■農林水産省が「内々定」を出した来年度の入省予定者に東大法学部出身者が一人も含まれていない事が明らかになったそうです。
農水省の歴代事務次官は東大法学部出身者が大半。国家公務員1種試験に合格した「キャリア組」も、同省が毎年15人前後採用する中で東大法出身が10人以上を占めた年もあった。だが、最近は数人程度に減っていた。
という朝日新聞の記事が8月5日に掲載されました。「出身大学にこだわらず人物本位で採用した」と農水省は強がりを言っているそうですが、或る幹部の言葉として、「採用したかった学生の多くが、法科大学院への進学や外資系企業などへの就職を選んだ」という実態も紹介されています。
■農林省のエリート官僚から政界に入った議員が、先日自殺したばかりですが、郵政公社の次に狙われるのは「農協組織」ではないのか?という噂も流れている昨今、東大目指して必死で勉強した後で、農水省に入りたがる奇特な学生は居ないのでしょうなあ。日本中の山を荒れ放題にしておかねばならない程に農水省の予算も権限も縮小されているのですから、やりがいの有る仕事などは無くなっているのかも知れません。東大出身のテレビ・タレントだの、中退して大金持ちになったホリエモン君などが大きく取り扱われる世の中で、官僚を目指して地道に勉強する若者はどんどん減っているのは分かります。
■防衛大学卒業生の任官拒否問題は、「自衛隊反対」を新聞が公言していられた時代には、褒めるような扱い方もされましたが、やっと「ふざけるな!」という真っ当な意見が大勢を占めるようになっているようです。しかし、文官の中には東大卒の上に欧米大学での学位を上乗せしてから、あっさりと退職して外資系や国内の有力企業に転職するツワモノが続出中だという情報も有ります。「天下り」と「官製談合」が禁止されてしまえば、一つしかない事務次官ポストを生涯の目標として競争する馬鹿馬鹿しさに、早々と見切りを付けるのも当然なのでしょうなあ。賢いエリートは、国費で留学してキャリアを上げて退職する時代になっているようです。官僚ばかりが悪者にされるのは間違いで、官僚を使いこなせない無能な政治家を議会に送り込んだ選挙民の責任の方が重大なのですが、選挙民はマスコミのお客様なので、露骨にそんな事は書けませんなあ。
■有能な官僚が減少するのを心配していたら、8月7日の新聞には、「報償費、5年で6割減」という記事が掲載されましたぞ!
全国の都道府県警察が支出した捜査用報償費が激減し、総額で04年度には約15億円余と00年度の約36億円余の半額以下になったことが分かった。
というのですが、これは喜ばしいニュースなのでしょうか?03年11月に北海道警の不正経理が発覚して報償費をごまかして溜め込んだ裏金が11億円も有った!と大騒ぎになりましたが、マスコミの騒ぎ方が間違ったのではないか?と今更ながら心配になってしまいました。報償費の減り方の激しいトップ6は、
岐阜県 9280万円から395万円への96%減
徳島県 7328万円から482万円への93%減
大分県 3980万円から612万円への85%減
群馬県 5548万円から898万円への84%減
青森県 9522万円から1680万円への82%減
高知県 3424万円から621万円への82%減
という具合なのですが、比率ではなく減少額で見ると、
警視庁 8億1268万円から5億5237万円への2億6031万円減
大阪府 3億0466万円から8843万円への2億1623万円減
が目を引きますなあ。千葉県・神奈川県・愛知県は1億円以上の減額です。
報償費は少なくともそれ以前の01年度から大幅に減っているが、00年7月には神奈川、新潟、埼玉県警などの不祥事を受けた警察刷新会議が緊急提言を出し、全国の警察は信頼回復に向けて監察の強化や情報公開などを打ち出した。……04年3月には、報償費の支払い対象となった捜査協力者が匿名を望んだ場合などに認められてきた偽名領収書を、04年度からは認めない方針を警察庁が示した。
警察庁は報償費の全国的な減額について、不正経理が全国的に広がっていたことを示すものではないと否定している。
と記事は救いようも無い事を書いて終わっています。
■佐藤さんという元警官が実名告発者となったのは、北海道で敏腕刑事として有名だった元部下が麻薬や拳銃の売人までしていた大事件に心を痛めた結果でした。捜査費用が上役の裏金に消えてしまって、現場の捜査官は自腹を切って捜査をしなければならなくなっているから、ミイラ取りがミイラになってしまう危険が常に有る!という真っ当な意見が出されたのです。マスコミが騒ぎ出した時に、「裏金なんかありません」と平然と北海道警察のお偉方は答えていたものです。その裏で、裏金ではなく報償費自体を削ってしまったのですから、現場はどうなっているのか、素人でも想像は付きますなあ。
減額の理由を各警察に聞いたところ、捜査の現場が多忙になって報償費が必要な内偵捜査などが手薄になっていることや、警察不祥事の続発、不正経理問題で協力者が減ったり、捜査員が報償費の執行に及び腰になったりしているためだと説明している。……
つまり、まともな捜査は不可能だという事でしょう?
