力を伸ばすには、どうすればいいのでしょう?
まずは、好きなことから…かな?



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TVドラマ 「PAN AM」シーズン1を見終えて

2013-02-11 | TVドラマ
前回ご紹介したアメリカのTVドラマ「PAN AM」。
シーズン1を見終わりました。

本作も「TSUTAYAだけ!」でレンタル展開です。
TSUTAYAに行くようになって気が付いたのですが、「なかなかレンタル発売にならないなぁ~」と
思っていた作品は既に発売済みでTSUTAYAでしか借りれなかったんだということです。
そしてTSUTAYAで借りたDVDの予告編のほとんどが「TSUTSYAだけ!」と銘打たれているのです。
そして「他の店でレンタルしていたら違法なので連絡してください」というメッセージまで。
競合他社を潰す気かい?
そのうちTSUTAYAのない所では映画が観れなくなってしまうんじゃない? う~ん。
資本主義市場経済のもと、健全で公正な競争を維持するための独占禁止法に抵触しないのかしら?

これもあれも「TSUTAYAだけ!」といわれると反発したくなる私です。



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         P A N   A M

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 < ストーリー >
1963年のパンアメリカン航空が舞台。
ニューヨークを拠点に世界を飛び回る客室乗務員やパイロットたちのドラマを描く。

このドラマ、シーズン1で打ち切りになりました。
初回は非常に高い視聴者を獲得して好調なスタートを切ったのに、第8話までに半減したらしいんです。

最終話は1963年の大晦日、迎える1964年はどんな年になるのかーー?というところで終了。
各人の恋の行方も、スパイ活動もこれから波乱を迎えるってのに・・・残念です。

しかし、アメリカでは何故こんなに人気が落ちてしまったんでしょう?
同じく1960年代の広告代理店を舞台にしたTVドラマ「マッド・メン」は大人気で、5年を経て既にシーズン5が終了し、4月からシーズン6が始まるのに・・・。

ケネディ大統領を支援したり(ちょっとありえない展開かな)や暗殺で人々が落胆するシーン、
ロンドンでビートルズとニアミス、
未来のエネルギー原子力に反対する活動家の登場、
冷戦真っただ中にPAN AM初のモスクワ便就航、
CIAやMI6に協力するスチュワーデスの危機一髪シーンなどなど
63年という時代を意識したストーリーと当時のファッションはなかなか面白かったんだけどなぁ。

「マッド・メン」が男性社会を中心にアメリカの社会の変化を描くのに対し
「PAN AM」は女性の、スチュワーデスというちょっと特殊な華やかな社会を描いたことで
懐かしい時代というより時代遅れな感じに受けとめられたのかしら?

せめてもう1シーズン頑張って欲しかったです。

クリスティーナ・リッチ(上の写真左から2人目)ってこんなに華奢だったっけ?
それに、唯でさえ大きな目を話す度に目をむくので…ちょっと怖い。





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***** 見た 映画 *****

 2月 4日 「私の生きる肌」DVD アントニオ・ヴァンデラス主演 スペイン映画 
 
 2月 6日 「ファースト・ポジション」@ 横浜ジャック&ベティ

       「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」@TOHOシネマズMM横浜

 2月 7日 「PAN AM シーズン1⑦~⑩」DVD

 2月 8日 「PAN AM シーズン1⑪~⑭」DVD 

 2月10日 「エージェント・マロリー」DVD

卒業の朝  EMPEROR'S CLUB

2013-02-05 | 映画 さ行
前回の「塀の中のジュリアス・シーザー」でご紹介した2002年の「卒業の朝」。
非常にいい映画なので、ちゃんとアップしときます。
原作はアメリカの作家で医者のイーサン・ケイニンの短編小説『宮殿泥棒』。
舞台はアメリカ東部の私立男子校(英国流に言うならパブリックスクール)。

大阪の府立共学校(元は男子校でしたが)出身の私には、私立男子校の雰囲気というのは
想像の域を超えておりますが、昔から「チップス先生さようなら」や「いまを生きる」など
私立男子校を舞台にした映画は多いですね。


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      卒業の朝  Emperor’s  Club    2002

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 < ストーリー >
引退し余生を送っていた元教師ハンダートのもとに、大企業のトップとなった卒業生ベルから
同窓会の誘いが届く。25年ぶりに皆が集まった所で、ベルはかつて苦杯をなめた伝統行事のリマッチを
開催したいと申し出る。25年前、伝統行事「ジュリアス・シーザー・コンテスト」でベルはある事件を
起こし、ハンダートには忘れがたい苦い思い出が残っていた。
全寮制の名門男子校でローマ史を教えるハンダートは、歴史を通して生徒の人間形成を行おうと
情熱を注いでいた。素直で真面目な生徒達は切磋琢磨し彼の熱意に応えていたが、上院議員の
息子ベルの転入で状況は一変する。
何かとハンダートに反抗し、他の生徒にまで悪い影響を及ぼすようになベル。
そこで負けず嫌いの性格を刺激し勉学に向けようと、コンテスト出場を目指すよう励ますが、
ベルに甘い点数をつけてしまう。コンテストでベルは何をしたのか? リマッチでの結果は?


