読書な日々

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『タイフーン』

2011年01月28日 | 映画
『タイフーン』(韓国映画、2006年)

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アミューズソフトエンタテインメント

ケーブルテレビでやっていた。チャン・ドンゴンという俳優は、なんかのCMに出ていたが、どうも好きになれない俳優だったけれど、この映画での渾身の演技を見て、考えを変えた。あんなしょうもないCMに出て、イメージを悪くしたのは、かわいそうだなと思う。こんなすごい役者なのに。

話は、脱北者家族の一人であったチャン・ドンゴン演じるシン(チェ・ミョンシン)が、脱北したときに、韓国が彼らの受け入れを拒否したために、中国によって北朝鮮に連れ戻され、一緒に脱北した一族全員が殺され、シンと姉だけが命からがら逃げたが、もちろん逃げ延びた中国でも子どもだった二人は想像を絶するような辛い日々を耐えてきたことから、亡命を拒否した韓国にたいする恨みを募らせたシンが、海賊として手に入れたアメリカの衛生誘導装置とひきかえに、核汚染廃棄物を手に入れ、台風の暴風域でこれをばらまいて、韓国民を恐怖に落とし入れようとするのを察知した、特殊訓練を受けた海軍大尉カン・セジョンがこれを阻止しようとするという話。

いわば南北分断の悲劇を描いた映画ということになるのだが、金日成を暗殺するために韓国政府によって秘密裏に組織された暗殺団が、韓国政府の北朝鮮政策の変更によって、これまた秘密裏に消されるという、いわば韓国政府の政策変更によって起きる悲劇を描いた映画『シルミド』と同じ系列ということだ。

シンを捕まえるために姉がおとりにされて二人は再会するのだが、そこで回想として描かれる脱北失敗と生き延びた二人の過酷な日々のすごさがチャン・ドンゴン演じるシンがこれほどの悪人になったいわれを示すものとして提示されていて、まったく説得力があるものになっている。そういうものを生き延びてきた人間の屈折した雰囲気をチャン・ドンゴンがじつに見事に演じている。

とても日本人俳優には演じられないよな、と思いつつ見ていた。


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