超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

死ぬまで一生愛されてると思ってたよ/クリープハイプ

2012-04-18 23:00:28 | 音楽






クリープハイプの新譜「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」を聴く。





インパクトのあるタイトルで、これでメジャーデビューですけど
思ってた以上に変わらない・・・っていうかいきなり変わってもそりゃ困りますけど(笑)。
ただ、以前よりもまとまりが出てきたっていうかテーマ性が一貫してるなというか。
よりストレートに、エモーショナルに突き抜けた印象の作品で
若手っぽいエネルギッシュな感じと
若手らしからぬ楽曲に於ける背徳感による奥深さとが合わさって
正にクリープハイプならではの世界が生まれてる作品だなあと如実に感じました。

その世界っていうのは・・・ある種普遍的なんですよね。
過度に悲しみを歌ってもないけど
過度に幸せを推してもいない
その中間の報われてんだか報われないんだか、ありふれてるキツさって言葉で表せばいいのか
人によっちゃ「頑張れよ」で済まされる部分を拾い上げて歌にしてる感覚があって
それ即ち弱者の為の歌って言うか、一つのアンセムみたいな印象があって
当たり前にある別れだったり、挫折だったり、苦しみだったり
そんな当たり前の悲しみを一つ一つ歌にして届けてもらってる感覚が聴いてて強く感じられて
結構前のめりにグイグイ押して行くタイプのボーカルなんですけど
その芯はすっごく繊細で、でも畜生って気持ちで溢れてて。
歌詞の中にも【よくある話で笑っちゃうよな】ってフレーズで表現されてますけど
そんな日常に於けるペーソスだったり、やりきれなさだったりを
声にして歌にしてサウンドに乗っけて
全力で昇華しようとしている、
そういうナイーヴな部分とそれに伴う力強さの調和が個性的だと思える
みっともなくも最高に格好の良いロック・アルバムですね。何でも簡単に
口で手で簡単に表現出来ちゃうこのご時世だからこそ、このリアルさは凄く説得力を生んでるんだと思う。

タイトルは割とインパクト重視ながら、どの曲もポップで勢いがあってカラフルで
ポンポン聴けてスムーズに入ってくるような入り口の広さがあって
フラカンをオシャレにしたようなセンスだったり、
大好きな彼女の為に全部懸けて全部賭けて過ごしてる様は
別にその曲の主人公って訳でもないのにグッと心を掴まれて揺さぶられる、そんな威力があって。
シンプルさも往々にして垣間見られる歌詞なんですけど
色を付けるのが上手いっていうか
「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」の歌い方からして後ろに哀愁が籠ってる感じでして
そんな歌に於ける説得力だとか真に迫る感じが非常に強いんですよね。
だから、どんなありふれたテーマでも純粋に聴ける。
楽曲を聴く度にその曲の背景が浮かんできたり
全曲通して報われないその生き様だったり、しみったれたマイライフだったりが如実に伝わって来て
そんな冴えない生活から抜け出そうと必死に頑張ってる光景がよく浮かんでくる、
そういう一つのドキュメントとしても聴ける出来にもなってて。
勿論これが真実かどうかなんて全く知らないですけど
例え全部が真実とは違ってても全部が真実だと思える説得力がどの曲にも宿ってる
ありふれてるけど、だからこそ切ない、ある種の日常のサウンドトラック。
肉薄するような叫びも、
ポップに突き抜けるメロディの快感も
一曲一曲の完成度とテーマ性の高さ分かりやすさも含めて
正に日本語ロックとして申し分のない出来のファースト・アルバムになってるかな、と。
Theピーズとかロストインタイム好きな人でも多分好きになれる音楽だと思う。
こういう哀愁を高らかに歌えるロックってやっぱり好きだな。
それでしか救われない部分だってありますから。





個人的に特に好きなのは「愛の標識」、「オレンジ」「身の蓋もない水槽」「ABCDC」ですね。
基本誰かを想って必死にギター掻き鳴らしてる曲が多いだけに
攻撃的な主張を含む「身の蓋もない水槽」はめちゃめちゃいいアクセントになってると思います。
そして、「オレンジ」ってタイトルの曲は本当に名曲が多いなとも再認識、ですね。




ランクヘッド「ツアー2012『青に染まる白』」@千葉LOOK 12.3.15

2012-04-18 04:11:55 | ライブレポ





日曜日、ランクヘッドのツアー初日に参加して来ました!





