旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

一罰百戒の時代は終わった

2005-09-27 11:11:26 | 社会問題・事件
■若者に人気がある芸能人などが、時々麻薬所持で逮捕されて、一時は大騒ぎになる事が有りますが、決して根絶やしにならないのは誰もが知っている事です。東京では上野・新宿・六本木と地名を並べれば、そこが薬物の名所である事は誰もが知っているという不思議な時代になりました。国際的な視点からも、食糧も無い上に輸出する品物も無いはずの隣の国が、崩壊しない理由は日本からの献金に加えて、武器と麻薬の密輸だという事も、既に国家としての態を成していないアフガニスタンが昔と同じ麻薬の産地に戻っている事も衆知の事実です。欧州と米国で荒稼ぎしていた時代は終わって、日本が有望な市場となってから随分と年月が過ぎましたなあ。

■「不審船」などという遠慮した呼び名を付けて、警備や捜査に携わる人達がさんざん翻弄され続けている間にも、「瀬取り」などという新しい密輸方法が素人にも知られるような状態が続いています。以前にも『極東麻薬戦争』という記事を書きましたが、清朝末期のアヘン禍に匹敵する国家的な危機を迎えつつあるとしか思えない日本は、麻薬問題を社会の裏側に封じ込めていられた時代の終わりを自覚しなければならないでしょうなあ。民主党の馬鹿野郎議員がお友達と一緒に逮捕されてから、少しは風向きが変ったのか、続々と麻薬事件が報道され始めました。ベトナムから来ていた人が、自宅アパートを大麻栽培地にしていたなどという事件も報道されました。


警視庁高井戸署は、東京都三鷹市下連雀3、慶応大医学部大学院生、深沢宙丸(おきまる)(25)▽長野県松本市南、会社員、原智(28)の両容疑者を大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕した。
 調べでは、深沢、原容疑者は24日午後10時ごろ、世田谷区大原2の国道20号に止めた乗用車の中で、それぞれ大麻11.3グラム、1.6グラムを所持していた疑い。いずれも容疑を認めている。
 道路中央に車を止めて寝ていたところを通行人が110番し、駆け付けた署員が職務質問し発覚した。深沢容疑者は「上野でイラン人から買った。友達から勧められて2年前からやっていた」と供述している。両容疑者は小学生のころからの友人だった。
 毎日新聞 2005年9月26日

■何万票も取る代議士先生が薬物を楽しんでいるのですから、有名大学の医学生が大麻で酔っ払っていても、余り驚かなくなっているのが日本です。大麻が米国に大量に入り込んだのは、ヴェトナム戦争後期からだったことを思い出していたら、日本の自衛隊では既に商売人まで出現していました。


海上自衛隊横須賀基地(神奈川県横須賀市)の隊員らによる大麻事件で、既に逮捕・起訴されている隊員らがインターネットなどを使い、民間人や元自衛官らに複数のルートで大麻を販売していた可能性のあることが分かった。また、新たに隊員2人が大麻取締法違反の罪で起訴されていたことも判明。同基地関連の逮捕者は6人に上る。新たに起訴されたのは、ともに海士長で▽潜水艦「わかしお」乗組員、成田達也(22)▽同「うずしお」乗組員、坂口貴弘(22)の両被告。
 坂口被告は「携帯電話を使い、大麻を売ったことがある」と供述しており、送付に使われた伝票も押収されているという。最初に摘発された市村宣人2等海曹(34)、前田大海士長(29)=同罪で既に起訴=が、それぞれ携帯電話のメールを利用して販売した疑いや、自ら栽培した大麻草を元自衛官らに譲り渡していた疑いも浮上。県警は民間人へのルートも視野に捜査を進めている。起訴状などによると、成田被告は先月23日、横須賀市内のアパートで大麻草約31グラムを所持していた。坂口被告は北海道に住む実弟に原野に自生する大麻草を送らせていたとみられる。毎日新聞 2005年9月26日


