旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

選挙が終わった。

2005-09-12 17:13:15 | 政治
■旅限無が山から出て来ました。勿論、投票には行きました。そして、テレビで夜の開票番組をちらちら観ている内に、とても素面(しらふ)でいられなくなりまして、少々飲み過ぎてしまったようです。軽い二日酔い状態と選挙翌日の新聞やテレビに目を通して、これまた選挙の二日酔いを起こして、実に不愉快な思いをしております。皆様はいかがでしょう。小泉圧勝!を痛快に思っておられる方や、これで改革が進むぞ!と期待していおられる方もおられるかも知れませんが、歴史的な「絶対安定多数」を自民党に与えるのは、ちょっとやり過ぎではないでしょうかな?

■事前の世論調査で、自民党の独り勝ちは予想されていたわけですが、こんな過激な漫画のような選挙になろうとは、誰が思っていたでしょう?マスコミ上げて「選挙に行きましょう。」と口々に叫んでいたのは毎度の事ですが、これまでの選挙では「投票率が上がると、自民党は苦戦する」とされていたので、今回も内心では「いつもと違うかも?」と思いつつ、「浮動票」を動かしてアワ良くば政権交代なども期待していたマスコミ人が多かったのではないでしょうか?野党側からも投票率が上がれば有利と、勝手に思い込んでいた節が有ります。小泉さんだけは、特別に投票率に関してはコメントしていなかったようですなあ。やはり、「組織票」が多数の浮動票の中に埋没して薄まってしまうのを警戒したのでしょうか?それとも連立を組む公明党からの要請があったのでしょうか?どちらにしても、立ち合い演説をする度に、


「郵政民営化に反対するのは、既得権を守ろうとする一部の組織のことだけを考える者だ!国全体の利益を考えるのが政治家だ!」

と言っていたらしいので、これも良く考えてみれば、「浮動票」を掘り起こす効果が有る発言ですなあ。それに、深読みすれば、公明党は一部の団体の利益を考えているなあ、と選挙民に思わせて、自民党だけの安定多数を目論んでいるようにも思えましたぞ。

■結果は、公明党が3議席減らして自民党はバカみたいに増えましたなあ。しかし、これは小泉さんが支持されたとか、矛盾だらけ穴だらけの「郵政民営化法案」が支持されたと言える現象ではないのではなかろうか?今回の選挙は、


岡田民主党の独り負け

だったのではないでしょうか?岡田さんの発言がメディアに乗る度に、民主党は支持を失って行ったとしか思えません。最後の最後になって

正しい解答は「増税をしない事」

と自分達のマニフェストをぶっ壊す暴言を吐くに到りましたなあ。選挙カーを降りてから取材マイクに囲まれて、しどろもどろの「解説」をしている姿が放送されていました。あの一瞬は、大きな意味が有ったに違いありません。

■岡田民主党代表は、今まで通りに投票率が上がれば、浮動票をガッポリと頂けるものと甘い夢を見ていたのでしょうなあ。ところが、前回の風で吹き集まった浮動票に新たな票が加わって、全部まとめて自分の足元から飛び去っていたのでした。あちこちで、「投票に行こう」と連呼されたので、珍しく投票所に行ったものの、何を言っているのか御本人も分かっていないような岡田さんを信頼して投票する者など居るわけが無いでしょうに!彼の最も大きな間違いは、「政権交代」を目的にした事です。それは自分達の政策を実行するための「手段」でなければなりません。岡田さんは言いました、


小泉さんは郵政改革をすれば、経済も景気も金融も外交も全部良くなるなんて言っています。トンデモない話をしてはいけません!

でも、政権交代さえすれば、(思い付きを書き並べた)マニフェストが次々に実行に移されて「日本が良くなる」と言うのも、小泉さん以上のウソツキに見える話でしょうに!

■政権交代をするかしないか、それを判断するのは岡田さんではなくて、国民です。そして、国民は新政権の政治思想と政策を知りたがったのです。岡田さんが一言何か言う度に、その後ろには3人の霊が付いているのが時々見えましたなあ。菅さん、小沢さん、鳩山さん、彼等が主張している政策が岡田さんの指導下では絶対に一つにならない事が、どんどんバレて行ったのが選挙運度期間の出来事でした。党首討論会などで、ワガママな子供のような泣き言を並べるくらいなら、「党内討論会」を公開して決着をつけておくべきでした。民主党の売り物は、良く言えば「多様な考え方」を丸抱えしていること、悪く言えば「避難民の寄り合い所帯」なのですから、そのぎらぎらしたバイタリティだけを見世物にしてしまうべきでした。「刺客」だの「くの一」だのの小泉時代劇に勝てるのは、「K-1」にも負けない民主党内バトルロイヤル!「菅が吼える!小沢が策す!鳩山はボケる!そして、岡田が外す!」こんな面白い政界の吉本劇場ならば、皆が見てくれて、マニフェストなんか捨てて楽しんでもらえたのではないでしょうか?

