読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「連鎖」

2006年06月13日 | 作家サ行
真保裕一『連鎖』(講談社、1991年)

真保裕一は前から関心があったのだが、どの作品から読んだらいいか迷っていたのだけど、ちょうど手にしたこの作品が第37回江戸川乱歩賞の受賞作ということだったので、これが彼の出発点ならちょうどいいかなと思って読むことにした。現代の松本清張とでもいえそうな、社会派の内容なのだが、私には話が込み入りすぎていて、最後には訳が分からなくなったというのが、正直な感想である。ジャーナリストの竹脇を偽装自殺で殺そうとしたのは、一体だれだったのか、そしてその理由は何だったのか、けっきょく訳が分からなくなった。

主人公の羽川が竹脇の自殺の真相を探るうちに、わざと放射能や農薬の基準値以上の脱脂粉乳や牛肉などを輸入させ、それを横流ししていたり、麻薬とかCPUなどの輸出禁止項目にひっかかるようなものを持ち込んだり持ち出したりするための偽装であるのではというところまで行っておいて、じつは竹脇が三角輸入を摘発するための共同調査を行なっていた桑田が検査ミスをしたことを隠すため、また羽川の上司の高木課長が私怨を晴らすためのものだったという、あまり面白くもない落ちになっている。

15年も前の話だけど、ここで取り上げられていること自体は、まだまだ新しい問題なのではないだろうか。たとえば北朝鮮への偽装輸出なんかは、最近のテレビでもちょこちょこ触れられているようだし。作品の8割方のところまでは、社会派的で、すごい作品だなと思いながら読んでいたけれど、最後の最後で、検査ミスだの私怨だのという話になって、ちょっとがっかりでした。もちろんこれだけのものを組み立てる力というものは、それだけでも並大抵のものではないので、すごいことなんだけど、最後まで社会派を貫いてほしかったなというのが、正直な所である。でも、枚数規定とかあるみたいだし、それ以降の作品なら、ちょっと期待が持てそうかなと思う。

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