アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

コレカラフーズのアイスクリーム

2022-01-26 09:46:55 | たべもの

  豊田市旭地区にある廃校を利用した施設つくラッセル。そのつくラッセルの元理科室で、昨年春ころから、アイスクリームの製造が始まりました。

  製造を始めたのはコレカラフーズの水澤孝司さん。彼は豊田市山間地域に移住してから、ケイタリングをはじめ、イベントでもよくご一緒していました。数年前には、豊田市街地に店を開き、おいしくて手ごろな値段の定食をいただけたので、何度かたずねたことがあります。個人宅の講座に参加した時は、講座の内容もさることながら、彼の持ってくるベジカレーも楽しみでした。

  もっぱら料理専門の方と思っていた彼がアイスクリームを始めたと知り、かなり驚きました。でも、きっと彼のことだから、飛び切りおいしいに違いないと思って、手に入るのを心待ちにしていました。

  やっと手に入れたのは、夏過ぎころ。旭のてくてく農園の卵を使った彼のアイス最中を、足助のパレットで販売していることを知り、購入しました。卵の味がしっかりしていて、甘さはほどよく、しかも脇役にとどまらずに十分おいしく食べられたのが最中の皮。もち米でできています。

  2回目に手に入れたのは、昨秋の耕ライフマルシェ。こいけやクリエイトの蜂蜜をたっぷり使ったアイスキャンディーをいただきました。

 フェイスブックで、彼は次々に新作アイスを発表。クリ、梨、チョコレート、ミカン、イチゴ・・・・。なかでも栗と梨はぜひとも食べたいと思っていたら、やはりパレットでも発売開始と知り、手に入れました。アイスクリームそのものをあまり食べない私ですが、きらいではない。そそられて買うのはたいていハーゲンダッツなのですが、1個は到底食べられません。甘すぎるのです。

  コレカラのアイスクリームは甘さが私好み。甜菜糖を使っているから、甘さが白砂糖のようにストレートに来ないこともありがたい。

  いただいた栗アイスクリームは、栗がたっぷり。栗きんとんとマロンクリームの中間のような味があって、和菓子と洋菓子のいいとこどりした食べ物になっていました。

  そんなこんなで、材料にも作り方にも興味津々のコレカラフーズ。昨年暮れに、見学する機会に恵まれました。

  理科室がアイスクリーム製造所。ピッタリの場所、という感じです。

   静かで空気のきれいな元お山の学校で、水澤さんにお話をお聞きしました。

   「使っている果物類はほぼ、友人や友人を介して知った人たちが大事に育てたものばかり。彼らと彼らの産品を紹介したくて、アイスクリームという食べ物に託した、そんな気持ちでつくっています」

   その果物のおいしさを生かすためには、糖度をどれくらいにするかに腐心なさったこととおもいます。ジェラートの糖度はだいたい40度くらいだそうですが、彼のものは26~28度。かなり低めです。それだけに果物の味がよくわかる。

   「果物はただそれだけで食べるとしっかり味があるのに、ジェラートやアイスにすると、どうも味が生かされないものが多い。ミカンも梨も、全体量の8割入っています」

  梨の場合は、シャリシャリした食感を生かしたくて水分量を調節。元の食材の味を生かす苦労というのは、私も多少は経験していますが、生でほぼ直接的に味わうのが身上のアイスクリームやジェラートは、また違う苦労があるようです。

  ところで、わたしがこちらのアイスクリームを食べてみたいと思った理由の一つは、山地酪農の牛乳を使っているから。

  「ミルクが苦手で、一般の牛乳は使う気がしない。だけど、良質のグラスフェッドの牛乳なら使ってみたいと思って選びました」

   乳脂肪分の少ない山地酪農の牛乳だからこそ、他の具材との相性の良さも際立つのでしょう。

   ところで、安定剤を使って形を保つのが普通のアイスクリーム。かわりに水澤さんはこんにゃく粉を使っています。それで無添加アイスクリームができるというわけです。入っているのは、くだもの、甜菜糖、こんにゃく粉。あるいは、牛乳、こんにゃく粉、甜菜糖。いたってシンプルです。

   菓子類の製造には興味のなかった彼が、氷菓とはいえ、甘いお菓子の製造に踏み切ろうと決意したのは、一昨年の暮れ。

  「お世話になっている方の家で勧められるままに酒を飲んだのです。その方は癌で奥さんが入院なさった直後。かなり参っていた時なので、慰めたいという気持ちもあって、相当飲んだんです。完全に酔っぱらい、地べたで寝てしまった。目覚めたときに突然やろう!と決意し、その翌々日、保健所へ行き、製造に関する許可を申請するための条件などを聞いたのです」

  「アイスクリームはポップなものだけど、嫌いない人はまずいない。誰の口にもあう。幼児にもお年寄りにも。そしてさまざまな材料が使える。可能性がとても広いな、という直感がひらめいたのです」

    こちらは、開発中の甘酒アイス。原材料は、甘酒とレモンと蜂蜜だけ。

「旭では、牛乳の採れる牧場はありません。でも、田んぼなら有り余るほどあります。米はおいしいのに安い。これは、甘酒を煮詰めて糖度をあげてコクと甘みを出し、空気を入れて柔らかくしています」

   甘酒なら体にもいい。一口いただきました。甘酒独特の臭みは消えていて、口中に嫌な甘みは残りません。食感もいい。なんだか体がふわっと満足しているような、そういうおいしさを感じました。

 「今はレモンで試作していますが、ゆくゆくは旭の柚子でつくりたい。完成したら、全部この辺りだけで採れた原材料を使えることになります」

  甘酒の素である米も蜂蜜も旭産。地元産の柚子が加われば、正真正銘の身土不二、地産地消です。素晴らしい試みです。

  「田舎に移住して田舎暮らしの良さを満喫し、一方で都会でもちょっとずつ商売して、そこそこ満足していたのですが、どうも心底では暮らしと仕事が切り離されているような、田舎暮らしの良さを自分だけでただ満足しているだけのような、物足りなさを感じていました。アイスクリーム作りを思い立ち、さまざまな食材を求めて生産者たちとかかわったり、その食材をより生かすために工夫しているうちに、しだいに、「あ、自分の仕事と生活と社会がなんだかつながったぞ!」と思えるようになりました」

  米を作り続けることは耕作放棄地の解消になり、養蜂は生態系の回復につながります。水澤さんは、春から米作も始める予定だとか。ますます地に足のついた活動が期待されます。

  「いろんな生産者とのコラボを試みたい」という彼、アンティマキの焼き菓子との組合わせも考えてくださっています。当日もって行った焼き菓子のうち、特にオートミールとナッツやシード、レーズンの入ったザクザククッキーに、山地酪農ミルクのアイスクリームがよく合いました。どちらも負けずに主張しつつ、相手を生かす、そういう味わいになっていました。

  どういう形で販売までこぎつけられるか未定ですが、楽しい試みに参加させてもらえるのは、うれしいことです。


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