大晦日の午後になってからおもむろに大掃除を始めるのろ。
ワンルームマンション暮らしが向いている人間だとつくづく思います。
それはさておき
振り返れば3.11以前にあったことが遥か昔の出来事のように思える年の瀬でございます。『白いリボン』も『ハーブ&ドロシー』も『ウフィツィ美術館自画像コレクション展』も、鑑賞したのが今年のことであったとは信じられません。ともあれ1年締めくくりということで、鑑賞はしたもののブログで紹介できなかった映画を思い出せるかぎり以下に並べてみようかと。
『100000年後の安全』
反原発を声高に訴える映画ではなく、「原発を利用するということは、こういう問題と向き合うということです」と淡々と述べて行く作品。しかしその「問題」の時間的・空間的規模たるや、あまりにも遠大で目がくらみます。しかも廃棄物処理という問題ただ一点に絞ってさえ、このとほうもなさ。
『赤い靴』デジタルリマスター版
ヒロインが愛とキャリアの間で引き裂かれるのに対して、男たちがその点については全く葛藤しないらしいのが腹立たしいことではありました。
『バンド・ワゴン』
ミュージカル映画の傑作に数えられる作品ではあり、アステアの代表作でもありますが、ワタクシは『イースター・パレード』や『パリの恋人』、古い所では『トップ・ハット』あたりの方が好きなのです。
『ヤコブへの手紙』
和解の物語。「赦し」の物語と表現することもできますが、赦す者と赦される者、という二者間一方通行の関係ではないと思うのですよ。
『光のほうへ』
本当は、悪というものは存在せず、ただ「そうなってしまったもの」があるばかりなのです。本当は、全て。
犯罪や暴力それ自体は醜悪なものとして描かれるものの、そこへ至らざるをえなかった背景を丁寧に描き、しかも当事者を悲劇のヒーロー的に持ち上げることはしない。『ヤコブ~』もそうですが、「罪」とその当事者の描き方にうならされる作品でした。
『ヤバい経済学』
軽いノリかと思いきやテーマは非常に重たいものだったりして、その落差がちょっとしんどかった。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
もうひたすら、快作。こんなに面白くて、しかも現代アートについて深く考えさせられる映画というのは他に類を見ないのではないかと。バンクシーをはじめストリート・アーティストたちの戦術や舞台裏も間近に見られて、一粒で何度もおいしい作品。
『エッセンシャル・キリング』
生きる、ということは、生き延びようとし続ける、ということと同義でございます。
『メタルヘッド』
面白くないわけではないのですが、語り方次第でもっと痛快な作品にもなりえたよなと思うのです。そうは言っても「ばあちゃんと散歩」の所で不覚にも泣いてしまいました。
『クリスマスのその夜に』
ベント・ハーメル監督ってけっこうビターな所をビターなままに出して来ますよね。ビターはビター、スウィートはスウィートで別のものよ、という感じがいたします。人間のダメさに対するまなざし、その絶妙な距離感がなんとも。
『パレルモ・シューティング』
今年の見納め作品。去年の見納め作品であった『ソフィアの夜明け』と色々似ているな、と思ったら、去年の『ソフィア~』の記事でブルガリア版『ベルリン 天使の詩』みたいだ、と書いておりました。
死は内在ではない、しかし生の必須条件ではあります。そういう意味で、デニス・ホッパー演じる死神が繰り返す「死は自らの中にある」という言葉は正しいのでございましょう。
「ここに出口はない。私が唯一の出口だ」
「誕生を司る者は喜ばれるが、私は嫌われる。同じことなのに」
以下はDVD鑑賞。
『カラヴァッジオ』『エドワードII』『ヴィトゲンシュタイン』『テンペスト』
はい、デレク・ジャーマン祭りでございます。毎週1本のペースで見たらしまいに疲れました。
『オルランド』
はい、ティルダ・スウィントン繋がりで。あとで気付きましたがサンディ・パウエル繋がりでもありました。
特典のドキュメンタリーも含め、いろいろと面白かったです。
『TATARI』
心霊ホラーは大嫌いなワタクシでも全く問題なく楽しめました。要するに、ぜんぜん怖くないということですね。ホラー映画としてはどうなんだって所ではありますが、作品としてはなかなか面白かったですよ。いやほんと。何で嫌いなジャンルの映画をわざわざ見たのかって。ヴィンセント・プライス風ジェフリー・ラッシュを見てやろうと思って。
『ヒックとドラゴン』
やっと観ました。傑作すぎて何と言っていいのかわかりません。
↓とりあえずご参考までに。
超映画批評『ヒックとドラゴン』97点(100点満点中)
そもそも「友達のドラゴン」というものに弱く、10代前半の愛読書のひとつが『恐竜の飼い方教えます』であったワタクシではございます。そうした個人的な好みを差し引いたとしても、語りといい、メッセージ性といい、アニメーションといい、本当に素晴らしい作品でございます。
もしうまく文章がまとまったら、また別の機会に語らせていただこうかと。
そうそう、そういえば『英国王のスピーチ』についてきちんとした感想を書いておりませんでした。この作品については色々考えたのですが、思い入れが強過ぎてうまくまとめられないのですよ。ひとつ驚いたのは「淡々としている」という感想をよく見かけたり、耳にしたりすることでございました。冒頭からジョージに感情移入しまくって観ていた身としては、ちっとも淡々どころではなかったのですが。
とまあこんな感じでございます。
だらだら書いているうちに今年も残す所3時間をきりました。
では、富める人も貧しき人もよいお年を。
