旅限無(りょげむ)

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やっぱり無いのかジャーナリズム? 其の壱

2005-09-10 09:54:47 | マスメディア
■余りのことに開いた口に塞がりませんなあ。捏造記事と言えば、廃刊になってしまった『噂の真相』という過激な雑誌が有名でしたが、『アサヒ芸能』という雑誌も時々、根も葉も無いヨタ記事を書いて叱られていますが、天下の?朝日新聞が捏造記事を掲載してしまいました。当該記事は目にしたのですが、どうでも良い話だったので記憶の奥底に落ちていたのでした。内容は亀井静香さんが、忍者のように密かに長野県にやって来て、「何となく」田中康夫知事と密談をしたというネタなのですが、深読みすれば、選挙後の第三極となる新・新党の旗揚げを画策しているのではないか?という疑心暗鬼を楽しむには役に立つホラ話です。

■哀れを誘うのは、「捏造記事だ!」と田中康夫知事が記者会見した現場に、朝日新聞の記者が出席していて、


「そこの部分は朝日新聞としてきちんと取材していますが……」

と愛社精神を発揮してゴマメの歯軋(ぎし)りをして見せたという話です。これをジャーナリストの態度とは言えないでしょう。濃縮還元ではない、絞りたて100%サラリーマン記者そのものですなあ。

「ですから長野県内でお目にかかったことは一切ございません」

と知事に念を押されてしまったそうです。どこら辺が「きちんと取材」しているのか、この朝日サラリーマンに頑張って説明して欲しかったですなあ。

■読売新聞では、ここぞとばかりに朝日新聞が忘れたがっている古傷を暴(あば)いておりました。


朝日新聞は今月25日、NHK番組改変報道を巡って、取材資料が月刊『現代』9月号の記事のもとになったとして、9月中に関係者を処分する方針を公表したばかり……昨年8月には、東京慈恵会医科大の補助金不正プール問題で、記者が取材相手とのやり取りを無断録音したMDをダビングし第三者に手渡した……89年には同社のカメラマンが沖縄県・西表島のサンゴを故意に傷つけて撮影した問題……

最後に穿(ほじく)り出しているサンゴ事件は、歌手の引退宣言をしたばかりの都はるみさんが、テレビ朝日系で女性キャスターを目指して張り切っていた時期に起きたのでしたなあ。パネルにした問題の写真を示しながら、ドスの効いたはるみ節で怒りを語っていたはるみさんは、数日後には「穴があったら入りたい」立場になって、あれよあれよと思う間に歌手に復帰したのでした。当時、朝日新聞の中には熱烈なはるみファンがいて、捏造事件を仕組んだのではないか?などと邪推したものです。

■因みに、このサンゴ写真を撮ったカメラマン氏は、報道写真を辞めて立派なスタジオ付きの写真館を建てて評判も良く、大いに稼いでいるとの週刊誌記事が有りました。ウソ記事を書いてしまったのは朝日新聞長野総局員・西山卓君で、28歳!だそうです。


2001年4月入社。静岡支局を経て、04年4月に長野総局に異動した。教育や医療を取材し、今年4月から県政担当。仕事熱心でまじめだったという。

田中知事とも「信頼関係」を築いていて仲良しだったようですが、出来の悪い陰謀小説みたいな記事を偽造した理由は、自己顕示欲だったらしいのですが、数年前の米国有力紙で起こった捏造記事連発問題の犯人は、マイノリティの黒人記者でしたが、この西山君はこんなに無理をしなければならない特別な理由が有ったのでしょうか?

■西山君は「懲戒解雇」とのことですが、懺悔本でも書くのでしょうか?「ウソでも良いから特ダネ持って来い!」のような暴言を吐いた上司がいたりすると面白いのですが、大事(おおごと)になってしまったので軽率なことは言えないでしょうなあ。


東京本社編集局長の木村さんと長野総局長の金本さんは減給・更迭
東京本社地域報道部長の脇坂さんと政治部長の持田さんは譴責
政治部次長の曽我さんは戒告
常務編集担当の吉田さんは役員報酬減額


という電撃処分が発表されてしまいました。本当は、長野県の県政が上手く行っているのか、失敗しているのかを全国に知らせて欲しいのですが、「地方の時代」を切り拓く注目すべき知事の一人だった田中康夫さんが、県民の支持を大きく下げている理由が良く分からないのですから、書くべきことが山ほど有るはずなのになあ。

■A4一枚分のメモを受け取ったのが本社政治部記者だったのが不味かったようです。こういう陰謀話が大好きな人達でしょうから、すぐに「密談」記事を作ってしまったのでしょう。