傑作アルバム「青に染まる白」を引っさげての新ツアー、全10本。
その幕開けを飾るのが私の地元、千葉って事で。同時にこの日は小高さんの誕生日でもあって
しかも彼実は誕生したのは千葉県千葉市だったらしく
色々な意味でメモリアルな空気が漂ってた、そんな記念碑的なライブでした。
ちなみにこの前日にもシネマスタッフがメジャーデビューを発表したメモリアルな公演に行ってるので
二日連続でメモリアルライブ、しかも両方その場で知ったって事で
なんか人生って予測不可能で面白いな、と(笑)。
勿論
ライブ自体もはっきり言って抜群の出来、出色のライブって形容出来るくらいには本調子のライブで
今年一月に観に行った渋谷クアトロのワンマンを大幅に上回る内容にビックリ!
どんどんタフに、どんどん繊細に。正に今が最高潮だと告げんばかりの鉄板な内容に
心も身体もホックホクに温まってこの日の帰路に付いたのでした。
初日なのにファイナルのような達成感があって最高でしたね。

☆尚、初日なのでセトリのネタバレは注意です。では以下。







いつも以上に人がいっぱいのLOOK、通常よりもキャパ多目に設定したらしく
それもまたソールドアウトって事で最初から嬉しそうなメンバー
アルバム一曲目の「濃藍」から飛ばしつつ
次の名曲「十六夜の月の道」では見事なツインギターの熱量で以って早くも会場の空気を温めて
初期の傑作「体温」では早くも天井に手をつけたりハンドマイクで熱唱したりと
いきなりのロックモードにビックリしつつも楽しさは相応に
不思議と涙腺すら揺さぶられたりして
今まで聴いた「体温」の中でももしかして一番良く響いた「体温」だったかも・・・と。序盤から感動。

客席から「誕生日おめでとー!」の言葉が入って嬉しそうに笑う小高さん、
でも勢いは殺さずに「無限光」で観客を一気に爆上げ、
やっぱりこの曲すげー盛り上がりますね。
その次が個人的に大好きな「泡沫」!音源にも負けないくらいのおどろおどろしい情念を噴射して
千葉LOOKの空気が歪むくらいにその強烈な情念が滲んで伝わって来て最高でした。
こういう堕ちて行く感覚が私的にたまらないな、と。
 旧譜からは異様に山下壮のノリノリの弾きっぷりが印象に残った「誰かじゃなくて」、
そこまでアゲる曲でもないのに思った以上に盛り上がった感じで
その次の「潮騒」もまたアルバム以上にダンサブル、揺れながら聴ける感じにブラッシュアップされてて
演奏した本人も「ここまで盛り上がるとは・・・(笑」と驚くぐらいの化けっぷりでした。
それに加えて、メロディーもまた良質なんだなーと元音源の良さも再確認。
シングル候補でもあったらしいですね。MCによると。


強靭なビートとボーカルで以って小ハコを灼熱の楽園に染めていくランクヘッド、
「群青の降る夜」で物語性を感じさせる歌を響かせたあと
しっとりと聴かせる様に「夜行バス」、
その次に「眠れない夜のこと」と旧譜の楽曲のチョイスに関しても関連性が感じられる
繋がりが感じられる選曲になってるのがまた粋だなあと思いつつ、
【目が覚めなければいいな 独りぼっちの朝が来なくてすむように】なんていう
そんな的確に心のツボを突くフレーズにもまたカタルシスを貰いながら、
人間の青さの表現に個人的にはシンパシーも感じれたり。
十分に沁みるステージングでしたね。

その次に「みゆき」って選曲もまたグッと来ちゃって・・・!
多分この曲がこの日のハイライトでしょう。
その情景すら浮かぶような表現力に圧倒されたと同時に、小高さんの歌の熱量も半端なくて
ここだけ別世界っていうか、心象世界の中で聴いてるような感覚にもなれて。
有り体に言えばトリップってやつですか?
なんにせよ、これまた一生忘れられないなと実直に思えた、そこまでの出来と感じられた「みゆき」
その後のMCから本人にとっても達成感のある演奏と歌になったようで
それもまた何よりで。

