旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

祭りの後は虚しくて

2005-09-29 17:23:49 | 政治
■選挙中は自分の言いたい事を好き勝手に怒鳴っていた小泉さんが、参議院では早口で原稿を棒読みしていて、その声は詰まらなそうです。衆議院では選挙の余熱と残響が有るらしく、アホで惨めに負けた造反組や民主党にトドメの一撃をチラつかせるような意地悪な雰囲気をぷんぷんと発散させて楽しそうでしたが、風の吹きようでどっちにでも転がる参議院では、相手の力不足で退屈なのでしょうなあ。

■本当は原稿の棒読みは国会法で禁止されているというのは周知の事なのですが、党内の根回しや毎週末の地元回りなどで政策の勉強などやっていられない政治家は、お役人に作って貰ったミスの無い完全無欠で意味不明な原稿を棒読みして平然としています。警備費や電気代など大金使って原稿の棒読み大会をやっているのは税金の無駄遣いで、読みたい原稿をネットや新聞紙上に発表して御仕舞いにすれば経費削減に役立つのですが、それでは格好がつかないのでしょうなあ。今回の答弁も、ラジオで聴いていても酷い作文で、とても長い時間眠気と戦うのは難しい内容でした。

民主党の円より子氏への答弁で、小泉首相は、東シナ海の日中中間線での中国による石油ガス田開発に関し「中間線東側の資源に影響を及ぼし得る開発について、共同開発による問題解決の可能性を含め、(中国側と)率直に議論を行う予定だ」と述べ、共同開発の可能性に言及した。

■相手は軍艦を遊弋させて次々と採掘施設を並べているのに、こちらは「話し合い」の準備をしているのですから、尖閣諸島周辺に対する外交姿勢はまったく変化していないのです。拉致問題と同じで、相手が怒ったら面倒臭いので放っておいたばかりに、もう手遅れの状態になってしまったのに、誰も責任を感じておりません。いざとなったらナショナリズムを煽って、「中国許すまじ!」と馬鹿な喧嘩を仕掛けるつもりなのでしょうか?相手は既成事実を着々と積み上げて、慣習法に過ぎない国際法に合致させて資源と領海を100年計画で手に入れようとしているというのに、日本は指をくわえて見ているだけで「共同開発」で決着させようと言うのですから呆れます。こんな事を発言したら、「共同開発」が議論の出発点になってしまいますぞ!そうなったら、「共同」の分け前を交渉しなければならなくなって、その頃には竹島同様に軍事施設が完成していて、とてもじゃないが、日本側に有利な分け前なんて望めなくなっているでしょうなあ。

イラクに派遣中の自衛隊は「現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えていない」として、当面の駐留継続を強調した。

■民主党が攻め切れなかった「非戦闘地域」がまだ生き残っている!これは分かり易く言い直すと「米国軍が大規模戦闘を終了させた場所」のことですから、米国軍に対するゲリラ攻撃が起こる場所も意味します。相手を奥深く引き込んで、ゲリラ戦で力を削(そ)いで行く。ナポレオンを追い返したロシアのクトゥーゾフ将軍や毛沢東の『持久戦論』と同じ戦略が採用される場所という事です。それを知っていたからこそ、政府は自衛隊を派遣する時に、石油も出なければクルド人もいない、スンナ派とシーア派が混在していない場所を必死で探したのでしょう。ゲリラ戦が最も起き難いと考えられる場所がサマーワだったわけで、丸腰の軍隊を駐留させるにはそれしか方法は有りません。しかし、情勢が変ればテロは何処でも起きるのですから、神頼み同然の決定でした。

