水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

古今集(57)

2015-01-30 09:35:11 | 古今和歌集
331 冬ごもり思ひかけぬを このまより花とみるまで雪ぞふりける
雪の木にふりかかれるをよめる
つらゆき

冬籠りのさいちゅうですから、花なんて思いもよりません。がしかし、今、木々のあいだに降る雪を見ていると、まるで花のようです(花を思い起こさせます)。

330 冬ながら空より花のちりくるは 雲のあなたは春にやあるらむ
雪のふりけるをよめる
きよはらのふかやぶ

冬であるにもかかわらず、空から花が散ってきます。雲の向こうではもう春が始まっているにちがいありません。


予報通り、今朝は雪だ。寒い。
古今集の中にも、雪を詠んだ歌がいくつもある。立春直前を思わせる時期の歌、のような気がして、今日は上の2首を選んだ。

雪深い土地で暮らす人々の思いを詠んでいるような気がする歌が次。

329 雪ふりて人もかよはぬ道なれや あとはかもなく思ひきゆらん
雪の降れるを見てよめる
凡河内みつね

雪が降り積もって一面雪に覆われてしまった。道がどこだかわからない。人の踏みあともない。なんか気が滅入ってしまう。


この寒さも、あとすこしの辛抱だ。


しかしそれにしても、人質になった方の、恐怖と絶望とがないまぜになった写真は、見るにしのびない。
テレビやインターネット動画は残酷すぎる!憎悪心を煽ることにしかならない。









古今集(56)

2015-01-29 14:39:54 | 古今和歌集
74 桜花ちらばちらなむ ちらずとてふるさと人のきても見なくに

僧正へんぜうによみておくりける

これたかのみこ


桜の花よ、散るなら散ってしまえ。散らなかったとしても、故郷の人(遍照ノコト)はきてもくれないのだから。


惟高親王:844~897。文徳天皇の長子でありながら、藤原良房の支持を得られず、皇位につけなかった。872、28才で出家、隠遁生活を送る。


「世が世なら、わたしだって」という思いが伝わる歌だ。

古今集には、もう一首採録されていて、それが次。

945 白雲の絶えずたなびく峯にだに住めば住みぬる世のこそありけれ

しら雲が常時たなびくような山奥に住むことになったのですが、(私がそうなったとしても、何の変化もない)そんな世の中なのですね~


私が隠遁生活に入れば、世間はびっくりして、引き留めようとするに違いない、と思い込んでいたのに、という思いが込められているように思えます。




古今集(55)

2015-01-27 09:47:11 | 古今和歌集
90 故郷(フルサト)と成りにしならの宮こにも 色はかはらず花はさきけり

ならのみかどの歌

平城天皇 大同天子


私にとって故郷といえる平城京にきてみました。昔と変わらぬ花が咲いていて(他はすっかり変わった)感慨ひとしおです。


平城京から長岡京に遷都した(784)後、平城京を訪れて詠んだ歌
平城天皇:774~824、キレモノであったようだ。810年即位、814譲位。后とした人の母親(藤原薬子)を溺愛し、多くの問題を起こす。810年、薬子自殺、天皇僧籍に入る。

古今集(28)(昨年の11/10)の記事で、次の歌を文武天皇の歌としたが、それは間違いのようだ。一般に、この時代、「ならのみかど」というと平城天皇を指すそうだ。

283 竜田河もみじ乱れてながるめり わたらば錦中やたえなむ


古今集にはもう一首、平城天皇の歌があって、それが次。

222 萩の露たまにぬかんととればけぬ よし 見ん人は枝ながらみよ

ある人のいはく、こお歌はならのみかどの御うたなりと


萩の葉に浮いた露玉を、きれいだからといって、(数珠のようにしようと)取ろうとすると消えてしまいます。だから枝ごと見るようにせねばなりません。


三首とも、実生活の激しさをうかがわせない、平明で素直な歌だと思います。

興味魅かれる人物です。

浮世絵講座(1)

2015-01-22 11:39:52 | 雑感(1)日常
昨日、三鷹ネットワーク大学主催の、標記講座を受講した。

初心者対象ということで受講したのだが、40人定員を満たすほど聴講者が集まり、人気であったようだ。
今、駅前のギャラリーで浮世絵展が開催されていて、その宣伝でもあるようだ。

浮世絵(憂き世=現実世界)が、17世紀後半、菱川師宣によって確立され、19世紀初頭の最盛期に、その後衰退した歴史を持つこと、そして、美人画に描かれた衣装の流行の変遷の概要説明が、主たる講義内容であった。

あと2回(人気が高いので、さらに追加するとの話があった)聴くチャンスを与えられているので、楽しみ。


聞きながら頭に浮かんだ、質問したい項目を、忘れないように、列記しておく。

・ 関西ではカッパ絵というものがはやったそうだが、このカッパ絵とはどんなものか?
・ 寛政の改革以後、政府による改印が押されるようになったそうだが、その主管役所はどこか?町奉行所?
・ 絵柄が決まってから販売まで、平均どれほどの期間がかかるのか?
・ 1枚20文程度で、1000枚売れれば大ヒットであったそうだが、版元・絵師・彫師・刷り師の分け前はどうなっていたのか?
・ 一般的な紙サイズはどんなものであったか?最大サイズは?
・ カワラ版とか読み本・絵草子などとは、発達過程で関係があったか?
・ 18世紀中ごろ、鈴木晴信が、初めてカラー版画を制作したそうだが、一枚の版画を作るために、最大の版木数はどれほどであったか?












