■「NHKスペシャル 新シルクロード⑦青海 天空をゆく」まったく罪作りな番組を作ったものです。呆れ果てて暫くは呆然としてしまいました。それで話は終わったようなものですが、現地の事情やチベットに関する知識を持たない多くの日本の人々には、何が何だかさっぱり分かりませんでしょうから、逐一文句を付けて行く事に致しましょう。尚、不祥事を起こしてからすっかり?大人しくなった松平定知さんが、情感たっぷりの語りを聞かせてくれていますので、以下の文章にも頻繁にお名前が登場します。御本人の言によりますと、松平さんのマツダイラは、そんじょそこらのマツダイラとは重みが違うマツダイラなのだそうで、世が世ならば徳川将軍家の……というややこしいお家柄のマツダイラさんだそうです。読み方も、最初の「マ」にアクセントを置かねばならない厳しい決まり?があるそうなので、以下、マツダイラさんと書くことにします。
■冒頭、マツダイラさんが
「皆さんは天空のシルクロードと呼ばれている道が有る事を御存知でしょうか?」
と語り掛けて下さいます。即答しましょう。「ぜんぜん知りません」何故なら、この呼び名は、北京政府の観光産業(商売)を目的とした露骨な名称だからです。シルクロードという観光産業のドル箱を持っていながら、新疆ウイグル地区では爆弾テロや暴動騒ぎ、強盗や殺人事件も頻発してなかなか客を増やせない事情が有るのです。旧・シルクロードを日中共同制作した後、素朴なシルクロード・ファンの多い日本から観光客がどっとやって来たのですが、いよいよ本気で搾り取ろうと思ったら、すっかり宝の持ち腐れ状態になって困っているのです。そこに極最近の発掘調査の成果から、「もっと素晴らしいシルクロード」が有ったと宣伝するのに絶好の品物が見つかったというわけです。
■ダイジェスト映像が流れる中で、マツダイラさんは続けます。
「中国の真ん中、標高3000メートルを越える高原地帯を貫いています」
恐ろしいほどの断定口調ですなあ。そもそも、「天空」だの「高原」だのと誤解を招く言い回しは感心しませんぞ!チベット自治区だけを「チベット」と呼ぶのは北京政府の顔色を窺う必要上、仕方が無いのでしょうが、チベット地域は甘粛・四川・青海の三省に広がっているのは常識です。そして、チベット自治区の側を「高地」と呼び、青海省や四川省の側を「低地」と呼ぶのです。マツダイラさんは「標高3000メートル」と大仰に言いますが、「高地」の中に在る古都ラサの標高は3658メートルです。高地のチベット人にとって、ラサは「気候が温暖な低い土地に開けた聖なる都」なのです。つまり、3000メートルはチベット人にとっては「低い土地」だというのが常識なのです。どうして、そこが「天空」なのでしょう?こんな事を言うのは、べったりと淀んだ水が流れる黄河下流に暮らす漢族ぐらいなものです。チベット人が聞いたら大笑いするか、怒り出すに違い有りませんぞ!嗚呼、恥ずかしい!
■チベットの「高地」には、標高6000メートルを越える所に町が有ります。知り合いのチベット人は、「あそこは高いよ」とさらりと言ったものです。3000メートルが高いだなんて、誰に聞いたのでしょう?
「そこには、わたくし達の知らない世界が広がっています」
こう言えば、視聴者は驚いたり感心したりして興味を持つだろうと舐めているのが気に入りませんなあ。人の暮らしの基本要素は大差など無いのは常識でしょうに!チベット人を珍しい生き物のように扱うのは絶対に止めて頂きたい。それに、番組中で「チベット民族の人々は…」とマツダイラさんは当たり前のように言いますが、日本語を知っているチベット人達は「チベット人と言って下さい」と言ってますぞ!
