旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

中東大戦は始まっている?

2005-09-26 19:58:33 | 外交・世界情勢全般
■イラクを崩壊させて「中東のパンドラの箱」の蓋(ふた)を開けた米国は、2つの巨大ハリケーンに沈み、これが米国民を正気に戻したのは不幸中の幸いだったかも知れません。台風一過の晴天が訪れても、米国は明るい希望に向って立ち上がれるかどうか、非常に心配な状態です。さっさと片付くはずのイラク復興計画が完全に頓挫して、日本の新聞紙上でも「自爆テロ」の扱いは、日常生活の一齣(こま)のような小さな扱いです。その内、「今日はイラクで爆発が無い」ことが大ニュースになるかも知れませんなあ。

■イラクと北朝鮮は、財布と鉄砲を一つずつしか持っていない米国にとっては、切り離して扱えない問題です。勿論、財布の中身を見て、足りない分は日本に押し付けて来るのは明らかです。それが沖縄の米軍基地の移転問題ともリンクしているのですから、10年間ももたもたやっていた日本政府は最悪の選択をしてしまった事になるでしょう。北朝鮮と弱気を隠さないような妥協をして見せた米国は、東アジアで中国に大きなアドバンテージを与えた事になります。ロシアも、煮え切らない日本とは距離を取って中国にすり寄っていますから、中国は「朝貢外交」が復活する期待に胸を膨らませているでしょうなあ。このまま北京オリンピックに雪崩れ込めば、世界の主要国は、何が何でも大会を成功させようと最大限の協力をするでしょう。

■今となっては何もかもが手遅れだ!と言ってしまうわけに行かないのが国際問題であり、外交政策というものでしょう。すべての問題の中心にイラクが在ります。中東に一つの形を与えていたジグソー・パズルの大きなワン・ピースを抜き取ったのですから、あっちもこっちもぼろぼろとピースが崩れ落ち続けているのです。米ソ両国に欧州諸国を加えて自在に操ったイラクが、石油でもパレスチナ問題でも、常に中東の第一走者でした。それが消えれば、シリアとイランが第一勝者になろうと飛び出してくるのは最初から分かっていたでしょうに!既に、サウジアラビアは米国の子分を辞めている節が有るので、いよいよ米国は昔からの馴染みに頼らねばなりません。戦闘終了直後の勢いはすっかり無くなってしまいましたなあ。復興政策が躓(つまづ)いた時から、駐留米軍の犠牲者が1000人に達すれば、自国内で反戦運動が始まるだろう、と予想されていたのですが、よく1900人まで米国は耐えました。本当に米国は十字軍カルトに覆われたのか?と思っていたら、ヴェトナム戦争後期を彷彿とさせる光景がワシントンに現れましたなあ。反戦デモです。

■日本が訳の分からない総選挙のお祭り騒ぎが終わり、失敗が懸念されていた愛知の博覧会が、値引きと弁当持込許可で何とか予定入場者数を越えて終了した日に、中東はそれに合わせた訳ではないでしょうが、俄かに動き出しました。

首都ベイルート北方ジュニエで25日、車に仕掛けられた爆弾が爆発、乗っていたテレビ局、レバノン放送(LBC)の著名な女性キャスター、メイ・シェディアク氏が足などに重傷を負った。同氏はキリスト教徒。LBCは反シリア的な報道で知られる。レバノンでは今年2月にハリリ元首相が暗殺された後、テロ事件が頻発。6月には著名ジャーナリストのサミール・カシール氏、共産党のジョージ・ハウィ元書記長と、反シリア派が爆弾テロで相次いで殺された。ベイルートでは今月16日、キリスト教徒地区で2台の車の間に仕掛けられた爆弾が爆発。少なくとも1人が死亡した。
毎日新聞 2005年9月26日

イラクを支配していたのはバース党という組織です。サダム・フセインさんも立派な党員です。この政党はイスラム教よりも社会主義とアラブ民族主義を結合した奇妙なイデオロギーを看板にして、結局、社会主義風の一党独裁とアラブの王様の伝統が結合した政治をしました。イラクのバース党は崩壊しましたが、実は、この政党の本家本元はシリアなのですなあ。決して弟分の敵討ちなどする人達ではなく、他人の不幸を大いに喜ぶリアリスト達なので、中東の覇者になろうとシリアが暴れ出すのは分かっていました。そこまでは米国でも予測していたのですが……


陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワで25日夜(日本時間26日未明)、ムサンナ州政府庁舎近くに迫撃弾が1発撃ち込まれた。死傷者はなかった。現地の警察当局が明らかにした。現場はサマワ中心部。警察が事件の背後関係を捜査している。
 サマワでは、イスラム教シーア派の反米指導者サドル師派が、知事の辞任を求め州当局と対立を続けている。警察当局者によると、迫撃弾は着弾地点の約3キロ北側から発射されたとみられる。
毎日新聞 2005年9月26日

■こちらは明らかにイランが裏で糸を引いています。サダムのイラクが崩壊すれば、クルドとシーア派が暴れ始めることも予想されていましたが、イランのハシャギぶりは予想外だったのかも知れません。米国は甘かったのでしょう。それに付き合わされた日本はどうするのでしょう?


パレスチナ・ガザ地区からイスラエルに向けロケット弾を発射していたイスラム原理主義組織ハマス最高幹部のザッハール氏は25日夜(日本時間26日未明)、同地からの攻撃停止を宣言した。だが、別の原理主義組織イスラム聖戦は同夜、幹部ら2人をイスラエル軍に殺害され、停戦の破棄を示唆。軍側も26日早朝までガザ地区で激しい空爆を続行しており、事態はなお流動的だ。
 ハマスはガザ北部での23日の軍事パレードで爆発が起き、多数の死傷者を出した事件について、イスラエルの攻撃が原因だと主張。25日までに数十発のロケット弾を発射し、イスラエル人5人にけがを負わせた。だが、その後の調査で事故だった可能性が強まり、イスラエル軍の激しい報復と相まって、パレスチナ人の間にもハマスの責任を問う声が広まっていた。
 イスラエル放送によると、ハマスの攻撃停止宣言後もイスラエルを狙ったガザからのロケット弾攻撃はおさまらず、軍側も中北部のガザ市から南部のハンユニス、ラファにかけて、ハマスを含む複数の武装組織の武器工場など4カ所以上を標的に空爆を続行。パレスチナ側は女性が負傷したほか、ガザ市で停電などが起きていると報じた。毎日新聞 2005年9月26日
 
■ハマスという組織は、最初はイスラエルが援助していた穏健な反アラファト運動の集まりでしたが、エジプトで成長していた過激な原理主義の影響で反米・反イスラエルを主張する凶暴な組織に変身したのでした。資金はサウジアラビアとイランが競い合って提供してくれました。サウジの資金はアルカーイダを育てた資金と同根のものでしょうなあ。サウジ王家が我が身可愛さに米国側に寝返ってからは、イランが主導権を握って援助資金と指示を出しているようです。パレスチナ側から打ち込まれる携帯式のミサイルは、ロシア製のカチューシャのはずなのですが、余り報道されていませんなあ。中東ではアラブ側のゲリラが愛用する安価で扱い易い優れものです。イスラエルはこのカチューシャが大嫌いです。もう直ぐ、日本の自衛隊員も大嫌いになるでしょうし、日本国民も嫌いになるでしょうなあ。そして、

イランのIAEA代表団のバイディ団長が24日、「IAEA史上初めて全会一致の精神が崩れた」と西側の失敗を強調した。しかし、決議では、イランが秘密裏に核開発を行った保障措置協定違反を認定しており、モッタキ外相も25日、国営テレビで、「政治的で違法、不合理」と切り捨てた。
 イラン政府は、「米国はイラクへの対応に追われ、イランを軍事攻撃する可能性が低い」と判断しており、これが強硬姿勢につながっている。
 また、今後、核問題が安保理に付託されるとしても、ウラン濃縮への着手という一線を越えない限り、常任理事国の中露がイランを支持するとイランは考えており、情勢を見極めつつしたたかに対応する可能性が高い。現地ジャーナリストは、「指導部にとって核燃料サイクルは国家体制維持のための取引材料」と指摘。「真の狙いは米国を交渉のテーブルに引きずり出すことだろう」と分析している。毎日新聞 2005年9月26日
 
■イランは追い出されたパーレビ国王時代からドイツの技術と米国の援助で核武装しようとしていた国です。その遺産を受け継いで、中国・パキスタン・北朝鮮からの売り込みに乗って、北朝鮮とまったく同じ「核の平和利用」を叫んでいます。石油と天然ガスが「売るほど」有るイランが、核を平和利用するはずは無いでしょうなあ。イラク崩壊し、シリアも米国に締め上げられている現在、サウジアラビアを出し抜き、エジプトを黙らせるには原爆と長距離ミサイルが必要なのです。ですから、北朝鮮は核を使用するガッツが無いとしても、イランは喚声を上げて使うために準備を進めているのです。日本の外務省に捌けるような宿題ではありません。石油が止まる。核が飛ぶ。丸腰の自衛隊は憲法改正まで動けません!

