旅限無(りょげむ)

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新シルクロード『天空の道』に物申す 其の壱

2005-09-19 18:31:28 | チベットもの
■「NHKスペシャル 新シルクロード⑦青海 天空をゆく」まったく罪作りな番組を作ったものです。呆れ果てて暫くは呆然としてしまいました。それで話は終わったようなものですが、現地の事情やチベットに関する知識を持たない多くの日本の人々には、何が何だかさっぱり分かりませんでしょうから、逐一文句を付けて行く事に致しましょう。尚、不祥事を起こしてからすっかり?大人しくなった松平定知さんが、情感たっぷりの語りを聞かせてくれていますので、以下の文章にも頻繁にお名前が登場します。御本人の言によりますと、松平さんのマツダイラは、そんじょそこらのマツダイラとは重みが違うマツダイラなのだそうで、世が世ならば徳川将軍家の……というややこしいお家柄のマツダイラさんだそうです。読み方も、最初の「マ」にアクセントを置かねばならない厳しい決まり?があるそうなので、以下、ツダイラさんと書くことにします。

■冒頭、ツダイラさんが

「皆さんは天空のシルクロードと呼ばれている道が有る事を御存知でしょうか?」
と語り掛けて下さいます。即答しましょう。「ぜんぜん知りません」何故なら、この呼び名は、北京政府の観光産業(商売)を目的とした露骨な名称だからです。シルクロードという観光産業のドル箱を持っていながら、新疆ウイグル地区では爆弾テロや暴動騒ぎ、強盗や殺人事件も頻発してなかなか客を増やせない事情が有るのです。旧・シルクロードを日中共同制作した後、素朴なシルクロード・ファンの多い日本から観光客がどっとやって来たのですが、いよいよ本気で搾り取ろうと思ったら、すっかり宝の持ち腐れ状態になって困っているのです。そこに極最近の発掘調査の成果から、「もっと素晴らしいシルクロード」が有ったと宣伝するのに絶好の品物が見つかったというわけです。

■ダイジェスト映像が流れる中で、ツダイラさんは続けます。

「中国の真ん中、標高3000メートルを越える高原地帯を貫いています」
恐ろしいほどの断定口調ですなあ。そもそも、「天空」だの「高原」だのと誤解を招く言い回しは感心しませんぞ!チベット自治区だけを「チベット」と呼ぶのは北京政府の顔色を窺う必要上、仕方が無いのでしょうが、チベット地域は甘粛・四川・青海の三省に広がっているのは常識です。そして、チベット自治区の側を「高地」と呼び、青海省や四川省の側を「低地」と呼ぶのです。ツダイラさんは「標高3000メートル」と大仰に言いますが、「高地」の中に在る古都ラサの標高は3658メートルです。高地のチベット人にとって、ラサは「気候が温暖な低い土地に開けた聖なる都」なのです。つまり、3000メートルはチベット人にとっては「低い土地」だというのが常識なのです。どうして、そこが「天空」なのでしょう?こんな事を言うのは、べったりと淀んだ水が流れる黄河下流に暮らす漢族ぐらいなものです。チベット人が聞いたら大笑いするか、怒り出すに違い有りませんぞ!嗚呼、恥ずかしい!

■チベットの「高地」には、標高6000メートルを越える所に町が有ります。知り合いのチベット人は、「あそこは高いよ」とさらりと言ったものです。3000メートルが高いだなんて、誰に聞いたのでしょう?


「そこには、わたくし達の知らない世界が広がっています」

こう言えば、視聴者は驚いたり感心したりして興味を持つだろうと舐めているのが気に入りませんなあ。人の暮らしの基本要素は大差など無いのは常識でしょうに!チベット人を珍しい生き物のように扱うのは絶対に止めて頂きたい。それに、番組中で「チベット民族の人々は…」とツダイラさんは当たり前のように言いますが、日本語を知っているチベット人達は「チベット人と言って下さい」と言ってますぞ!

