旅限無(りょげむ)

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フラット化する世界? 其の参

2007-01-31 09:26:27 | 外交・世界情勢全般
■中国もロシアも民生品の生産に力を入れてはいますが、近代的な市場経済を知らないまま、非効率な計画経済を投げ捨ててしまったので、あっと言う間に経済はマフィア化したり、需給バランスなど考えない歪(いびつ)な産業構造が生まれてしまいました。「計画経済」の反対は「無計画経済」だと思い込んだ人々は、「自由経済」を「放縦経済」か「我が儘経済」と誤解しているようです。

自動車メーカーの業界団体である中国汽車工業協会によると、中国の2006年自動車販売台数は721万6000台となり、日本を抜いて世界2位の市場に躍進した。また、生産台数も727万台余りでドイツを抜いて同3位となった。規模では米ゼネラル・モーターズや独フォルクスワーゲンなど外資との合弁国有企業が上位を占める。それがここ数年、乱立する純国産メーカーが小型車を中心に善戦し、すでに市場の3割近くを奪うまでに成長してきた。

■社会主義経済下の生産活動は、何故か原料の重さで全てが管理されていたそうです。つまり、重たい物をたくさん作るのが好い事だったのですなあ。旧ソ連時代に、ノルマを守るために片方だけのブーツを生産し続けた靴工場だの、重さ1トンの釘を生産した鉄工場だの、ウソのような話があったそうですなあ。農ふら業製品にしても同じ事で、全ては帳簿上の重量が問題でしたから、味や品質は誰も気にしなかったようです。見よう見真似で時代遅れ?の自動車を生産し続けても、それが永久に売れ続けると思い込むのは学習が足りないか、元々、我が儘で欲張りだからかのどちらかでしょうなあ。


国内メーカーは年間販売台数で数十台という会社を含め100社以上がしのぎを削り、新規参入が加速している。例えば乗用車メーカーは01年には20数社あったが、05年に50社を超え、中国の自動車メーカーの数は世界1となった。市場無視の投資拡大の結果、国内の総生産能力は1000万台を超えるのが時間の問題となり、設備稼働率も05年で71・5%の低水準にとどまっている。こうした状況を背景に、各社とも「降価」(値下げ)を武器に過当競争を繰り広げている。昨年12月も国産車50モデル以上が、一斉に数千元から最大3万元(45万円)もの値下げに踏み切った。

■「過剰生産」による値崩れ、それが原因となって企業が倒産、放り出された無産労働者が……。これはマルクスが考えた資本主義崩壊のシナリオそのものです。既に膨大な数の人々が農地を捨てて工場に集まってしまいましたから、工場から放り出されたら本物の「革命の主体」になってしまいますぞ。何処かに仕舞い込んであったマルクスの本やら毛沢東の本を引っ張り出して再読したら、初めて社会主義理論が理解されるのではないでしょうか?社会主義革命を求めて集団が動き始めたら、共産党は「反革命」の罪状で摘発するのでしょうか?何とも皮肉な風景になりますなあ。まあ、それは今のところは妄想でしかないのですが……。


“老舗”の外資系も値引き競争に巻き込まれ、フォルクスワーゲンの中国向け人気車「サンタナ」は発売当初に比べ半値以下に落ちている。自動車価格はかつて発売後3年は維持できたが、今や1年未満で調整を余儀なくされるという。一方、国内市場の過当競争と値崩れから逃れ、輸出で利益を確保しようとする中国企業が急増。現在、メーカーと商社を併せて1175社が海外進出に殺到している。中国商務部によると、輸出台数が年間10台以下の業者が669社、わずか1台の業者となると204社にものぼる。過当競争は飛び火して、昨年の輸出自動車約9万台の平均単価は前年比19・5%も下落し、こちらも採算無視の輸出競争に陥る懸念が広がる。

■「サンタナが半値」というのは衝撃的な話です。ほんの5・6年前までは高嶺の花として輝いていた憧れの車だったはずです。「採算無視」の四文字が無気味です。起業する段階でもマトモな市場調査などしないのですから、こうなるのは最初から分かっていたはずです。欧州に遅れてならじ!と日本の自動車会社も乱入して技術を垂れ流したのですから、ある程度の品質は物真似でも作れるようになったまでは良かったものの、実際には購買層を形成している人々は沿海部の狭い地域に集中しているのですから、面白がって売りまくったら各地で大渋滞と大気汚染が蔓延しますし、交通事故は目も当てられない状況のようです。その購買層に商品が行き渡ったら需要が頭打ちになるのも当然の話で、「西部大開発」の舞台となった中央部から西に広がる国土の3分の2に当たる広大な地域には、まだまだ購買層など育っていません。正にそこから土地を捨てて都市部に人口の大移動が起こっているのですからなあ。

■ならば輸出だ!と言ったところで、メイド・イン・チャイナのブランドにどれほどの力が有るのか怪しいものです。自動車も商品ですから安いに越したことは無いでしょうが、故障やアフター・サービスなどを考えると、少し上乗せして日本製か欧州製を買う人がほとんどでしょう。日本のトヨタが世界一になったのは目出度い話かも知れませんが、ちょっと作り過ぎだと思っておくべきでしょう。先進国の自動車会社は既にインドを目指して流れていますから、中国製の自動車も後を追うのでしょう。しかし、インドは中国からの攻撃を避ける目的でデカン高原の奥地にあるバンガロールに工業都市を造ったくらいですから、中国製は気分的に好まないのではないでしょうか?国境問題も解決していないのに商売上の憎悪まで絡んでしまうと、非常に心配な事が起こりそうですなあ。


このため、商務部や国家発展改革委員会などの当局は、自動車輸出許可のための資格検査を義務づけた通知を発表し、「安かろう悪かろう」の対外イメージを作り出す弱小メーカーの締め出しを狙っているという。
1月29日8時0分配信 産経新聞

■こうなると、「委員会」には溢れるように賄賂が投げ込まれることになるでしょう。「許可証」の偽物が出回るのも間近でしょうし、密輸も盛んになりそうですなあ。世界が「フラット化」するにも、法律と契約を守る共通認識が無いと、信頼も生まれませんし共に発展する関係も生まれないでしょう。凄まじいゼロ・サム競争が始まるのでしょうなあ。

フラット化する世界? 其の弐

2007-01-30 15:04:42 | 外交・世界情勢全般
■人間の力では、今のところ「フラット化」し得ない事がまだまだ沢山有るという事を再確認させてくれるニュースを幾つか拾ってみました。

干ばつに苦しむオーストラリア北東部クインズランド州政府は28日、下水を飲料用にリサイクル処理した水を同州の一部で2008年から使用すると発表した。同州は、下水再利用の是非を問う住民投票の取りやめも明らかにした。住民に是非を聞いている余裕がないのが実情という。州政府のビーティー首相は、「大変な決断だが、水を飲まなければ死ぬ。ほかに方法がない」と、住民に理解を求めた。地元紙によると、このまま干ばつが続けば、同州の水源は09年に枯れるという。オーストラリアは現在、史上最悪といわれる干ばつに見舞われており、全国で下水再利用への関心が高まっている。ただ、住民の抵抗感は強く、最大都市シドニーを抱えるニューサウスウェールズ州首相は再利用に反対を表明、これまでのところ再利用を実施している州はない。
1月29日 読売新聞

■アフリカ東北部・インド・南米西部など、常に水不足が危険領域に入ったままの国々が有りますし、ユーラシア大陸を東西に貫通してアフリカのサハラに連なる大乾燥地帯も有ります。オーストラリアは国土の8割以上が砂漠地帯とは言いながらも、統計上は水不足の心配がほどんどない所に分類されています。全世界の人口の半分は不衛生な水を飲んで暮らしているとも言われますし、毎日6000人以上の子供が悪い水が原因で死亡しているという数値も有ります。「地球温暖化」の本当の原因は突き止められたとは言えない状況ながら、異常気象が各地で頻発しているのは事実です。非常に長い周期で起こる変動と、短期間に激しく現れる変化との組み合わせは複雑で、まだまだ人類が正確に予測できるような段階には達していないとも聞きます。

■日本にも天からの貰い水で命を繋ぐ場所は幾らでも有って、地方自治体ごとに水を管理しているので、極度の渇水災害に見舞われると恐ろしい水争いが起こることも有りますなあ。それが国境を挟んで起こったりすると、水戦争が起こるわけで、20世紀は石油を奪い合って巨大な戦争が起こりましたが、21世紀は水を奪い合う戦争が頻発するだろう、と物騒な予測をする科学者も増えているそうですなあ。オーストラリアのクインズランド州が決定した「下水の再利用」は、技術的には何の問題もないはずなのですが、どうしても人間には拭(ぬぐ)い難い思い込みが有りますから、個人的な拘りを公的な機関や科学者の力で啓蒙して解きほぐすよりは、各自が渇きに負けて妥協して嗜好を変更するように仕向けるしかないでしょう。スペース・シャトルや豪華客船などのような密閉された空間では、水を浄化させて循環させるシステムを備えているそうですし、確か日本の新幹線でも汚水や下水を飲料には向かない「中水道」として循環させていると聞いた事が有りましたなあ。