■その昔、100万都市となっていた江戸時代、江戸の治安はどうやって守られていたのかをすっかり忘れてしまったようですなあ。月ごとに交代する南と北の町奉行の下に、25人の与力と60人の同心という警察官僚が居ただけでした。そして、実際の情報収集と探索は誰がやっていたのか?というと、「目明し」「岡っ引き」「御用聞き」などと呼ばれた前科持ちの犯罪者集団です。銭形ヘイジさんや全国民が大好きな水戸黄門の旅先で活躍する風車のヤシチさんなどは、警察官ではありません。渋いところでは、『鬼平犯科帳』でも長谷川平蔵さんが手足のように使うのも同じような前科者達です。「蛇の道は蛇」というのは何時の世の中も同じで、石原裕次郎さんが元気だった頃の『太陽に吠えろ!』の山さんが、新宿中央公園で浮浪者のような風体のオジさんに、千円札を差し込んだハイライトを上げるシーンは有名ですなあ。
■しかし、町の「親分」を利用し過ぎると、捜査に依怙贔屓(えこひいき)が混ざってしまうので、八代将軍の吉宗さんは、「目明し」を使うのを禁止して「目安箱」という密告制度を作ったりしますが、結局は町の親分さん達の協力が無いと犯罪捜査は上手く行かなかったようで、制度は元に戻されました。前科者を使う治安警察を、江戸っ子達は「不浄役人」と呼んだのは理由の有ることでした。今でも、暴力団の抗争事件を未然に防いだり、犯人を逮捕したりする時には内部情報が欠かせないようですから、刑事さんとヤクザさんは持ちつ持たれつの関係を作りがちで、やり過ぎると「同業者」になってしまうとうわけですなあ。
■密告者の本名を出さないと報償金が出ないとなると、熱心な捜査官はどこかからお金を工面しなければならなくなりますが、そんな人が何人いるでしょう?ですから、ほとんどの捜査は「散歩」と同じ効果しか望めなくなるでしょうなあ。未解決事件がどんどん増えて、治安はますます増加してしまいます。検挙率がぐんと上昇して、それに伴って報償金予算も増える、それが普通の流れでしょうが、先に報償金を削減してしまったら、現場の士気は下がる一方でしょうから、有能な刑事さんはどんどん減って、立っているだけ・歩いているだけ・書類を書くだけの警官ばかりが増えそうですなあ。恐ろしいことです。
世の中には、減らさなければならない数字と、絶対に減らしてはいけない数字が有るという、極当たり前の御話でした。
農水省の歴代事務次官は東大法学部出身者が大半。国家公務員1種試験に合格した「キャリア組」も、同省が毎年15人前後採用する中で東大法出身が10人以上を占めた年もあった。だが、最近は数人程度に減っていた。
という朝日新聞の記事が8月5日に掲載されました。「出身大学にこだわらず人物本位で採用した」と農水省は強がりを言っているそうですが、或る幹部の言葉として、「採用したかった学生の多くが、法科大学院への進学や外資系企業などへの就職を選んだ」という実態も紹介されています。
■農林省のエリート官僚から政界に入った議員が、先日自殺したばかりですが、郵政公社の次に狙われるのは「農協組織」ではないのか?という噂も流れている昨今、東大目指して必死で勉強した後で、農水省に入りたがる奇特な学生は居ないのでしょうなあ。日本中の山を荒れ放題にしておかねばならない程に農水省の予算も権限も縮小されているのですから、やりがいの有る仕事などは無くなっているのかも知れません。東大出身のテレビ・タレントだの、中退して大金持ちになったホリエモン君などが大きく取り扱われる世の中で、官僚を目指して地道に勉強する若者はどんどん減っているのは分かります。
■防衛大学卒業生の任官拒否問題は、「自衛隊反対」を新聞が公言していられた時代には、褒めるような扱い方もされましたが、やっと「ふざけるな!」という真っ当な意見が大勢を占めるようになっているようです。しかし、文官の中には東大卒の上に欧米大学での学位を上乗せしてから、あっさりと退職して外資系や国内の有力企業に転職するツワモノが続出中だという情報も有ります。「天下り」と「官製談合」が禁止されてしまえば、一つしかない事務次官ポストを生涯の目標として競争する馬鹿馬鹿しさに、早々と見切りを付けるのも当然なのでしょうなあ。賢いエリートは、国費で留学してキャリアを上げて退職する時代になっているようです。官僚ばかりが悪者にされるのは間違いで、官僚を使いこなせない無能な政治家を議会に送り込んだ選挙民の責任の方が重大なのですが、選挙民はマスコミのお客様なので、露骨にそんな事は書けませんなあ。
■有能な官僚が減少するのを心配していたら、8月7日の新聞には、「報償費、5年で6割減」という記事が掲載されましたぞ!
