読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「99%の誘拐」

2006年06月18日 | 作家ア行
岡嶋二人『99%の誘拐』(徳間書店、1988年)

この二人の小説は社会性うんぬんがまったくない分、推理小説としての醍醐味には不足がないので、夢中になって読むのにちょうどいい。仕事への往復と仕事の合間、そして今朝早くから目が覚めてしまったので残りを読んでしまった。前回読んだ小説もそうだったけど、発表の年を見ていつも驚いてしまう。これも88年出版だ。88年といえば、まだまだインターネットなんてのもごく一部の人たちのもので、パソコン通信なんて言っていた時代だろう。私はたぶん85年くらいからワープロを使いだしたから、まだ88年というのはワープロ専用機時代だったと思う。それから富士通のパソコンを使いだしたのが93年くらいからか?ウィンドウズ3.1を使いだして、それからインターネットをはじめた。そのころはまだインターネットを始めるのに簡単な接続ソフトがウィンドウズそのものについていなくて雑誌の付録のCDからコピーして、その発売元のオーストラリアの会社にお金を送って...というような面倒なことをしてインターネットを始めたのだった。それからウィンドウズ95の時代になって、97年くらいにそれを買ってから、ずいぶん接続が楽になったなと思ったものだ。つまりその10年も前にこんなインターネットではないがコンピュータを電話回線でつないで遠隔操作をするという技術を利用した犯罪を思いつくのだから、ほんとうにこの二人はたいしたものだと思う。

あらすじを簡単にまとめておくと、昭和43年東京の府中で5歳の子どもが誘拐され、身代金5000万円を要求される。子ども生駒慎吾の父親の洋一郎は、IC技術で優秀な製品を作るイコマ電子工業の社長であった。アメリカの親会社であるコープランド社が製品トラブルの頻発で日本市場から撤退することになり、イコマ電子工業としてはこの窮地を乗り切るために社長のイコマ洋一郎は私財をかき集めて5000万円をつくり、これで新工場を建設して新製品を発売しようと考えていた。その5000万円が身代金として要求された。じつはこの誘拐事件は生駒洋一郎が信じていた間宮が、イコマ電子工業を吸収合併したいと考えていた大手カメラメーカーのリカードと組んでおこしたものだった。犯人の指示に従って、洋一郎と間宮、鷲尾の三人は5000万円を金の延べ棒に変えて、神戸から九州行きのフェリーにのって、香川県の沖合いで海中に投じたのだった。その後、慎吾が無事返され、金塊をいれてあったとおぼしきかばんを積んだ小舟が岡山県の海岸に乗り捨てられてあるのが発見されたが、犯人はわからずじまいだった。

その20年後の昭和63年に、リカードの社長の孫である中学生の葛原謙介が誘拐され、10億年の身代金を要求される。犯人はコンピュータ合成の女の声を使って電話してきて、10億円をダイヤの原石に変えて、生駒慎吾に持たせるように指示してきた。犯人の指示に従って、生駒慎吾は蔵王に行き、スキー服に着替えて、最も高いリフトから滑りおり、もう一度リフトに乗ったところで座席に置くように指示されていたダイヤの入れ物が急なリフト停止のために落ちてしまう。入れ物は見つかったが、中身はなくなっていた。もちろん慎吾も持ち物を検査されたがダイヤはもっていない。こうして謙介は解放され、犯人は分からず、迷宮入りになった。後日、間宮は慎吾を神戸発のフェリーに誘う。そこで間宮は慎吾が犯人だったにちがいないという推理を披露する。

あー面白かった、でもそれだけ。

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