■地球上の真水の9割以上は南極大陸に集中していて、雪や氷になって貯まっているのだそうです。1割にも満たない水が大気中を流れて雨や雪になって人の住む大地を潤しているのですから、地形と風向きによって意地悪な「偏在」が起こってしまいます。情報がどんどんグローバル化すると、車軸を流すような集中豪雨のニュースと渇水が続いてひび割れた大地の映像とを連続してテレビで観るようなことになります。こうした不平等を技術的にも政治的にも、人間はまだ解決できないようです。海水の淡水化技術は日進月歩だそうですが、コスト面での困難がなかなか解決できないそうですし、人工降雨も雲が湧かない限りはまったく手の打ちようが無いとも聞きますなあ。

■先のインドの話ですが、経済的に成長を続けられれば貧困問題が無くなり、文化的で清潔な生活が送れるようになるのは結構な話ですが、水洗トイレだのシャワー設備だのを15億の人々が一斉に求めたらどうなるのでしょう?米国の大統領は、「民主主義と自由」の伝道師になったつもりのようですが、何処の国も米国と同じように変わる事が善だと言うのなら、政治制度に伴って生活スタイルも米国化するのは尚すばらしい事だと考えている節が有ります。そうなれば、エネルギーも水も食糧も、すべてが今の2倍から3倍必要になって地球は人間の欲望によってパンクするか、際限の無い資源の奪い合いになって凄惨な戦いが続くことでしょうなあ。完全に密閉された建物の中で年中変わらない室温と湿度を保つのは、既に技術的には簡単なことになりましたが、それを世界中で始めたら大変なことになるのは目に見えています。

■住む場所によって環境が違うからこそ、地域別に文化が異なっているというのが歴史の真相というものです。大して牧場も無い島国の住民が、毎日牛肉を食べたがったり、海から遠い内陸国でマグロの握りが大好物だ!などという声が上がったりするのは、どう考えても異常な事なのでしょうなあ。広大な砂漠に囲まれている国が、下水を処理して飲料水にするというのは、まだ悲劇とは呼べないような気がします。再処理する水さえも無くなる事を考えておかねばならない時代になっているのかも知れませんからなあ。


販売台数が700万台を超えて世界第2位となった中国の自動車市場で、外資系、国有企業系、民営企業系のメーカーが三つどもえの販売合戦を繰り広げている。国内メーカーは100社以上が乱立し、激烈な「春秋戦国時代」を勝ち抜く安売合戦により、“価格破壊”と過剰生産に悩まされている。有り余る中国車は最近では海外輸出に振り向けられ始め、中国当局は「無秩序な輸出は対外イメージを損ねる」として抑制に乗り出した。

■工業社会が高度に発展すると資本家と労働者の間に解決不能の矛盾が生じ、最後は数で勝る労働者が暴力によって生産手段を奪い取って国家権力まで掌握する、とマルクスやエンゲルスが予言したそうですが、実際に社会主義革命が起こったのは農業国や貧困に苦しむ非工業国ばかりでした。究極の官僚主義と言われる統制(計画)経済を採用して国民を幸福にした例はまだ有りませんし、インドは紛れも無く戦後にソ連からの援助と指導で社会主義体制を導入していたのです。それが91年に終わって経済を自由化し始めたという話でしたなあ。中国の改革開放政策に遅れること10年余り、ソ連の崩壊の直後という時期に当たります。後進農業国家が社会主義を採用して強引に重化学工業を発展させようとしても、何故か民生品は貧弱で劣悪なまま放置されて原水爆に到る武器ばかりが発展してしまいます。

フラット化する世界? 其の壱

2007-01-30 15:04:10 | 外交・世界情勢全般
■1月30日と言う日は、何故かインドに絡む話題が目立ちます。NHKが三夜連続で『インドの衝撃』が完結するかと思えば、讀賣新聞が『興隆インド』という特集記事の長期連載を始めました。第一部は『夢の大地へ』という題名で「ホットメール」を開発したサビル・バティア氏、「インフォシス・テクノロジーズ」の名誉会長ナラヤナ・ムルティ氏、同社社長のナンダン・ニレカニ社長に取材し、91年から始まった経済自由化の立役者だった元財務省主席顧問のアショク・デサイ氏という錚々たる面々に対して行ったインタヴューを柱に、インドが経験したこの17年間を総括して現状、そしてインドの未来を考えるという力作だそうです。

■讀賣新聞の特集は、一時期に大流行した「中国へ、中国へ」と草木も靡(なび)くような提灯記事ではなさそうで、インド社会が抱え込んでいる問題にも言及して、取って付けたような「輝かしい未来」を偽造するようなものではないと思われます。初回の分でも、電力を始めとする社会インフラが未整備であること、毎年1200万人もの新しい雇用を生み続けねばならないこと、製造業を卑しむヒンズー教の伝統が重く圧し掛かっていることなど、決してインドが「地上の楽園」になっているというヨタ記事でもなさそうです。常態的に過剰な人口に苦しんでいた中国が、1人子政策の断行によって人口増加率が下がり続けると、インドが世界最大の人口を抱える国になると言われています。

■一説には、菜食主義の伝統が広く行き渡っていることで深刻な食糧危機が回避されていると言われています。しかし、NHKスペシャルでも讀賣新聞の特集でも、「消費者の目覚め」を特記大書している通り、穀物を中心とする質素な食生活ががらりと変わって鶏などの肉食文化が急速に拡大して行くと、食糧が飼料に回されてカロリー効率が低下し、近い将来に深刻な食糧不足が懸念されるという話も有ります。インドは典型的なモンスーン気候の国なので、量だけで考えれば水資源に恵まれているわけですが、清潔な飲み水となると事情は違って来ますし、莫大な飼料を生産するようになると定番の過剰な灌漑による耕地の疲弊や砂漠化の難問に直面するでしょう。

■「過剰な人口」を「優秀な人材の宝庫」に変え、豊かな水資源を優良な飲料水に変え、広大な大地を荒らさずに生産性を上げられれば、おおむねインドの未来は明るいものになるでしょう。巨大な国なので、バランスが崩れた時はどうしようもない危機的状況に陥る危険は常に有るでしょうが、輪廻思想に基づく恐ろしく気長な時間感覚を上手に利用して、ゆっくりと慎重に変革を続けて行けば、社会の動揺も少なくて済ませられそうな気もします。しかし、悠久の時間を実感するような人達に近代化には欠かせない「定刻」という概念を根付かせるのは大変でしょうなあ。


……ニレカニ社長は、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、トーマス・フリードマン氏に対して、経済と社会のグローバル化を「世界は平らだ」と表現したことでも知られる。この言葉はそのまま同氏の書名『ザ・ワールド・イズ・フラット』(邦題は『フラット化する世界』)にも使われ、近年の世界的流行語にもなった。…

■この本は未見ですが、題名と同書を引用した文章などからすると、はなはだ「予定調和」の強い臭いを感じます。グローバル化は確かに世界を均一化して行く運動のように見える面は有るでしょうが、本家本元の米国を見れば、恐るべき格差が広がっていますし、それを見習おうともがいている日本でも「格差社会」が深刻な問題になってしまいました。皮肉な見方をすれば、インドにはカースト制度と強固な男尊女卑の文化が有るのですから、万が一、世界がフラット化しても、インド社会だけはフラット化しないという皮肉な結果になる可能性さえ有ると言えるでしょうなあ。グローバル化がフラット化と同義だとしても、そして、ニレカニ社長の「予言」が的中したにしても、果たして、それが人類にとって幸福なのかどうかは別問題でしょう。

衛星破壊の波紋 其の伍

2007-01-30 07:05:56 | 外交・情勢(アジア)

ロシアにとってインドは、「特別な信頼関係」(プーチン大統領)で結ばれた国だ。冷戦時代からの友好国で、欧米が非難したチェチェン問題でもロシアの立場を支持した。インドも、ロシアが隣国パキスタンに武器を売らない姿勢を貫いたことに信頼を寄せる。シン首相は「大国同士が数十年にわたって友好を維持しているというのは、他にない」と語った。

■「パキスタンに武器を売」っているのは中国と米国で、それに対抗するようにロシアと結ぶインドの外交は、高等数学の多元高次方程式を解くような印象が有ります。さすがは数学王国と言うべきでしょうか?


対ロ関係でインドが期待するのは、増大するエネルギー需要への対応だ。サハリン沖の石油天然ガス開発プロジェクト「サハリン1」に続き「サハリン3」への参画も狙う。近年は米国をはじめさまざまな国が経済成長がめざましいインドへのアプローチを強めるが、インドは、特定の国や勢力に偏らずに関係を築こうとしている。2月には、中印ロの外相会議が2年ぶりにニューデリーで開かれる。……2007年1月26日 朝日新聞

■とうとう日本が追い出された「サハリン」にインドが入り込みます。「中印ロ」の会議には日本などにはまったく声が掛からないのでしょうなあ。北朝鮮に対しては「対話と圧力」、米国とは強固な軍事同盟、中国相手には靖国参拝はしない、そしてロシアとは北方領土もエネルギーも交渉の糸口さえ見つかりません。


プーチン露大統領は25日、中国が先に実施した弾道ミサイルによる人工衛星破壊実験について触れ、友好国中国の立場に理解を示した。大統領は「宇宙の軍事化には反対だ」と基本姿勢を示したうえで、「同様の実験は80年代に(米国で)行われた。米国ではいまも宇宙の軍事化を進める動きがある」と米国を批判した。
1月25日 毎日新聞

■6箇国協議が何の成果も出せない理由がこの辺に見えるような気がします。米国や欧州が昔は同じ事をしていたぞ!などと言い出したら、「京都議定書」など紙くずになってしまいます。同じ理屈で世界中が核武装に走り出したらどうするのでしょう?このロシアの暴論を否定する話が、讀賣新聞に掲載されています。