■更に続けてツダイラさんは、こう言いました。


「まだ解明されていない数多くの遺跡が眠る大地」

語るに落ちるとはこの事です。草原が途切れた広大な砂漠と荒地が続く場所ですから、昔から絢爛たる文化が花開いたことなど無かった場所と考えるべきで、本家のシルクロードに匹敵するような謎が有るはずだと乱暴に前提している間は、「解明されていない謎」が永久に残るでしょうなあ。


「近年、この道からおよそ1200年前の物と思われる大量の絹織物が発見されました。」

どうしても新しいシルクロードだと言いたいツダイラさんは、「1200年前」だの「絹」だのと畳み掛けて来ますから、ご用心、ご用心。何を根拠に1200年前という数字が弾き出されたのか、番組の最後まで明かされませんからご注意。このシリーズで発見された砂漠のミイラでも、トンデモない当てずっぽう年代を平気で放送した前科が有りますからなあ。

以下其の弐に続きます。まだ番組冒頭の2分間ですなあ。

芭蕉が泣いている

2005-09-19 17:13:04 | 日本語
■小さな記事ですが、日本語に関するニュースを見つけました。多くの大学生が日本人ではなくなっているという御話です。

「蛙」?知らない大学生35%

 大学生の3人に1人は、「春はあけぼの」の意味が分からない――。国立国語研究所の島村直己主任研究員らの研究グループが17日、千葉市で開かれた日本教育社会学会でこんな調査結果を発表した。
 現代文は高校生より正答率が低く、研究グループは「大学生の活字離れが深刻になっているのではないか」としている。
 調査は今年6~7月、国立大5校と私立大3校の1~4年生までの約850人に実施。古文4、現代文2の計6問を出題し、2年前に高校生1~3年生約1500人に実施した同一問題での調査結果と比較した。
 それによると、古文では、枕草子の「春はあけぼの」の意味を「春は夜が明け始めるころが素晴らしい」と正答できた大学生は62・9%。松尾芭蕉の俳句「古池や 蛙飛び込む 水の音」の「蛙」について、「カエル」と答えたか、「かわず」という正しい読み方を答えた学生は65・3%だった。
 また、童謡「赤とんぼ」の「負われて見たのは」の歌詞の意味を「背負われて見たのは」と正答できたのも61・6%にとどまり、「追いかけられて見た」という誤答が目立った。唱歌「夏は来(き)ぬ」については、「夏が来ない」と逆の意味にとらえた学生が多く、正答率は47・8%と半数を割った。(読売新聞) - 9月18日
 
■報道では大学名が伏せられていますが、一応、面子の問題なのでしょうか?偏差値の意味が無くなっていると言われて久しい昨今の大学では、学力差などほとんど無くなっているとも聞きます。実際に大学で毎日ご苦労をなさっている先生方の話を聞くにつけ、嗚呼、もうダメかいなあ、と溜息ばかりが出ます。この調査で、序(ついで)に

「蛙を英語で何と言う?正確に発音して正しく書きなさい」
という問も付け加えて見れば良かったでしょうに。そうすれば、文科省が希望した?通り、日本語も英語も分からない奇妙が生物が大繁殖している実態がもっとはっきり分かった事でしょう。

■『声に出して読み』たくない日本語の本が馬鹿みたいに売れる国ですから、こんな調査結果に誰も驚かないでしょうが、ろくに落語も聴かない若者に古典だの伝統文化だのと無茶な注文をしては行けません。テレビでもラジオでも、めっきりと芸能番組が減ってしまいました。NHK教育放送では、日曜の午後に能・狂言や歌舞伎など頑張って放送していますが、大衆芸能に関しては、毒にも薬にもならない日本テレビの『笑点』ぐらいしか生き残っていないようです。NHKでは『日本の話芸』も放送中ですが、早朝の5時半に観ているのは早起きの御老人だけだと知った上で放送しているのですから、これも問題ですなあ。余りにテレビが詰まらなくなって、休日には寄席に客が戻りつつあるようです。何の芸を持っているのかさっぱり分からない連中がじゃれ合って、怒鳴りあって、笑い合っているだけの番組を何百時間観ても、洒落の一つも覚えませんし、粋な物言いも身に付きません。見事な話芸を堪能すれば、真似したい気の利いた表現も拾えるのですが、今時のテレビやラジオからは学ぶべき物がまったく無いでしょうなあ。真似をすればアホと思われるような無駄話しか放送していないばかりか、とてもプロとは思えないアナウンサーを自称する人がぞろぞろ出て来るようです。