戦闘が始まると、野戦病院では応急処置として負傷兵にモルヒネなどの鎮痛剤を多用するのは有名な話で、生還した後も中毒症状に苦しむ人の話も良く知られています。今の自衛隊は戦時体制ではないのですから、今回発覚した麻薬事件は単なる愚かな暇潰しと小遣い稼ぎなのでしょうが、最初はイタズラ半分に使用して、だんだん中毒症状が進んで行って購入費を手当てするために売人になる。売人が中卸になって商売の子や孫を増やして行く。そこに代議士でも自衛官でもどんどん引き込まれているという訳です。

■北海道から直送とは恐れ入りますが、自衛官という特殊な情報に近付ける人達が、人格を崩壊させる薬物に汚染されるのは余りにも危険な事です。高価な麻薬と軍事情報が交換され始めたら、自衛隊は組織として自壊してしまいますからなあ。イラン人あたりから買っている内はまだ安全かも知れませんが、北朝鮮ルートに自衛隊員が入っているなんて事は無いんでしょうなあ!?

■余り新聞などでは取り上げませんが、ストレス過剰で神経科や精神科を受診する人々が増えると、中にはヤブ医者がいて、無闇と習慣性の強い薬剤を処方して与えるという話が有ります。仮に治療の甲斐が有って快癒してからも、薬物依存が治らずに麻薬犯罪に巻き込まれる場合が増えている、という話も有ります。つまり、暇を持て余して大麻を吹かしていても、毎日忙しく働いて神経を磨り減らしていても、どちら側でも麻薬の商売人が待ち構えているという事になりますなあ。

■黄金の三角地帯と呼ばれたタイ・ビルマ・ラオスの山岳地帯で、大麻や芥子の畑を蕎麦畑に変えるというすばらしいプロジェクトが有ったのですが、どうやら不調に終わったようです。貧困が麻薬生産に拍車を掛けて、犯罪組織が巨大化して行くという構図は、とても1つや2つの国では対処出来ない大規模犯罪を産み出していますから、早急に国際的な対抗組織を作らねばならないのですが、北朝鮮に通常の「経済制裁」さえも実施出来ない日本ですから、名指しして薬物産業を叩き潰す事は、まず不可能でしょう。そうなると、警察と協力して地方自治体やら学校やらが、形振り構わない対抗手段を採って行くしかなくなりますし、テレビ局なども、適当に「ほとぼりが冷めたら」麻薬犯罪者を再び出演させて知らん振りしているような事は止めて、世論に訴えるような番組も作って貰うしか無いでしょう。

■自動車を運転していて、対向車や後続車のハンドルを握っているのが麻薬中毒者で、末期症状に入っている人だったら、或いは、街中を歩いていて擦れ違う人や後ろから付いて来る人が、突然、麻薬の禁断症状に襲われたりしたら……煙草を撲滅して健康な生活をしましょうと大金を使うのも良いでしょうが、直接命に関わる危険が増している薬物問題の方に力を入れるべきではないでしょうか?1人や2人の見せしめ逮捕では、とても効果は上がりそうもない時代になった事だけは確かでしょうなあ。

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NHKは永久に変らない

2005-09-27 10:13:28 | マスメディア
■法律に訴えてでも受信料を掻き集めないとエライことになる、と慌てているNHKは「変る」「変る」と電波を使って宣伝しています。お尻に火が点いて、人員整理もしなければならないし、最終的には番組の制作費も削らなければならなくなるでしょう。受信料の支払い拒否運動が起こったのは、日本中から集めた一種の税金のような受信料を、フザケた使い方をしている者がいる事がバレたからでした。報道されるたびにトロフィーを抱いてわが世の春を味わっている呑気な顔が映し出されまして、視聴者の怒りの火に油を注いでしまった訳です。

■「天皇陛下を死刑に処す!」という判決を出して盛り上がったという面白い?擬似裁判番組を放送して、本当はNHK自身が天皇の戦争責任を主張しているのか?そして、その罪は死刑に値するものと考えているのか?という重大な問題には一切触れずに、朝日新聞がしゃしゃり出て来て、「政治家の圧力」が有ったか無かったか、などという馬鹿馬鹿しい水掛け論が全面に出てしまったのでした。国会に予算を承認して貰わなければならないNHKですから、電波の利権を握っている有力議員の顔色を窺(うかが)わねばならないのは当然の事でしょうに、それを憶測と無断録音取材で書き立てた朝日新聞はNHKに付き合って、国民から総スカンを食っているという構図です。