今年末にイラクの本格政権が発足する予定のうえ、サマワの治安維持を担当する英国や豪州軍が来年5月前後の撤収を検討していることを踏まえたものだ。イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊の活動の基本計画については、今年12月14日に期限が切れる派遣期間を1年程度延長する方向だ。ただ、イラクの治安回復が遅れ、多国籍軍全体のイラク駐留が長引いた場合は、陸自の撤収時期がずれ込む可能性もある。
 日米英豪4か国は29日から10月3日まで、ロンドンで外務・防衛担当幹部や制服組らの会議を開き、サマワに駐留する陸自と英豪軍の今後の活動を協議する。サマワでは現在、陸自約600人が公共施設の復旧や医療支援を行う一方、豪州軍約450人が駐留している。イラク南部の治安維持を担当する英軍も、サマワを含むムサンナ県全体で約600人が活動している。豪州軍は来年5月に派遣期限を迎える際に撤収する可能性を日本政府に伝えている。英軍も年明け以降、サマワなど治安の安定している地域から順次、部隊の撤収を検討している。日本政府は「英豪軍が撤収した場合、陸自の安全確保は難しい」と判断している。……
 政府は2003年12月、イラク特措法に基づく自衛隊のイラク派遣の基本計画を閣議決定し、昨年12月、1年間延長した。今年12月14日に再び期限を迎えるが、イラク移行政府が駐留延長を日本に要請しており、日本政府は「多国籍軍が年明け以降も駐留するのは確実で、自衛隊だけ撤収はできない」としている。
 ただ、政府・与党内では「陸自を無期限に派遣するわけにはいかない」として、派遣延長の際に撤収時期のめどを示す考えが有力だ。政府筋は28日、「各国は、撤収の時期を真剣に考えている。自衛隊も『出口』を説明しないと、世論の納得は得られないだろう」と語った。読売新聞  9月29日

■事ここに至っても、各国駐留軍の人数だけを並べて報道するマスコミもどうかしていますなあ。装備している武器や機材がまったく違うものを並べても意味は有りません。もともと、案山子(かかし)の役を仰せ付かって派遣された自衛隊は、憲法の規定通りに軍隊ではありません。ブッシュ大統領が「イラクの民主化は進んでいる」と言い張ってくれている間に、義理は果たした英豪軍は自分の判断でさっさと引き上げる準備に入りました。日本は犠牲が出ていない代わりに、自分で判断できる立場を得ていませんから、守ってくれる英豪軍が消えれば米国が可哀想に思ってくれると期待しているのでしょう。しかし、「日本よ、お前は別だ!」と言われたら、英豪両軍と一緒に引けなくなってしまうでしょうなあ。せっかくの総選挙だったのに、郵政民営化などよりも、サマーワ撤退や北朝鮮問題、尖閣問題が優先課題だったのに!

■その郵政民営化にしても、国の手を離れた巨大な資金がどうなるのか、選挙中も「外資に食われるぞ!」の声が少しは上がりましたが、ホリエモン騒動やら刺客祭りの喧騒に掻き消されてしまいました。
郵政民営化後にできる持ち株会社の株式取得に関する外資規制ついては「政府が安定株主として三分の一超(の株式)を保有するとともに、特殊会社として主務大臣による監督規定を設けており、外資規制は設けない」と述べ、法的規制を行わない考えを示した。
アメリカから注文に応じたわけではない、という説明も有りましたが、とても信じられない話です。

■最近も、東京の地下が一部地域で上がり始めたという報道が有りましたが、誰が東京の土地や不動産を買っているのかを詳しく調べたものは見当たりませんでしたなあ。本当の地主や大家さんは誰なのか?と追求してみれば、ビックリするような所に住んでいる人だったりするのではないでしょうか?銀行やホテルなどの目立つ物件が外資に買い叩かれるのは報道されますが、こまごました商業ビルやマンションなどの買い手が誰なのかは報道されません。昔通りに、日本語の(違法な)看板がついていると安心していると、エライことになるかも知れませんぞ!