ワンルームマンション暮らしが向いている人間だとつくづく思います。
それはさておき
振り返れば3.11以前にあったことが遥か昔の出来事のように思える年の瀬でございます。『白いリボン』も『ハーブ&ドロシー』も『ウフィツィ美術館自画像コレクション展』も、鑑賞したのが今年のことであったとは信じられません。ともあれ1年締めくくりということで、鑑賞はしたもののブログで紹介できなかった映画を思い出せるかぎり以下に並べてみようかと。
『100000年後の安全』
反原発を声高に訴える映画ではなく、「原発を利用するということは、こういう問題と向き合うということです」と淡々と述べて行く作品。しかしその「問題」の時間的・空間的規模たるや、あまりにも遠大で目がくらみます。しかも廃棄物処理という問題ただ一点に絞ってさえ、このとほうもなさ。
『赤い靴』デジタルリマスター版
ヒロインが愛とキャリアの間で引き裂かれるのに対して、男たちがその点については全く葛藤しないらしいのが腹立たしいことではありました。
『バンド・ワゴン』
ミュージカル映画の傑作に数えられる作品ではあり、アステアの代表作でもありますが、ワタクシは『イースター・パレード』や『パリの恋人』、古い所では『トップ・ハット』あたりの方が好きなのです。
『ヤコブへの手紙』
和解の物語。「赦し」の物語と表現することもできますが、赦す者と赦される者、という二者間一方通行の関係ではないと思うのですよ。
『光のほうへ』
本当は、悪というものは存在せず、ただ「そうなってしまったもの」があるばかりなのです。本当は、全て。
犯罪や暴力それ自体は醜悪なものとして描かれるものの、そこへ至らざるをえなかった背景を丁寧に描き、しかも当事者を悲劇のヒーロー的に持ち上げることはしない。『ヤコブ~』もそうですが、「罪」とその当事者の描き方にうならされる作品でした。
『ヤバい経済学』
軽いノリかと思いきやテーマは非常に重たいものだったりして、その落差がちょっとしんどかった。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
もうひたすら、快作。こんなに面白くて、しかも現代アートについて深く考えさせられる映画というのは他に類を見ないのではないかと。バンクシーをはじめストリート・アーティストたちの戦術や舞台裏も間近に見られて、一粒で何度もおいしい作品。
『エッセンシャル・キリング』
生きる、ということは、生き延びようとし続ける、ということと同義でございます。
『メタルヘッド』
面白くないわけではないのですが、語り方次第でもっと痛快な作品にもなりえたよなと思うのです。そうは言っても「ばあちゃんと散歩」の所で不覚にも泣いてしまいました。
『クリスマスのその夜に』
ベント・ハーメル監督ってけっこうビターな所をビターなままに出して来ますよね。ビターはビター、スウィートはスウィートで別のものよ、という感じがいたします。人間のダメさに対するまなざし、その絶妙な距離感がなんとも。
『パレルモ・シューティング』
今年の見納め作品。去年の見納め作品であった『ソフィアの夜明け』と色々似ているな、と思ったら、去年の『ソフィア~』の記事でブルガリア版『ベルリン 天使の詩』みたいだ、と書いておりました。
死は内在ではない、しかし生の必須条件ではあります。そういう意味で、デニス・ホッパー演じる死神が繰り返す「死は自らの中にある」という言葉は正しいのでございましょう。
「ここに出口はない。私が唯一の出口だ」
「誕生を司る者は喜ばれるが、私は嫌われる。同じことなのに」
以下はDVD鑑賞。
『カラヴァッジオ』『エドワードII』『ヴィトゲンシュタイン』『テンペスト』
はい、デレク・ジャーマン祭りでございます。毎週1本のペースで見たらしまいに疲れました。
『オルランド』
はい、ティルダ・スウィントン繋がりで。あとで気付きましたがサンディ・パウエル繋がりでもありました。
特典のドキュメンタリーも含め、いろいろと面白かったです。
『TATARI』
心霊ホラーは大嫌いなワタクシでも全く問題なく楽しめました。要するに、ぜんぜん怖くないということですね。ホラー映画としてはどうなんだって所ではありますが、作品としてはなかなか面白かったですよ。いやほんと。何で嫌いなジャンルの映画をわざわざ見たのかって。ヴィンセント・プライス風ジェフリー・ラッシュを見てやろうと思って。
『ヒックとドラゴン』
やっと観ました。傑作すぎて何と言っていいのかわかりません。
↓とりあえずご参考までに。
超映画批評『ヒックとドラゴン』97点(100点満点中)
そもそも「友達のドラゴン」というものに弱く、10代前半の愛読書のひとつが『恐竜の飼い方教えます』であったワタクシではございます。そうした個人的な好みを差し引いたとしても、語りといい、メッセージ性といい、アニメーションといい、本当に素晴らしい作品でございます。
もしうまく文章がまとまったら、また別の機会に語らせていただこうかと。
そうそう、そういえば『英国王のスピーチ』についてきちんとした感想を書いておりませんでした。この作品については色々考えたのですが、思い入れが強過ぎてうまくまとめられないのですよ。ひとつ驚いたのは「淡々としている」という感想をよく見かけたり、耳にしたりすることでございました。冒頭からジョージに感情移入しまくって観ていた身としては、ちっとも淡々どころではなかったのですが。
とまあこんな感じでございます。
だらだら書いているうちに今年も残す所3時間をきりました。
では、富める人も貧しき人もよいお年を。
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