FoZZtoneのニュー・ミニアルバム「LOVE」を聴く。
前作のフルアルバムからおよそ一年経った後の新作ですけど、前作が大作で傑作だったのに対し
今回のミニアルバムは割とサクッと聴けてしっかり美味しい、みたいな
そんなフットワークの軽い作品になってて
それぞれの楽曲のバランス感覚も良くこれはこれで気軽に聴ける一つの傑作、という感じ
フルアルバムでも傑作しか発表してないようなバンドですけど
ミニを作るのもまた上手いなあ・・・って事で
その楽曲のクオリティの高さや演奏技術の益々の向上、新境地への挑戦も忘れずにこなす抜けのなさ
今回も今回で隅から隅まで楽しめるアルバムになっているのは間違いないと思います。
こういう上質のロックンロールがもっと売れてくれればいいんですけど
ある種器用貧乏っていうか
本当に大衆向けの楽曲を一切作ってないところが実に職人気質だなあとも感じるので
その点ではその「譲らなさ」こそがFoZZtoneがFoZZtoneである所以なのかもしれないですね。
何にせよ、正直知名度と実力が完全不一致のバンドの一つなので
フットワークの軽い新作で少しでも増えてくれれば。
その為にミニって形態なんだろうし、
レコーディングOKのツアーをやるのも少しでも存在を知って欲しいからなんでしょうねえ。
でも、知られる価値のある音楽だとは絶対的に感じるし心から好きなバンドなので
ほぼシングルレベルのこの新譜を聴いて何かしら受け取ってくれたら、と。
そんな訳で、もう全曲レビューしちゃいます!
1.LOVE
【時間は僕を救いはしない】
心と身体は別物ってよく言うけれど、自分が落ち込んだ時にも身体は生きる事を求めてる
前に進む事を求めてるって事実もある訳で
それ考えると本当は身体によって自分が生かされてるのでは、自分自身に救われてるって考えも出来るし
そんなグダグダ言って全然前に進まない自分を引っ張って来てくれてる存在とも言えるから
そこで留まってても、燻ってても仕方がない
本当に自分自身を愛せるような毎日にしていかないと
お返しが出来ないんじゃないか、っていう斬新な視点からのビッグ・アンセム
じわじわとビートを刻むアンサンブルもシンガロング推奨って感じのサビも
どれもこれもが馴染みやすく、言葉もまた伝わりやすい。この作品を代表する一曲であると同時に
本当に自分自身を救えるのは自分自身だけっていうメッセージとも取れる楽曲です。
ここまで何だかんだ言いつつも生き抜けてきた
その道程を認めてくれるような、そんな一曲でもあると思います。
2.TOUGH!!!
【君のエゴを守りたいと思うんだよ】
これはキラーチューンであると同時に新境地ですね!
サビまでは割と軽快なテンポで格好良く進んでいくんですけど、
サビになると全部裏声で歌われてるんですね。
裏声で、しかもアグレッシブに歌ってるって事で
FoZZtoneの楽曲としてはとても新しいし、それでいてきっちり踊れちゃう所もまた凄い。
その美声と美メロが勢いのあるサウンドに絡まって化学反応を起こしている感じがツボな一曲で
理屈ではなく裏声で歌う必然性もメロディから感じられるのもまたベターな一曲
少数派に対する救いのようなフレーズも個人的には勇気付けられますね。
3.GAME
なんとこれまた珍しいインスト曲!真ん中に配置っていうのがまた空気読んでていいです。
いい箸休めになるのと同時に、この曲の存在がこの作品のフットワークを軽くしている一要因なのは
きっと間違いない、それに何気に単体で聴いても普通に格好良く
ツインギターのぶつかり合い含め、実は聴き所満載な楽曲に仕上がってるなあ、と。ヒリヒリしてます。
ゲームをイメージして作ったからこのタイトルなんだそうですね。確かに、それっぽくもある。
4.Tomorrow Never Knows
【絵にかいた餅も俺は喰う】
これまた形容し難い一曲ですね(笑)。
タイトルからするとポップな一曲なのかな~って感じなんですけど
むしろその逆でめちゃめちゃひねくれたロックナンバーに仕上がっております。
高速ラップに唸るギター、爆裂するサビの臨場感含めて
正にメロコアとかパンクとか、ミクスチャーとかその辺の音楽ファンに聴かせても通用するんじゃないか、って
そんな風に思えるくらいに勢い重視で且つ技巧も光ってる、反骨精神だらけの一曲になっています。
めまぐるしく回転するアンサンブルとそこに激しく噛み付くボーカルとの調和が絶品ですね。
5.blow by blow
【ステップを踏むんだdarling】
前の曲が「BRUTUS」「4D」辺りの楽曲を好きなファン向けだとしたら、
この曲は「マーブルクランチ」とか「チワワ」とか「レインメイカー」とかその辺かなあ。
しっとりとしていてファンクやソウルっぽい雰囲気を漂わせつつ
美メロでもって強く聴かせるタイプの楽曲で
その艶やかな感触がいつ聴いてもクセになるような一曲、滲むように響くナンバーです。
でも完全にバラッドでもないので、ゆったりと揺れながら聴く事も出来るという。
汗臭い部分よりもオシャレな部分が際立った一曲で
前の曲とのふり幅も凄い事になってるんですけど、それを平気で一緒にしても違和感がゼロなのも
FoZZtoneの個性だし、強みでもありますよね。何にでも理由や理屈を探していないで
時には心の赴くままに動こう、っていう
この作品のラストにも相応しいんじゃってテーマの楽曲で
一曲目にも繋がる要素があったり
何気に一貫性があるって思えるのもまた素敵ですね。聴き手の背中を自然に押すような作品になりました。
FoZZtoneの持ち味を並べて突き詰めて、それを分かりやすくパッケージした本作
本当にキャッチーで新しい感触の曲しか入ってないのと同時に
それらが新境地だとも往々にして感じられて
その得意なポイントに新しい血を注いで新鮮なものにしてるセンスがファンとしては面白かったんですが
新規さんにもきっとこの音楽の情熱やメッセージは伝わるはず、とも思えて。
マシンガンラップからスロウダンスのテイスト、美メロ美声のロックやアンセムソング
加えてインストまで入っているという
全5曲ながら様々な表情を堪能出来る、そんな彩り豊かな作品になったんじゃないか、と思います。
しばらくはヘビロテしそうな気が満々の一作になりましたね。傑作です!