……破壊実験は冷戦終結以降、どの国も行っていない。能力誇示だけが、中国の意図なのか。米政府は「宇宙分野の国際協力の精神に反する」と批判した。日本や韓国なども、同様の懸念を表明した。国際社会が中国に抱いた懸念の一つは軍事情報に対する中国の変わらぬ秘密主義である。米軍が今月12日(日本時間)の破壊実験を確認し、米メディアがその概要を伝えた。中国政府が実験実施を公式に認めたのは、10日以上たってからだ。中国政府はこの間、「過去も現在も将来も、宇宙の軍拡競争に加わるつもりはない」と表明するだけで、実験の有無の確認さえ避けた。……中国は近年、有人宇宙船の打ち上げ成功など、宇宙技術を急速に向上させてきた。そうした技術の軍事転用の懸念は、今回の破壊実験で一層強まった。中国政府が昨年末に公表した「国防白書」は、宇宙技術の向上を国防科学技術工業の柱に位置づけると明記している。今回の破壊実験はどう行われ、全体の国防計画とどう関連するのか。中国は情報を公開すべきだ。

■奇怪な暗殺事件が起こるようなロシアですから、宇宙戦争の計画が極秘に進められるのは当然の事なのでしょう。裏に回って中国と共同で宇宙開発を進めて徐々に米国との協力体制を修正して行くつもりなのかも知れません。


米政府は昨年、国家宇宙政策を10年ぶりに改定し、安全保障面の宇宙開発重視を打ち出した。米政府内には、中国の実験は宇宙開発で圧倒的優位に立つ米国への挑戦の一歩、との警戒論も出ている。そうした動きは、宇宙を舞台にした軍拡競争を拡大させよう。破壊実験で発生した「宇宙ごみ」も懸念材料である。ミサイル搭載の弾頭が高度850キロの中古の気象衛星を破壊した際に、1ミリ以上の破片200万個が発生した。最低10年以上は浮遊し、ほかの人工衛星に損傷を与える恐れがある。既に攻撃能力を持つ米国が過去20年、実験を控えてきたのも「宇宙ごみ」が一因だ。冷戦時代に比べ、宇宙の民生利用は格段に進んだ。国際通信システムなどを混乱させるような事態になれば、中国自身にも被害が及ぶ。……
2007年1月26日 読売新聞)

■中国国内の環境汚染やゴミ問題は何度も報道されていますが、海ではエチゼンクラゲの大繁殖が起こっているように、その汚染はどんどん海外に広がっています。それがとうとう宇宙空間にも達したという事です。大気中には有害物質や恐ろしいウィルスが中国から流れ出しているのを、誰も止められませんし、目に見えないほど小さなゴミが200万個も散らばったら、一体、誰が拾い集められるでしょう?こんな事を平気で出来るのは、初めからゴミ処理をまったく考えない連中だけです。これは長年の伝統と文化の問題に帰着しますから、国連や国際会議で何度取り上げても治りません。中国の膨張も治りませんし、食糧とエネルギーの決定的な不足も治りません。

衛星破壊の波紋 其の四

2007-01-30 07:05:18 | 外交・情勢(アジア)
■こうした大きな世界のうねりを見ていないと、どんなに「美しい国」になっても間抜けな成金国家に成り下がってしまいます。「憲法改正」程度の問題でもたもたしている日本は、実に扱い易い外交相手でしょうなあ。冒頭から引用しているインタヴューの最後はこうなっております。

……さらに軍事面でも、胡政権は「昨年の国防白書で、今後の軍事問題の主軸は『平和と発展』と強調する半面、衛星攻撃実験を行い国際的な非難を招来するなど言動が大きく異なっている」と批判。「超大国を目指す動きが露骨になっており軍事的に日中間が緊張する恐れが強い」と警告した。
2007年1月29日 東京新聞

■東アジアの軍事的緊張が高まる可能性については、昨年秋に起こった米海軍の航空母艦を中国の潜水艦が追い回して威嚇した事件が起こった時にも、胡錦濤さんは何も知らなかったのではないか?という疑惑が取り沙汰されましたが、今回の衛星破壊も同じような心配が有るようです。


22日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、ハドリー米大統領補佐官(国家安全保障担当)は同紙とのインタビューで、中国の衛星攻撃兵器実験に関して、「問題は中国政府のどのレベルまで(実験について)知らされ、承認されたかだ」と指摘、胡錦濤国家主席ら中国指導部が軍部による実験を十分に把握していなかった可能性もあることを示唆した。 
1月23日 時事通信

■建国以来、一党独裁体制を支えているのは人民解放軍ですから、うっかりすると政府が軍部に引っ張りまわされる危険は常に存在している国です。北朝鮮でも、ミサイル発射を将軍様が知らなかったという噂も有りましたなあ。そんな国と国境問題を抱え込んでいるインドなどは、ゆめゆめ油断なく、しっかり対応していますぞ。


Shashi Tyagi空軍大将は28日、「宇宙空間の利用」を視野に入れた航空宇宙防衛司令部を設立すると発表した。通信社PTI(Press Trust of India)が明らかにした。Tyagi大将は西部ガンディナガル(Gandhinagar)で記者会見に臨み、「空軍の活動領域が拡大するにつれ、宇宙開発の重要性が増しており、そのための施設が必要だ」と語った。
1月29日 AFP

■中国と北朝鮮を技術的な後ろ盾に持っているパキスタンという隣国に備えるインドですから、「飛び道具」でも遅れを取ってはいられません。NHKでは1月28日から三日連続で特集番組を放送するくらいにインドは注目されているようですが、実質的にはパキスタンとは戦争状態に有り、懸案のカシミール問題では中国も一枚噛んでいる事を忘れては行けません。IT技術で世界の舞台に登場したインドが、軍事的にも更に上を目指してインド洋やらヒマラヤ山脈の上?へと勢力圏を広げようとするのは当然の話です。そんなややこしいインドにロシアが接近しているので、ますます構図が複雑になっておりますなあ。


ロシアのプーチン大統領は25日、インドを訪問しシン首相と首脳会談を行った。会談後、両国の戦略的パートナーシップの発展をうたった共同声明を発表。原子力、宇宙分野などでの関係強化に向けた合意文書に署名した。急成長する経済を支えるエネルギー面の協力など、インド側の期待を反映した。共同声明や合意文書には、インド南部のクダンクラムでのロシア製原発4基の増設、ロシアの全地球測位システムGLONASS(ロシア版GPS)へのインドの参加、10年までに両国間貿易額を3倍の100億ドルに高める目標、軍用輸送機の共同開発計画が盛り込まれた。……

■中国が欧州の「ガリレオ」に参加するなら、インドはロシアのグロナスに参加するし、米国から核技術への協力を得られたら、直ぐにロシアとも同様の約束を取り付ける。世界を手玉に取るような外交ですなあ。

衛星破壊の波紋 其の参

2007-01-30 07:04:52 | 外交・情勢(アジア)

…今回の訪問で胡主席はまた、ダルフール紛争などの解決に向け、“調停役”をアピールする見通しだ。……政府特使としてスーダンを訪れた●(=櫂のつくり)★(=携のつくり)・外務次官補はダルフール問題について、「平和・安定に向け積極的な役割を果たしたい」と述べるとともに、新たな制裁については「問題を複雑にするだけ」(同次官補)と、反対する姿勢を表明、スーダン政府に対し配慮を見せた。

■北朝鮮問題でもイラン問題でも、穏健な立場を堅守している北京政府には、世界中に散らばる人権問題を抱えた問題国家との交易という隠れたテーマが有ると思われます。勿論、人権問題が取り上げられるとロシアと共に吊るし上げられる心配も有るでしょうが……。


…ただ、中国は2005年3月にアラブ系民兵組織指導者の渡航禁止などを含む国連制裁決議と、同年9月のダルフール地方に国連の平和維持活動(PKO)部隊を派遣するための決議についてはいずれも棄権している。一方、アムネスティ・インターナショナルなど人権団体は、中国のスーダンに対する武器輸出が紛争をあおっていると批判。これに対し、中国側は正当な取引だとして、反論している。

■「死の商人」として急成長している中国の姿に関しても、日本ではほとんど報道されていません。今でもインドシナ半島に埋められている地雷の大半は、メイド・イン・チャイナですし、「アフリカ大戦」とも呼ばれる巨大化するアフリカ大陸の紛争が起きている地域では、メイド・イン・チャイナの軍需物資が敵味方の区別無く、大量に売り付けられているのも衆知の事実です。中国は、アフリカ全土を相手にする総合商社になるつもりのようです。かつては日本の商社は「インスタント・ラーメンからミサイルまで」と言われたものですが、今では中国にすっかりお株を奪われているようですなあ。


…胡主席は、昨年4月にナイジェリア、ケニアなど3カ国を訪問、6月に温家宝首相がアンゴラ、南アフリカなど7カ国を訪問した。さらに11月にはアフリカ48カ国の首脳らを北京に招き、協力フォーラムを開き、「新しい戦略パートナー関係を築いた」(唐家セン国務委員)と自負する。中国は、国連で重要な発言力を持つアフリカ諸国との関係を強固にし、中国の影響力を高めたい考えだ。さらに、中国からの対アフリカ投資は「70~80億ドル」(中国外務省)、800社以上が進出している。経済援助の対象国は約50カ国に達し、ナイジェリアでも石油採掘権を獲得するなど、資源外交を一段と加速させている。
2007年1月27日 産経新聞

■こうした背景を理解すれば、人工衛星を撃ち落として見せることが国際市場での戦争商売にとっては大いなる追い風となる宣伝だという事も分かりますなあ。ますます中国製ミサイルが人気商品となるでしょう。スーダンに関しては、驚くべきことに米国との連携の動きまで有るようですぞ!