古今集(54)

2015-01-19 16:28:26 | 古今和歌集
889 今こそあれ 我もむかしは 男山 さかゆく時もありこしものを

題しらず

よみ人しらず


今でこそこんなになっていますが、私だって昔は男ざかりのギンギンのときがあったのです。


895 老いらくの来むと知りせば 門(カド)さして無しとこたえてあはざらましを 

題しらず

よみ人しらず

こんなに生きながらえてしまったからには、(訪問者があっても)門を閉ざし、「いません!」と答え、会わないほうがよさそうです。 



平日の午前中に街中に出ると、あまりの老人の多さに愕然とする。これで、この国の将来は大丈夫なのだろうか、と思う。
昔、活躍した人ほど、年とともに引きこもりがちになるであろう。

寒さを怖がらず、外に出よう。

古今集(53)

2015-01-16 10:45:26 | 古今和歌集
323 雪ふれば 冬ごもりせる草も木も 春に知られぬ花ぞさきける

冬の歌とてよめる

紀貫之

雪が降り始めると、草も木も冬籠りします。そして春になれば、名もしらぬような花を咲かせるのです。


素直といえば素直、名人が詠んだ歌とは、とても思えません。
貫之さんだったら、もうヒトヒネリしてほしいところです。

316 大空の月の光しきよければ 影みし水ぞまづこほりける

詠み人しらず

シンシンと寒い満月の夜は、ことさら空気がすんでいるようだ。そんな夜は、まず月影をうつしている水面から氷はじめます。


この歌のほうが、上の貫之のより、ずっと上手のように思えるのですが。

巻第六冬歌に載っている歌は29首にすぎません。
冬は、歌人を刺激するような題材が少なかったのかもしれません。


寒さもいよいよ大底に入ったようです。
今年も、庭に来る小鳥たちのために、リンゴの皮を細かくしたエサ、を出すことにしました。

古今集(52)

2015-01-15 14:16:40 | 古今和歌集
875 かたちこそみ山がくれの朽木なれ 心は花になさばなりなん

女どもの見てわらひければよみける

けむげい法師


わたくしのすがたかっこうがよほどみすぼらしいのでしょう。女性方が笑っておいでです。しかし、心は決してそうではありません。花を咲かせよ、と命じられれば、必ずやりとげてみせましょう。

いいですね~。凛とした、強い心があらわれていて、好きです。

けむげい法師=兼芸法師:古今集に3首採録。


396 あかずしてわかるる涙たきにそふ 水まさるとや下はみるらん

仁和のみかど、みこにおはしましける時に、布留(フル)のたき御覧じおはしまして、かへりたまひけるによめる

まだ飽きてもいないのに帰らなければならず、皇子はお泣きになっている。下流にいる人は、(皇子の涙が原因とは知らないから、なんだ、なんだ)増水だ、と騒ぐことでしょう。

やさしさあふれる歌、とは思いますが、権力者に従う歌人の歌、というにおいを感じます。


764 もろこしも夢に見しかば近かりき 思はぬなかぞはるけかりける

題しらず

中国だって、夢で見るぶんには近いものです。しかし、気にかけていない人は、その人を夢に見ることもありませんから、はるかに遠い存在です。

これって、愛を告白してきた相手に対する、拒否の意味をこめた返歌なのでしょうか?


3首の意味合いが、互いにガラリと異なっていて、興味深く詠みました。


古今集(51)

2015-01-13 09:53:29 | 古今和歌集
991 ふるさとは見しこともあらず 斧の柄のくちし所ぞ恋しかりける

筑紫に侍りける時に、まかり通ひつつ碁うちける人のもとに、京にかへりまうてきてつかはしける

きのとものり


斧の柄のくちし所=囲碁を見学していた、きこりが熱中しすぎ、自分が持っていた斧の柄をブヨブヨにしてしまった、という中国の説話(爤柯伝説)を日本風に翻訳・解釈したもの。
爤柯:爤(ラン)=熱でただれる。柯(カ)=斧の柄
後世になって、爤柯=囲碁、と解釈するようになる。


赴任を終わって都に帰ってきたものの、その都はすっかり様変わりしていて(面白くありません)、あなたと碁に熱中していたあのころがなつかしくてたまりません。


下手の横付きとはいえ、囲碁好きにとって、この歌はたまりません。
千年も前の人と気持ちがいっしょ、と知ることができ感激です。


しかしそれにしても、日本人の新し物好きは、DNAにしっかりと組み込まれているのですね~。
たぶん、囲碁や爤柯伝説は遣唐使が持ち帰ったものでしょうが、自分たちのものにしてしまうエネルギ-はどこで培われたのでしょうか?