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殿、御乱心!

2005-09-26 08:51:55 | 社会問題・事件
■波乱の秋場所が、ブルガリア対モンゴルというチンギス汗以来の因縁が燃え上がったような対決で盛り上がって、やはり歴史と同じようにチンギス汗の勝ち?という結果で終わりました。来場所あたりから、土俵入りには国旗を持って入場かな?などと失礼な想像も湧いて来ますが、5回も「満員御礼」になったのですから、観客は国技にこだわりは持っていないのでしょう。

■そんな日に、東北の仙台にプロ野球の炎を再点火した田尾監督が解任!という訳の分からないニュースが日本の野球ファンの中を駆け巡ったようです。このニュースを聞いて、最初に思い浮かべたのは、池波正太郎さんあたりが書きそうな、意地っ張りの馬鹿殿に玩具にされて、理由も無い果し合いをやらされるという武家社会の不条理ドラマでした。素人の想像ですが、急成長の稼ぎ頭!IT社会の寵児!とあちこちでちやほやされるミキタニという人は、きっとあちこちの経営者が集まる宴会やパーティで、やっかみ半分の爺さん達から「最下位だなあ、ウフフ」とか「100敗はいつ頃?エヘヘ」などと言われ続けていたのではないでしょうか?

■二軍も無いような寄せ集め球団を立ち上げたのですから、田尾さんに三顧の礼で監督就任をお願いした時には、「3年は我慢しよう」「ファンを獲得するのが最優先」などと考えていたのに、だんだん心がナベツネ化?して来たのではないでしょうか?自分が持っている球団とは言っても、選手達は彼のグラデュエーターでもないし、家来でもないのですぞ!「主君に恥をかかせている!」などと考えるのは大間違いなのですが、今までの日本のプロ野球は、こんな人達が運営して来たのでしょうなあ。

プロ野球の楽天は25日、田尾安志監督(51)と来季の契約を結ばないと発表した。3年契約の1年目で事実上の解任となった。米田純球団代表は「来季の指揮は依頼しないことを監督に伝え、了承された」と述べた。田尾監督は公式戦の残り2試合は指揮を執るが、球団には残らず退団する見通し。
 田尾監督は昨年10月、50年ぶりの新規参入球団となった楽天の監督に就任。今季は38勝95敗1分け(25日現在)で、8月29日には最下位が確定。リーグで40年ぶりに90敗を喫するなどチームは低迷していた。
 4月にはコーチ陣の降格人事などを巡り、田尾監督と三木谷浩史オーナーとの対立が表面化したこともあった。球団側は「より強いチームを作るためと、ファンの期待に応えるために、チームの再構築が必要。強いチームにするには避けられない道」と解任に踏み切った。球団側は後任監督について「現時点では未定。チームを強く出来る人を早急に選任したい」としている。元ヤクルト、阪神監督で社会人野球シダックス監督の野村克也氏(70)らが浮上している。……本拠地最終戦で解任が言い渡された楽天の田尾監督。試合終了後のセレモニーでは、右翼席のロッテファンからスタンド全体に広がった「田尾コール」中、田尾監督は「日本一の応援をありがとう。今季のこれまでの成績は誇りに思っている」と、目を潤ませながらあいさつした。
 報道陣の前に姿を現した田尾監督は「今季は勝った、負けたで判断されるわけがないと思っていた。だが、プロ野球はいろんなことがある。(フロント)判断にはいろんな結論があるもの」とサバサバとした様子で心境を吐露。今季は参入初年度で他球団の構想から外れた選手がほとんどのチーム構成もあり、「今年は土台作り、とのんびり考え続けたところがあったかもしれない」と自省した。
毎日新聞 2005年9月25日

