さておき。
ソーターさんことマーク・ストロングと、ハリウッド御用達英国産悪役俳優の一人であるチャールズ・ダンスが声優として共演するという、のろさんにとってはたいへんおいしい企画であるところのアニメーション作品『JUSTIN AND THE KNIGHTS OF VALOUR』のトレーラーが公開されたわけです。
JUSTIN AND THE KNIGHTS OF VALOUR - Official Teaser Trailer
『The Long Firm』の極悪非道かつナイーヴな悪党ハリー・スタークス、『リボルバー』の情緒不安定かつ心優しい殺し屋ソーター、悪人だらけの『ロックンローラ』の良心にして犯罪組織の有能なNo.2であるアーチーおじさん、『ワールド・オブ・ライズ』の善とも悪とも呼びがたいヨルダン諜報局長ハ二・サラーム、そして人情無用のスパイ稼業に従事しつつも、人間味を捨てきれず、またそれを隠しきれない『裏切りのサーカス』のジム・プリドーなどなど、複雑で繊細で多面的な役柄こそ、マーク・ストロングの俳優としての力量が存分に発揮される所でございましょう。
極悪街道を脇目も振らず突き進む『スターダスト』のセプティマス王子や『Kick Ass』のダミーコ親分、そしてオモシロ系悪人な『オリバー・ツイスト』のトビーなどもワタクシは大好きですけれどね。
英国ではこれまた来年に公開予定の『Welcome To The Punch』、監督・脚本は御歳36歳のイーラン・クリーヴィーというかた。前作『Sifty』はなかなか好評であったようですが、これが初監督作品ではあり、監督としての技量はまだ未知数と申せましょう。トレーラーを見る限りでは、冷たい色合いのスタイリッシュな映像にはそれなりに期待できそうでございます。アクションシーンにおけるスローモーションの多様は、ちと引っかかる所ではございますがね。
公開が待たれる『Welcome to the Punch』や刑事ドラマ『Blood』でも悪役ではなさそうですし、ドラマ『The Long Firm』に始まり『シリアナ』『トリスタン+ イゾルデ』『サンシャイン2057』『スターダスト』『バビロンAD』『ヴィクトリア女王 世紀の愛』『シャーロック・ホームズ』『キックアス』『ロビン・フッド』『グリーン・ランタン』『ジョン・カーター』『ザ・ガード』と6年に渡る怒濤の悪役道からもそろそろ降りられるかに見えるソーターさんではございます。しかしファッション雑誌が悪役俳優特集をするとなれば、この人を外すという手はございません。
インタヴューは一部を動画で見ることができます。こちらで。左側にある点線矢印をクリックすると質問の項目が切り替わります。とりわけ、前から三番目の「役から抜け出すのは大変じゃありませんか?」への受け答えはマーク・ストロング好きなら必見のステキ動画でございます。「悪役を演じて帰ったからって、家で奥さんや子供たちを怖がらせるようなことはないよ」、「よく言われるんだけど、僕が初めて悪人(The Long Firmのハリー)を演じることになった時、僕なんかじゃ、あの役が持つ悪の深みを表現できやしないだろう、とみんな思ったらしい。僕は”いい人すぎる”から、だってさ。実際、いい人でありたいと思うよ」とおっしゃる時の表情なんて、実によろしうございますね。
いいのです。
何度でも申しましょう、ギャングや殺し屋や冷血漢や卑劣漢やおっかない独裁者の役どころに引っ張りだこである一方、実際は謙虚で人当たりのいいナイスガイとしてよく知られているソーターさんでございますもの。それはもう、テレビ、映画、小説、漫画などの創作作品をテーマとした用語集サイト「TV Tropes」も”super nice and humble(謙虚だし超いい人)”と太鼓判を押すほどのナイスっぷりでございます。 Mark Strong - Television Tropes & Idioms
あえてリンクはいたしませんけれども、youtubeには約75分の作品全編がupされております。
”Standing Army - The American Empire”で検索するとヒットします。日本語字幕はございませんが、比較的平易な英語で聞き取りやすいです。ナレーション部分は英語字幕つき。沖縄も舞台となっておりますので、日本語で語られている箇所も少なからずございます。
ところが。
ワタクシが少なからずショックを受けたことには、現在アメリカで放送されている「セサミストリート」にはカーミットが登場しないというのでございます。何でも、ディズニーがジム・ヘンソン・カンパニーから「マペット・ショー」およびそこに登場するマペットたちを買収したため、セサミの制作会社であるCTW(Children's Television Workshop)は、今やディズニーキャラとなったカーミットを番組に登場させることができないのだとか。
一言で言ってしまうと「ブリューゲルの絵の中に入って行く作品」なわけでございますが、単に描かれている通りの風景の中にカメラが入って行くということではございません。むしろ一枚の絵に託された16世紀フランドルの人々の精神と、それを見つめる画家の精神の中へと分け入って行き、ひいては近世ヨーロッパという枠組みを超えて、受苦のイメージ(像)-----侮辱されるイエスや十字架の道行き、悲しみの聖母、処刑される殉教者たちといったイメージ-----を信仰の重要な一部として保持してきた人間の心性を覗き込む映画でございます。
原題は『The Mill and The Cross(風車と十字架)』。こんな地味なタイトルではお客が入るまいという配給会社の心配は分かります。しかし何か楽しく心地よいアニメ的作品を連想させる『ブリューゲルの動く絵』という邦題や「不思議の世界に迷い込む」といったコピーを繰り出して来る予告編は、本作の主題からするといささか表面的すぎ、ミスリードのもとではないかと。副題くらいにしておけばよかったのに。実際、観賞後の場内では「もっと楽しい映画かと思ってたのにね...」という声も聞かれました。