■解散直後に社民党を逃げ出して民主党に飛び込んだ横光克彦さんは、大分3区で落選して、比例名簿第3位で復活当選しているようです。彼の勘は当たったようですなあ。一議席積みました社民党は、敵前逃亡の横光さんが与えてくれた「同情票」を得たのかも知れませんなあ。でも、同情されるようになったら政党は終わりですぞ!
そして、最後まで後味の悪さが残った「新党日本」、懐かしい「日本新党」を単純にひっくり返したばかりか、高校生の文化祭と変らない幼稚で強引な盛り上がりを画策した田中知事は、民主党を見棄て、長野県では孤立して、自分の「天下り先」「再就職先」をどさくさに紛れて作ろうとしているようにさえ見えました。

■頼りない寄り合い所帯の民主党。同情を乞うだけの社民党。頑固なだけの共産党。政党にさえ見えない国民新党。学園祭の前夜祭をしていた新党日本。下駄の雪に徹した公明党。そして、小泉さんだはマイ・ペースで、今まで通りに選挙マシーンを動かし、女性とホリエモンで視聴率を稼いだのですから、これはやっぱり小泉さんが勝ったのではなく。岡田さんを先頭にして野党が勝手に負けたのです。煽られて動き出した浮動票は、行き場を失って、自民党に吹き寄せられてしまったのです。これから小泉さんが何を仕出かすのか、自民党に投票した人達は、決してそれを忘れずによく目を開いて見ている義務が有りますぞ!しかし、万一、岡田政権が出来てしまったら、もっとエライことになっていたでしょうから、民主党を応援した人達は、危ないところで責任を回避できた、ということになりますかなあ?

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9月7日は朝日新聞の日?

2005-09-12 16:07:00 | マスメディア
■台風14号が日本海をのろのろと北上して北海道に再上陸しようとしていた日の事です。夕方のテレビ・ニュースで「天下の大朝日」の箱島会長が新聞協会会長と社の取締役を辞任するとの大ニュースにビックリ仰天!絶対に謝らないとばかり信じ込んでいた朝日新聞が、選挙直前に捏造記事を掲載した問題は、毎度のこととて、「蜥蜴の尻尾切り」で終った話かと思っておりましたのに、随分と大きな騒ぎになりましたなあ。社長まで謝罪の記者会見を開いて頭を下げていましたぞ!単なる捏造記事事件ではなく、何かもっと大きな問題が社内で起きたのではないでしょうか?

■『諸君!』1995年5月号に稲垣武さんと本郷美則さんとの対談が掲載されていまして、そこで本社社会部・整理部出身で元朝日新聞社研修所長の本郷さんがこんな事を言っています。


これはさすがに最後はやめたけど、広岡時代から東京の整理部では最終版用の直しという作業をやっていた。誤報・誤植に訂正が載るでしょう。それは最終版の紙面までは残さなければならない。ところが、それから縮刷版用の原版を起こす時に、訂正記事を抜いて、別の記事で埋める。間違っていた箇所は縮刷版で直す。だから、縮刷版には訂正記事というものはゼロだった(笑)。これをやめたのは一柳政権になってから……それほど無謬性にこだわった。

■今回の捏造事件は、亀井静香さんと田中康夫さんが会ってもいないのに、見て来たような会話内容を偽装してしまったというものでしたが、失礼ながらさっぱり結党理由が分からない「新党日本」がこれからの日本の政界で大を為すとは思えないし、亀井さんも往年の力は無いらしく、ホリエモン一人に大慌てしていると報道されているのですから、あの捏造記事が大きな政治問題になるとも思えないのですが……。朝日新聞は今でもNHK問題で、ツッパリ続けているくらいですから、今回の捏造記事問題なんか何でも無いはずだったのです。テレビや新聞では言えない裏の事件が別のメディアから明るみに出ることを期待しましょう。

■その朝日新聞から電話が掛かって来たので、二度びっくりです。コンピュータでの無作為抽出による「世論調査に御協力下さい。」という電話でした。世論調査が発表されるたびに、一体、何処の誰が答えているのだろう?と不思議に思っていたのですが、今回、初めて自分がサンプルになってしまいました。多分、アルバイトの女性だと思うのですが、ちゃんと名乗って丁寧な電話調査でした。コンピュータ画面を見ながらのマニュアル通りの作業らしいので、近い将来は無人化される可能性が高いでしょうなあ。折角、人間が担当しているのに、会長と社長が謝罪会見まで開いた直後なのですから、その件に関して一言有っても良かったようにも思いますが、「朝日新聞」を名乗っていても、調査をしている御本人は時給を貰っているだけの関係なので、特別に謝るつもりも無いのかも知れません。

■それにしても、9月9日の朝刊に載ると言う「衆議院選挙に関する世論調査」の設問は、順番も内容も大混乱していましたぞ!少しばかり新聞記事をじっくり読んでいろいろ考えている人なら、応答に窮するに違いないような質問が幾つか入っていました。こんな調査で朝日新聞はどんな「分析」をしようと言うのか、そちらの方が興味津津でした。


「あなたは次の日本の政治を任せるなら、小泉さんと岡田さんのどちらが良いですか」

朝日新聞は、「二大政党制」の幻を現実として前提しているようですなあ。こんな事を聞かれて明確に答えられる人のほとんどは「小泉さん」と答えるでしょう。「小泉さんは逃げてばかりいて私の質問にちゃんと答えない」と間抜けな泣き言ばかり言っている岡田さん!後から後からマニフェストに書かれていない話を継ぎ足して平気な岡田さん!「何でも良いから、政権交代させて下さい」などとムチャなおねだりをする岡田さん!露骨に「菅さんは嫌い。小沢さんは大嫌い!」という表情をしている岡田さん!そんな人を気楽に選んだら、万一政権を取っても予算案もまとまらずに大分裂してしまうのは間違いないでしょう。

■こんな質問も有りましたなあ。


「郵政民営化に賛成ですか。反対ですか。」

天下の大新聞がこんな苔の生えたような質問をするのが信じられません。「民営化には賛成だけれど、今回の法案には反対」と言って自民党を飛び出した人達が沢山出ましたし、民主党は同じ事を連呼しているんじゃないですかな?問題は「民営化に賛成か反対か」ではなくて、既に「民営化をどうやるか」になって久しいのに、大新聞自身が法案の内容を吟味するのを怠けているから、世論が混乱するのでしょうに!読者や選挙民をナメているのは新聞じゃないですかな?