■「あんな程度なら私も出来る」と思う日本人が随分と増えて、青少年の中には「テレビのレポーターになりたい」だの「アナウンサーになりたい」だのと気楽に言う傾向が有りますなあ。半世紀前には、名人芸と呼ぶに相応しいアナウンサーが仕事していましたから、とても気楽に自分もなりたい、などとは言えなかったのではないでしょうか?それだけ日本の若者の言語能力が向上したのならば誠に結構な事なのですが、実情はその逆で、素人同然の粗雑な話し方しか出来ない人々が、テレビやラジオでわいわいやっているのを見聞きした若い人々が「親しみ」を感じて就職を考えるのでしょうなあ。

■「速報性」と「親しみ」、一体何処の誰が言い出したのかは存じませんが、この二つを免罪符にして放送文化は底なしの堕落を始めたのです。急いで報道するから多少の間違いやトチリは許されるのか?「親しみ」と言いながら視聴者を馬鹿にした番組を乱造して良いのか?NHKが子供向けに『日本語で遊ぼう』という番組を放送し始めた時は衝撃的でしたなあ。しかし、タネ本が『声に出して読みたい…』でしたから、


「今日の名文! 我輩は猫である。 夏目漱石」

と幼児が元気良く読み上げる声は愛らしいのでしたが、「一体、この文の何処が名文なのか」さっぱり分からず企画の意図が掴みきれなくなってしまったのでした。例えば、とても美しい風景に感動して、その場の石を一つ拾って来て、それを見せられながら「美しい風景を想像しろ」と言われても無理でしょうに!何回か観ている内に、「この番組は日本語で遊んでいるのではなくて、日本語を馬鹿にしている!」と腹が立って来てからはまったく観なくなりましたなあ。

■落語の枕には、諺や俳句、警句に小唄、なんでも取り入れられているもので、それが分かっていないと最後のオチが分からない仕掛けになっているものですから、油断無く耳を澄ませて集中していないと行けません。羞恥心が欠如したゲイニンが、突然裸になって見せたり、危険な目にあって醜態を晒しているのを見た瞬間にゲラゲラ笑っているようでは、日本語はどんどん衰退して行きますぞ!本物を紹介しなくなったメディアは、一時の盛りを過ぎれば、何も残さずに消費されて終わります。そんな物に幼い脳ミソを漬け込んで置けば、どんな日本人に育つかは誰にでも分かるという物でしょうなあ。その結果が、大学生をサンプルにした調査で再確認出来た、というだけの話でした。


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手遅れかも知れないけれど

2005-09-19 16:37:34 | 社会問題・事件
■水産庁がエチゼンクラゲの大群を海中で粉々にしてしまう必殺技を編み出したそうです。農水省の方では畑に鋤き込んで肥料にしてしまおうと考えているようです。アイルランドで海草を肥料にした方法の応用でしょうが、アイルランドでは海の塩分が土壌に悪影響を及ぼしたのですが、日本ではその轍を踏まないように塩に強い作物を考えるのだそうです。後は、外務省と環境省が手を組んで、エチゼンクラゲを大量発生させている某国の汚水問題に対して、しっかり文句を言う仕事が残るばかりですなあ。トボケた事を言うようなら、日本の漁師さん達が被った損害の賠償をびしっと請求するぐらいの根性を見せて欲しいものです。そろそろODAを減額しようかな?などと言っている場合では有りませんぞ!自動車と工場からの有毒廃棄物が偏西風うに乗ってどっさりと流れて来る時代になっているのですから、それを逆手に取られて、
「公害対策の資金も援助しろ!靖国参拝はやめろ!」
などと言わせては行けません。

■昔、日清戦争の後で講和条約を結びにやって来た李鴻章というチャイナの偉い人は、我が国の瀬戸内海を航行している時に、

「日本は小さな国だと聞いていたが、立派な河が流れているではないか」
と言ったとか……。確かに、源平合戦でも数々の名場面の舞台となった瀬戸内海は流れが速く、その変り方も激しい難しい海です。関門海峡や鳴門海峡に行きますと、本当に河のようにごうごうと音を立てて流れていますからなあ。島が多くて難所も多い。昔から水軍が支配していた海でもありましたなあ。戦後は、あちこちを埋め立てて石油化学コンビナートを建設して日本の復興と繁栄を支えてくれた海でもあります。