1976年のアメリカ東部男子私立高校「聖ベネディクト」を舞台に、
教育とは、教師とは、美徳・信念とは、正しく生きるとはなど多くのテーマを盛り込んだ秀作です。
学生時代「歴史」とは過去の出来事を覚える記憶教科で、考えたり議論するという意識は薄かった
のですが、本作のハンダート先生の授業を見て、認識を新たにしました。

この映画にはギリシャ・ローマの偉人たちの含蓄ある言葉が溢れています。
学校のモットー「始めの一歩が終わりを決める」に始まり「偉大なる先人の歩んだ道を歩め」
「世の中に貢献しない野心や征服には意味が無い。社会貢献がなければ勝者になっても
歴史に名前を残すことはできない」、
「重要なのはただ生きるのではなく、正しく生きるということ」
「歴史を学ばぬ者は永遠に子供である」 等々。
少々耳が痛いですが、生徒たちはギリシャ・ローマの古代史を通して、善と悪、潔く正しく生きること、
社会貢献などについて学んでいきます。

冒頭から生徒の心を掴み尊敬を集める教師は、一人の転校生の登場でその力量を試される。
どちらに軍配が上がるか他の生徒達が見守る中、生き詰まる様な二人のやりとり。
最大のテーマは二人の価値観の対立です。
過程に重きを置くか、結果を重視するか。
たとえ勝利することができなくても正しく、潔く生きることが大切だと説く教師と、
結果が総てで手段を選ばぬ生徒との戦いです。
シェークスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」で、シーザーと共にアントニウスを共に殺害するか
どうかで議論するブルータスとカシウス。
結果的にアントニウスに殺されるブルータスを「先に殺しておけば皇帝になれたのに、殺らなかったのは
腰抜けだからだ」と言い放つ生徒に、殺人という行為は同じでもシーザーの暗殺はローマ共和制の未来のためで、アントニウスの殺害はただの殺戮でしかないというくだりは、ソクラテスの「正しく生きる」
ということの意味を強く訴えている。
年に一度行なわれる「ジュリアス・シーザー」コンテストに出場するという目標に向かって
一度は真面目に勉強を始めた生徒に、教師としての喜びを感じ、成績に手心を加えてしまったことで
教師の苦悩が始まる。その上コンテストで驚きの手痛いしっぺ返しをくう。
カンニングを暴いておけば生徒の未来は変わっていたのか?
上院議員を父に持つ生徒の糾弾を校長に阻まれた教師。
クラスで正義を説く教師も、父を恐れて不正を見逃したと生徒は感じる。

後味の悪い複雑な思いを抱えたまま、25年の時が流れ、
件の生徒が各界で活躍している生徒たちと引退している教師を担ぎ出し、ある下心を持って
シーザーコンテストのリマッチを主催する。
ここでのあっと驚く結末は・・・映画を見てのお楽しみ~。

最後の対決での教師の言葉が胸を突く。
「誰しも、いずれ鏡に映る自分自身を見つめなければならない時が来る。自分の真の姿をだ。」
他人は騙せても自分を欺くことはできないというメッセージ。
一人の生徒を導くことはできなかったけれど、他の生徒達の姿に「希望」を見つけ、
再度教壇に立つことにする教師。

教育って・・・難しいねぇ。
いま話題の体罰指導じゃないけれど、教育の場で間違ったことを刷り込まれると
それを良しと思ってしまいますからね。

「いまを生きる」もそうでしたが、父と息子の葛藤もこの映画の鍵になっています。


英国やアメリカのエリートたちはこういう教育を受けているんでしょうか?
古代ギリシャやローマの英知は素晴らしい。
あの時代から2000数百年をへて、人間は果たして進歩しているのかしら?
日本人の倫理観の支えは儒教?石門心学?それとも武士道?


