オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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スロットマシンのシンボルの話(4) フルーツシンボルの類似性

2019年09月08日 22時10分12秒 | 歴史
拙ブログをご高覧くださっているtomさんからいただいた「異なるメーカーのスロットマシンに描かれるスイカシンボルに描かれる種の数は同じか?」とのコメントから端を発する今回のシリーズも、ようやく本題です。今回は、スイカを含むフルーツシンボル(と、鐘シンボル)の類似性について記録していきたいと思います。

Millsが1910年に発表した「Liberty Bell Gum Fruit」及び「The Operators Bell」以来使用され続けてきたフルーツシンボルには、プラム、オレンジ、チェリー、レモンがあります。これに、フェイの「Liberty Bell」から受け継がれている鐘(ベル)と、おそらくは1940年代に加わったと思われる1937年に加わったスイカ(2020.05.22修正関連記事:スイカシンボルに関するファイナルアンサー)の全6種(+BARシンボル)が、スタンダードなシンボルセットと言えると思います。ただし、レモンは60年代には辛うじて残っているものの、70年以降は殆ど見られなくなります。英語の「Lemon」という言葉には、フルーツとしてのレモンの他に、役に立たないものとかつまらないものという意味があるそうですが、だからなのかどうか、スロットマシンにおけるレモンも基本的にハズレシンボルとして使われていました。そこで、プレイヤーに損なイメージを持たれてしまうレモンシンボルは排除されていったのかもしれません。

また、これら以外ではリンゴや梨なども採用された例はありますが、それらは(少なくとも北米製のリールマシンでは)例外的と言っても良い程度の出現頻度でしかありません。

それではここで、初のフルーツシンボルから現在に至るまでのスタンダードなフルーツシンボルを比較してみようと思います。


歴代の機械に見るフルーツシンボル。(1)Liberty Bell Gum Fruit (Mills, 1910) (2)The Operators Bell (Jennings, 1920?) (3)Diamond Star (SEGA/Mills, 1950's) (4)Super Continental (Bally, 1970) (5)J400 Series (Jennings, 1980前後) (6)Vintage Vegas (IGT, 2005頃)

上図の1920年頃に描かれていた図柄(2)と、1950年代に描かれていた図柄(3)の間に年代的な大きな断絶がありますが、それはワタシの手元にこの間の資料が無いからです。とは言え、1920年以降のフルーツ類は、かなり良く継承され続けていると言えそうです。特に(3)のセガ(実質的にMills)と(4)のBallyの絵は、どちらかがもう一方をトレースしたと言っても良いくらいにそっくりです。(6)は、もうほとんどフルーツシンボルが顧みられなくなった2000年代に、IGTが「Vintage Vegas」と銘打って出したリールマシンのシンボルです。しかしその中身は、おそらくは同社のヒット機「Double Diamond」がベースになっているものと思われます。


Vintage Vegas(IGT, 2005頃・上)と、Double Diamond(IGT, 1980年代・下)。

さて、やっと、tomさんからご質問いただいた「セガのスイカとBallyのスイカの比較」です。


左はBallyの「Money Honey(1964)」、右がセガの「Diamond Star(1950~60代)」のスイカ。

撮影の状況により多少のゆがみなどがありますが、先の比較に見る鐘、プラム、オレンジなどほどそっくりでもありません。皮の縞の数は同じ7本ですが、セガのスイカの種はまるで後から手で描いたかのようにも見え、個数や配置はBallyのスイカとは全く異なるという事がわかりました。セガのスイカの種が手描きのように見えるのは、この個体に限ったことなのか、それとも毎度の事なのかはこれから調べなければならない課題として残りましたが、とりあえずはtomさんへのお答えにはなったかと思います。

さて、次回は本シリーズの最終回として、前回の記事でも少し言及した疑問、「Bell Fruit Gumというガムに関する謎」に迫ってみようと思います。

(つづく)