■前から大赤字になるのは分かっていたのに、三本も橋を架けて、それも大型艦船がつっかえるとも言われる物まで有る変な海になったのは、自民党の中の派閥争いと意地の張り合いが原因だったのだそうですが、土建行政の大赤字以上に深刻なのが水質汚染だそうですなあ。例の豊島(てしま)問題も有りましたし、小さな島を最悪のゴミ捨て場にして平気な日本人がいるのは実に悲しい事です。


豊かな海再生の法整備を 瀬戸内海沿岸自治体が決議

 瀬戸内海沿岸などの13府県と17市で構成する「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」(議長・井戸敏三兵庫県知事)の総会が16日、神戸市で開かれ、瀬戸内海を豊かな海として再生させるため、国に法整備を求める特別要望を決議した。近く環境省など関係省庁に提出する。要望は「瀬戸内海の漁業環境が急激に悪化し、水産資源の今後に不安がある」と訴え、国に対し、水産資源の回復や美しい自然の再生を計画的に推進するための法整備を要望している。
 井戸知事は「瀕死(ひんし)の海からの再生では成果を得たが、豊穣(ほうじょう)の海再生という点では課題が残っている」とあいさつ。(共同通信) - 9月16日

■何だか、40年くらい開催が遅いような会議ですが、何事も反省するのは結構な事でしょうから、大いに頑張って頂きたいものです。大阪名物のタコ焼きは明石の蛸でなければならないという鉄則が有るそうですし、沿岸の港には名物料理が沢山有ったはずですが、放っておくとタコ焼きの蛸も輸入物になったり、風光明媚な宿に泊まって出される魚料理の材料が何処かの国から空輸されているのでは、がっかりです。豊穣の海には豊かな森林が欠かせませんから、農林行政も協力して、山が迫っている美しい風景と豊かな海を再生して欲しいものですなあ。沿岸地域の海底が、砂漠のような状態になっている場所が日本中で増えていて、大金を投入して漁港を整備してみたら、水揚げが無くなって次々に漁師さんが廃業して……などという馬鹿馬鹿しい話まで有ると聞きます。瀬戸内海は、多くの自治体が向い合わせの両隣になっているのですから、協力して行くのは実にすばらしい事です。

■願わくば、変な利権を漁り合って地方財政の傷を深くするような事だけは止めて頂きたいものです。海を豊かにする予算は無くとも、無駄な吊り橋は幾らでも作れるのが日本の政治の不思議なところですから、知事さん達には是非とも賢く頑張って欲しいものです。

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「A級戦犯」の誤用は止めて

2005-09-19 16:05:11 | 靖国神社
■田原総一郎さんという人は、言う事がころころ変るのに、不思議にマスコミでは人気者です。今回の総選挙では、外交の大失敗の連続を追求されたら負けると知っていた小泉さんは「靖国問題」を最初から封印してしまって、マスコミはこれに全面的に協力して、野党が靖国に言及する機会を奪ってしまった印象が有ります。選挙前には、出版界も新聞業界も靖国で稼いでいました。その御蔭で、国民の知識は急速に増えて、だんだん実の有る議論が始まりそうな気配だったのですが、ぴたりと風は止みましたなあ。

■総選挙後、最初の日曜日(18日)なのでテレビ局はどこもかしこも勝敗の原因を並べているようです。全部、後知恵なので聞いても仕方がないので幾つか拾って漫然と流していたのですが、テレビ朝日のサンデー・プロジェクトに、前日に民主党代表になったばかりの前原さんが出るというので、民主党を応援していたことになっていたテレビ局が何を言わせるのか?と少しばかり興味を持って覗いてみましたが、インタヴュー冒頭にトンデモない発言が飛び出しました。

「今回の選挙惨敗のA級戦犯は、さっきNHKに出ていた連合の笹森さんだよ」
これは田原さんの発言です。連合が選挙の逆風になった点を指摘したのは良いとして、「A級戦犯」は誤用です。田原さんは、大衆的なレストランで昼食を摂るような時、Aランチ、Bランチ、Cランチと並んでいれば、AランチはBランチよりも高級食材を使っていると判断するのでしょうか?