首相はまた、憲法改正について「自民党だけでやる気はない。安定した連立基盤を大事にし、民主党の改正案もよくみて、じっくりと時間をかけて、国民の支持を得るような努力を最大限行っていきたい」と述べた。
消費税導入は時期尚早でも、憲法改正は時宜に適っているらしいのですが、本当でしょうか?「集団的自衛権」などという新語を生み出して議論をややこしくして来た役人達が、面倒臭くなって一気に御破算にしようとしているだけなら、とてもじゃないが、国民投票は時期尚早です。

■反対派にしたところで、勉強をサボって来たから「戦争が始まるぞ!」などと言う下らないことしか言えないのです。こんな状態で議論など出来るわけが無い。何でもやりっ放しの小泉さんは、勘違いしたまま後継者指名を楽しみにしているようです。ワンマン社長の勇退みたいな話です。内政の中途半端なままの課題と外交の大失敗を置き土産にして、デカイ顔をして大御所になるつもりなのでしょうか?バブルの狂乱の種を置き土産にした自覚がぜんぜんない中曾根さんやバブルを膨らませた責任をぜんぜん感じていない宮澤さんいう大先輩もいましたから、小泉さんだけを責めても仕方が無いのですが…。
来年九月の自民党総裁選に対しては「私の後を継ぐ方は多士済々。しっかりと改革路線を進めていくことのできる方が首相を務めていただけるであろうと期待している」と指摘、小泉改革継承が後継総裁の条件だとの認識を示した。

■今回の総選挙は、本当に歴史的な選挙だったんだなあ、と振り返る時が間も無くやって来るでしょう。刺客のネエちゃんが案外美人で、握手したら良い臭いがしたから一票入れた、などとトボケた投票をした人達が今回投票権を持っていなかった若い世代から「色ボケ爺い!」と怒られるのでしょうなあ。マスコミも刺客のオッカケから太蔵君のオッカケに変っただけで、選挙の重要テーマをぼかす助けをしたのですから、後々、責任を追及されるかも知れません。でも、その頃にはテレビ・メディアは衰退してしまっている可能性もありますが……
引用記事は産経新聞9月29日

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身内にも冷たい社保庁

2005-09-29 08:10:40 | 社会問題・事件
■生ぬるい、大阪風に言えば「眠たい」改革案をおずおずと提出した社会保険庁でありますが、誰も取り上げてくれませんなあ。いろいろバレ過ぎて、誰も先は短いと思っているのですから、「クレジット・カードでも年金保険料が払えるようにします」などと言う馬鹿馬鹿しい作文を読んでいる暇は無いんでしょう。書いたご当人達は真面目なのですから、これは悲喜劇です。外に対しては、背の高い女優さんを使って「脅迫CM」を放映するくらいの事は平気でする社会保険庁ですが、身内には手厚いサービスを欠かさず、「事務費」で自動車でもゴルフ・ボールでも買い放題というスーパー・ドメスティックなお役所だとばかり思っていたら、オイシイ目を見ているのは一部の幹部だけだったんですね。
社会保険庁職員だった横森真二さん(当時23)=山梨市出身=の過労自殺を巡り、父母が同庁を運営する国を訴えた裁判で、甲府地裁の新堀亮一裁判長は「うつ病の重症化と自殺を避けることは可能だったと認められる」と同庁の安全配慮義務違反を認め、計約7200万円の支払いを命じた。国家賠償法に基づく賠償請求は時効が成立しているとして退けられた。横森さんの母鈴恵さん(56)は会見で「勝訴しても息子は二度と帰ってこない」と涙ながらに訴えた。
 判決によると、横森さんは高校を卒業した93年に入庁。96年に社会保険業務センター中央年金相談室に配属されると、基礎年金番号制度導入に伴う相談や苦情の電話応対に忙殺された。また、係内の最年少で雑務を押しつけられた。上司は勤務実態を的確に把握しようとせず、漫然と放置。死の1カ月前の超過勤務時間は少なくとも120時間を超え、同僚に不審な言動をしていたという。横森さんは97年4月、東京都内の自宅近くで飛び降り自殺した。……
 原告側は判決後、甲府市内で記者会見。母鈴恵さんは「(社会保険庁)長官には墓前に来て謝罪してほしい」と怒りをあらわにした。代理人弁護士は「事実上の全面勝訴と受け止めている。過剰な労働で心身に多大な負担を負っている公務員も多い。一部にしわ寄せがいく構造があるのでは」と警鐘を鳴らした。
 毎日新聞 9月28日
■たった4年間の勤務で、身も心もぼろぼろにしてしまうお役所の仕組みは恐ろしいものです。横森さんのご冥福を祈らずにはいられません。想像するに、苦情や雑務を押し付けられるのは、はっきり言って高卒のノンキャリア職員で、おそらくは彼がてんてこ舞いしている戦場のような場所の壁一枚隔てた快適な部屋では、「身分が違う」エライ人が新聞読みながら熱い茶をすすっていたのではないでしょうか?無理やり作った役職やら「長」の付くポストに、エライ人が大きな団子のように群れていて、実務担当は「身分が違う」ので、正に奴隷のように死ぬまでこき使われる。そんな仕組みになってはいなかったでしょうかな?