教師を演じるのはケヴィン・クライン。
生徒を演じたのは、今を時めく若手俳優、「イントゥ・ザ・ワイルド」のエミール・ハーシュ、
LOOPER」のポール・ダノ、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ、
TVドラマ「グッド・ワイフ」のジョシュ・チャールズら。
皆な主役・準主役級に成長したって、すごいね。



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 ***** 見た 映画・ドラマ *****

 2月 4日 「PAN AM Vol.2,3 エピソード④~⑥」DVD パン・アメリカン航空を舞台にしたドラマ

塀の中のジュリアス・シーザー

2013-02-03 | 映画 は行
シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」で思い出すのは2002年の「卒業の朝 The Emperor's Club」。
アメリカ東部の私立高校を舞台にケヴィン・クライン演じる教師が古代ローマの歴史を通して
生徒たちの人間形成に努めるなか、挫折を経験し、最後に希望を見出すというとても良い映画です。
生徒を演じたのが、今を時めく若手俳優、「イントゥ・ザ・ワイルド」のエミール・ハーシュ、
LOOPER」のポール・ダノ、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ、
TVドラマ「グッド・ワイフ」のジョシュ・チャールズら。

本作同様、生徒たちはローマ史の授業でトーガ(肩から掛ける白いローブのような衣装で、一人前の大人の証)を着てシェイクスピア劇「ジュリアス・シーザー」を演じ、劇を通して人間形成に必要な「人としての道」を学びます。
映画の中に登場する数々の先人の名言。どの言葉にも重みがあり、心にじわぁ~っと響きます。



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          塀 の 中 の シ ェ イ ク ス ピ ア

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この映画・・・ドキュメンタリーなんです・・・よね?
イタリア、ローマ郊外にあるレビッビア刑務所。毎年囚人たちが様々な演目を演じ、
所内の劇場で一般客を招いて上演する、その姿を追っています。
今年の演目はシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」。
オーディションを経て、選ばれた囚人たちの配役が決まります。
主役はシーザーではなく、シーザー暗殺を謀るブルータスとキャシアス。
彼らは終身刑を含む重警備棟の囚人たちです。
暇つぶしや遊びではなく、強制されたからでもなく、本公演に向け刑務所内のあちこちで、
監房で、廊下で、遊戯場で、踊り場で、熱の入った稽古が繰り広げられます。

「ジュリアス・シーザー」には、古代ローマの政治を舞台に、陰謀、友情、愛国、正義、嫉妬、裏切りなど、いつの時代にもある人間の性と葛藤が描かれています。

件の映画「卒業の朝」ではシーザー暗殺時にアント二ーも共に殺害しようと提案するキャシアスに
ブルータスがシーザー暗殺の大義を説く場面に付いて、教師と生徒が議論するシーンがあります。
ブルータス曰く「 Let us be sacrificers, but not butchers. 我々は生贄を捧げる者であり、
者であってはならない」と。「シーザー暗殺は共和国のためという大義があるが、アントニー殺害
は単なる私憤だ」というようなことでした。「殺害」という行為は同じでも、意味が違うという
今でいう「白熱教室」にいたく感動したのでした。

銀座テアトルでは映画評論家の方々の感想など紹介する掲示板あるのですが、
どなたも「囚人たちはイタリアという土地柄マフィアがらみの犯罪者も多く、演じるにあたって
陰謀や裏切りなどそれぞれの過去がオーバーラップして演じる役柄と同化し迫真の演技に
繋がる」というご意見が多かったようですが、マフィアならずともブルータスとキャシアスの
「正義」を巡る葛藤シーンは胸に響きます。

終演となり、舞台上に全キャストが集まり挨拶し、観客はスタンディング・オベイションで
彼らの演技を称えます。その後、観客が帰り、照明が消え、演じ終えた囚人たちはそれぞれの
監房へと帰り、鉄の扉はが閉められ、看守が鍵を締める。
祭りの後はなんとも物悲しい。


冒頭と最後の本公演シーンはカラー映像で、オーディションや稽古の日常は全てモノクロ映像です。
モノクロ映像が、次第に熱を帯びる彼らの稽古に迫力を与え、まるで古代ローマにいるかのような
不思議な感覚にとらわれました。
この人たち本当に素人なの?囚人なの?とその演技力に驚かされます。
実際、ブルータスを演じた方は減刑されて出所後俳優をなさっているというオチまでついてます。
キャシウスを演じた方も本を出版するなど、劇を演じたことは彼らの人生に大きな影響を
与えたようです。
「芸術を知って、ここが本当の牢獄になった」というキャシウス役の方の最後の台詞、
彼は終身刑なのです。

演じるにあたって彼らの出身各地の方言で台詞を言うという指導がなされているのですが
イタリア語のわからない私にはそこいらのニュアンスは伝わりませんが、イタリア人が観ると
もっと感動が大きいのかも?