……スーダン問題では、胡主席のアフリカ歴訪を見据えてブッシュ米大統領が先週、ナチオス・スーダン問題大統領特使を中国に派遣。中国の唐家●(●は王へんに旋)(タン・チアシュワン)国務委員らと会談し、協力を求めた。また、中国もナチオス特使と北京で協議した▲■(▲は曜のつくり、■は携のつくり)外務次官補を政府特使としてスーダンに派遣。▲特使は16日にバシル大統領と会談し、「中国はダルフール問題に強い関心を持っている」とクギを刺したうえで「対話による平和解決」の必要性を強調した。米国に次ぐ世界第2位の石油消費国となった中国は近年、対アフリカ外交を強化。政情不安や人権弾圧などで他国が尻込みする国々にも積極的に進出している。とりわけスーダンへの接近は顕著だ。中国の石油大手・中国石油天然ガス(CNPC)などが、欧米企業の撤退の空白を埋める形で油田開発権の買い取りや石油精製所の建設を進め、同国の石油輸出の約半分は中国向けとの見方もある。

■まるでサバンナのハイエナ君たちのような動きでありますが、長年に亘って日本がばら撒いた援助資金が効果を上げた後、果実は全部中国が持って行くというわけです。国連で日本の要望や提案が次々と潰される理由がここにも表われていますなあ。


……中国はスーダンに武器も輸出。一方で「世界最悪の人道危機」と呼ばれるダルフール問題では国連制裁に反対してきた。しかし、昨年4月に国連安全保障理事会が採択した制裁決議や、ダルフール地方に国連の平和維持活動(PKO)を展開するための同年9月の決議では、中国はロシアと共に棄権に回って事実上黙認。中国に「責任ある利害関係者」の自覚を促す米国や「アフリカを植民地化している」という先進諸国の厳しい視線を意識し、国際協調路線に傾きつつある。……
2007年1月19日 朝日新聞

たかがテレビ、たかが納豆 其の参

2007-01-29 23:38:56 | マスメディア
■欧米には、厳しいドキュメント・タッチの商品テスト番組が有るのですが、日本はその逆で「太鼓持ち」番組ばかりが全盛です。テレビの宣伝を見ながら「本当かいな?」と思っても、大方は「まあ、テレビだから…」と大人の判断で許していたものが、いつの間にかテレビを親や教師以上に信用して信仰する人々が増えてしまったようで、「テレビで観た」「テレビで知っている」の一言が絶対の自信を生み出す根源になってしまったようですなあ。そんなテレビのカルト状態の中で長寿番組が詐欺容疑で破綻したら、米国仕込の「訴訟」「補償」「賠償」騒動が起こったら、テレビ局の一つや二つが吹き飛ぶのは目に見えていますぞ!

■そんな騒動の最中に、更に事態を冷静に考えていられなくなる裁判所の判決が出るというのは、何と間が悪いのでしょう?!


NHK教育テレビが放送した戦争特集番組を巡り、制作に協力した民間団体などが「放送直前、当初の説明とは違う趣旨に内容を変更された」として、NHKと下請け制作会社2社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。南敏文裁判長は、「NHKは国会議員などの意図を忖度(そんたく)し、当たり障りのないように番組を改編した」と認定し、民間団体側の期待と信頼を侵害したとして、NHKと制作会社2社に計200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。NHKは即日上告した。……

■皆様のNHKは、最後まで当該番組の「再放送」をしないままで、東京高裁の判決を迎えました。「改編」疑惑が有るのは20分にも満たない映像との事なのですから、「オリジナル」と「放送版」とを連続して放送するか、画面を2分割して同時放送するかして、受信料を納めている視聴者の皆様に見て頂かない限りは、この問題は解決しないだろう、と旅限無は主張し続けておりました。NHKは「上告」などしている暇が有ったら、視聴者の皆様の判断を仰いで「改編」が「改良」だったと証明すれば済む話です。ただし、企画段階から「改良版」まで一貫してトンデモないカルト番組だったとしたら、問題は更に大きくなりますが……。


一方、この番組に関して朝日新聞が2005年1月、「政治介入で内容が改変された」などと報道したことから、控訴審では政治的圧力の有無が争点となったが、判決は「(政治家が)番組に関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と介入を否定した。1審・東京地裁はNHKの賠償責任を認めず、下請け会社1社にだけ100万円の賠償を命じていた。

■裁判などに持ち込むから話がややこしくなります。NHKとしては、どうせ誰も見ない不人気な番組だから、と高を括って制作・放送までしてしまったのでしょうから、今更、その責任を取れ!などと言われても困ってしまうでしょうなあ。


問題となったのは、NHKが01年1月に放送した番組「問われる戦時性暴力」。判決によると、NHKの下請け会社は、民間団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が開催した「女性国際戦犯法廷」を取材する際、「法廷の様子をありのまま伝える番組になる」と説明して協力を受けた。しかしNHKは放送前に編集作業を繰り返し、「法廷」が昭和天皇を有罪とした個所などを省いて放送した。

■「天皇死刑!」拍手喝采、こういう場面は是非とも「ドキュメント」として放送して欲しかったと思います。視聴率が虫眼鏡で見ないと分からないほど低い番組なのですから、その内容を裁判で扱うのなら、「裁判員制度」を広く知って頂く絶好の教材になるはずです。現物の映像が一般の視聴者から隠されたまま、各種メディアあれこれと論争しても一向に埒が明きません。


判決は、放送事業者の「編集の自由」について、「取材対象者から不当に制限されてはならない」とする一方、ドキュメンタリー番組や教養番組については「取材経過などから一定の制約を受ける場合もある」と指摘。その上で、「NHKは次々と番組を改編し、バウネットの期待とかけ離れた番組となったのに改編内容の説明も怠った」と、NHK側の責任を認めた。
2007年1月29日 読売新聞

■その種の趣味を共有している人々にとっては、天啓か祝福に思える内容でも、共有できない人にとってはオゾマシイばかりの光景に見える物は世の中に溢れております。詐欺師が逮捕される時などは、その典型なのですが、拍手喝采と感動の涙で盛り上がっている映像が、後になって一生の後悔となる場合も有ります。「天皇死刑」の判決で盛り上がる人々を全国放送するという企画を通した人は、相当の根性と覚悟が有ったと思われますし、それを擁護する人々も是非とも映像記録として残しておかねばなりません。それがドキュメンタリーという厳しい表現手段の宿命です。『ETV』というシリーズは、NHK自慢のドキュメント番組のはずですから、こんな裁判沙汰になるのは不本意のはずです。一時、大変に盛り上がった「政治家の関与」やら「圧力」は、名指しされた安倍さんや中川さんは、当時はペーペーで、とてもじゃないが圧力など掛けられる立場には無かったと判明しているようですから、何だか「三方一両得」みたいな話になって行きそうですなあ。

■何はともあれ、若者が一生を懸けて就職したいと熱望するような産業にテレビが育ってしまったのですから、改めて視聴率の真の恐ろしさを知って頂きたいものであります。それは現場で汗をかいて日夜や知り回っている人達のことではありませんぞ!最近の不二家事件でも露見しましたが、エライ人達はまったく現場を知らずに出世して、根拠も無い権威に寄りかかって会社ばかりでなく業界全体を腐らせて行くもののようですから、今回の事件で関西テレビの社長やら重役やらがテレビ・カメラの前に引っ張り出されるというのは、非常に良いことなのではないでしょうか?さてさて、「テレビはテレビを裁けない」というジレンマを、一体、何処のテレビ局が破ってくれるのか、しばらくはテレビから目が離せないかも?

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たかがテレビ、たかが納豆 其の弐

2007-01-29 23:38:29 | マスメディア

フジテレビの村上光一社長は29日の定例会見で、同局が放送した関西テレビ制作の番組「発掘!あるある大事典2」のねつ造問題について「放送したテレビ局として視聴者の信頼を裏切り、放送界全体に不信を招いたことを深くおわびする」と謝罪した。そのうえで、関西テレビの調査が終わり次第、検証番組を放送することや、外部プロダクションに制作委託した番組内容のチェック体制強化など、再発防止策を明らかにした。問題の番組の制作を下請けした「日本テレワーク」の筆頭株主はフジテレビで、村上社長は社外取締役を務めている。同社への今後の業務委託について、村上社長は「自浄作用を見届けたい」と答えるにとどめ、社外取締役辞任は「現時点で考えていない」とした。
1月29日19時54分配信 毎日新聞

■週刊誌のスクープでは、この制作会社から納豆業界に「予告」ファックスが流されていたというフザケた話が出て来ているようです。深夜枠で怪しげな商品をドキュメント・タッチ?の体験談と似非科学物が愛用する分かり易いグラフ類を多用している手法を、そのまま昼でも晩でも流用していたということなのでしょうなあ。この記事で軽く扱われている「検証番組」というのが問題です。240万部の本を売ってしまっておきながら、既に「レタスでは眠れない!」「小豆で賢くならない!」「味噌汁は…」などなど、次の商売が花盛りなのです。これを掘り起こして何年分かの偽造データをいちいち検証していたら、一体、何年間を要するのでしょう?本気で制作したら、日本ばかりでなく世界のテレビ業界の歴史に残る長大で退屈で笑いのネタにもならない悲しい大長編になることは必至ですなあ。本当にそんな物を作るのでしょうか?まさか、30分番組でまとめるような姑息な手段は使わないでしょうな?!


