旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

月刊『文藝春秋』10月号 其の四

2005-09-14 20:35:01 | 書想(その他)
其の参の続き

■要するに、

谷垣財務相が「民営化後も相当購入してもらう」と明言しているのだから、…財務省が「もう財投債も国債も大量に買ってもらわなくてもけっこうです」という事態にならなければ、官業に流れている資金は民業には流れない。

というとても単純な話なのですなあ。こんな馬鹿馬鹿しい話を唯一の選挙の論点にするために、小泉さんは「改革の本丸だ!」と大好きな時代劇の武将になった心算になって、メチャクチャな議論を思い付くままに吹っかけ続けたようです。まるで、喧嘩の啖呵です。

①全国に1万9千局ある特定郵便局の局長会持っている、百万票を動かす闇の権力を解体する。
②郵貯と簡保が抱える350兆円の資金を民間に流す。
③特定郵便局をコンビニにして便利になる。
④このままでは郵政事業は衰退の一途を辿って「ジリ貧」だ!
⑤民営化で国家公務員の数を減らせる。

以上の5点が、①はマスコミへのリーク、②は選挙用の原稿、③は武部幹事長の「紙芝居作戦」、④は竹中郵政民営化担当大臣から、⑤は立会い演説用の最後のお願い、という順番に乱発されたのですが……

■①に関しては25年前の亡霊で、01年度は選挙違反事件(有罪となった局長は皆無)出しても47万表で、04年度ではたったの28万票。御丁寧にも、1996年光文社刊『官僚王国解体論』小泉さん著に、


「いわれているほど候補者の当落を左右する大きな票を持っている組織ではない」

と、しらっと書かれてるそうですぞ!何なんでしょう、これは?
②は先述の通りの大嘘で、③に関しては


特定郵便局は現在の業務をこなすだけで精一杯で、とても多くの品数をそろえたサービスは不可能だ。 …多くはスペースが無くて、他品目を並べるような改造は無理だ。

というのが実態だそうですが、田舎の雑貨屋さんの質素な品揃えを考えれば、豪華なコンビにを作ったら膨大な弁当がゴミになるだけでしょうなあ。まあ、そんなバカな民間企業は二日で潰れるでしょうが…。武部幹事長のご実家はオホーツク海に面したなかなかに繁盛している中華料理屋さんだそうですが、御本人が経営に参加していなから、きっと繁盛しているのでしょうなあ。海鮮ラーメンがお奨めらしですぞ!

■④となると陰謀話めいて来ます。


公社になってから生田総裁の方針で、新規に貯金を望む利用者に国債の購入などを勧めて、意図的に縮小している…郵貯からお金が逃げているのではなく、意図的に郵貯が減る方向に誘導しているのである。
つまり、公社になった時点で、小泉さんの「改革の本丸」は既に落城しているのです!東谷さんの論文を読んで最も腹が立ったのは、英国留学経験者の小泉さんが、英語を全然理解していないらしい?という話です。ニュージーランドは「郵政民営化」に成功した国だと『優秀な』外務省あたりが焚き付けたのか?喜んで飛んで行った小泉さんは、


「ほう、民間のほうがポストが大きいのだね」

とハシャイでいる様子が報道されましたが、実際は民営化後に金融資産の99%が外資に食われてサービスが劣化し、郵便事業も破綻した後だったのです。その惨状は小泉さんを案内した現地の係員から、あのテレビ報道された現場で「英語で」説明されていたのだそうです。小泉さんは、本当に英語が全然使えないのではないでしょうか?

■過激なメディアでは、小泉さんの英国留学は、学生時代に起こした強姦事件のほとぼりを冷ます為に、女帝・信子姉さんの命令で決められたなどというトンデもない噂までありますからなあ。半世紀も前に「スーパー・フリー」だったのか?などと下衆の勘ぐりもしたくなります。一体、何をしに英国に行ったのでしょう?ニュージーランドの英語は英国に似ているというのに、やっぱり、聞こえていたのにし知らん振りしたのでしょうか?