■将来の安心を人質に取って、採用したての窓口職員には仕組みがさっぱり分からないほど複雑怪奇な制度をコネクリ上げてしまったエライ人達は、今は何処でどんな生活をしているのでしょう?障害年金なども手厚く支給されるのだから、と甘い勧誘にも熱心な社会保険庁ですが、過労死・鬱病自殺を放置するようなお役所なのですから、余り信用しては行けませんなあ。「我々は年金保険加入者の皆様のために身を粉にして働いているんです」などとトボケたことだけは言わないようにしてほしいですなあ。本当に、学歴以外には何も無いのがお役人様の世界ですから、知識や才能が有る人は間違って役人になっても早々に止めて自由に稼ぐと決まっているので、そうは出来ない皆さんは、必死になって天下り先と関連下部組織とファミリー企業と……という鉄壁の「保険制度」を築き上げたのでしょうなあ。

■地方で、社会保険庁に就職できたとなれば、親御さんは大喜びした事でしょう。大事に育てて、自慢の息子さんだったのでしょうなあ。23歳と言えば、杉村太蔵議員よりも3つも若いのですぞ!老後の備えに欠かせないと宣伝している年金です。その窓口業務をしていたら年金受給年齢の3分の1しか生きないで、年金に殺されたようなものです。社会保険庁もその親玉の厚生労働省も、想像も出来ない歪(いびつ)な構造を抱え込んでいるのだと想像出来ます。

「このままでは、高齢者1人を2人の若者が支える事になるぞ!」
という脅し文句が愛用されましたが、この山梨の社会保険業務センター中央年金相談室という所では、一体何人の働かないエライ人を横森真二君1人で支えていたのでしょう?

国家賠償法に基づく賠償請求は時効が成立しているとして退けられた
というのも悔しい話です。お役人は法律の専門家でもありますから、「時効」にも詳しいでしょう。1997年から今まで、8年間も何をしていたのでしょう?露骨な引き伸ばし工作などがあったりしたら目も当てられない「共同謀議」です。

■御遺族の怒りと無念さを思いつつ、ご冥福をお祈り申し上げます。合掌

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日本の周辺が慌しい

2005-09-29 07:31:48 | 外交・情勢(アジア)
■別に総選挙の結果を周辺諸国が待っていたというわけでも無いのでしょうが、日本の隣国が一斉に動き出しているようです。それも、日本を仲間はずれにしようとでもするかのように!
中国軍が27日、中国内モンゴル自治区にある北京軍区朱日和合同戦術訓練基地で、軍事演習「北剣2005」を開始した。新華社通信によると、ロシアなど周辺国のほか、米、英、仏、独など計24カ国の軍事オブザーバーと中国駐在武官計約40人が招かれたが、関係筋によると日本は招待されなかった。01年以降、外国に公開した軍事演習として5回目で招待国は過去最多。毎日新聞 2005年9月28日

