読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「悩み多きペニスの生涯と仕事」

2006年07月02日 | 自然科学系
ボー・コールサート『悩み多きペニスの生涯と仕事』(草思社、2000年)

私が自分のペニスというものにそれなりの関心を持ち出したのはいつ頃だろうか? たぶん高校生になってからだろう。ずいぶんの奥手だったわけだ。中学生の頃には夢精が始まった。そのことに驚きはしたが、だからといってなんかすごく悪いことをしたというような罪悪感はあまりなかったし、もちろんよくあるように、夢精の時にはエッチな夢を見たりするものだが、そのことで自分の頭がおかしくなったんじゃないかなどとは思わなかった。今から思えば、ありえないような気がするが、山間地で育った奥手でうぶな中学生としては、そんなものだったのかもしれない。当時、両親は自営業の関係で、車で一時間くらいのところにある大きな町に住んでいて、私は祖父母に育てられていたからか、性的なことを刺激するようなものは生活の周りには何もなく、環境の違いは昨今の中学生に比べたら雲泥の差だったのだろう。そんな私が高校生になって両親が住んでいた大きな町の高校に通うようになると、さすがにあれこれ情報も入ってくるし、女性に対する興味も出てくる。というわけでどこからの情報か分からないが、ペニスが皮かむりの状態である包茎というものは、衛生上も、性関係上もよくないらしいというようなことを知り、自分のペニスを見て、これはまずいと思ったのか、一生懸命に正常といわれる状態にしようとして、そうなったはいいけど、包皮が腫れあがってしまい、びっくりして赤チン(水銀が入っている関係かなんかで真っ赤な消毒薬を、昔はこう呼んでいた)を塗ったりしたのが、自分のペニスと向かい合ったはじめてのことだったと思う。それ以来のお付き合いということだから、本当に長い付き合いだ。

最近では、8年くらい前から、夜中に何度も尿意が起こるようになり、しかも尿の量が少なくなって、じつに不快な経験をするようになったので、泌尿器科にかかるようになった。原因はわからないが、前立腺炎だろうということで、前立腺のレントゲンまでとってもらったのだが、特別な異常はないという結果で、しばらく薬を飲んで、多少改善した。だが、夜中に必ず一回はトイレに行くという状態はなくならず、以前のように朝までぐっすりということがなくなり、睡眠も浅くなり、熟睡間がなくなってしまった。原因もなにもさっぱり分からない。最初はあれこれ悪あがきをしていたが、しかたないと受けいれざるをえず、最近はさすがに夜中のトイレもそれほど苦痛ではなくなったが、当初は、それまでが本当に熟睡できていたので、苦痛で苦痛でしかたなかった。熟睡できない、朝早く目が覚める、残尿感がある、などなど、こうやって年をとっていくのかと思うと、寂しくなり時がある。

一月くらい原因不明の便秘になったときも思ったのだが、年をとるということは、枯れるようなものではなくて、不快感に慣れていくことなんだと思う。昨日まで出来ていたことが出来なくなる。これほど不快なことはない。見えるところの体ならなんとか鍛え様もあるが、見えないところはどうやって鍛えたらいいのか。食事に気をつける、そういった部位を鍛えるような運動をする、というように、年をとると手間ひまかけてやらなければならないことが多くなる。

この本には、若者の性の悩みに属するような話から、中年になって性生活や排尿の悩みを抱えるようになり、前立腺炎とか前立腺ガンなどが増えてくる世代の話へと、泌尿器を専門とする医者が友人の質問に答えるという設定で書かれているので、出来るだけ専門用語は使わないように配慮されており、読みやすい。ペニスの一生というのは大げさだけど、上に書いたようなことを思いながら読んだ一冊でした。ペニス君、本当にご苦労さん。

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