読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「愛がなんだ」

2006年06月03日 | 作家カ行
角田光代『愛がなんだ』(メディアファクトリー、2003年)

テルちゃんこと山田テルコとマモちゃんこと田中守の、というかテルちゃんからマモちゃんへの一方的な愛の物語ってとこかな。仕事は真面目にやらないのに、好きな男のためなら、勤務時間内でもトイレにこもって電話したり化粧したり、先に先に気を使って、買い物したり、ご飯作ってあげたりして、せっかく正規社員になったのに1年ばかりでくびになり、それでもマモちゃんからの使いっぱしりの電話に即対応できるようにと、新しい就職先を捜すのをやめ、アルバイトのままでいるテルちゃん。最後には彼との関係を途切れさせないために、彼の友人と肉体関係さえももってもいいと思うようになるんだから、本当にマモちゃんが好きで好きでたまらないのかな。これって世紀の大恋愛ってことになるんじゃないの?ただ片想いだけど。

男としちゃ、こんな便利な女はいないってくらい、便利なんだろうけど、マモちゃんがそれでも、すみれさんを好きになって、これ以上「山田さん」に甘えちゃいけないと思って、もうお付き合いをするのはやめようと言い出すくらいなのだから、マモちゃんもまともな男なのだろうね。こんな便利な女がいたら、ウハウハだなんてことを考えるのは、私だけか。

私としては葉子さんのようなはっきりした人間のグループに属しているほうだろうな。テルちゃんのようなわけの分からない人間には、やっぱ葉子さんのように、「あんた、適当に利用されてんのが、分かんないの!」とかきついこと言いそうだ。

それにしてもこれは約一年にわたって連載されたものらしいけど、人物造形にまったく破綻をきたさずにこれだけのものを書けるのだから、この人もすごいなと、読み終えて感心しきり。

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