仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

幽霊済度

2014年02月20日 | 親鸞聖人
今井正晴先生より『親鸞の伝承と史実―関東に伝わる親鸞聖人像』(法蔵館刊)を賜りました。2月初旬に築地本願寺で開催された僧侶研修会にご講師として来られ、筑波大学を退官されてから、いろいろな研修会でお名前に接するこの頃です。

1つには今まであまり研究されてこなかった関東での親鸞聖人の足跡研究、それと歴史学的視点での示唆が、際立っているからでしょう。

上記の本も、1つの史実でも歴史学者が見ると違った見方で、その解釈の仕方が新鮮です。

「幽霊済度」で無量寿寺に伝わる幽霊済度の物語が示され、次のように解釈されておられます。

 鳥栖の無量寿寺には古い幽霊の図があります。いかにも恐ろしげな女性の幽霊です。その女性の姿は、腰のあたりから細くなり、ついにはとがってなくなってしまいます。足がないのです。幽霊に足がないのは、日本では江戸時代の中期から始まります。つまり、足がない幽霊の図は、汀戸時代中期以降に描かれたということになります。また江戸時代中期には、全国的に幽霊の恐怖が説かれるようになりました。宗教界では、人々の不安を和らげるために、それに対応しなければなりませんでした。浄土真宗でも親鸞に登場していただき、親鸞は幽霊に負けないから安心するようにという話を作ったのでしょう。合わせて、幽霊も救ってあげるという話を作りました。無量寿寺の幽霊済度の伝承は、このような社会の動きの中で成立したものと推定されます。(以上)

この「幽霊済度」の絵が、何を語っているのか、その解釈の材料を持ち合わせていない私が見れば、「へー」で終わってしまうところですが、歴史的な知見が、幽霊済度に中にある、その絵を画かせた背景を読み取ってくれ、絵に深みを与えてくれます。
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