■御寿司の松・竹・梅は、ネタの良し悪しできちんと区別されていて、値段もはっきりと違います。しかし、AランチとBランチとCランチは、肉か魚か野菜かなど主菜が違うだけです。靖国神社で、祭儀上は絶対に不可能な「分祀」論が延々と語られ続けているのも、ABCの区別を松竹梅と混同しているのも、マスコミや言論に関わる人達が意図的に整理しないで放置しているのは大問題ですなあ。今更ながら、もう一度確認して置きましょう。

極東国際軍事裁判所条例の第五条の(イ)の以下の定義

「平和ニ対スル罪 即チ、宣戦ヲ布告セル又ハ布告セザル侵略戦争、若ハ国際法、条約、協定又ハ誓約ニ違反セル戦争ノ計画、準備、開始、又ハ遂行、若ハ右諸行為ノ何レカヲ達成スル為メノ共通ノ計画又ハ共同謀議ヘノ参加。」

「平和に対する罪」を犯したと疑われた人達がA級戦犯なのです。「一番悪い奴」という意味は、戦後になって誰かが何かの意図を持って付け加えたものです。これが放置されている限り、靖国参拝に賛成か反対かの議論など不可能ですし、分祀論の出発点にさえ立てないはずなのです。

■最初に引いた田原さんのウッカリ発言は、「一番悪い奴」の意味で使われたとしか考えられないものです。

「今回の選挙で惨敗で終わった一番の責任者は…」
「今回の選挙の惨敗で、一番悪い奴は…」
と言えば済むところで、わざわざ「A級戦犯」と表現するところに、田原さんのジャーナリストとしての資質が露呈しているように思えますなあ。これから、憲法改正が本格的に始まり、同時に中国との領土領海交渉も先送り出来ない時期になります。今回の選挙結果が持つ意味はそれでしょう。郵便ポストが減るか減らないかなど、本当は大した問題ではなかったのです。そんな時期に、こんな杜撰な言葉の使い方をする人が、あちこちに顔を出してジャーナリストの肩書きで発言したり執筆活動をしているのはエライことですなあ。
■どこかの野球チームが優勝を逃したりすると、スポーツ新聞の一面には「A級戦犯」の文字が並びますが、これは悪趣味なパロディとして放って置いても良いだろう、と思っておりましたが、スポーツ新聞と一般紙との区別がどんどん無くなってしまったので、考えを改めなければなりません。早急に「A級戦犯の正しい使い方」をコードとして定める必要が有るようです。スポーツ新聞のノリで一般紙も記事を書いてしまうのか、スポーツ新聞が質を向上させたのかは分かりませんが、どちらも「A級戦犯」という用語を粗雑に使い過ぎるのは同じです。

■これから郵政民営化はもたもたするでしょうが、その裏で粛々と憲法改正が進められるでしょう。その時に、スポーツ新聞仕込みの「A級戦犯」のイメージが刷り込まれた国民が重大な投票に引きずり出されることになりますぞ!中国と韓国がこの混乱と誤用を外交的圧力に利用するのは立派な戦略です。しかし、それに乗せられて右往左往する日本は単なるアホです。気楽に「A級戦犯」などとは言わずに、「一番悪いヤツ」「最も責任が重い人」「○○の罪を犯した者」などの正確な言葉を使いましょう。

■戦後の日本語は、自衛隊の一佐・二佐・三佐などの変な番号や、「A級戦犯」のような意味不明のランク付けが入り込んで、松竹梅のような上品な順位文化が衰えたようですなあ。そう言えば、芸達者なハルク・ホーガンとかいうプロレスラーがいて、「イチバーン」というとても分かり易い日本語を絶叫して人気者でしたなあ。元日本テレビのアナウンサーと今は議員になったマゾッ気たっぷりのプロレスラーが叫んでいた意味がさっぱり分からない「ファイヤー!」などよりも、言いたい事がはっきりと分かったのを覚えていますぞ。