関西テレビ(大阪市)は29日、納豆のダイエット効果を取り上げた「発掘!あるある大事典II」の番組ねつ造について、「企画段階から放送まで、2人のプロデューサーが6、7回チェックするポイントがありながら、ねつ造を見抜けなかった」などとする中間報告を行った。「納豆」以外の放送については、「ねつ造があったかどうかを含めて今後調査していく」とした。また、学者や元検事ら5人の第三者による調査委員会を30日付で設置、週1回程度会合を開いて3月中旬をめどに最終報告をまとめる。
1月29日19時31分配信 時事通信
 
■下手をすると命に関わるかも知れない「情報番組」に、「学者や元検事」などの調査機関が用意されていなかった?これから日当を払って専門家を集めて週1回で、3月中旬までなら10回程度の「会合」を開いて全ての問題を検証し、それから「検証番組」の企画を立てて、大恥を掻きながら番組で顔を晒した内外の研究者を尋ねて謝罪行脚を繰り返し、データの偽造方法を舞台裏からバラしてウソ情報を視覚化する作業手順も披瀝して、コメント原稿を書いた人から番組収録で演出に関係した人、そして、何よりお茶の間に魔術をかけた堺正章さんを始めとする魅力的な?出演者の皆さんの体験談などなど、週に1回のペースで「検証番組」を放送するにしても、数年間を要する大プロジェクトになりそうですなあ。
 

「勘弁していただきたい」―。関西テレビ制作の情報番組「発掘!あるある大事典II」のデータねつ造問題で、同局の山本紘専務らは29日、同局本社で会見、終始苦しい釈明に追われた。
午後4時からの会見には100人前後の報道陣が集まった。会見には山本専務、福井澄郎取締役ら3人の役員が出席。山本専務らは会見に先立ち改めて謝罪した。焦点となったのは、ねつ造に及んだ動機だった。しかし、福井取締役は「発表は第三者の調査を待ってからの方がよい。予断を持ってお知らせするのはよくない。現段階では勘弁していただきたい」の一点張りで、動機は一切明らかにしなかった。途中、矢継ぎ早に飛ぶ質問に、山本専務らは語気を強めて受け答えするなどいら立った様子も見せた。
1月29日20時1分配信 時事通信

■焦点となった「動機」など、素人でも知っている事を100人も集まったプロの報道陣が聞きたがる?それ自体がヤラセでしょうなあ。「アホな視聴者の御機嫌を取って視聴率を上げる」それ以外の動機が有るのでしょうか?ついでに番組で取り上げる食材を扱う業界と結託して後ろ暗いアルバイトもしてしまう。制作現場も放送会社も出演者も、みんながハッピーになれる結構なシステムが組み上がったからこそ、「長寿番組」になったのでしょう?それを全部包み隠さず暴露するドキュメンタリーを完成させられれば、たとえ広告主から見棄てられてボロクズのように倒産しても、関西テレビの名前は歴史に残るでしょうなあ。


関西テレビ制作の「発掘!あるある大事典II」のデータねつ造問題で、日本学術会議(会長・金沢一郎国立精神・神経センター総長)は26日、ねつ造や改ざんの禁止などを定めた「科学者の行動規範」を「テレビ番組等において科学実験の計画・実施にかかわる者も当然守るべきだ」とする会長談話を発表した。テレビ番組のねつ造問題で同会議が談話を出すのは異例。談話は「テレビ番組は国民に与える影響が極めて大きく、ねつ造等の不正行為があれば、テレビなどによる情報発信、ひいては科学そのものに対する信頼を著しく傷つけかねない」と指摘。「関係者は行動規範を参照し、社会の信頼を得られる番組制作を」と求めた。
1月26日20時31分配信 時事通信


■こうした談話の発表が「異例」という事が問題です。医学でも化学でも、国民の健康と命にかかわるヨタ話が流行するのを傍観しているのは無責任です。とは申せ、歯磨きペーストから風邪薬、水虫薬から目薬まで、何だこりゃ?と驚くような宣伝が溢れるテレビ業界に、真っ当な意見を持ち込んでも聞いて貰えなかったでしょうなあ。雪印であろうと不二家であろうと、最も大きな力を持っているのは消費者で、どっと納豆を買い溜めする客が増えれば泡ゼニを稼ぐ悪い奴が出る半面で、どっと客が引いてしませばどれほど有名な企業でも呆気なく倒産してしまうものです。民放のテレビ局にとってはスポンサーの陰に消費者が隠れてしまうという悲喜劇が起こってしまうようですから、テレビ画面を観ている視聴者は間接的にしかテレビ番組に対して影響力は持っていない構図が出来てしまいましたなあ。

たかがテレビ、たかが納豆 其の壱

2007-01-29 23:37:54 | マスメディア
■今頃、堺正章さんは何処で何をしておられるのでしょう?歌手の中でも特に痩せておられる堺正章さんが、「○○を食べれば痩せる!」と連呼すれば、健康情報番組?などという奇怪なテレビ番組を熱心に研究している人達は信じてしまうでしょうなあ。世の中には「超能力」「霊能力」「透視」「予言」「奇跡」と聞くと心が正常ではいられない人が山ほどいらっしゃるようです。ウィトゲンシュタインという哲学者は、「この世界が存在している事が最大の謎なのだ!」と喝破したのは100年も前の事なのですが、縄文時代の人々と変わらず不思議な話に魅惑されてしまうのが人間というものなのかも知れませんなあ。妙に器用なところの有る堺正章さんですが、決して科学番組を担当できるような立場の人ではなく、歌や芝居で人々を幸せにして下さるだけで充分だったのに、残念なことになりましたなあ。

■事は科学教育にまで発展するメディアの問題にまで発展してしまったようなので、偶然に発端となった週刊朝日を買ってしまった者としましては、その後の動きを新聞を切り抜きながら眺めていたのですが……。週刊朝日の記事は見開き2頁で、それはそれは珍しくもない小さな物でした。その次の週になると週刊新潮も週刊文春も、あの番組を制作している人の中に情報操作としか思えない方法で小銭を稼いでいる人物が居るぞ!などという恐ろしい話まで掘り出して取材していたようです。それが本当ならば、証券業界ならば完全なインサイダー取引ですなあ。


関西テレビの情報番組「発掘!あるある大事典II」(フジテレビ系)のデータねつ造問題で29日、扶桑社(東京都港区)が番組関連書籍10冊の出荷を停止したことが明らかになった。同社によると、販売しているのは書籍6冊、ムック3冊、新書1冊で、発行部数は計240万部。ねつ造問題が発覚した翌日の22日に出荷停止措置を取った。回収や絶版については「関西テレビの調査結果を待って対応を考えたい」としている。 
1月29日 時事通信

■物書きの端くれとしましては、「240万部」などという数字を見れば正気では居られませんぞ!一体、これはどういう事でしょう?!仄聞しますに、スピリチュアルな商売をしている小太り?の体型を似合わない和装で飾っている男を取り上げると、女性週刊誌の発行部数が5万部も増えるとか……。テレビを食い入るように観ている熱心な人々ならば、わざわざ本を買う必要は無いような気もするのですが、自分の信仰心を再確認して強化するためにテレビで視聴した内容を活字で読み直すのでしょうか?それとも、背表紙から発せられる不思議な光?が必要なのでしょうか?この数字はただならないものですぞ。

■因みに、松下電器は未だに莫大な「広告費」を使ってびっくりするくらい旧式の石油温風ヒーターを回収しようと必死の営業活動をしているそうです。それをしなかったパロマという会社は殺人犯扱いになっているとも聞きます。もしも、もしも、「金返せ!」の地獄のような返品騒動が起こったらどうなるのでしょう?ブック・オフに持ち込んでも値段が付かないような古本が、もしかしたら「購入価格」で買い戻されるかも知れないと知ったら、この種の本を熱心に購入する皆様ですから、「社会現象」となってしまえばどんなに面倒な手続きが必要でも、率先して参集するような気もしますなあ。

■売れに売れた『ハリー・ポッター』ならば、作り話・魔法の話・ファンタジーという確固としたジャンルが確立していますから、書かれている通りの魔法を試みたのに効果が無いぞ!と訴える人は居ないでしょうが、「健康情報番組」と銘打っている限りは逃げ道が無いような気がします。「メディア・ミックス」という新商法が評判になったのも昔の話で、今では当たり前のように新作の映画だのCDだが出る度に、「これは宣伝だろう?」という情報番組が氾濫しております。それとは画然と切り離されて、地味で目立たない孤高の地位を守っているのが「ドキュメンタリー」部門です。もしも、劇的に痩せる方法が見つかったのなら、特別番組でも作って深夜枠や土曜日の午後などの可哀想な時間帯からゴールデン枠にドキュメンタリー番組が返り咲くはずです。良質なドキュメンタリーが誰も観ないような時間帯に押しやられている一方で、「情報番組」が氾濫するという異様な状況が長く続くはずは無かったのではないでしょうか?