■更に続けてマツダイラさんは、こう言いました。
「まだ解明されていない数多くの遺跡が眠る大地」
語るに落ちるとはこの事です。草原が途切れた広大な砂漠と荒地が続く場所ですから、昔から絢爛たる文化が花開いたことなど無かった場所と考えるべきで、本家のシルクロードに匹敵するような謎が有るはずだと乱暴に前提している間は、「解明されていない謎」が永久に残るでしょうなあ。
「近年、この道からおよそ1200年前の物と思われる大量の絹織物が発見されました。」
どうしても新しいシルクロードだと言いたいマツダイラさんは、「1200年前」だの「絹」だのと畳み掛けて来ますから、ご用心、ご用心。何を根拠に1200年前という数字が弾き出されたのか、番組の最後まで明かされませんからご注意。このシリーズで発見された砂漠のミイラでも、トンデモない当てずっぽう年代を平気で放送した前科が有りますからなあ。
以下其の弐に続きます。まだ番組冒頭の2分間ですなあ。
■冒頭、マツダイラさんが
「皆さんは天空のシルクロードと呼ばれている道が有る事を御存知でしょうか?」
と語り掛けて下さいます。即答しましょう。「ぜんぜん知りません」何故なら、この呼び名は、北京政府の観光産業(商売)を目的とした露骨な名称だからです。シルクロードという観光産業のドル箱を持っていながら、新疆ウイグル地区では爆弾テロや暴動騒ぎ、強盗や殺人事件も頻発してなかなか客を増やせない事情が有るのです。旧・シルクロードを日中共同制作した後、素朴なシルクロード・ファンの多い日本から観光客がどっとやって来たのですが、いよいよ本気で搾り取ろうと思ったら、すっかり宝の持ち腐れ状態になって困っているのです。そこに極最近の発掘調査の成果から、「もっと素晴らしいシルクロード」が有ったと宣伝するのに絶好の品物が見つかったというわけです。
■ダイジェスト映像が流れる中で、マツダイラさんは続けます。
「中国の真ん中、標高3000メートルを越える高原地帯を貫いています」
恐ろしいほどの断定口調ですなあ。そもそも、「天空」だの「高原」だのと誤解を招く言い回しは感心しませんぞ!チベット自治区だけを「チベット」と呼ぶのは北京政府の顔色を窺う必要上、仕方が無いのでしょうが、チベット地域は甘粛・四川・青海の三省に広がっているのは常識です。そして、チベット自治区の側を「高地」と呼び、青海省や四川省の側を「低地」と呼ぶのです。マツダイラさんは「標高3000メートル」と大仰に言いますが、「高地」の中に在る古都ラサの標高は3658メートルです。高地のチベット人にとって、ラサは「気候が温暖な低い土地に開けた聖なる都」なのです。つまり、3000メートルはチベット人にとっては「低い土地」だというのが常識なのです。どうして、そこが「天空」なのでしょう?こんな事を言うのは、べったりと淀んだ水が流れる黄河下流に暮らす漢族ぐらいなものです。チベット人が聞いたら大笑いするか、怒り出すに違い有りませんぞ!嗚呼、恥ずかしい!
■チベットの「高地」には、標高6000メートルを越える所に町が有ります。知り合いのチベット人は、「あそこは高いよ」とさらりと言ったものです。3000メートルが高いだなんて、誰に聞いたのでしょう?
「そこには、わたくし達の知らない世界が広がっています」
こう言えば、視聴者は驚いたり感心したりして興味を持つだろうと舐めているのが気に入りませんなあ。人の暮らしの基本要素は大差など無いのは常識でしょうに!チベット人を珍しい生き物のように扱うのは絶対に止めて頂きたい。それに、番組中で「チベット民族の人々は…」とマツダイラさんは当たり前のように言いますが、日本語を知っているチベット人達は「チベット人と言って下さい」と言ってますぞ!
■更に続けてマツダイラさんは、こう言いました。
「まだ解明されていない数多くの遺跡が眠る大地」
語るに落ちるとはこの事です。草原が途切れた広大な砂漠と荒地が続く場所ですから、昔から絢爛たる文化が花開いたことなど無かった場所と考えるべきで、本家のシルクロードに匹敵するような謎が有るはずだと乱暴に前提している間は、「解明されていない謎」が永久に残るでしょうなあ。
「近年、この道からおよそ1200年前の物と思われる大量の絹織物が発見されました。」
どうしても新しいシルクロードだと言いたいマツダイラさんは、「1200年前」だの「絹」だのと畳み掛けて来ますから、ご用心、ご用心。何を根拠に1200年前という数字が弾き出されたのか、番組の最後まで明かされませんからご注意。このシリーズで発見された砂漠のミイラでも、トンデモない当てずっぽう年代を平気で放送した前科が有りますからなあ。
以下其の弐に続きます。まだ番組冒頭の2分間ですなあ。