全国の都道府県警察が支出した捜査用報償費が激減し、総額で04年度には約15億円余と00年度の約36億円余の半額以下になったことが分かった。
というのですが、これは喜ばしいニュースなのでしょうか?03年11月に北海道警の不正経理が発覚して報償費をごまかして溜め込んだ裏金が11億円も有った!と大騒ぎになりましたが、マスコミの騒ぎ方が間違ったのではないか?と今更ながら心配になってしまいました。報償費の減り方の激しいトップ6は、
岐阜県 9280万円から395万円への96%減
徳島県 7328万円から482万円への93%減
大分県 3980万円から612万円への85%減
群馬県 5548万円から898万円への84%減
青森県 9522万円から1680万円への82%減
高知県 3424万円から621万円への82%減
という具合なのですが、比率ではなく減少額で見ると、
警視庁 8億1268万円から5億5237万円への2億6031万円減
大阪府 3億0466万円から8843万円への2億1623万円減
が目を引きますなあ。千葉県・神奈川県・愛知県は1億円以上の減額です。
報償費は少なくともそれ以前の01年度から大幅に減っているが、00年7月には神奈川、新潟、埼玉県警などの不祥事を受けた警察刷新会議が緊急提言を出し、全国の警察は信頼回復に向けて監察の強化や情報公開などを打ち出した。……04年3月には、報償費の支払い対象となった捜査協力者が匿名を望んだ場合などに認められてきた偽名領収書を、04年度からは認めない方針を警察庁が示した。
警察庁は報償費の全国的な減額について、不正経理が全国的に広がっていたことを示すものではないと否定している。
と記事は救いようも無い事を書いて終わっています。
■佐藤さんという元警官が実名告発者となったのは、北海道で敏腕刑事として有名だった元部下が麻薬や拳銃の売人までしていた大事件に心を痛めた結果でした。捜査費用が上役の裏金に消えてしまって、現場の捜査官は自腹を切って捜査をしなければならなくなっているから、ミイラ取りがミイラになってしまう危険が常に有る!という真っ当な意見が出されたのです。マスコミが騒ぎ出した時に、「裏金なんかありません」と平然と北海道警察のお偉方は答えていたものです。その裏で、裏金ではなく報償費自体を削ってしまったのですから、現場はどうなっているのか、素人でも想像は付きますなあ。
減額の理由を各警察に聞いたところ、捜査の現場が多忙になって報償費が必要な内偵捜査などが手薄になっていることや、警察不祥事の続発、不正経理問題で協力者が減ったり、捜査員が報償費の執行に及び腰になったりしているためだと説明している。……
つまり、まともな捜査は不可能だという事でしょう?
■その昔、100万都市となっていた江戸時代、江戸の治安はどうやって守られていたのかをすっかり忘れてしまったようですなあ。月ごとに交代する南と北の町奉行の下に、25人の与力と60人の同心という警察官僚が居ただけでした。そして、実際の情報収集と探索は誰がやっていたのか?というと、「目明し」「岡っ引き」「御用聞き」などと呼ばれた前科持ちの犯罪者集団です。銭形ヘイジさんや全国民が大好きな水戸黄門の旅先で活躍する風車のヤシチさんなどは、警察官ではありません。渋いところでは、『鬼平犯科帳』でも長谷川平蔵さんが手足のように使うのも同じような前科者達です。「蛇の道は蛇」というのは何時の世の中も同じで、石原裕次郎さんが元気だった頃の『太陽に吠えろ!』の山さんが、新宿中央公園で浮浪者のような風体のオジさんに、千円札を差し込んだハイライトを上げるシーンは有名ですなあ。
■しかし、町の「親分」を利用し過ぎると、捜査に依怙贔屓(えこひいき)が混ざってしまうので、八代将軍の吉宗さんは、「目明し」を使うのを禁止して「目安箱」という密告制度を作ったりしますが、結局は町の親分さん達の協力が無いと犯罪捜査は上手く行かなかったようで、制度は元に戻されました。前科者を使う治安警察を、江戸っ子達は「不浄役人」と呼んだのは理由の有ることでした。今でも、暴力団の抗争事件を未然に防いだり、犯人を逮捕したりする時には内部情報が欠かせないようですから、刑事さんとヤクザさんは持ちつ持たれつの関係を作りがちで、やり過ぎると「同業者」になってしまうとうわけですなあ。
■密告者の本名を出さないと報償金が出ないとなると、熱心な捜査官はどこかからお金を工面しなければならなくなりますが、そんな人が何人いるでしょう?ですから、ほとんどの捜査は「散歩」と同じ効果しか望めなくなるでしょうなあ。未解決事件がどんどん増えて、治安はますます増加してしまいます。検挙率がぐんと上昇して、それに伴って報償金予算も増える、それが普通の流れでしょうが、先に報償金を削減してしまったら、現場の士気は下がる一方でしょうから、有能な刑事さんはどんどん減って、立っているだけ・歩いているだけ・書類を書くだけの警官ばかりが増えそうですなあ。恐ろしいことです。
世の中には、減らさなければならない数字と、絶対に減らしてはいけない数字が有るという、極当たり前の御話でした。