■何時だったか、野村監督が阪神に行く時に、「監督の首をすげ替えればチームが変ると思ったら大間違いですよ」と、オーナーに間で含めるようにして教え諭した事を話していましたなあ。その野村さんに後任を頼むとは、ミキタニという人も大したことは無いのでしょう。最下位だろうと、100敗だろうと、地元に愛され続ける球団をファンと一緒に支える男気を見せれば、プロ野球にも新しい時代が来た!と皆が喜んだでしょうに!ミキタニよ、お前もか?!とファンは怒っているようです。漏れ聞くところによると、「ファンは怒るでしょうが、10日もすれば忘れますよ」と球団関係者は嘯(うそぶ)いているとか……。やはり、粘り強くシツコイ不買運動しかファンの怒りを示す方法は無いのでしょうか?すけべサイトや金貸しサイトは、別の会社にも有りますし、ネット販売を一ヶ月我慢しただけで親会社の楽天は真っ青になるのではないでしょうか?

■「俺のチームだ!」と思っているオーナーも、チームの頭に会社の名前を付けるのが当然と思っている球団関係者も、ファン有っての商売だとは考えられない思考回路に固まっているのですから、テレビ放送時間が消滅する巨人を笑っていられる立場ではないでしょうに。楽天の観客動員力とテレビの視聴率は巨人を凌いでいると聞きます。がらがらのスタンドには何も感じないくせに、リーグ内の順位には異様にこだわるようなオーナーは、経営者でもなく野球ファンでもないでしょう。そんな人は、自分の都合で家来に決闘させたり切腹させたりする馬鹿殿と同じです。長年、赤字を放置して、会社の宣伝の一部だと思い込んでプロ野球をスポイルし続けたツケを払わなければならなくなっているのに、爺様たちは昔と同じ流儀で変な相談をしているようです。

■少なくとも、仙台を中心に東北地方では野球少年の数の減少に拍車が掛かるでしょうなあ。甲子園大会に出て来る東北地方の私立高校の野球部に、一体何人の地元出身の選手が在籍しているのか?企業機密のように明らかにされずに、地元応援団に寄り掛かって運営しているのが甲子園大会です。大相撲を見習って、選手の紹介には「○○県出身」の一言を入れて見せて欲しいものです。高校野球とプロ野球は競い合うように地元との関係を切ろうとして来たようにも思えます。巨人の主力選手を見るたびに、「前は○○チームにいたんだ」と薀蓄(うんちく)を疲労してくれる熱心なプロ野球ファンが居るものです。そんな話を聞かされている内に、自分も東京生まれでもないのだから、と熱も冷めて行くのでしょうなあ。プロ野球の次に熱が冷めて崩壊して行くのは高校野球でしょう。不祥事が続々と出て来るのもその末期症状が出ているのかも知れません。

■地元密着型のサッカーと大相撲がどんどん野球ファンを吸収し続けて、誰も野球に興味を持たなくなる時代も近いような気もします。最近、親子でキャッチボールしている子供を見ましたか?厳しい訓練に耐えて、技術を磨いた選手達が、馬鹿殿の玩具になっているのを見た少年達も父親達も、グローブとボールには手を伸ばさないでしょうなあ。

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夢は大きく仕事はセコく

2005-09-26 08:10:36 | 外交・世界情勢全般
■学生時代の万能感が消えず、能天気な役所の作文の内容を心から信じてしまうのが御役人が共通に持つ性質のようです。それが特定の国のお役人であろうと、国家公務員であろうと、まったく変らないというのが面白いですなあ。お役人様の最大の任務は、「予算の獲得」と「予算の消化」で、これを繋ぐのが「計画書」のような目論見書類なのでしょうなあ。そこには、獲らぬ狸の皮算用が満載です。「国際連合・教育・科学文化・機関」なのですから、「教育」の価値を最高のものと信じていなければ勤まりません。
ユネスコ:松浦事務局長、テロ対策に「道徳や倫理教育を」