日本としては、何事も話し合い(つまりお金)で決着を付けようと呑気に構えていますが、中国はこれから途方も無い開発資金とエネルギー資源を確保して置かないと、確実に大不況の引き金を引く役が回って来ますから、自国の自存自衛・独裁政党の生き残りのためなら喜んで武力に訴える構えです。

■オリンピックと万博までは、大人しくしているだろうなどと考えていたらエライことになるでしょうなあ。軍事演習に招かれている米国は、露骨に仮想敵国として牽制して置かねばならない相手ですし、英・仏・独は武器や原発(原爆ではありません)を売りつけたくてうずうずしている連中です。勿論、敵対と友好の両極端を揺れ動く隣国ロシアは、今のところは仲良くしておかねばならない相手です。でも、東シベリアの石油資源を日本に優先的に売ろうかなあ、などという素振りでも見せようものなら、旧満州に軍隊を集結して見せるくらいの事は簡単にしてしまうでしょう。うっかり、日本も慌てて日本海に海上自衛隊を展開、北海道に陸上自衛隊を移動、航空自衛隊機で偵察警戒活動に入ったりすると、「どさくに紛れて取り返しに来たな!」と、自分がやった事の仕返しを直感的に想像するのがロシアでしょうなあ。

ロシアのプーチン大統領は27日、テレビ会見で、北方領土問題について、日本側との交渉は継続するものの「ロシアの主権については議論の余地がない」との見解を示し、日本側が求める4島返還を拒絶する姿勢をあらためて示した。
 11月の訪日に向け、領土問題での根本的な譲歩の可能性を否定し、対日けん制と国内世論の懸念をぬぐい去ることを狙った発言とみられる。大統領は「4島の主権は国際法に基づくもので、第2次大戦の結果だ」と述べ、日本に対し連合国の一員として参戦した旧ソ連による北方領土の占領を正当化した。ロシア側が領土問題の解決策としている、1956年の日ソ共同宣言で規定した平和条約締結後の歯舞、色丹の2島返還については言及しなかった。共同通信 9月27日
■ご丁寧にも「国際法」などとスターリン伯父さんが大嫌いだった言葉まで出して、「第2次大戦の結果」とは言ってくれますなあ。返す返すも、戦前に三国軍事同盟などを結んで浮かれていたアホな大日本帝国が悔やまれます。日本は大東亜戦争をやっていたのに、ナチス・ドイツの同盟国になった瞬間に欧米諸国の餌食となったのでした。別に陸軍ばかりがヒトラーの電撃作戦に幻惑されて浮かれていたわけではなく、しっかり当時の外務省も熱に浮かされていたのを、今でも隠していますなあ。余程恥ずかしいのか、厚顔無恥なのか、どっちにしても反省だけはしていないようですなあ。そんな我らが悲しき外務省が用意した原稿を細田官房長官が読んだそうです。

細田官房長官は、北方4島は、「古来より日本人が居住する地域で、1945年8月に突然旧ソ連がわが国に宣戦布告し、4島の住民が追い出された」としたうえで、「こうした客観情勢からみて、当然4島帰属を引き続き強く(ロシア側に)主張する」と述べた。また、4島一括返還に、「一点の曇りもない」と強調した。……また、「先方は必ずしも(歴史的)経緯を理解しているか疑問もあるので、たえずそうした主張を繰り返し、理解を求める必要がある」と指摘した。(ロイター) - 9月28日

■一見すると勇ましいのですが、「歴史的経緯」を持ち出すのならば、「南樺太」に領事館を建てちゃった大失敗は、外務省の主張する歴史的経緯に照らして正しいのでしょうか?樺太の北半分は仕方がないにしても、南半分はなかなか観られない映画『氷雪の門』の舞台ですぞ!ソ連軍に追い出されたのは「南樺太」も同じだったのではないですかな?旧満州での狼藉はぐっと我慢して、我らの関東軍の責任を追求する方が先ですが、ソ連軍が随分失礼な事をしたのは間違いは無いのです。いくら負けた日本側が内緒で「どうぞ」と言ったとしても50万人も抑留者を拉致して行ってこき使ったのも、もしや、「第2次大戦の結果」だったのでしょうか?外務省はしっかり「歴史の経緯」を教えてやって欲しいものです。でも、日本で使われている歴史教科書に、ソ連のやり口をきちんと書いてありましたっけ?