「人生、ここにあり!」といい、イタリア映画はなかなかユニークで面白いです。



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アルバート氏の人生

2013-02-01 | 映画 あ行
関東地区では水曜日にレディースデイを設けている映画館が多いです。
先週までの半年間、水曜日が自由にならず、なかなか映画館に足を運べなかったのですが
やっとフリーになったので久々に有楽町まで行って、話題の映画を2本見てきました。
2作品とも、横浜では公開していないのです 

「アルバート氏の人生」@日比谷シャンテと「塀の中のジュリアス・シーザー」@銀座テアトルです。
どちらもぎっしり満席でした。
シャンテもTOHOシネマズグループになり、ネットでチケットが取れるのでギリギリに
滑り込んでも大丈夫。遠路はるばる(ったって1時間15分ほどですが)行くときには助かります。



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      ア ル バ ー ト 氏 の 人 生
                    ALBERT NOBBS

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 < ストーリー >
19世紀、アイルランドのダブリン。アルバート・ノッブスは、ホテルのレストランで
住み込みのウェイターとして真面目に働き、常連客や従業員からの信頼も厚かった。
身寄りなく、一人で生きていくために、若い頃から女であることを隠し男として働いてきた。
秘密を抱え、人との関わりを極力持たず、将来自立して店を持とうと、こつこつと貯金に
励んできた。ある日、ホテルに来たペンキ職人ヒューバート・ペイジと知り合い、
ヒューバートも女であることを隠し男として結婚までしていることを知り、自分も
ホテルで働くメイドのヘレンとの生活を夢見るようになる。しかし、ヘレンはボイラー職人として
働くジョーと恋仲になり、ジョーはアメリカに行く資金をアルバートからまきあげようと
ヘレンに持ちかける。そんな折、ダブリンでチフスが大流行する。

    
何とも切ない話です。
オースティンの小説「高慢と偏見」など知りましたが、昔の英国では上流階級でも
遺産相続できるのは男子のみ。女の子しかいない家では親族の男性が家を継ぎ、
家から追い出されてかねないと結婚相手探しに奔走する姿が描かれていて驚きました。
如何に女性の立場が弱く、頼りないものであったか。
ましてや、身寄りのない貧しい天涯孤独の若い女性が、一人で生きていくとなると、
その苛酷さは推して知るべし。
アルバートは女であることを捨て、男として厳しく孤独に生きてきた女性です。
秘密を知られることを恐れ、誰にも心を開かず、頼れるのはお金のみと、
倹しく実直に生きてきた女性です。

ヒューバートに出会うことがなければ、そのまま真面目に働き、お金を貯めて店を持ち、
一生モノトーンの人生をひっそりと送ったのではないでしょうか?

それはそれで凄いなぁ~とは思うけれど、小説や映画としてはつまらない。
この映画の面白みは、そんなアルバートがある出会いをきっかけに、
人として、女として、押し殺し続けた末に自分でも忘れてしまっていた感情に目覚め
一歩踏み出していくところです。
共に人生を歩むパートナーを求め、心乱し、狼狽え、不器用に関わろうとするところです。

映画を見ながら「なんて不器用なんだ~。あぁ、騙されちゃうよ~」とはらはら。
それまで全く感情を表さないお面のような顔だったのに、ヒューバートの結婚生活を知り、興味津々。
久しぶりにドレスを着た時の戸惑った顔や仕草。
ドレスのまま海岸を走り出す彼女は、抑えてきた感情を解放しやっと笑顔になるのです。

悲しい結果になったけれど、どちらが幸せだったんだろう?
孤独なモノトーンの人生か? はたまたヘレンとの結婚を夢見た人生か?
レズビアンというより、男性にひどい目にあわされたという過去もあるし、男として生きていく以上
パートナーは女性ということのように思えました。
とても切ないけれど、やっぱり生きる希望を思い描いた人生がよかったのかな?


アルバートを演じるのは「危険な情事」や「ダメージ」でめっちゃ怖~い女のイメージが強い
グレン・クロースです。彼女が30年越しの情熱を傾け、主演・脚本・製作を務めた
渾身の一作だそうです。
昨年のアカデミー主演女優賞にノミネートされるも、残念ながら「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のメリル・ストリープに敗れましたが、甲乙つけがたい内に秘めた迫真の演技です。
   
  
ヘレン役は「ジェーン・エア」や「永遠の僕たち」のミア・ワシコウスカ。
可憐でかわいい。

    
クロース同様、女でありながら男を装う役どころのジャネット・マクティアも、
背が高いし、タバコを吸う仕草、話し方など男性のようでした。でも…グラマーでビックリ。
     

ヘレンをたぶらかすジョーを演じるのは「キック・アス」のアーロン・ジョンソン。
いやぁ~、この人ホントにハンサムだわぁ。整ったお顔立ち。
今年公開の「アンナ・カレーニナ」では貴族の将校ヴロンスキー伯爵役って、
将校姿はめっちゃカッコイイんでしょうね。楽しみ~。
  




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 ***** 見た 映画 *****

 1月30日 「アルバート氏の人生」 @TOHOシネマズシャンテ

       「塀の中のジュリアス・シーザー」 @銀座テアトル