読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「<私>の愛国心」

2006年06月01日 | 評論
香山リカ『<私>の愛国心』(ちくま新書、2004年)

初めてこの名前を新聞紙上かなんかで見たとき、「香山リカ? リカちゃん人形の、リカちゃん? こいつ人を馬鹿にしてんのか?」と思ったし、その黒ぶちめがねの風貌とあいまって「こんなふざけたやろうが精神科医なんて日本もおしまいだな」なんてことを考えたのを思い出す。最近、改憲だとか教育基本法の改定だとかで世間がかまびすしいし、朝日新聞なんかで「私と愛国心」というようなテーマで爆笑問題の太田だとか室井佑月だとかがあれこれ書いていたりするので、この人がどんなことを書いているのかちょっと読んでやろうというような気持ちで読んだのだけど、おみそれしました。

精神科医なので、精神病理学で扱われる精神の病を現代人の社会的な病と重ねて、最近の日本人の急激な右傾化・個人の内面に閉じこもる傾向・そして対外的には攻撃的な態度にでる症状を解離的という精神疾患としてとらえて、それがどのようにして最近急激に進行しているのかを説明しているし、アメリカという力の論理で動いている唯一の超大国についても境界例という精神疾患に陥っており、これに対するにはリミットセッティングという対応の仕方をしないと、日米関係は泥沼のようになり、とくにアメリカからの要求はどんどんエスカレートするばかりだという話のもつ説得力はじつに見事だと言うほかないと、感心しました。

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