オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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「三共」についての備忘録(3) 三共遊園設備のAM機(後半)

2023年03月05日 21時05分59秒 | メーカー・関連企業

今回は、前回に引き続き三共遊園設備の名で発表されているゲーム機の後半です。繰り返しになりますが、これで三共遊園設備の製品を網羅しているわけではない点にはご留意ください何かご存じのことがございましたら、コメント欄にてお知らせいただけますようお願いいたします。

【6】ベースボール(1969年以前)

ベースボールのフライヤー。

70年代初頭くらいまでの日本では、フリッパーが付かない、比較的簡易なピンボール機がたくさん作られており、これもその一つです。手持ちの資料から見当をつけてしらみつぶしに調べたところ、「’69遊戯機械名鑑」にこの機械が掲載されていました。

’69遊戯機械名鑑に記載されている三共遊園設備のベースボール。フライヤーとはアートワークが異なる。

ただ、同書には「児童遊園設備」社による同名の製品も掲載されています。大阪万博のエキスポランドに設置されたゲーム機リストの中にもやはり「ベースボール」の名が見えますが、これがどちらを指しているのかはわかりません。やはり製品名は一意に特定できるものであってほしいです。

こちらは同じく’69遊戯機械名鑑より、児童遊園設備製のベースボール。ゲーム性やバックグラスの得点表示が三共遊園設備のものとよく似ているが、どちらが先に作られたかは不明。

【7】ボクシング(時期不明)

ボクシングのフライヤー。筐体に描かれているボクサーの絵が「ミニボクシング」のボクサー像と同じように見えるが、どちらが先に作られたのだろうか。

薄れて見づらいが、明るさとコントラストを調整すると下の方に「三共遊園設備株式会社」の文字が見える。

いわゆる力試しのパンチングボールで、ゲーム結果は7段階のランプで表示されます。セガ1960年代の早い段階から、打撃の強さをアナログメーターで表示する同種の機械を作っています(関連記事: 「パンチング・バッグ」(sega, 1962)のフライヤーから思ったこと)が、素人考えでは三共遊園設備の方がより単純な機構で安く作れそうに感じます。

こちらはセガの「パンチングバッグ」のフライヤー。ゲーム結果は正面のアナログメーターで表示される。

それにしても、上述「ベースボール」に続き、これもまったく安直なネーミングで困ります。1970年に開催された大阪万国博覧会の遊園施設「エキスポランド」に設置されたゲーム機の中にも「ボクシング」の名はあるのですが、それがこの機械を指しているとは確信できません。やはり製品名は一意に特定できる(以下略)。

【8】キャリバー50(時期不明1970?)

キャリバー50のフライヤー。

(2023年3月13日追記)フライヤー以外の資料では、全日本遊園1970年7月号に掲載された三共遊園設備の広告に掲載されています。この2号前、5月号の広告にはないので、1970年生と見て良いかと思われます。(追記終わり)

「キャリバー50」とは重機関銃の名称だそうで、口径が0.50インチであったことからそう呼ばれたとのことです。ゲームのタイトルに使われるくらいですからよほど有名だったのかもしれませんが、このような暗喩的なタイトルは、三共遊園設備の時代には珍しい、モダンなネーミングだと思います。1989年にViscoが作ってSetaが売った「Cal. 50」と言うビデオゲームがありましたが、ネーミングセンスでは引けを取りません。

なお、ワタシはこのゲームを見た記憶がありません。

【9】アポロムーン(時期不明)

アポロムーンのフライヤー。

1969年アポロ11号が初めて有人での月面着陸を果たすと、当時の日本ではちょっとした「アポロブーム」が起き、AM業界でもこれにあやかったゲーム機がいくつも開発されました。

しかし、「アポロムーン」の名は、1970年の大阪万博のエキスポランドに設置されたゲーム機のリストには見られず、また全日本遊園1970年11月号が報じる同年10月に開催された第9回アミューズメントマシンショウの出展機種の中にも含まれていません。

と言うことは、アポロムーンの発表年は1970年以降なのかと推論したくなりますが、アポロ計画自体は月面着陸以前からしばしばニュースで耳にしてはいたので、ひょっとすると60年代に作られていてもおかしくは無いようにも思えます。つまるところ、アポロムーンの発表時期は、現時点では全く見当が付きません

フライヤーの画像を見ると、プレイフィールドにはフリッパーと思しきものが僅かに写っており、またキャビネットの側面にはフリッパーボタンらしきものがあって、どうもアポロムーンには「フリッパー」が装備されていたように思われます。

フライヤー画像より、筐体下部の拡大図。プレイフィールド最下段には2インチのフリッパーと思しきものが見え、筐体側面のボタンはフリッパーボタンと思われる。

過去記事「初期の国産フリッパー・ピンボール機:こまや製作所製の2機種」でも述べているように、ワタシには1971年以前の国産ピンボール機でフリッパーを備えたゲーム機の記憶が曖昧です。何かご存じのことがございましたら、ぜひお聞かせください。

(次回 「『三共』についての備忘録(4) 三共精機のAM機」につづく)