衛星破壊の波紋 其の弐

2007-01-29 14:36:18 | 外交・情勢(アジア)
■逸早く衛星破壊実験の成功を察知した米国からは、次々と動かぬ証拠が明らかにされているのは当然として、EUからも強い口調で非難の声が上がりましたし、商売上も北朝鮮問題に関してもいろいろと気を遣わねばならない韓国からも、早々に反応が表れました。

(韓国)政府は19日、中国が弾道ミサイルを使って自国の気象衛星を破壊したとされることに対し、中国政府に事実関係の確認を要請するとともに懸念の意を表明した。外交通商部当局者は21日、「中国の隣接国として、人工衛星を運営し宇宙開発を積極的に推進する韓国の状況を踏まえ、19日に外交チャンネルを通じ、中国側に事実関係の確認を要請すると同時に韓国の正当な懸念を伝えた」と述べた。
1月22日 YONHAP NEWS

■「19日」というのは、米政府からの発表を受けた翌日に当たります。自国の宇宙開発を守るという当然の任務を韓国政府は果たしていることになりますが、それに負けては居られない立場の日本はどうかと言うと、何とも暢気で型通りの反応しか出て来ませんでした。


塩崎恭久官房長官は23日午後の記者会見で、先の中国による衛星攻撃兵器実験に関して、同国政府が日本側に説明した内容について「『宇宙で1回の実験を行った』と伝えただけで、それ以上の細かなことはなかった」と述べた。その上で同長官は「透明性を確保してくれなければ疑心暗鬼を招く。(それでは)説明にならない」と語り、引き続き詳細な説明を求める考えを示した。これに先立ち塩崎長官は同日、都内で中国の王毅大使と会い、日本側の懸念を伝えた。……中国外務省は22日、北京の日本大使館に対し、衛星攻撃実験の実施を伝えてきた。日本政府は19日、中国の実験実施を受け「宇宙の平和利用などの観点から懸念する」と表明。同時に北京の日本大使館を通じ、事実関係の説明を求めていた。 
1月23日 時事通信

■国力の比較の上でも、韓国にも劣るような動きしか採れない日本外交の無力感をしみじみと思い知らされる話ですなあ。「懸念」は何個も高価な衛星をロケット打ち上げ失敗によって星屑にしてしまった政府としては、虎の子の衛星を狙われたら堪ったもんではない!というものでなければなりません。相手は有人宇宙飛行を成功させているのですから、日本の空の彼方、宇宙はすっかり北京政府の縄張りになっているわけです。「説明」を求めて無視されて、何時の間にやらうやむやになる。在留邦人の財産を壊されても、総領事館の職員が自殺に追い込まれようと、「説明」を求めて無視されるのが日本の外交なのは、実に残念な事であります。相手は絶対に謝らないのに、日本は何度も誤っているのですから、外務省の仕事というのは気楽なものです。


……一方、胡錦濤政権の対台湾姿勢について同氏は「度々、台湾への武力行使を示唆した江沢民前政権」と違い、胡政権はパンダ贈呈の提案や、国内大学の台湾人留学生への奨学金授与、農産物輸入枠の拡大など「“善意”を装っているが、実際には膨大な資金を投入し、アフリカ諸国を抱き込んだり台湾の外交関係を断絶するために圧力を強めている」と指摘した。

■この視点は重要です。米ソの冷戦が終焉した直後から、かつての代理戦争の傭兵同然だったアフリカ諸国に、中国はどんどん手を伸ばしている事を、日本のマスコミはほとんど報道して無いのが不思議でなりません。前首相の小泉さんが、「野口英世賞」などという役人の思い付きにしても陳腐な土産しか持たなかったのは残念でしたが、それでもアフリカに足を踏み入れたのは正しい行動でした。それが対中国外交の意味を持っていたことを一般国民に分かり易く伝えたメディアはほとんど無かったのでした。


中国の胡錦濤国家主席が30日から2月10日までの日程でスーダンなどアフリカ8カ国を訪問する。胡主席がアフリカを訪問するのは就任以来3度目。今回の訪問国のうち、とくにスーダンではダルフール紛争の解決に向け、積極的に関与する姿勢をアピールしている。なりふり構わぬ「資源外交」に対する欧米からの批判をかわす狙いもありそうだ。スーダンは中国にとってアフリカで3番目に大きい貿易相手国で、05年の貿易額は約36億ドル(約4370億円)を記録。昨年も1月から11月までで29億ドル(約3500億円)に上った。また、中国の石油輸入国としても4番目だ。胡主席は新たな油田開発や石油精製所の建設などを提案、合意する見通しだ。

■石油と言う国家の生命線を守るために、日本の100円ショップで鍛え上げられた?安価な商品をアフリカ諸国に売り込んで、その見返りにエネルギー供給を確保するという計算です。そこに「平和攻勢」を仕掛けるのですから、「野口英世賞」など木っ端微塵であります。

衛星破壊の波紋 其の壱

2007-01-29 14:35:45 | 外交・情勢(アジア)
■東京新聞が台湾のキー・パーソンに対するインタヴュー記事を掲載しております。日本政府の能天気ぶりに付き合っていると、見るべき物も見えず、聞くべき話も聞こえて来ませんから、この記事を下敷きにしてこの「大事件」に関連する情報を少しばかり整理して置こうと思います。

台湾行政院(内閣)で対中国政策を担当する専門機関「大陸委員会」の呉〓(※金へんにりっとう)燮主任委員(閣僚)は、東京都内でこのほど本紙などとの会見に応じた。……呉主任委員は、中国のミサイル実験に対し「宇宙の平和利用原則に反し、軍事乱用をもたらす恐れがある」と非難。実験の時期が、安倍晋三首相の欧州歴訪中で、日本の防衛省発足の直後だった点を重視し「私的な見方」と断りながら「欧州諸国に中国への武器輸出禁止措置継続を求めた安倍首相と、防衛庁を省に昇格させた日本政府へ圧力を加えるメッセージと思う」と語った。……

■さすがに専門家の読みは深くて適切であります。「発足間も無い安倍政権」と「対中武器禁輸措置」の両方に圧力を掛ける狙いとすれば、何度も高価なロケットの打ち上げに失敗している日本に対して圧倒的に有利な立場を確保している、ほぼ唯一の分野と思われる宇宙開発を切り札に使うのは一石二鳥の効果が望めそうです。はたして、生まれたばかりの防衛省ではどんな動きが有ったのやら、「省」に昇格してすっかり舞い上がってしまったまま、「宇宙は自分達の管轄ではありません」などと他人事のように考えているのではありますまいな?!肝腎のミサイル防衛システムにしたところで、どこまで日本が主体的に関わっているのやら、はなはだ心細い限りのようです。


防衛庁幹部は20日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)所属のイージス駆逐艦2隻(「ステザム」と「カーティス・ウィルバー」)に、ミサイル防衛(MD)システムの基幹である海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載する改修作業が完了したことを明らかにした。米側は日本側に「クリスマス前には運用が可能になる」と伝えている。米軍によるMD対応型イージス艦の日本への配備は3隻となった。
12月21日 産経新聞

■小さな記事ですが、東アジアの太平洋岸にミサイル迎撃の「壁」が構築されているという事実は、宇宙も戦場と考えている国々にとっては無視できない軍事問題なのですが、その「壁」の足元に暮らしている日本ではこの意味が分かっていないような平和な気分が漂っているようですなあ。莫大な予算を喰っているMD計画が、北朝鮮がたまに打ち上げるポンコツ?ミサイルに対抗するのが目的のような話が日本政府内部からは出て来ますが、それは違うでしょうなあ。再びインタヴュー記事に戻ります。


呉主任委員によると中国は、台湾で初の民選による総統選が行われた1996年に大規模軍事演習を実施。台湾近海に複数のミサイルを発射したり、陳水扁総統が与党の民進党主席を兼務した2002年には台湾と正式外交関係があったナウルと国交を結び、台湾外交の切り崩しを図るなど“報復措置”を取るのが常套(じょうとう)手段。過去のこうした手法から、中国が今回も日本を射程に入れた中距離ミサイル実験で、対日圧力を強める意図というのが呉主任委員の見方だ。……

■テポドンが列島を飛び越えた時に比べて、今回の衛星破壊に対する日本の反応が鈍いのが気になります。狙われている側としては、それ相応の態度を示さないと「茹で蛙」になってしまいますぞ!他国の反応は日本とは随分と違っています。

イラクの泥沼が広がる 其の六

2007-01-29 11:48:30 | 外交・世界情勢全般

米国の航空専門誌エビエーション・ウイーク(電子版)は25日、イランが弾道ミサイルを改良したロケットで人工衛星を打ち上げる準備を行い、発射が間近に迫っていると伝えた。専門家はロケットが北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の技術を利用した「シャハブ3」の改良型である可能性があると指摘した。イランと北朝鮮の協力が宇宙分野まで拡大することを意味し、核問題に加え国際社会の懸念が強まるのは必至だ。イランは2005年10月にロシア製ロケットを使って人工衛星「シナ1」を打ち上げたことはあるが、国産技術で打ち上げるのは今回が初めてとなる。イラン議会の有力者もこのほど、近く衛星を搭載したロケットが打ち上げられると語ったという。……

■「人工衛星」の打ち上げならば、北朝鮮はイランの先輩です。ただし、将軍様の栄光を讃える音楽を宇宙から流していると報道されたのに誰もその音楽を聴いたことがないという、変な人工衛星ではありましたが、大気圏外に何かを打ち上げる技術は持っていると考えられているようですから、北朝鮮としては主力商品として売り出したいところでしょう。