再任が決まった国連教育科学文化機関(ユネスコ)の松浦晃一郎事務局長(67)は24日までにパリのユネスコ本部で毎日新聞などと会見し、09年までの任期中に基礎教育分野に重点的に取り組む意向を表明した。さらに、教育面でのテロ対策が必要との認識を示し、「道徳や倫理教育をしっかりしなければならない」と強調した。
 松浦事務局長は、基礎教育について「15年までに
 (1)全児童に小学校教育を受けさせ
 (2)男女平等を確立する--などの目標を達成する見通しは立っていない」と認め、途上国の教育予算増額と先進国の着実な援助実施を促した。具体的には▽識字率の向上▽教師の養成▽教育を通じたエイズ予防--への取り組みを強化する考えを示した。
 テロの問題については、「根底にあるのは教育問題。将来のテロリストを養成しないようにしなければならない」と指摘。小学校段階からの道徳・倫理教育のカリキュラム作りを支援する方針を明らかにした。ユネスコは教育分野でパレスチナ和平を後押ししてきたが、ここ数年、紛争激化で足踏みを余儀なくされてきた。松浦事務局長は「『相手を憎め』と書いている教科書では和解は進まない。教科書の見直しをやりたい」と述べ、イスラエル、パレスチナの教科書改訂への支援を本格化する意向を示した。
 毎日新聞 2005年9月24日
 
■アフリカや中東の非常にややこしい場所に、武器や原子力発電所を売りつけているフランスのパリに本部が有るというのもなかなか意味深ですが、憲法9条を持つ日本のお役人が就任するにはユネスコは最適の国連組織のようです。それにしても、この事務局長さんは自分が言っている事が本当に分かっているのでしょうか?パレスチナで大失敗したという事は、注込んだ予算が全てパーになったという事です。失敗したのは、自分達の見通しが間違っていた上に、無能であったからでしょう。それを恐れを知らずに「教科書」問題に責任を押し付けて、次の事業計画を平然と語っています。無駄になったお金は、大金を費やして綺麗事を並べた印刷物を大量に撒き散らして、子供達を騙して集めた寄付金や、日本を筆頭に真面目な国から提供された拠出金である事を、この人はまったく分かっていないようです。「予算が無駄遣いしてしまって申し訳ない」これを禁句としているのも、世界中の御役人に共通の習性です。何せ、お役人が一番嫌いなのが「責任」ですからなあ。

■またまた新たな予算案を出して、今度はイスラエルとパレスチナの教科書に介入しようと言うのですから、大したものです。まあ、国連と言えば、イラクでも裏金で蓄財している間は粘り強かったのに、決着が付いたら熱が冷め始め、一発の自爆テロでさっさと逃げ出した組織ですから、こんな危なっかしい事に大金を注込んで置いて、予算を使い切った頃に一発の爆弾が破裂したら、またまたさっさと逃げるに違い有りません。『相手を憎め』と書いてある教科書を問題と考えるのなら、日本の隣にも相当の事を書いている国が約3カ国ぐらい存在しているのですが、パレスチナの後は、是非ともこちらにも目を配って頂きたいものです。

■読み書きの前に子供にAK47の手入れ方法と撃ち方を教える「学校」が沢山あるのですが、この事務局長さんは砂漠やジャングルに入って行く勇気が有るのでしょうか?異教徒を憎むジハードを否定する教科書や帝国主義者打倒する革命を否定する教科書を握ったまま、銃弾に倒れれば銅像の一つも建ちそうですが、何の意味も無いでしょうなあ。一体、幾らの予算を考えているのか分かりませんが、「エイズ予防」ぐらいが成功しそうな計画でしょう。他の項目はことごとく予算の無駄になるのは火を見るよりも明らかだと思うのですが、如何でしょう?

■テロ問題の難しさは、「道徳と倫理」の最高の形態として戦闘行為が位置付けられている事ではないのでしょうか?神の名に懸けて戦っている者に、「正しい道徳」を配達するというのは、彼らの神や真理を否定する事になるという簡単な理屈が分からなくても、ユネスコの事務局長は務まるようですなあ。気楽なものです。テロ問題がますます深刻になる一方なので、お役人としては、これを名目にした予算獲得の血が騒いだのでしょうが、これは大失敗でした。本当にこの計画が実施された瞬間に、何処かから「ユネスコは悪魔(帝国主義者)の巣窟だ!攻撃目標リストの上位に入れたぞ!」などというメッセージがウェブに乗って流れ出した時、この事務局長さんが何を言い出すかが、楽しみです。

