水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

日の名残り(115)

2020-03-26 13:56:47 | 日の名残り
No one with good judgement could persist in believing anything Herr Hitler says after the Rhineland, Stevens. His lordship is out of his depth. Oh dear, now I have really offended you.

よき判断のできる人が、なんでラインランド以後もヘル ヒトラーの言うことを信じるんだ、スティーブンス?卿は深みにはまっておられるんだよ、スティーブンス。おや~今度こそ、ほんとうに君を怒らせてしまったようだな。

カーディナル氏がダーリントン卿を、ダメだと判断した事件を口にした。

第一次大戦後、ベルサイユ条約によって、敗戦国ドイツはさまざまな足かせをはめられた。そのうちのひとつが、ラインランドの非武装化であった。ヒトラーはこれを無視して、この地域に進駐した。これは、フランスその他の諸国に対する宣戦布告みたいなものである。

それにもかかわらず、今なおダーリントン卿は、ドイツとの友好関係を築けると、信じてしまっている。

そのような主人に唯々諾々と従っているスティーブンス氏を、目を覚まさせようと、カーディナル氏は言い張っている。


執事の立場を正しくわきまえれば、主人の政治信条に同意できなければ、やめざるをえないでしょう。

日の名残り(114)

2020-03-19 09:56:50 | 日の名残り
I am sorry, sir, but I cannot see that his lordship is doing anything other than that which is highest and noblest. He is doing what he can, after all, to ensure that peace will continue to prevail in Europe.

しかし、カーディナル様、私には、卿が高貴なる目的のために行動しておられるとしか考えられません。結局のところ、卿はヨーロッパに平和が続くようにと努力しておられるのでございましょう?

ダーリントン卿の親ナチ的行動について、深刻に心配するカーディナル氏の前言に対する、執事スティーブンス氏の答え。

召使が、主人に対し、批判せずに従うことは、あたりまえのことだろう。


しかし、きょうの朝刊記事はショックだ。財務省下級官僚の遺書が語る問題は根が深いはずだ。

それはそれとして、コロナのほうは、世界中の国々の、自国有利の位置取り合戦の様相を呈してきた。長期展望に立って、国益にかない、かつ他国から避難されぬような位置取りを目指してほしい。
それには、特効薬もしくは、有効治療法の第一発見国になることだ。がんばれニッポン!

日の名残り(113)

2020-03-12 10:13:14 | 日の名残り
At this very moment, unless I am very much mistaken, at this very moment, his lordship is discussing the idea of His Majesty himself Hitler.

この瞬間~~ぼくがよほどひどい間違いをしているのでなければ、いまこの瞬間にだ~~卿は、国王のヒットラー訪問を提案しているはずなんだ。

スティーブンス氏が仕えていたダーリントン卿はドイツのナチ政権と交流を深めていたのだが、ある夜、駐英大使リッペンドロップが屋敷を訪れ、英国側との秘密会議がもたれた。カージナルス氏(この人はダーリントン卿に子供のころから可愛がられていた)という新聞記者が、この会議を嗅ぎ付け、スティーブンス氏から情報を引き出そうとやっきに説得していたときに、発せられた言葉、が上。


日の名残り、を小説として名作に押し上げた根拠のひとつが、この英国国王ヒットラー訪問伝説であった、と思う。
タブーへの挑戦へ、であったのだろうか。

このことの重大さと、スティーブンス氏の、生真面目さとの対比がなんともいえず、絵になる見事さよ。
カズオイシグロの非凡さか。


ところで今世界は、コロナウイルスを原因としたパンデミックだ。
特効療法開発・発見の一番乗りは日本からに間違いない、と信じている。




日の名残り(112)

2020-03-05 09:55:22 | 日の名残り
I suspect it comes down to not removing one's clothing in public.

公衆の面前で衣服を脱ぎ捨てないことに帰着するのではないかと存じます。

カーライル医師の車に乗せてもらい、送ってもらう途中、村人と品格(dignity)とは、について話したことを話した。
スミス氏は、いろいろな問題に強い意見を持っていること、が品格がある、とかんがえているようだ、などと。

上は、医師から、ところでスティーブンスさん、あなたは、と聞かれ、答えたもの。
ウイットに富んだ、見事な答え、だったように思うが、カーライル医師は、なんのことだかよくわからないといった顔つきをし、話題を景色に変えた。

この小説の面白みは、スティーブンス氏の「はずしかた」にあるように思う。真面目一方なのだが、人様との会話がどうしてもずれてしまう、忖度しすぎて相手をきょとんとさせてしまう、といった、絶妙の位置取りが面白い。