……イランは北朝鮮と弾道ミサイル開発で協力してきたと、米国などから指摘されている。メープルズ米国防情報局(DIA)局長は今月、上院情報委員会に提出した書面で、「北朝鮮はミサイルや関連技術を売却しつづけている。国際的孤立で顧客は減ったものの、イランとシリアとの関係は強く、主な懸念事項だ」と警戒感を示した。衛星打ち上げに成功すれば、長距離弾道ミサイルや大陸間弾道ミサイル(ICBM)にも応用可能となる。

■本当に「大陸間」を飛行出来るかどうかは分かりませんが、イランはホメイニ革命後に起こったイラクとの8年も続いた戦争で、世界中の武器商人から大量の飛び道具を売りつけらた経験が有ります。中でも、イラクとイランの両方に自慢の「シルク・ワーム」ミサイルを売って大儲けしたのは中国人民解放軍でしたなあ。同じ型のミサイルは、今でも北朝鮮軍の主力兵器となって時々日本海に向けて発射されています。イラクのフセイン大統領は、米国からの膨大な武器供与を受けながら、ソ連からミサイル技術を買い取って自分の名前を付けて得意になっていましたなあ。


……DIAは、イランが2015年までには射程4500キロのICBMを開発する可能性を指摘していた。北朝鮮は昨年7月にテポドン2号の発射実験を行った。発射実験は失敗したものの、朝鮮半島情勢に詳しい軍事筋によると、イラン技術者が実験に立ち会ったほか、テスト結果のデータなどを北朝鮮側から受け取ったという。同筋は北朝鮮とイランがミサイルの液体燃料に関する共同プロジェクトについても話し合っている可能性を指摘した。イランは北朝鮮とミサイル開発での協力関係は「ない」と否定している。
1月27日 産経新聞

■「射程4500キロ」は、欧州全域を狙える上に、全アラブ地域も標的になるという意味を持ちます。一体、何処を狙うつもりなのか、単にイスラム地域で唯一の核ミサイル保有国になりたいだけなのか、今のところは分かりませんが、少なくとも米国とは対等の外交関係を結べることだけは確かでしょう。地下核実験が成功したら、次は宇宙を舞台とした競争に参加するというのが、1960年代に確立されたパワー・ゲームの常道です。北朝鮮はそれに従っているだけの心算でしょうし、他の国でも独裁的な権力を握った者も、同じ夢を見るものです。


欧州連合(EU)議長国のドイツは23日、「中国が最近、自国のミサイルで人工衛星を破壊した兵器の実験についてEUは深く憂慮する」との声明を発表した。EUは、米国の全地球測位システム(GPS)に対抗できるEU版GPS「ガリレオ」の開発で中国の資金協力を受けるなど宇宙の平和利用では中国と協力関係にあるが、中国による宇宙の軍事利用には明確にクギを刺した格好だ。声明は「人工衛星を標的とした兵器の実験は、宇宙空間における軍拡を避けようとする国際社会の努力と相反するもので、宇宙の安全を脅かす」と批判した。
1月24日 読売新聞

■何故か日本では、中国が実施したスター・ウォーズ実験の成功を大きく取り上げるメディアがほとんど無かったようですが、これは大変な事です。日本が大金を遣って米国と共同開発をする迎撃ミサイルにしても、軍事衛星が無ければ宝の持ち腐れになる代物ですから、いざという時に肝腎の衛星がばたばたと撃ち落されてしまったら、自慢の3段構え戦法の第1段目が無力化されてしまいます。ミサイル迎撃システムに不可欠な軍事衛星を守るための迎撃ミサイルが必要になりますなあ。


台湾の国防部(国防省)は23日、米国からの地対空誘導弾パトリオット(PAC3)調達後、中南部で6つのミサイル発射基地を新設する方針を発表した。国防部によると、中国は台湾に向けて現在、戦術弾道ミサイル880基と最新鋭の国産巡航ミサイル「東海10」100基以上を配備。PAC3など軍備強化が実現しなければ、2020年から15年で中台の戦力比は2・8対1に広がるとし、ミサイル防衛力の強化を図る必要性を強調した。
1月24日 産経新聞

■こうして、地球を一周するように米中対立の構図が徐々に出来上がっているというお話になりそうです。こんなに複雑怪奇な国際情勢を辛抱強く追跡して行く作業は、「世界史」未履修だったり、「地理」の基礎教育も受けていない国民には不可能でしょう。そんな国民が主権者となっている政府に、「防衛省」が誕生したのですから先が心配なことでありますなあ。

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イラクの泥沼が広がる 其の伍

2007-01-29 11:47:52 | 外交・世界情勢全般

米軍のイラク進攻を主導した実力者、チェイニー副大統領は24日、CNNテレビのインタビューに応じ、「イラク政策が失敗とする意見はたわごとにすぎない」などと、ブッシュ政権のイラク政策を正当化する発言を繰り返した。インタビューは、イラクへの部隊増派の必要性を訴えるブッシュ大統領の一般教書演説を受けて行われた。副大統領はこの中で、米軍が撤退すればテロリストの戦略を認めてしまうことになると警告、断固として増派計画を進めていく方針を明らかにした。……

■一般教書演説の原稿段階でも口出し出来る立場にいる、大統領の後見人ですから、自分で書いた原稿を自分で正当化しているようなものです。増派が必要になったのは自分達の失敗が原因だというのに、それに関しては一切の発言はしていないようです。まだ儲けたり無いのか?!と言われそうですなあ。


…また、フセイン政権打倒は正しかったと強調。「フセイン元大統領が今も政権の座にあったなら宿敵イランと核兵器開発競争を繰り広げていただろう」と指摘。イラクになお問題があると認めつつも、「フセイン政権排除という所期の目的は達した」と成果を力説した。1月25日 時事通信

■インドとパキスタンとの間で続いている「核兵器開発競争」には、双方に手を貸しているのですから、この発言は支離滅裂であります。「フセイン政権排除」を希望したのは、米国の、それも特殊な権益を求めていた人達だけではなかったのでしょうか?虐められていたイラク国内のシーア派の人々も、当時はフセイン失脚を希望していたのは確かでしょうが、「今の状態よりはマシだった」という声が聞こえて来そうですなあ。


イラク治安部隊と駐留米軍は24日、バグダッド中心部のイスラム教スンニ派武装勢力の拠点「ハイファ通り」でヘリからの攻撃を含む掃討作戦を展開、ロイター通信によると、少なくとも武装勢力30人を殺害、35人を拘束した。マリキ政権と米軍は、米国のイラク新政策に基づく米軍増派部隊が参加する大規模治安作戦開始を前に、首都でスンニ派武装勢力やシーア派民兵組織への攻勢を強化しており、今回の作戦もその一環とみられる。……装甲車などがハイファ通り周辺に集結、米軍攻撃ヘリも参加し、地上と上空から、建物などに立てこもる武装勢力を攻撃した。武装勢力側は、迫撃砲や自動小銃などで応戦。数時間にわたる激しい戦闘で、民間人の死傷者が出たとの情報もある。
1月25日 読売新聞

■これでは自ら親米勢力を減らしているようなものです。自分で自分の首を絞めながら、更に兵力を増やそうと言うのですから、スンナ派とシーア派の両方から狙い撃ちされる悲喜劇の中に、米国の若者が放り込まれるというわけです。マリキ政権の要人が暗殺でもされたらどうなるのでしょう?もう一度選挙をすることになれば、過激な主張をする候補に票がごっそりと集まるでしょうなあ。もう民主化戦略も何も有ったものではありません。周りは邪悪な敵だらけで、隣国のイランでは原爆が作られ、欧州全域を射程に収めるミサイルの弾頭に装填されるに違いない!と、イラク攻撃前の「大量破壊兵器」理論と同じ手法で、これまたお馴染みの英国から「極秘情報」が流れ出て来ました。


英紙デイリー・テレグラフは24日、欧州防衛当局者の話として、北朝鮮がイランの地下核実験の準備を支援していると伝えた。両国の協力関係は昨年11月以降に強まっており、イランの地下核実験が今年中に行われる可能性もあるという。……北朝鮮は、昨年10月の核実験で得たデータや情報をイラン側と共有することに同意し、イランの科学者チームを招待した。イランの軍事顧問は北朝鮮のミサイル実験に参加するため、定期的に北朝鮮を訪れており、両国の科学者の相互訪問も増加しているという。……
1月24日 読売新聞

■いつの間にか北朝鮮は核実験に成功している事になっているようです。大方の専門家筋では「失敗だった」と意見がまとまっていたはずなのに、他国の世話が出来るほどの技術を持っているのなら、あれは大成功だったことになりますぞ!何でもかんでも隠してしまう北朝鮮の体質を悪用して、怪しげな陰謀話に使うのは如何なものでしょう?外貨稼ぎで合法的な粗悪品でも、非合法な高級品?でも、何でもかんでも売りたい北朝鮮ではありますが、イランが喜んで買うほどの核兵器が有るとは思えませんなあ。それは兎も角、北朝鮮とイランとの間を仲介できるとしたら、それはロシアか中国のどちらかです。口利き料をせしめている悪い奴が居そうですなあ。

イラクの泥沼が広がる 其の四

2007-01-29 11:47:24 | 外交・世界情勢全般

インタファクス通信によると、ロシア外相は27日、米国の中東政策に関し「攻撃的論法に変化がみられず、中東での米軍駐留を増強しようとしている」と批判した。外相は、米露、国連、EUでつくる中東和平4者協議が来月上旬ワシントンで開かれる際に「米国に問いただす」と、イラク駐留米軍増派に反対する考えを示した。
1月27日 毎日新聞