■こういう能天気で元気なお役人が、小競り合いだった紛争を大戦争にしてしまった例が沢山あるのに、何故か人々はそういう歴史を忘れがちです。日本が下手くそな戦争を一所懸命にやったのも、お役人達が大活躍してくれたからなのに、悪かったのは軍部だけ!それも陸軍が一番悪い!と誰かさんが言い出して、そうだ、そうだと盛り上げて造った奇怪な歴史が、今でも生きているので始末に負えませんなあ。しっかり占領軍に取り入ったお役人達は、占領政策を命令以上に実施して日本を作り変えて見せたので、マッカーサーも大喜びでした。そのカラクリに蓋をしたまま60年も放って置いたのですから、今頃になって憲法をどうしようか?などと悩まなければなりません。憲法などと言うものは、どんどん変えるのが政治家の勤めなのに、明治天皇とマッカーサーから貰った経験しか無いので、自分達では何も出来ない変な政治家とお役人ばかりになってしまいました。勿論、帰れば良いという物ではないのですが、慣れ無い事はやらないのならば、永久に「世界の公正と信義」が出現する時を待ち続けなければなりませんし、やって見ようかと思うのなら、一回や二回は大失敗する可能性を覚悟しなければなりますまいなあ。

■国内の教科書一つで大騒ぎしている祖国に対しても、是非とも素晴らしいコメントが欲しい所です。でも、「発言は差し控えさせて頂きます」としか言わないでしょうなあ。そうなのです。問題が大きければ大きいほど、お役人は無数の妄想を詰め込んだ大きな夢を見るものなのです。小さな具体的な問題になると、辻褄合わせと居丈高な言い訳しかしないのが悲しいですなあ。

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何が何でも助けにゃならぬ!

2005-09-26 02:35:44 | 社会問題・事件
■随分前の事ですが、上流にダムの有る川の中州で悠然とキャンプを楽しんでいた勇気有る家族が、ダムの放流のサイレンにも動じず、何度も警告に足を運んでくれたボランティア監視員の声に耳を貸さず、とうとう、ニュース・カメラの前で激流に飲み込まれてしまったという出来事が有りましたなあ。あれは天災なのか、人災なのか、一家心中だったのか、なかなか判断は難しいのですが、自信満々の素人というものは何処にでもいるものです。

■何でもマニュアル情報とカタログ販売で即席でもカッコだけは直ぐに一人前になれる世の中ですから、立派なキャンプ道具と4WDの高級車をローンで買ったりすると、自分は一端(いっぱし)のキャンパーになったと思い込めるのでしょうし、最近、人気再燃の自転車、登山、スキーなど最初に道具を揃えるスポーツが大流行ですから、勘違い人間は減る事は無いでしょう。そこに付け込んで売り込みに熱心なのが商売人ですから、「これさえ買えば、あなたも今日から……」の殺し文句で○○セットを上手に売りますなあ。

■自動車にしたところで、世界一の性能を誇る日本車のエンジンを更に改造して高速化、自分の腕も知らずに首都高やら湾岸道路やら、気分はすっかりアニメかゲームの主人公らしいのですが、1万冊の漫画を読んで1万本のゲーム・ソフトをクリアしても、同じ事が出きるようにはなりません。傍迷惑な行為をしている間はパトカーに追われ、最後は救急車のお世話になるのですから、道路の修理費やら通行止めで発生する経済的な損失まで考えれば、実にトンデモない話です。自動車メーカーもバイク会社も、売ったらそれっきりですから、事故に巻き込まれた人は不運と思うしかないようです。

■せっかくの三連休に台風が関東に接近しまして、ホラ吹き天気予報に騙されて、出かける予定をキャンセルして騙された!と怒っている人も多いと思います。本当に、こんな「狼少年」のような脅し予報を外し続けていると、本物が来た時に大きな被害と多くの犠牲者が出ますぞ!分からないなら「分かりません」と正直に予報して欲しいものですなあ。とは言っても、こんなニュースのタネになる困った連中は、天気予報に責任を押し付けるわけには行きませんぞ!