■大国ロシアは、太平洋への出口として北方領土は「南クリル諸島」などと勝手な名前を付けてでも死守して置きたい場所ですが、柔らかいお腹と呼ばれる、中央アジアからカスピ海までのややこしい場所にも気を配らなければなりません。チェチェで好き放題に殺戮しても文句が出ないように、「米国だってアフガニスタンでやってるよ」という言い訳が欲しいばかりに、この柔らかいお腹に、お灸でも据えるように米軍の駐留を許しています。

ウズベキスタンを訪問しているフリード米国務次官補は27日、米中枢同時テロ以降、アフガニスタンへの軍事作戦のため米国が使用しているウズベク南部ハナバード基地について「ウズベク政府の要求に基づき、撤退するつもりだ」と述べた。ウズベクのカリモフ大統領との会談後、記者団に明らかにした。
 ウズベク東部で今年5月に起きた反政府暴動の武力鎮圧を米国が強く批判したことなどから、両国の関係が悪化。ウズベク政府は7月、180日以内の駐留軍撤退を米国に求めていた。アフガンへの軍事作戦のためのウズベク基地に代わる新たな拠点確保に向けた動きが今後活発化する。
 次官補は「ウズベク政府と撤退についてこれ以上協議するつもりはなく、要求期限内に撤退する方針だ」と述べた。……米国は2001年以降、ハナバード基地を使用。基地使用料はウズベク政府にとって貴重な収入源だが、反政府暴動をきっかけにウズベク政府は米国に対する態度を硬化させていた。中央アジアのタジキスタンやトルクメニスタンなどが代替基地の候補地に挙がっている。
 毎日新聞 2005年9月28日
■米国の軍隊がチンギス汗の遠征部隊のように、中央アジアの拠点をうろうろし始めますぞ!ビン・ラディンにおちょくられっぱなしのブッシュ大統領は、イラクとアフガニスタンで股割き状態です。股が痛いのに頭からハリケーンが襲って来たのですから、本気で神頼みしているのでしょうなあ。まさか御利益の無い神様を捨てて、御利益の有りそうなマホ……などという事は絶対に無い。衛星放送のニュースでもほとんど報道されない中央アジアの駐留米軍の実態はまったく分かりませんから、迂闊な判断は出来ないのですが、イラクよりも先に民主化されたはずのアフガニスタンが、ますます物騒になっているのを小泉さんは指摘しません。うっかり朝日新聞あたりが書き散らした「アフガニスタンの人は良い人ばかり」などというヨタ話を信じた学校の先生が犠牲になっても、「一体、アフガニスタンはどうなっているんだ?」の一言が聞けません。

■それでも健気(けなげ)に灼熱のインド洋で命懸けの給油サービスをしてくれているし、サマーワでも踏ん張ってくれている日本に、小さなプレゼントが届きました。

国連人権委員会の北朝鮮問題担当のウィティット特別報告官(タイ・チュラロンコン大教授)は27日、総会に報告書を提出、北朝鮮による日本人拉致事件について「生存している拉致被害者がいるという日本側の主張に、北朝鮮は迅速かつ、実効ある方法で対応する必要がある」と解決を促した。…「拉致事件は(北朝鮮当局が)被害者の居場所を隠したり、事実をあいまいにしようとする限り続く問題」と指摘、「拉致問題は解決済み」とする北朝鮮の主張を退けた。そのうえで、北朝鮮が横田めぐみさんのものと主張した遺骨がDNA鑑定の結果、別人のものと判明したことを挙げ、
(1)事件に関する説明や証拠の食い違いの真相公表
(2)拉致被害者の家族への補償
(3)拉致にかかわった人物を裁くこと-を要求している。(産経新聞) - 9月28日

