仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

「村が消える」中での法座活動

2010年04月22日 | 都市開教
25年前、NHK番組「寺が消える」で、私の父(島根県の寺の住職でもあった)がテレビ出演したことがある。それが10年前から「寺が消える」から「村が消える」状態となった。そうした過疎化の進んだ地域では真宗寺院の撤退はやむを得ないだろう。

しかし踏みとどまれるなら、みんながアイデアとお金を出し合って、地域の法座活動を支えるべきだろう。

1つの法座を支える先行的な優良事業として『ミツトヨ』の存在がある。創業者は、沼田恵範氏で、会社の利益の1割を仏教伝道のために寄付している。

沼田恵範氏は、明治30 年広島県の寺の三男として生まれ、28 歳で私と同じ北米開教使として渡米し、UCLAバークレー校を卒業。北米で仏教布教のため在米日本人や知日派米国人から資金を集めて「ザ・パシフィック・ワールド」という英文の雑誌を刊行したが、2年後に資金難から発行停止。師は、「どんなにいい仕事でも、理想だけではうまくいかない。経済的な基盤が無ければダメだ。自分でお金を儲けて、人に頼らず自分の力でやろう!」と決心して、当時100%輸入に頼っていた精密測定機器・マイクロメーターの国産化に専念して、『三豊製作所』を設立しました。その利益で仏教伝道協会が運営されている。

一の法座(寺)を支えるために一般事業や社会福祉事業を行う。こうした手法を、ひとりの人のアイデアではなく、組織的に行う必要がある。それが私の過疎化対策の一プランだ。

10年ほど前に、ある地域に2000坪の土地があった。その土地利用についてある業者に社会福祉事業の可能性を研究してもらった。しばらくして14ページの数種類の社会福祉事業を行った場合の、収支データーや事業の可能性が示されて書類が送られてきた。たとえばこんな具合です。

土地利用について
  1.経営母体
     経営の母体が宗教団体であることを考慮すれば、福祉関連の事業の中でも一般
    の企業が行う事業では、利益の追求が目的であるために好ましくない。
     社会福祉法人が行う福祉事業では、利益でなく福祉そのものが目的であるから
    今回は社会福祉法人のみが行える事業を中心とする。
  2.自己資金
     自己資金はゼロで、土地担保の借入によるものとする。現実的に自己資金ゼロ
    で行える事業は無いが、今回は福祉関連の補助金事業を中心とする。
  3、福祉関連補助金事業
    1.特別養護老人ホーム
    2.介護老人保健施設
    3.ケアハウス
    4.知的障害者更生施設
  4.福祉関連外事業
    1.緩和ケア病棟
    2.児童養護施設
    3.保育所
  5.一般企業の行う事業
    1.有料老人ホーム
    2.ケア付きマンション

それぞれの自己資金なしの場合の、地域の需要を踏まえた経営データーがしめされてあった。

1つの法座を支えるために事業を行うという考え方は、宗門の意識の中にはいまだ存在していない。もちろん寺院の余禄や事業として行われているところはある。それほど寺院経営が主流だということだ。

そのもっとも小規模なものが家庭法座だろう。ひとりの会社員が余暇を使って毎月法座を開く。この形態をどこまで展開できるか。会社で毎月法座を開いている企業もある。法座活動こそお寺の生命線であるという意識、そうした意識での活動が主流となってこそ真宗の復活は現実味を帯びてくるようにも思われる。

都市開教の布教所は、ひとりの参拝があるかないかという不安の中で法座を開催してきた。法座に参拝があるという前提のもとに、少ないから法座の開催を中止するということは、阿弥陀如来の働きを甘く見ているような気がする。

特にその傾向は宗派の直轄寺院である別院に見られる。
コメント
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