25日午前11時50分ごろ、千葉県勝浦市浜勝浦の海岸で、サーフィンをしていた男性4人が強風で沖に流され、約120メートル沖の消波ブロックに取り残された。4人のうち山梨県北杜市白州町の会社員小泉賢治さん(36)ら3人は約1時間後、海上保安庁のヘリコプターに救助された。千葉県市原市の会社員加藤憲太郎さん(25)はさらに約500メートル沖の防波堤付近まで流され、居合わせたライフセーバーの男性に救助された。4人は手足に軽いけが。加藤さんは初めてのサーフィンだったという。
 勝浦海上保安署によると、当時は台風17号の接近で暴風・波浪警報が出され、海は大しけだった。4人を含め約30人が現場でサーフィンをしており、同海保が防災無線で海に入らないよう呼び掛けていた。(共同通信) - 9月25日
 
■個人情報保護法の乱用が問題になっている昨今ですが、共同通信はきっちり実名を出して報道しているのは立派です。山梨の小泉さんと千葉の加藤さんは、これからどこの浜に行っても有名人ですなあ。人は誰でもいつかは死ぬのですが、余り馬鹿馬鹿しい死に方はしない方が良いでしょう。冒頭に書いた中州で頑張ってキャンプしていた家族を救えなかったと、その後もボランティアの人達は悔し涙を流していると聞いています。そういう立派な人が、粗忽(そこつ)者と付き合わねばならないのが世間のややこしさなのでしょうが、暴風・波浪警報を聞くと心が燃えて、防災無線の制止を聞くとますます勇ましくなってしまうサーファーも、やっぱり、助けなければいけないのでしょうなあ。無謀な登山者、命知らずの暴走者、嵐の海のサーファーなどなど、こうした人達を自殺志願者だと言えないのが、人権思想を守る人道的民主主義の国なのでしょう。

■「小さな政府」を目指している政府は、何でもかんでも民営化しようと頑張っていますから、こうした馬鹿者達に付き合う仕事もだんだん民営化されるのでしょうか?そうなれば、愚か者と貧乏人は救助されない時代になるのでしょうなあ。大きな政府で、どんなアホも救ってくれる時代は、増税の連続になります。命知らずの愚か者が増えれば、その世話をする予算もどんどん必要になりますから、常識的に用心して暮らしている納税者達から不満の声が上がるかも知れません。それとも「注意報」を越えて「警報」が出された段階で、海岸や河川内は「救援活動対象外」とするような荒療治でもすれば、少しはアホな事をする日本人が減るのでしょうか?地球の温暖化で、命知らずのサーファー達には至福の時代が到来したようなものです。自慢のサーフ・ボードの表面「4割以上」に、「台風接近の場合は、統計的に致死率が100%になります。使用には充分な注意をして下さい」とでも印刷する義務を法律で定めますかな? とかく世間は住み難い、のでしょうなあ。

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100名山は考え直したら?

2005-09-26 02:33:33 | マスメディア
■毎日、毎日、老若男女が日本の何処かで殺されているのに誰もが嫌気が差しているからでしょうか?少しでも明るいニュースを探そうとマスコミの人達も必死なのでしょうなあ。秋の行楽シーズンでもあるし、紅葉も近い。地方は何処も不景気だから、観光産業の梃(てこ)入れもして上げたい、そんな気分も手伝っているのでしょうなあ。
12歳少女幸せ頂点、百名山を3年余りで制覇
 新潟県柏崎市の市立比角(ひすみ)小学校6年、大倉由衣(ゆえ)さん(12)が24日、北アルプスの黒部五郎岳(2840メートル)に登頂し、深田久弥氏の「日本百名山」を制覇した。…初めての登山は、5歳だった1999年夏。登山が趣味の母・里美さん(41)に勧められ、北アルプスの西穂高山荘に行って周辺を歩いた。
 本格的に「百名山」に挑むきっかけとなったのは、2002年夏の北アルプス・槍ヶ岳(3180メートル)登山だった。苦労して登頂した翌日、山小屋で出会った女性から「私のお守り」と、バンダナを贈られた。日本百名山の地図がプリントされ、著名な登山家重廣恒夫さんのサインも入っていた。「私も百名山に登ろう」と決めた瞬間だった。以来、そのバンダナを「宝物」として持ち歩き、夏休みは北海道や九州へ、週末は本州の山々に家族と一緒に登った。普段は土曜日の未明に家族の運転する車などで自宅を出て、日曜日の夜に帰宅する。現地でゆっくりする暇はないが、「家族みんなで頑張って登り、頂上に着いた時のうれしさがたまらない」と言う。
 百名山を目指してわずか3年余りで達成した由衣さんは、「二百名山など新たな記録に挑戦していきたい」と元気に話した。
 読売新聞 9月25日

