超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ほんとにあった!霊媒先生 11巻/松本ひで吉

2012-04-05 23:30:02 | 漫画(新作)





松本ひで吉「ほんとにあった!霊媒先生」11巻読了。





ギャグ漫画が10巻以上越えると得てして勢いがなくなったりするのも常套ですけど
この漫画の場合は10巻以上越えても普通に面白い、どころか
常に絶頂みたいなクオリティの高さ
大人から子供まで楽しめる普遍性だったり、ギャグとシリアスのバランスの良さだったり
単純に良い漫画としてのポテンシャルがべらぼうに高いと言いますか
正直もっと認知されて欲しい、と思うくらいは本当に出来の良いギャグ作品として成り立ってる秀作だと思う。
その上で女の子の可愛さが際立ってきたり、動物漫画としての側面も大きく見せたりと
様々な観点から楽しんで読むことが出来る
一冊の中での展開の振れ幅が非常に大きいので
その点でも一辺倒ではなく退屈せずに読むことが出来る
ある種のギャグ漫画の手本の一つだと個人的には感じていて。
それこそ、もっとちゃんとした環境でお金を掛けてメディアミックスしたなら
人気作になれそうなくらいのポテンシャルは感じるんですけどね。
この11巻を読んで
つくづく今の知ってる人は知ってるみたいなポジションが惜しいなあ、って思えてしまった
それくらいは余裕で面白い新刊って事ですね。まだまだ、前線で頑張れるだけの力あるなあ、と。

久々に直球の良い話エピソードも入ってた訳ですが
基本に忠実で、良い意味で話を捻らず、王道の良さをきちんと真面目に描いた印象のお話
その上話の軸になるのがチナツって事で
彼女も普通に涙流せるくらいの感受性はあったのね?っていう
そんな書き方は失礼ですけど(笑)。
でもああいう子供も楽しめるような分かりやすい話ならば少年性の強いチナツが主役であるべきだとは
個人的にも思うし、好きなキャラの違った一面が垣間見れたようで実直に嬉しかったですね。
人の死は、忘れ去られた時である、と。
だとしたら自分も他人の中で何度も何度も死んでるのかもしれないけど
たまに思い出すとき、心に描くような出来事があった時に
何度でも生き返れる
その点ではある意味永遠っていう概念も存在するといえばするのかな?って気もするような。
そういうシンプルなようでいて深いお話でもあった狛犬少年の話
アキラ先輩の猫の話に続いて個人的にはヒット
基本ひねくれギャグが中心の漫画だけにたまにストレートなのやられるとグッと来ざるを得ない、っていうね。

ツナマヨ星のトリオのネタも思った以上に良かった。
これも基本的な流れはベタなんですけど
普段のグダグダっぷりを散々眺めてるからこそ、珍しく良い話風に仕上がってる3人の様子って言うのは
相応に新鮮で、それまでの過程を含めて割と意外性もあって良かったのではないかな、と。
そもそもあの3人メインって特に興味もないかなあ・・・って思いながら
そこまで前のめりに読んでなかったにも関わらず
最終的には面白かった、って
そんな印象で終われるネームの立て方や笑える小ネタでテンポ良く読ませる基本的な技術、
作家としての地力を感じさせるような漫画力はどんなネタで描いても健在なんだなあ、と
何となしに感銘を受けたりもしたエピソード
その他にも個人的に好きなキャラであるエマさんの強プッシュだったり、
最終的には卑屈な人間になってるっていう展開だったり(笑)。
防災訓練ではまさかの長良先生のミステイクオチだったりと総じて満足出来るネタばかりで
ここ数冊の中でも特に出来の良い新刊に仕上がったんじゃないかなー、と。
割と女子キャラにフォーカスが集中してた印象もあったけど
この巻は霊媒ネタ、ねこネタ、女子キャラネタのバランスや組み込み方が上手だったので
一つの原点回帰とも表現出来るような、実に霊媒先生らしい質の高さが味わえる一冊でした。

その分4コマの含有量は少なくなってますけど(笑)。
まあ基本作品って変化していくのが常ですしそこは仕方ないのかな、と。
その代わり新田エリちゃんの出番が要所要所で輝いてるのが好印象でもあった新刊。
非常にらしさの詰まった良い出来でしたね。





最後にこの漫画屈指の名セリフ、

「いなくなったじゃなくて どこにでもいるようになったんだね」

なんだかすげー泣けるセリフです。
個人的に。
色々思い出しちゃって・・・・。