■この小さな贈り物を小泉首相はどう使うのでしょう?にっこり御礼を言って、棚に飾っておくのでしょうか?この報告書には、リ・ウネ(田口八重子さん)への言及が無いようです。大韓航空機爆破テロの真相に直結する事案ですから、これが全ての鍵となっています。それを知っているので、外務省は一切、これに触れません。もたもたしていると、誰が決めたか知らない1兆円の経済援助を食い物にしようと待ち構えているゼネ・コンとそれに飼われている政治家がうごめき出して収拾が付かなくなりますぞ!鉄は熱いうちに打つにしくはなし。最近、田中均さんがテレビにちょくちょく出ているそうです。特に顔色が悪かったり、痩せ細ったような様子も無く、何故かとてもお元気とのことです。

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秋の味覚を楽しむ前に

2005-09-29 01:50:37 | 社会問題・事件
■秋の行楽食べ歩き、折り込み広告でも新聞紙面の広告でも、去年の紅葉写真など載せた旅行宣伝が始まっています。売れない芸人や下手クソな局アナが、あそこの何が上手いの不味いのと、誰が見ているのか分からないテレビ画面で大口開けて、リベートやらキック・バックの約束があるのか、単なるただ食いなのかは知りませんが、「これは旨い」を連発しています。うかうかすると、○○食べ放題!などという恐るべき団体旅行の募集まで目白押しですから、一緒に折り込まれている「夢のダイエット!一週間で○キロ減量!」などのウソ広告の存在を忘れてしまいますなあ。

■昔、司馬遼太郎さんが対談かエッセイで語っていました。

松茸などという物は、貧しい山村の楽しみで、町に住む人々とは無縁の食べ物でしたし、蟹(かに)も北陸や北国の珍味で、大阪や東京の料理屋で食べる物ではなかったんです。それを日本中で食べ始めたんですから、海も山も荒れますよ というような事を仰っていましたなあ。「一拍二日、温泉と松茸食べ放題の旅!」などの大文字を広告で目にしても、「蟹食べ放題!今お申し込みの方にはお土産付き」などと聞いても、特に舌も胃袋も反応しない者にとっては他人事なのですが、明治以来の鉄道と道路の整備事業や戦後の冷凍輸送技術の発達などを考えると、昔は高級品だったのに「どうして食べ放題でこんなに安いんだろう?」と漠然と疑問が湧いてきますなあ。

■蟹の食べ放題ツアーに参加した懺記録のような投書を何処かの雑誌で読んだ記憶が有ります。勿論、ほとんどの業者は良心的に商売をなさっているのでしょうが、その投書をした御婦人は、余りの安値に誘惑されて勇んで「食べ放題」に出掛けてみたところ、確かに見た目は蟹に違いないけれど、恐ろしく不味いぱさぱさの料理が山積みになっていて、とても腹いっぱい食べる気は起こらなかったとか。テーブルの上に山と残った蟹を見ながら、自分の欲深さといじましさを大いに反省したとの事でした。別のメディアでは、タラバガニと見分けが付かないアブラガニとか言う別種の蟹が大いに利用されているとの話も有りましたなあ。

■大挙して押し寄せる団体ツアー客に「食べ放題」の松茸や蟹が提供できるのは、輸入物を使っているからでしょう。松茸の名産地は北朝鮮であるのは有名で、「経済制裁をしろ!」と拉致被害者の家族会の皆さんが叫んでも、「時期を見て適切に判断する」小泉首相が何もしないので、松茸は続々と輸入されているのでしょう。日朝首脳会談の時にも、お土産に松茸の山を貰ったと報道されましたなあ。料理のプロや美食家などには、とても松茸とは呼べない代物だと分かるのだそうですが、本当に旨い松茸なんか知らない貧乏人には、永谷園のインスタント食品だって松茸の風味を充分に楽しめるのです。本人が満足して楽しんでいるのですから問題は無いのです。しかし、輸入相手国をよくよく考えて、自分の政治的な外交判断を加味して「松茸の食べ放題」に参加すべきかどうかは判断すべきでしょうなあ。