■山登りを楽しみとする人が居るのは、日本が近代国家となって西欧人が神々の山を次々と征服して見せてからの事ですから、今更、日本古来の山岳信仰を取り戻せ!とは言いませんが、このニュースはそんなにお目出度い事なのでしょうか?「100名山」「わずか3年」と数字を並べる報道は、同じ趣味を持つ人々に不必要な競争意識を撒き散らすのではないでしょうか?高齢の登山者が急激に増加している現象を、誰も非難できないのが「敬老」精神らしく、「いつまでもお元気ですねえ」と無責任な激励などするものだから、散歩気分の登山で傍迷惑な大騒ぎが頻発しています。老人登山グループ同士で馬鹿馬鹿しいライバル心を燃やして、一つでも多くの山を征服しようなどと、愚かな事を考えているのがはっきり分かる会話を電車の中で何度も耳にした事が有ります。「足腰が丈夫な内に…」という気分も分かりますが、気の急く登山は必ず大事故に繋がるものです。

■この新聞記事でも、短期間に「100名山」を征服した種明かしをしています。徹夜でドライブして大急ぎで登って降りる、そんな事を週末ごとにやっているのを、山の専門家は決して喜びもしないし、褒めもしないでしょうなあ。体力不足の上に、深夜バスなどで登山口にやって来る睡眠不足の高齢者が、誰かに自慢でもしたいのか、頂上目指して押し登り、すっかり体力を消耗して下山途中で身動きが出来なくなる。最悪の場合は、転落・滑落、怪我なら救助隊に背負われて下山できますが……中には、年齢に区別無く、救難ヘリコプターをタクシー代わりに呼ぶアホも増えているようです。

■プロの登山家や冒険野郎は、スポンサーにアッピールするために、高さや距離や回数などの「数字」を使うことは有ります。しかし、素人が100だの200だの、しかも他人が決めたリストに従って山登りするのはどうでしょう?まるで、グルメ本のヨタ記事を信じて自分の味覚も体質も無視して食べ歩く変人と同じではないでしょうか?自分が気に入っている山を愛して、自然を大切にする心や謙虚さを取り戻す機会にするのは誠に結構な事です。しかし、マスコミに煽られるようにして、同じ山に日本中から集まって、ぞろぞろと一本道に列を作って登っている風景が時々報道されますが、ちょっと前の芋を洗うような状態のスキー場を髣髴とさせる異様なものを感じませんか?

■スキー場ならば、最低限のトイレが完備しているはずですから、まだ救いが有るでしょうが、山となると公衆便所が標高100メートルごとに設置されているとは来た事が有りません。情けない事に、コンビニ弁当の空容器と空き缶が登山道脇に捨ててあるそうじゃないですか?山に登るというのは、別の見方をすれば、食い物と排泄物を山の中に人間が運び上げている事なのです。霊峰だった富士山が、ウンコだらけで放置されているのを知って激怒したのはアイヌ人初の参議院議員になられた萱野茂氏でしたなあ。「即刻、便所を設置せよ!」と動いて下さって、今は幾つかの便所が整備されたと聞きます。アイヌ文化には驚かされたり、感心させられる点が多いのですが、山を敬う心を失った者と失わない者に民族の差は無いでしょうに!

■100名山を征服した少女が、山を汚さないようにどんな工夫をしていたのか、是非とも報道して欲しかったのですが、「3年で100名山」に登った事ばかりを強調している記事ですなあ。こんな記事を全国に配達すると、「子供に負けてはいられない!」などとトンデモない勘違いする元気な老人達が続出しそうです。町をゴミだらけにしている暇な若者の中にも、急に趣味を登山に決める迷惑者の出現するかも知れません。登山用品は売れるでしょうが、山は荒れますなあ。

■日本一の信頼を勝ち得ている富山県の山岳警察隊の皆さんは、この記事をどんな気持ちで読んだのでしょう?自分で天気図も書けない、磁石が使えない、ちっちゃなペットボトル一本持って軽装で2000メートル級の山に登って来るような人々を命懸けで救助しなければならないのですから、本当にご苦労様なことであります。まったく100名山などと、変な本が流行ったものです。体質的に社会主義国向きに出来ている日本人に「ノルマ」を示しては行けませんぞ!
山はノルマを気にして登るものではありません。

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