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日本版アヘン戦争

2005-09-19 15:53:31 | 社会問題・事件
■総選挙が終わって一週間。大勝した自民党からは既定の「増税案」がしらっと発表され、大敗した民主党では若手の前原さんが新代表に選出されると、そのお祝いなのか落選議員から覚醒剤犯罪が発覚しました。これも「国策調査」なのでしょうか?落選すると同時に続々と選挙違反が摘発されるのは珍しくもないのですが、覚醒剤とは驚きです。米国帰りの坊っちゃん政治家は、地元では期待のホープだったのでしょうが、どこの国に行こうとも不良と交流していたら、結果は同じですなあ。
 愛知県警と警視庁は18日、衆院選の愛知7区で落選した民主党前衆院議員、小林憲司容疑者(41)(愛知県日進市)ら3人を覚せい剤取締法違反(所持)の現行犯で逮捕、自宅など約30か所を捜索した。このほかに逮捕されたのは、私設秘書の安藤貢視(41)(同県瀬戸市)、団体職員の佐伯正晴(40)(同県春日井市)の両容疑者。佐伯容疑者は小林容疑者と高校の同級生で、2年前まで私設秘書だった。
 調べによると、小林、安藤両容疑者は同日早朝、小林容疑者の自宅で数回分の覚せい剤を隠し持ち、佐伯容疑者は同日朝、名古屋市内のホテルで覚せい剤約0・6グラム(末端価格約3万6000円)を所持していた。……小林容疑者が覚せい剤を使い始めたのは、衆院選に初当選した翌年の2001年10月ごろで、知り合いのホステスに勧められたのをきっかけに、週に2~3回程度、パイプで吸引するようになったという。この元私設秘書は、小林容疑者の指示で、イラン人の密売人からコンビニエンスストアの駐車場などで覚せい剤を購入。小林容疑者は自ら覚せい剤を持たず、使うたびにこの元秘書らから受け取っており、秘書のかばんの中には吸引用のパイプがいつも入れられていたという。
 昨年10月ごろまで、日進市の自宅やホテルなどのほか、衆院議員会館の事務所でも吸引していたといい、再選を果たした03年11月の前回衆院選で、選挙カーの中で覚せい剤を吸引してから、演説に立ったこともあった、と証言する。この元私設秘書は、警察当局の事情聴取に応じているほか、秘書当時に持っていた覚せい剤吸引用のパイプを任意提出している。小林容疑者は外資系企業社員を経て、2000年衆院選に初当選。当選2回で党国対副委員長などを務めたが、11日投開票の衆院選で落選した。(読売新聞) - 9月19日

■このホステスさんが、六本木のお店に勤めていたとしたら、次の事件ともつながりますなあ。

東京・六本木の路上で先月29日、死亡しているのが見つかったブラジル国籍の少女(16)の体内から、複数の薬物成分が検出されていたことが18日、警視庁の調べで分かった。
 六本木周辺では昨年、米国人男性や日本人女性ら4人が相次いで薬物中毒死するなど、混合薬物を摂取して死亡する事件が起きている。少女が生活していた群馬県の地方都市と、大都会の“影”を追った。
 「外国人がたむろする一部のクラブにクスリの売人が入り込み、客を見つけては売りさばいているよ」六本木の繁華街の一角。飲食店の従業員男性は、薬物密売の実態を平然と話した。……行政解剖の結果、死因は心不全とされたが、その後の調べで、体内の代謝物の簡易検査でオピウム(アヘン)、アンフェタミン類(覚せい剤の成分)、コカインのそれぞれに、陽性の反応が出た。ある専門家は「複数の薬物を摂取した可能性が高い」と指摘する。
 
■戦後の混乱期に、正気でいたくない気分が蔓延してヒロポンが大流行したそうですが、今回はもっと強烈な作用を起こす麻薬が東京に大集結中のようです。麻薬犯罪と言えば、ヤクザさんか芸能人と相場が決まっていた時代も去って、普通の生活を送っている人々の中に、「痩せる薬」だの「受験勉強の能率が上がる薬」として入り込んでいるという話はバブル時代の前に流布していましたなあ。それがホステスさんから政治家まで広まって、時々、警察官や自衛官等の公務員の中でも愛用者が摘発されるようになりました。世も末です。基本的な事実を数字で確認して置いた方が良いでしょう。

平成6年(1994年)から10年の押収量は1,770.1キログラム。
平成11年(1999年)から15年の押収量は4,332.8キログラム。
平成11年中の覚せい剤の押収量は、1,975.9キログラムで史上初めて1トンを突破。
平成12年中の覚せい剤の押収量は、1,027.0キログラム。
平成13年は406.1キログラム。
平成14年は437.0キログラム。
平成15年は486.8キログラム。
平成16年は407.6キログラム。