■問題がどんどん方向違いの方向に移って行きながら、質も内容もどんどん変わって膨らんでしまったので、議論の中身は薄くなってしまいましたなあ。受信料支払いを拒否している人達の数ばかりが増えて行きましたが、どんな理由で拒否しているのかを調査するのでもなく、数の多さばかりが面白おかしく報道され、叩かれているNHKの側では、数字を減らす目先の対応に追われているだけです。会長ともなれば政治家とお友達付き合いをするそうですから、つい偉そうに振舞っていまうのでしょうなあ。今の会長さんは技術畑を専門に歩んだ方だそうですが、それでも会長として画面に出れば出るほど反感を買ってしまうようです。放送法で守られた特殊な地位を保証されているのですから無理も無いのですが…


NHKの番組制作費詐欺事件で、元チーフプロデューサーの磯野克巳被告(48)は26日、東京地裁(村瀬均裁判長)の公判で、約25年前に自身がNHKに入局した当時から、制作費などの不正流用が局内で行われていたと述べた。
 被告人質問で磯野被告は、高額な接待や番組の打ち上げ飲食費などに充てるため、正規の経費とは別に、事件に問われた番組制作費の水増しなどで「プール金」を慣習的に作っていたと供述。「私が入局した時から、そういう姿を見てまいりました。プール金を持たないと仕事が進みませんでした。月に150万円ぐらいは必要だと思う」と述べた。【武本光政】
 ▽NHK広報局の話 プール金の事実はない。磯野被告は個人的に不正経理で入手し、私的に使ったものと認識している。
(毎日新聞) - 9月26日

■何が何でも、愚か者が1人紛れ込んでいたんだ!という主張を押し通さないと大変な事になるのでしょうなあ。でもこうして両者の主張が並んでいると、どう考えても悪い事をした磯野さんが言っている事の方にリアリティが有るように思えて仕方が有りません。組織の中で親方になるには、自分の思い通りになるグループが必要でしょうし、受信料しか収入が無いNHKですから、飲み食いやらちょっとしたお小遣いを渡すにしても、受信料から抜き取るしかお金の工面は付けられないわけですなあ。「プール金」という呼び名も、なかなか伝統を感じさせる響きが有ります。視聴率を上げる為には、世間が喜ぶ歌手や役者を確保しなければならず、人気というものはとても気まぐれで、無責任に揺れ動くものですから、「売れっ子」となればメディア間の争奪戦が激しくなって、よってたかって磨り減るまで使うので、人気者が次々と病院送りになるのも仕方がないと思われるほどです。他のメディアに負けないで、人気者を引っ張って来るには、立場の強いプロダクションやコネを持っている人物に近付かねばならない事情も有って、役所の「食料費」などという訳の分からない必要経費とよく似た金銭が動き回る事にもなるのでしょうなあ。

■民放に負けない面白い番組を作れ!と会長さんが命令すれば、現場の人達は民放に負けない手段で動かねばならないのは当たり前なのですから、そんな無茶な命令を出した当時の会長さんが出て来なければ、何も明らかにはならないでしょう。しかし、未だに隠然たる力を持っていると噂される方ですから、組織を挙げて防衛に必死なのでしょう。この仕組みが壊れない限り、この受信料不払い運動は終わらないはずです。しかし、メディアは国民の飽きっぽさを熟知しているので、不払い運動も間も無く飽きられて、発端となった事件も忘却の闇の中に捨てられると踏んでいるでしょう。「会長出て来い!」「磯野に喋らせろ!」の声を上げ続けていられる内は、視聴者側が強いでしょうが、それに飽きたら、磯野さん1人が処分されて万事丸く収まって、名目を変えた「プール金」が相変わらず闇から闇に流れ続けるでしょうなあ。

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