水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

国木田独歩(2)

2007-09-04 10:13:27 | 三鷹・文学
(三鷹市にある、民俗文化財水車経営農家(新車、しんぐるま)、の概要について、平成18年10月2日からの20回で説明した。今は、多少視野を広げ、折々に興味の引かれることについて記述している.)

 昨日の続き。

 「独歩は野川あたりを歩いたこともあるらしい」と、聞いたような、読んだような、あやふやな記憶がある。

 昨日紹介した、文庫「武蔵野」には、18編の小品が収められているが、残念ながら、野川らしい情景の記述を発見することはできなかった。「わかれ」の中に、水車小屋が出てくるが、これのモデルを新車(しんぐるま)とするには無理がありそうだ。相思相愛だが、周りから反対されている若い男女の「わかれ」を、あくまでもロマンティックに、表現する小道具的環境として、水車小屋とその守人である老人が使われた、と思う。

 有名な「武蔵野」の中では、玉川上水の千川用水分岐点付近、と思わせる場所の情景が記述されている。地元の老婆から、桜の時期ではない、こんな夏に、この辺に来る人の気がしれない、と不思議がられることを楽しむような情景記述だ。確かに、うまい筆使いだと思う。

 しかし、玉川上水(とは明言していないのだが)の流れを、「水と水とがもつれて、からまって、揉み合って、自ら音を発するのである。何たる人なつかしい音だろう」(p24)と表現しているが、これには同意できない。

 玉川上水の流れの音は「ゴンゴン」とか「ドンドン」といった感じで、圧倒的な水量と流速に、近寄る人はだれも怖気づいた。地元の子供たちにとっては、夏の暑い時期の肝試しのひとつに、「ドンドン橋渡り」があったほどで、親から「人食い」上水には近寄るな、とよく言われたものだ。
 あれがどうして「なつかしい音」なのだろうか。

国木田独歩

2007-09-03 09:55:28 | 三鷹・文学
(三鷹市にある、民俗文化財水車経営農家(新車、しんぐるま)、の概要について、平成18年10月2日からの20回で説明した。今は、多少視野を広げ、折々に興味の引かれることについて記述している.)

 昨日、新車(しんぐるま)での解説で、ある方々に「国木田独歩」と口走ってしまったのだが、実は、恥ずかしながら、よく知らない。いつものことだが、図書館で彼の著作を借り、付け刃、をつけておくことにした。

 ところが読む前に、まず、武蔵野(文庫版、H06年改版第1刷)を手にしてうなってしまった。カバー表紙が地形図なのだ。中央線の線路が描かれていないから、明治10年台後半につくられた地形図だろう。原図は20万分の1なのだろうが、表紙として使えるように、上手に縦横の縮尺を変えてある。巻頭の「武蔵野」の中で表現されている武蔵野の範囲をたくみにカバーした編集者のセンスに脱帽。

 そしてさらに、この地図上、中央やや左に「大沢」が人見街道から国分寺方面への分岐点として載っているのだ。コンターが密になっていて、野川左岸の崖線もよくわかる。
本のタイトルスペースによって地図中央が欠けているのがなんとも残念だが、三鷹市に関しては西部範囲、すなわち、上連雀、井口、野崎などの地名も見える。
とにかく、何回か書いたことがあるが、大沢が交通の要衝であったことは、この地図からも一目瞭然だ。

 ひょんなことから、新しい発見があるものだ。
 

解説員として(18)

2007-09-02 21:26:27 | 水車解説関連
(三鷹市にある、民俗文化財水車経営農家(新車、しんぐるま)、の概要について、平成18年10月2日からの20回で説明した。今は、多少視野を広げ、折々に興味の引かれることについて記述している.)

 今日の午前ピンチヒッターとして解説を受け持った。昨日の夕方、市役所担当者から電話で依頼されたのだ。当番に当っていた人が急に駄目になったのだろうが、仕事とはいえ、休日なのに、翌日の解説員を急遽探す担当者もさぞやつらいことだろう。

 今日は市の防災訓練日。大沢地区が今年のメイン地区で、会場が、新車(しんぐるま)のすぐ近くの武蔵野の森公園であったので、行きがけにちょっとのぞいてみた(写真がそれ)。地区住民のほか、市役所、消防、警察、事業者団体など多数が集合し、盛り上がっていた。たのもしいかぎりだ。

 新車(しんぐるま)における午前の見学者数は、15人程度の団体ひと組のほか、およそ10組、20人程度であった。このあいだまでの猛暑がうそのような、サイクリング・散歩日和のためだろう、予想を超える数の多さであった。

 いつものように、見学者の様子をうかがいながら、解説を押し付けぬよう注意した。個々の見学者が、それぞれ、なにに興味を示してくれるかを観察するのがとても楽しい。今日の場合、ある見学者グループに、明治時代の土地利用図をみながら、「国木田独歩の武蔵野の世界」と言ったのだが、それにピタリと反応してくれた。「文学に造詣が深いはず」と読んだ、こちらの目が間違ってはいなかったようで、うれしかった。