歌のいい部分って、やっぱり光景が浮かぶというか、過度にドラマチックっていうか
そこから受け取るものも、学ぶものも多いし、多分みんなが思ってる以上に沢山の情報だとか
カタルシスやシンパシーが詰まってるツールなのは疑いようのない事実なんですね。
それをもっと知って欲しいし、
誰かに伝わって欲しいから
今も自分はこうやってタイピングしてるんだろうな・・・って。
そんな風に自分の原点の一つを再確認させてもらえるくらいに情熱的な良さを感じた「みゆき」、
この日見たオレンジ色の光を自分も多分忘れないんだろうな、と思います。絶品でした。


自分の源泉を確認させるようなアンセム「果てしなく白に近づきたい青」を全力で演奏し
個人的にも新アルバムの中で特に強く響く「未来は今ここに」の爽快感とペーソスを味わって
「冷たい部屋」のエッヂの効いた迫力のアンサンブルに舌鼓
その後の「ぐるぐる」で何度も執拗に歌われる「そこに意味なんてなかった」ってフレーズの破壊力!
興奮した小高さんの本気のダイブも観れたり、
饒舌さを醸し出すアバンギャルドなアジテーションも見事だったし
そもそもこの曲を生で聴くのも久々だったしで、
もう本当に最高潮の盛り上がりで!
こういう時、小ハコの本当の良さってやつが分かりますね。
くちゃくちゃになって感じる楽しさっていうのか・・・眼前で興奮を感じれる喜び!
日ごろのイライラが全部吹き飛ぶくらいの熱量にあっぱれ、でした。

ダンスナンバー「シンドローム」で更に一体感を演出した後
「もう一つみんなにこの曲で返したい」という発言を挟んで「明日」を演奏。
当初聴いた時よりもグッとバンド演奏の深みが増してて。
声も実直に響いて。
また、「明るい日」に向けて頑張ろうって気力も沸いた本編ラストのステージングでした。


アンコールでは、千葉LOOK恒例だという「山下壮のテーマ」で小高さん山下さんがダイブを決めつつ(笑)。
これまた初期の沁みる名曲の一つ「ハイライト」を響かせ
アンセム「何も怖くなどなかった」を響かせ、
最後まで衰えない熱量で以って会場の観客を一切飽きさせないアクトは続いてて
その集中力はいつも以上のものを感じたんですけど。
今回のツアー、相当に出来の良い予感がプンプン。
Wアンコールの「カナリヤボックス」のキラキラした音像の快感含めて
最後の最後まできっちり楽しめたような、そんな最高のツアー初日でした。
最初から最後まですっごく輝いてたよ。
時折涙出そうになった。
ありがとう。







セトリ
1.濃藍
2.十六夜の月の道
3.体温
4.無限光
5.泡沫
6.誰かじゃなくて
7.潮騒
8.群青の降る夜
9.夜行バス
10.眠れない夜のこと
11.みゆき
12.果てしなく白に近づきたい青
13.未来は今ここに
14.冷たい部屋
15.ぐるぐる
16.シンドローム
17.明日
encore
18.ハイライト
19.何も怖くなどなかった
20.山下壮のテーマ
encore2
21.カナリヤボックス





今のランクヘッドのライブっていうのは盛り上がりたい人々の要望に応えつつ、
「眠れない夜のこと」みたいな繊細なナンバーもちゃんと盛り込んでるって事で
ますますより良いライブバンドに近づいて来た感覚があって。
タフでありながらちゃんと弱さも残ってる
そんなバランス感覚が何より秀逸だなあ、と個人的には感じられました。
ファンならば確実に満足せざるを得ない内容で、
その圧倒的な熱量に圧倒されつつ、でもきちんと飲み込めるくらいの隙なんかもあったりして
正に今が一つのピークポイントである事は認めざるを得ないような・・・
100人が見たら100人が最高って言ってくれるような、
そういう万感の出来だと感じれたライブでしたね。

ただ、一つの悩みとして初日でここまで完璧なステージングだと
その後が大丈夫なのかっていうか
これ以上の盛り上がり体感出来るのかなって不安もあったりする(笑)。
とはいえ、そんな杞憂など軽がると乗り越えていってくれるのが今のランクヘッドでもあるので
この後の流れも相当に期待、って感じで。このツアーが終わった後は一年ソロを経てまた戻ってくるそうで。
それもあって通常以上に熱くてサービス多目に感じられたライブだったのかも。
何にせよ、ランクヘッドは今が熱い!って事で。
これは誰がどう思おうと、私の絶対的な真実なので。
取り敢えず生で聴いた「みゆき」のカタルシスは想像を遥かに超えるものだった、っていうのは是非伝えたいですね。
新アルバムの全曲レビューもまた再び頑張ります!