やっと、古今和歌集を概観した(前回までに、巻頭の20首、および著名な歌人28人の歌をみた)。
今後は、ときどきの気分のおもむくままに、詠んでみたい、と思っている。





古今集(50)

2015-01-10 13:55:04 | 古今和歌集
1051 難波(ナニワ)なる長柄の橋もつくるなり 今はわが身をなににたとえん

題しらず

伊勢


難波の長柄橋も(老朽化して)架け替えるそうだ。(今まで私自身のことをあの橋にたとえてきましたが)今後はたとえに何を持ってくればいいのでしょうか

伊勢:872~938、宇多天皇の后に仕えた高級女官、歌人、三十六歌仙の一人、古今集に23首採録。


2首挙げておく。

920 水の上にうかべる舟の君ならば ここぞ泊りといはましものを
中務のみこの家の池に舟をつくりて、おろしはじめて遊びける日、法皇御覧じにおはしましたりけり。夕さりつかた帰りおはしまさんとしけりに、よみてたてまつりける

せっかく舟の旅をなさったのですから、「ここが宿泊地です」と申し上げたいものです、法皇様。


990 あすか川ふちにもあらぬ我が宿も せに替わり行く物にぞ有りける
家を売りてよめる

飛鳥川の流れのように、あるときは淵のような我が家でしたが、今はせに(銭)に替わってしまいました。


絶頂期は、権力の中枢に位置し、恋多く、贅沢な毎日を送ったものの、年齢を重ねるとともに、陰っていく人生であったのでしょうか?

古今集(49)

2015-01-07 16:36:21 | 古今和歌集
391 きみがゆく越の白山しらねども ゆきのまにまにあとは尋ねん

大江のちふるが越へまかりけるむまのはなむけによめる

藤原のかねすけ朝臣


あなたが赴任なさる、越の白山を私は知りませんが、雪道についたあなたの足跡をたよりに後を追いたい気持ちです。


藤原兼輔:877~939、公家、三十六歌仙の一人。古今集に4首採録。


あと1首挙げておこう。

417 夕づくよおぼつかなきを 玉櫛笥(タマクシゲ)ふたみの浦はあけてこそ見め
但馬のくにの湯へまかりける時に、ふたみのうらといふ所にとまりて、ゆふさいのかれいひたうべけるに、ともにありける人々うたよみけるついでによめり

ゆふさいのかれいひ=夕食の携帯食

夕闇せまる時間は景色ははっきり見えません。やはり二見浦は(あした、)夜があけてから見ましょう。


友人たちと旅行をしても、「歌や俳句を詠みましょう」なんてあったためしがない。
今の世においても、こんな高尚な遊びに耽る人々がいらっしゃるのであろうか?

古今集(48)

2015-01-05 14:47:27 | 古今和歌集
277 心あてに折らばや折らん 初霜のおきまどはせるしらぎくの花

しらぎくの花をよめる

凡河内みつね

適当に折ってしまっていいものだろうか?菊に初霜がおりて花と見分けがつかなくなっているのに~。

百人一種に採録された、凡河内躬恒の歌。
躬恒については、11/4の記事で紹介したように、貫之と並んで古今集(60首採録)の顔。

貫之との関係で、面白い歌を見つけた。

919 葦鶴の立てる川辺を 吹く風によせてかへらぬ浪かとぞ見る
法王西川におはしましたりける日、「鶴、洲に立てり」といふ事を題にてよませ給ひける
つらゆき
鶴が海岸に(点々と)立っていますが、(動かないので)寄せ浪と見間違えてしまいます。

1067 わびしらにましらな鳴きそ あしひきの山のかひある今日にやはあらぬ
法王西川におはしましたりける日、「猿山の峡(カヒに叫ぶ)」といふ事を題にてよませたまうける
みつね
わびしそうに鳴くのはやめて!今日はせっかく(我々法王一行がきていて、)大切な日なのですから

法王(宇多)に随伴し、歌を競いあい、名誉を浴する仲だったのですね~。

もう1首、

976 水の面(オモ)におふるさ月の浮草の うき事あれや 根(音)をたえてこぬ
友達の久しうまうでござりけるもとに、よみてつかはしける

きらわれちゃったのかなあ~。音信が途絶えちゃった。

今まで必ずくださった、古い友人からの年賀状が今年はまだきません。ものすごく心配しています。