■「小泉改革は本物だ!」と、今回だけは投票所に行った800万近い無党派層は、これから、既に焼け落ちている「本丸」に向って小泉「信長」と一緒に突入することになります。そこで、一体、何を目にして、どうする心算なのでしょう?本当に改革しなければならないのは、「特別会計」を抱え込んでいる本当に無駄な公務員だったり、年金の積立金をむしゃむしゃ食べてしまった役人だったり、何の役にも立たない外務官僚だったり……でも、皆、小泉さんの応援団で、「本丸」の残骸に向って出陣する小泉軍団を拍手で見送っておりますなあ。

-------------------------------------------
■当ブログの目次
どこから読んだら良いか迷ったらここをクリック

■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)教の支流と源流のつまみ食い
------------------------------------------

月刊『文藝春秋』10月号 其の参

2005-09-14 20:32:38 | 書想(その他)
其の弐の続き

■選挙が終わってからは、社会党時代の「山は動いた(そして消えた)」騒動を丸写ししたような「小泉チルドレン」(まだエヴァンゲリオン好きの新聞記者が居るらしい)をネタにして海のものとの山のものとも知れない新人女性議員を追いかけて、マスコミはハシャイでいるようですなあ。マスコミはびっくりするくらいな男性社会なのでしょうなあ。取材の指示を出しているのは脂ぎったスケベ爺(失礼)ばかりとは思いたくないのですが……。まるで、ストーカー犯罪者か電車内の痴漢野郎みたいですぞ!

■その一方で敗れた「造反議員」の惨めな姿を晒し物にする悪趣味ぶりで、民主党の次期代表選びで内輪揉めが始まったと、誰でも予想していた事を殊更に飯の種にし始めていますなあ。見当外れな報道ばかりしていた責任を感じて謝罪したり反省したマスコミは無いようです。それどころか、「ずっと小泉さんが勝つと思っていました。」と言わんばかりのシタリ顔で選挙結果の後追い分析をしているテレビや新聞ばかりです。ほとほと今回の選挙は、日本には信頼に足るメディアが無い事が分かりましたぞ!

■逆に、選挙中盤で、自民党の選挙対策幹部がブロガーを集めて意見聴取をしたそうで、選挙は民意を聞くものなのですから、ネット時代に各党がホーム・ページを存分に活用して、悪口雑言から建設的な提言まで幅広く受け付けるようにしないと、次の選挙でも、


「手応えは充分でした。(でも落選)」
「どこの演説会場でも皆さんが熱心に耳を傾けてくれました。(でも選挙区も比例も落選)」
「後半戦の反響は確かなものでした。(それで選挙区で落選して比例でゾンビになった)」

などという恥ずかしい記録映像を後世に残すことになりますぞ!どこのマスコミも「小泉さんの圧勝の原因は、『郵政民営化』一本に絞って選挙を戦ったからだ」と知ったかぶりしているのなら、今の内に文藝春秋に掲載された東谷暁さんの論文から要点を抜書きして保存して置いた方が良さそうです。

■東谷さんは、経済関係の優れた読み手で、勝手な事ばかり言っている電波芸人や出版芸人の皆さんの方言・暴言・ウソを整理してくれる貴重な人だと思います。今回も、ダーレも取り上げない小泉純一郎さんの著作二冊をちゃんと取り上げています。今ではブック・オフの100円コーナーでも入手可能です。最初は、1994年光文社刊『郵政省解体論』より


①「宅配便は、日本中、どこにでも立派に配達されている。」
②郵便貯金が民間金融機関と競合しており、「国家という信用と全国2万局の郵便局ネットワークを背景にして民業を圧迫している」
③郵便局は財政投融資の原資となっているので「いろいろな不都合」も顕在化している」

以上の3点を取り上げて、それぞれ木っ端微塵に論破して見せます。
①最大の宅配便であるヤマト運輸ですらも、ようやくのことで小笠原諸島に拠点を作ったのは97年…今も宅配便各社は山間島嶼では郵便に便乗し、メール便にいたっては戻って来た物は郵便で再発送する所すらある。
②92年の段階で旧大蔵省と旧郵政省が「定額合意」を交わして、郵貯の金融における優位は解消している。解散前の国会で法案が修正されて、郵便局ネットワークは「国民の資産」とされて維持目的で基金を盛り込んでいるから、民業圧迫は幻想である。
③「郵貯=財投=特殊法人の赤字」という構図は2001年4月から郵貯と簡保の資金が郵政の「自主運用」になった時に終わっている。郵政公社は「経過措置」として財投債と国債を買っているが、金融市場を通しているから市場を圧迫していない。

其の四に続く
-------------------------------------------
■当ブログの目次
どこから読んだら良いか迷ったらここをクリック

■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い
------------------------------------------