■そして、もう一つの秋と冬の珍味である蟹です。今更、小林多喜二の『蟹工船』でもないのですが、ロシアでもアラスカでも蟹漁の過酷さは昔と変らないそうです。昔のように、高級品として蟹缶に憧れていれば良いものを、「腹いっぱい蟹を食いたい!」という海と無縁の日本人が増えてしまったようです。この蟹は何処から来るのでしょうか?「北陸直送!」「根室名物!」というのは販売している場所の事です。何処から来て北陸や根室に「食べ放題」と言えるほどの蟹が集まっているのでしょう?最近は、アサリやウナギの本当の原産地を騒がなくなってしまいましたが、もう少しするとBSE騒動どころではない実態が暴露されるかも知れませんなあ。

■日本テレビが、恐ろしい話を報道しました。

北海道・根室市の納沙布岬沖で28日、根室市のサンマ漁船が転覆した事故で、28日昼過ぎに乗組員8人のうち1人が救出されたが、これまでに5人が死亡、2人が行方不明となっている。この船は、ほかの船に当て逃げされた可能性が高くなっている。転覆していたのは、根室市落石漁協所属のサンマ漁船「第3新生丸」。28日午前5時50分過ぎ、根室氏納沙布沖の南東約42キロの海上で船底を上に向けて漂流している「新生丸」を仲間の船が見つけた。
 「新生丸」には、乗組員8人が乗っていたが、これまでに船内から1人が救出されたものの、船の中から5人の遺体が見つかり、2人が行方不明となっている。救出された甲板員・藤里要さん(53)は、体温は低下しているものの命に別条はないという。
 海上保安庁によると、転覆した漁船の前の部分右側に衝突した跡とみられる長さ1メートルの亀裂が見つかったという。現場付近の海域はロシアの領海と接し、行き交う船も多い海上交通の要所だったという。海上保安部では、漁船がほかの船に当て逃げされた可能性が高いとみて調べている。
 
これは夕方のニュースのようですが、夜のニュースでは特集を組んで、ロシアから蟹を運んで来る船にぶつけられて無念の死を遂げた漁師さんの話が告発されていました。それは当て逃げではなく、犯人の船がきちんと特定されて、法的処置に訴えたという事件でした。相手はロシアの船で積荷は日本向けの蟹の山、だいたい、ロシア料理には蟹料理など無いでしょう?黒パンにジューシーな蟹は合いませんなあ。

■ところが、この船が「海賊船」か「幽霊船」のような代物で、船主も船会社も不明なら、荷主の運送会社はペーパー会社で、保険は油濁事件にしか対応しない相当に怪しげな物にしか加入していない。だから訴訟が宙に浮いて泣き寝入りです。今でも、素人が見ても「これでよく浮かんでいるものだ!」と感心するようなボロ船に蟹を満載してロシアから船が続々と来ているそうです。これなら蟹の大安売りも何とか可能ですなあ。

■意地が悪いようですが、庶民向けの「食べ放題」に参加する時には、箸を採る前に、松茸なら将軍様の御長寿を願い、蟹だったらロシアのボロ船の無事を祈ってたから食べましょう。心に少しでも余裕が有ったら、北の海で当て逃げされて無念に沈んで行った日本の漁師さん達の事も悼んで上げましょう。松茸は知りませんが、蟹はロシアでもトンデもない乱獲が進行中で、後数年で上物は取りつくしてしまうそうですから、腹いっぱい蟹を食べたい人は、今の内にコレステロールをたっぷりと貯め込むつもりで頑張って食いだめした方が良いようです。ロシアの海がどんなに荒れようと、海産資源が枯渇しようと、国家としては何も対応できないのだそうです。何故かと言えば、そこはマフィアの海だからです。食欲が湧きましたか?

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