■北朝鮮問題にしてもイランにしても、ロシアは徹底的に羊の皮を被って米国と対決する様子です。天然ガスのバルブを勝手に閉めたり開けたりしている自分のことは「攻撃的論法」とは呼ばないのでしょうなあ。


イラク南部カルバラで、米兵の制服を着た武装集団が検問所を通過して政府系の建物に侵入、米兵4人を拉致する事件が発生した。イラク駐留米軍は26日、「4人のうち3人は遺体で見つかり、1人は搬送中に亡くなった」と発表した。実行犯は12人とみられ、米軍は事件の容疑者4人を逮捕して取り調べている。
1月27日11時42分配信 毎日新聞

■米兵4人は全員死亡で、武装集団の方の12-4=8人は、何処かに逃げてしまったという計算になりますから、米軍は完全に裏をかかれています。これでまた無関係なイラク人を拷問に掛けたりして恨みを買うのでしょうなあ。それにしても、「米兵の制服」を何処から調達したのでしょう?きっと持っていた武器も米国製だったのでしょうなあ。現場の米兵は疑心暗鬼に襲われて、ますます神経が休まりません。こうなった原因を考えると、鶏が先か卵が先か?の難問にぶつかりますから、政策はどんどん前のめりになって泥沼はますます広がって深くなって行きます。


米ホワイトハウスは26日、ブッシュ大統領がイラク国内で米軍への妨害活動を行っているイラン人工作員に対する対抗措置をとることを許可したことを明らかにした。AP通信が伝えた。ブッシュ政権はイランが駐留米軍の死者の大きな原因となっている路肩爆弾(IED)の供給源であると判断し、「米兵の身を守るための必要な手段をとる」ことを認めた。これに関連、26日付の米紙ワシントン・ポストも、ブッシュ政権が駐留米軍に対して、イラン工作員の拘束あるいは殺害を許可したと報じた。
1月27日 産経新聞

■イラクには真偽不明の「大量破壊兵器」を理由にして攻撃を仕掛けたのですが、今度のイランは嬉しいことに?安価な手製爆弾を動かぬ証拠として持ち出せますから、イランの脅威を言い立てるのは容易でしょう。しかし、たとえ爆弾を作って供給しているのがイラン人だとしても、それがイラン政府が養成した「工作員」かどうかは分かりませんぞ!米国内にも多数のイラン人が移住しているのですから、自作自演の疑いさえ有ります。「路肩爆弾」に対する報復が巡行ミサイルやステルス爆撃機による盛大な空爆では、ちょっと釣り合いが取れませんなあ。


イラクのアブドルマフディ副大統領は25日、イラク戦争後の状況と関連して「イラク国民が占領下におかれたのは、ばかげた決定だった」と述べ、米軍を中心とした多国籍軍によるイラク占領に対し不快感を表明した。スイスで開かれている世界経済フォーラム年次会合(ダボス会議)で語った。
1月25日 毎日新聞

■米軍がバグダッドに侵攻したら、民主化を求めて苦しんでいた善良なイラク国民が大歓迎してくれる、というナイーブな絵空事を信じて米兵は市内に突入してものでした。形だけでも民主的な選挙をやって誕生した政権からも愛想が尽きた!と言われてしまっては、ブッシュ大統領の大義は地に落ちたも同然です。「今、撤退したら最悪の事態を招く」という盗人猛々しい言い訳をどこまで続けられるのか?次期大統領選挙で民主党政権が生まれたら、「後は野となれ山となれ」政策に切り替えられるだけのことでしょうか?


米民主党のペロシ下院議長は19日、米ABCテレビで、ブッシュ大統領のイラク政策を「歴史的な大ヘマだ」と痛烈に批判した。議長は「すでに危険な状況にある米兵のための予算を削減することはない」とする一方、大統領を「自分が始めた戦争に責任を持つべきだが、穴を深く掘り過ぎて出口が見えなくなってしまった」と批判。米軍増派の開始を、民主党の動きを封じるために大統領が「早く兵士を危険な状況の中に送り込んだ」と非難した。これに対しペリノ大統領副報道官は19日の記者会見で、「民主党が約束し、大統領も追求している超党派の精神と礼儀に反する」と指摘。増派は「議長の言うような政治的な思惑」ではなく「大統領が正しい政策と判断したため」と反論した。
1月21日 毎日新聞

■米国の大統領は、初代のワシントン以来、軍の最高司令官ですから、統帥権はブッシュさんが独占しています。「穴を深く掘りすぎて…」発言は、無能な二代目として石油業界に入り込んだ頃のブッシュ大統領を揶揄するための意地悪なジョークなのでしょうなあ。何処を掘っても1滴も石油は出なかったそうですから……。それに比べて副大統領のチェイニーさんは、どう転んでも必ず莫大な利益を上げて来たやり手です。戦争産業に投資しておいて、自分の手で戦争を始めて儲け、その後の復興作業を独占してまた大儲けするという天才的?な営業手腕を持っているそうですからなあ。
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イラクの泥沼が広がる 其の参

2007-01-29 11:45:27 | 外交・世界情勢全般

28日付の英紙サンデー・タイムズ(電子版)は、イラクのイスラム教シーア派強硬指導者ムクタダ・サドル師派の民兵組織マハディ軍の幹部の大半が首都バグダッドから、既にイランに逃亡していると報じた。米軍とイラク治安部隊は近くマハディ軍に対する本格的な鎮圧作戦を始めるとみられるが、同軍の中核は拘束を免れる可能性もある。イラクの元閣僚が明らかにした。 
1月28日 時事通信

■敵を一箇所に集め、頃合を見計らって集中攻撃を仕掛けて殲滅する。それは大昔から名将と呼ばれた軍人達が採用した戦法ですからなあ。こうして米軍は「民族浄化」の嫌疑を受けることなく、反抗勢力をイラク国内からイランへと追い込んで行くのでしょう。ペルシア湾内には、戦闘爆撃機を満載した航空母艦が3隻も遊弋(ゆうよく)して待ち構えていますぞ!飛んで火に入る夏の虫ですなあ。


ブッシュ米大統領は26日、イラク新政策で表明した2万人以上の兵力増派について「私が決定権者だ」と述べ、連邦上院で審議が進む増派反対決議案を一蹴(いっしゅう)する対決姿勢を示した。これに先立ち、大統領はホワイトハウスにゲーツ国防長官、イラク駐留多国籍軍のペトレイアス次期司令官を呼び、兵員や装備の迅速な輸送など増派準備を急ぐよう命じた。イラクへの兵力増派に対する反対決議案は上院外交委員会の通過を受けて週明けにも本会議での討議に移る。下院でも26日、ペロシ議長が増派阻止に向けたイラク政府首脳の説得のためバグダッドに乗り込むなど、大統領の姿勢表明で議会を主導する民主党が態度を一段と硬化させることは避けられない見通しだ。……

■「2万人」という増派の人数ばかりが目の敵にされているようですが、既に送り込まれた先遣部隊の主力が「パラシュート降下部隊」だという事実の方が問題でしょう?!バグダッド市内の家捜し作業を手伝いに、精鋭中の精鋭の部隊をちびちびと投入しようと言うわけではありません。この精鋭部隊を日本の航空自衛隊が「武器ではない」という理由で夜陰に紛れて空輸して、沙漠の何処かで特定された武装組織の秘密基地を攻撃する作戦に参加させられたりはしないでしょうな?!


ブッシュ大統領はゲーツ長官らとの面談後、記者団に対して「議会でも(イラク政策での)失敗は米国に危機を招くことを大半が認識している。私こそが決定権者であり、危機を防ぐため前に進む道を見いだす必要がある」と発言。決議案審議の結果に関係なく、兵力増派を柱としたイラク新政策を実行する姿勢を強調した。……ゲーツ長官は「部隊を展開させる手順が加速できないかを検討中だ」として数カ月を見込んでいた増派準備を短縮する方針を表明。上院決議案など兵力増派に反対する民主党の動きについては「現場指揮官の求めを差し止めることは利敵行為だ」と非難した。
1月28日 産経新聞

■民主党側の平和攻勢?にしても、大統領選挙を睨んだ選挙政治的思惑が絡んで相当に生臭いものです。米国の伝統では、民主党の大統領が戦争を始めて共和党の大統領が終戦工作をするというパターンが多いのですが、今回のイラク戦争は、珍しく共和党の大統領が始めて民主党の大統領が幕引き役を引き受けることになりそうです。外交下手な民主党が謀略渦巻く中東に手を突っ込んだりすると、ますますトンデモないことになりそうで、心配ですなあ。勿論、露骨な戦争商売に古めかしい十字軍の倫理を混ぜ込んでしまうブッシュ政権が優れているというわけではありません。


安倍晋三首相は24日夜、ブッシュ米大統領が一般教書演説で、米軍のイラク増派への支持を訴えたことについて「イラクの安定、復興に強い意志を示したものだ。効果的に成果を出すことを期待したい」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。 
1月24日19時1分配信 時事通信

■米国の隠された真意を極意に明かされた上で、こんなコメントを出しているのでしょうか?そもそもイラクの「復興」には日本が主体的に関わっていたはずです。これから始まる米軍の徹底的な掃討作戦が終わったら、またまた日本の防衛「省」に要請(命令)が来ますぞ!その時のイラク国内に満ち溢れる憎悪の炎は、前回の復興支援部隊を派遣した時期とは比べようもないほど恐ろしく燃え上がっていることは間違いありません。今度こそ標的にされそうですが、今の防衛大臣だとひょいひょいと米軍の注文に乗ってしまいそうで心配です。