「郵便局を守れっていうだけでは選挙に負けますよ。サラリーマン増税反対とか、もっと言うことがあるでしょう」

と田中康夫さんが亀井さんに助言したのだそうで、正に見てきたようなウソ記事になってしまいました。

其の弐に続く

何かが起こる前に 其の弐

2005-09-10 09:30:41 | 社会問題・事件
其の壱の続き

■9月11日の総選挙投票が終ってから「特別国会」が召集される事になっていますが、万一、小泉さんの思惑通りに自公連立内閣が再び登場すれば、「郵政民営化専門バカ」の新人議員を筆頭に、選挙公認欲しさにビビり切ってしまった自民党の先生方が議席を埋めるのですから、外務省が「再延長」法案を提出すれば過半数の賛成ですんなり通るでしょうなあ。しかし、逆に民主党が政権を取ったら、サマーワ派遣部隊の撤退が提案されて国会は大騒ぎになるでしょう。この騒動の中で「再延長」問題が宙に浮いてしまうかも知れません。

■スペインやイタリアは、フランスやドイツという頼りがいの有る兄貴分がいるEUという集団の中に逃げ込めば安心なので、撤退を断行できましたが、日本は米国と単独で喧嘩しないと撤退は出来ません。断片的な情報を繋ぎ合わせると、米国にとって(失礼ながら)案山子同然の陸上自衛隊は旗だけを立てておいてくれれば良く、常に危険な地域への武器・人員・情報を輸送してくれる航空自衛隊の方が有り難いと思っている節が有ります。ですから、陸上自衛隊ばかりに目が行っていると、航空自衛隊の極秘任務を隠す煙幕に過ぎなかった陸自が消えると露骨な日米共同作戦の姿が露(あらわ)になってしまうのではないでしょうか?

■考えて見れば、敗戦直後から旧日本海軍は米軍とのパイプを持っていたようですし、朝鮮戦争の時には旧海軍のパイロットが極秘任務で協力していた事実も有りますから、最初にインド洋に海上自衛隊が呼び出されて、次に航空自衛隊がクウェートの基地に呼び出されるという順番は歴史的にも整合性が有ったように思えますなあ。案外、陸上自衛隊は米軍とは深く結び付いていないらしく、はっきり言ってIT化が進んでいる米軍にとっては、共同作戦をしようにも単なる足手まといとなるという噂も有ります。宿営地という動かない標的の中に潜んでいるストレスは大変なものでしょうし、空自の重要任務から日本の目を逸らすだけの案山子役だと知っているとしたら、本当に陸自の皆さんは可哀想です。

■テロリストに攻撃目標を知らせることになるから、という理由で宿営地の中での取材は拒否されているようですが、クウェートの空軍基地となれば、それ以上の機密に属している場所なので、一体、空自は何をやっているのだろう?などと思っても教えて貰えません。日本政府も米国の軍事機密を明かす権限など持っていませんから、おいそれと記者会見でペラペラ喋るわけにも行かないでしょう。そもそも、米軍がイラク全土および中東全域で何をやっているのか、日本政府はまったく知らされていない可能性さえ有りますぞ!

■郵政民営化の議論に際して、政府からまともな資料を出して貰えない民主党の体たらくですから、米軍の軍事機密事項に直結しているイラク国内での作戦行動に組み込まれているワマーワ派遣部隊とクウェートの空自部隊を、勝手に動かせるだけの情報を民主党政権がどうやって手に入れる心算なのか、はなはだ心細いばかりです。サマーワの陸上自衛隊だけ撤退させて、特措法でインド洋に派遣されている海上自衛隊だけ残すという判断を、そんな民主党がどんなレトリックで下すのかは見ものですが、自公連立政権であっても、
独自の判断を下せるだけの情報を握っているのか、とても心配になってしまいます。

■何よりも、大手のマスコミ各社が「談合」してイラク国内には「正社員」を送らないと決めているような状態ですから、私たちが偶に目にするイラクの映像は、すべて米国の検閲済みの物ばかりですし、以前の記事にも書きましたが、来日したイラク人がイラクの現状を訴えようとしても、日本のマスコミは一切相手にしないそうですから、そんな情報貧乏のままで、馬鹿馬鹿しい国会論議を聞かされて、思い込みの激しい新聞各社の素人談義の記事を読まされながら、自衛隊の撤退を考えることなど出来るわけがないでしょうなあ。こんな状態で日本国内にアルカーイダがテロを仕掛けて来たら、小泉さんは「状況を総合的に見て、適切に判断する」のでしょうなあ。そう言えば、今回の選挙で、元自衛官という衆議院議員候補が一人もいないのはどうしたわけでしょう?候補者リストで見落としているだけかも知れませんが……。

おしまい。