■以上は警察の発表を抜粋したものです。推定で、毎年10トンから20トンが何処かから入って、誰かが買って使っていると考えられるそうですが、押収量がどんどん減ってしまったのは、日本の犯罪組織が急激に国際化して密輸方法がますます巧妙になって、既存の警察組織では対応不能になっているという恐ろしい現実が有るようです。本当は、海を隔てて隣接する国々と共同で「麻薬撲滅戦争」を始めねばならないのですが、国家的な産業として麻薬を作って売り捲くっている国が有るのですからこれは無理です。その他にも、飢えや貧困を売り物にして物乞い外交をしながら、不思議に武器だけはふんだんに持っている変な国が沢山有ります。その多くが、せっせと麻薬を作って売った金で死の商人から武器をしこたま買い込んでいるという構図が有ります。買わねば良いのですが、煙草や酒とは違って体質的に麻薬を受け付けないという人間はほとんど居ないのですから、上手に売れば幾らでも売れるのが麻薬です。

■噂によりますと、最初はお試しサービス品として誘惑しておいて、しっかり中毒状態になったら意地悪く値段を上げる悪徳商法で、笑いが止まらないほど儲かるそうです。支払いに困った中毒者は、今度は売り手に回って手数料を稼いでは自分の分を購入する。ですからネズミ講としてこれ程能率の良い組織は無いわけです。健康器具や健康食品などでマルチ商法をやると、必ずどこかに仕入れた品物が滞って破綻してしまうものですが、麻薬のネズミ講は絶対に品物が滞留する事は無いのですから、際限も無く組織は巨大化して親になっている悪い奴は巨万の富を得られる訳ですなあ。

■禁煙運動が進んで、少々行き過ぎかと思われるほどになっていますが、その陰で麻薬がどんどん広まっているとしたら、何とも恐ろしい話です。煙草銭欲しさに強盗や人殺しをする者は居ないのに、麻薬欲しさならば、何でもするのが中毒者ですし、煙草の愛用者は誰の目にも分かりますが、一見「酒も煙草もやらない健康志向の真面目人間」が、実は麻薬の常用者だったりしてもまったく周囲には分かりません。奇妙な傷害事件が多発していますが、その多くに薬物の臭いを感じるのですが、報道では一切触れません。もしかすると、摘発件数や押収量の少なさを責められるのを怖れる警察が、薬物関連の情報を遮断しているのではないか?などと勘ぐりたくなる事が多いのですが、如何でしょう?

■国内の闇の中で流れている薬物の量からすれば、通勤や通学、散歩や買い物の最中に、擦れ違う人や追い越して行く人の中に、必ず薬物で神経に変調を来たしている人がいる事になりそうです。堂々と麻薬愛用者がネット上であれこれ書き込んでいる現状では、これまでの教育や警察の活動では間に合わない危機を脱することは不可能なのではないでしょうか?広告界では「疲れた時には……が効きます」などと恐ろしい宣伝が平然と行なわれていますし、世界でも珍しいドリンク大国になってしまった日本ですから、あれこれと疲労回復の効能を信じて飲み比べているような人は、良いお客さんになるような気がして仕方がないのですが……。疲れた時には休息を取る以外に回復方法は無いのですが、薬に頼って解決しようと思っている限り麻薬市場は安泰なのでしょうなあ。

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命懸けでテレビに出てどうする?

2005-09-19 12:10:41 | 社会問題・事件
■他人の視線をひどく気にして暴行事件を起こす人がいる一方で、人に見られたくて仕方が無い人も多い。これはとても不思議な話です。テレビという機械は、不特定多数が観ている事を前提としているのに、何故か出演する者達から羞恥心と通常の社会常識を奪ってしまう魔力が有るようです。「芸人」と呼ばれる何の特技も持たない人達がぞろぞろと並んで悪ふざけして時間を潰す番組がどんどん増えて、見るに耐えない苦し紛れの企画が目白押しのようです。そんな物を見ているのなら、良い本を読んだり静かに音楽でも聴いていたら良さそうなものですが、案外とバカ騒ぎを楽しく見ている人が多いというのは悲しい話です。

■テレビ・カメラを見ると、フレームに自分の顔を押し込もうとバカ面を出して昔と変らず「ピース・サイン」をしてにやにやしている恥知らずが後を絶ちませんなあ。ヤラセ企画に自分から応募して出演する愚か者も多く、時には命懸けで危険な番組に出演する者も消える事は無いようですなあ。

テレビ東京 番組収録中に男性が腰の骨を折り重傷
 熊本市の市営プールで18日、「テレビ東京」の番組収録中に一般公募した男性がプールに飛び込み、腰の骨を折る重傷を負った。
 重傷を負ったのは鹿児島市に住む25歳の男性で市営プール「アクアドームくまもと」にある高さ約10メートルの飛び込み台から飛び込んだという。プールには水が張ってあったが、男性が飛び込んだ後、腰の痛みを訴えたため病院に行ったところ、骨折していたことがわかった。
 番組は「月曜エンタぁテイメント」で参加者の度胸を試す内容だったという。警察は収録を担当していた東京の制作会社「ホールマン」から事情を聴いている。

■テレビ東京は、子供が給食の時間に真似をして事故が続出して放送を中断した大食い早食い番組を今年になって復活させたと新聞で読みましたが、その番組の司会者はみのもんたさんだったとか……。
「この時間は放送する良い企画が無いので、視聴者の皆さんはテレビを止めて静かに読書してお過ごし下さい」などと言う親切なテレビ局は無いので、次から次と、隣のテレビ局と同じような番組を作っては放送時間を必死で埋めているのが実情です。因果な商売だとは思います。「バラエティ番組」と言えば何でも冗談で許されると思っている節が有るのが一番の問題でしょうなあ。最近の日本語には「子供だまし」という表現が無くなったので、「こんな番組を観ている自分が恥ずかしい!」と怒る日本人も減ったのでしょう。放送局は商売上、恥を忍んでアホな番組をせっせと制作しているのですから、そんな物に律儀に付き合う必要は無いのです。それは幼児の頃にしっかり親が教えて置くべき「現代の徳目」かも知れません。

■テレビは、「見て下さい!」「面白いですよ!」と、必死で宣伝しているので、事件や犯罪すれすれの企画でも話題になるのなら平気で悪質な番組を作ってしまいます。今回の事故を起こした番組がどれ程の見る価値を持った物なのかは知りませんが、命を懸けて出演する意味が有ったとはとても思えません。25歳にもなって、自分から応募して危険な出し物を唯々諾々とやって見せる素人……。この番組を企画している人々の姿や撮影現場の様子を想像するだに恐ろしく、嗚呼、日本はもうダメなのか?と絶望してしまいそうですなあ。選挙権を持っている「大人」が、こんな事で一生を棒に振るような国が選んだ政治家達が、今日も今日とて、あれこれと内輪揉めをしております。そして、それをテレビが追いかけて、大事な問題がどんどん見えなくなるという悪循環を繰り返しております。

■週刊文春が、ちょっと前に「テレビは要らないキャンペーン 」をやっていましたが、薄型テレビが景気を回復させるくらいに良く売れているそうです。テレビとの付き合い方を学ぶ以前に、テレビが普及して映画が衰退し、映画館の無い市町村が日本中に並んでいます。一極集中の象徴がテレビで、地方放送局は中央からコンテンツを買わないと経営が成り立たないのですから、「地方の時代」など来るはずも無いですなあ。地方のテレビ局が立派なドキュメンタリーを作っているのに、それを観る機会はほどんどなく、日本テレビの日曜日深夜に一つだけドキュメント枠が有るぐらいのようです。視聴し易い時間帯には、番組名を観ただけで「一見の価値無し!」と判定できるコンテンツが並んでいます。素人をバカ高い台の上からプールに飛び込ませるくらい、どこのテレビ局でも平気でやりそうです。

■昔の頑固親父は「こんな物を観ていたら馬鹿になるぞ!」と怒ってテレビを消したものですが、最近では優しいパパは一緒になって下衆な笑いを共有しているのか、子供部屋にもテレビを置いて放し飼いにしてあるのか、コンピュータでややこしいネットにはまり込むよりは遥かに安心だと思っているのか、嗚呼、メディア教育も出来ないまま、コンテンツばかりが気味悪く増え続けますなあ。少なくとも、テレビごときに命を奪われるのは避けたいものです。出来れば、死ぬまでの貴重な時間を削られないようにする用心もしたいものです。あらゆる業種で、大企業が経営破綻したり経営に行き詰る事が有るのに、テレビ局が一つも潰れないこと自体が不思議だと思わねばなりませんなあ。



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